白物語   作:ネコ

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97 自来也?

 白はカツユに説明するにあたり、カツユからの提案でベッドから移動し、机の上にカツユを移動させて、自身は椅子に腰かけていた。

 

「話は分かりました。しかし、分からないこともあります。あなたがどこからその情報を得ているか、ということです」

「それは……言えません……」

 

 説明していくことで、白の興奮状態も大分落ち着いてきていた。それにより、カツユの疑問に安易に答えるような真似はせずに、白は俯き黙り込む。

 

 少々興奮気味の状態で説明したため、ギリギリのラインと思しき所まで説明をしたせいで、逆に疑問を持たれてしまったのだった。

 

「……分かりました。お困りのようですし、何より、あなたに木の葉の里を助けていただいたのは間違いありませんので、深くはお聞きしません。それと、今は最後のペインをナルト君が相手にしているようですよ。あなたの言う尾獣化はしていませんが……」

「あー、それはたぶん、この巻物にペイン3体を封印しているからかと……」

 

 白は懐からペイン3体を封印した巻物を取り出し、カツユの前にゆっくりと置いた。カツユはそれを興味深げに見てから話を戻す。

 

「それで復活しないということですね。……ただ、あなたの言った説明についてですが、シカクさんたちが推測したようです。1小隊で今から本体のいる場所の捜索に当たるみたいですよ」

「さすが奈良一族。頭いいですよね、あの人たち」

「私が伝えたとは思わないのですか?」

「まあ、その辺は信じるしかないんですけどね(―――影分身の術―――)」

 

 カツユに対して言った言葉とは裏腹に、白は唐突に影分身を使用する。影分身はすぐに部屋の外へと出て行った。それを見たカツユは不審に思い、白に尋ねる。

 

「今のは一体なんですか? 実体があるようなので、影分身だと思いますが……」

「一応この島の見張りを影分身にさせておこうと思いまして、今この島の守りを、霧隠れの里の者にしてもらってますが、そこまで強くありませんので」

「影分身はチャクラの消費が激しいですから、今の状況ではあまり乱用しない方がいいですよ」

「ええ。気を付けます」

 

 カツユからの心配する言葉に相槌を打ちながら、自来也の方へと目線を向ける。説明する前に、首に刺した千本を取り除いてあるので、そろそろ目覚めてもいいのだが、未だに動く気配はない。それを確認してから、白はベッドへと移動する。

 

「寝るのですか?」

「さすがに疲れましたからね」

「ゆっくりと休んでください。何か変化があれば起こしますから」

 

 ベッドに横になったところで、白はまた違和感を感じ、そちらを向くと真剣な表情でこちらを見つめる自来也がいた。

 

 自来也は術を使うことなく、白を見つめ続ける。耐えかねた白が声をかけた。

 

「何かご用ですか?」

「ふむ」

 

 自来也は目を瞑りしばらく考えるそぶりを見せた。そして、開口一番言い放つ。

 

「ボクっ娘ならぬ、オレっ娘もありだの……」

「なんの話をしてるんですか……」

「自来也さん。目が覚められたのですね」

「おお。久しぶりだの、カツユ」

 

 起きてきた自来也は、慌てることなく、逆に呑気にも今回の戦いのことなど考えずに、新しい小説のことを考えいた。それもそのはずで、先程までの白とカツユとの会話を聞いていたからである。それに加えて自分の役目は、この段階では既にないとも考えてもいた。

 

「はい。ご無事でなによりです。あなたほどの忍が、死んだと聞かされたときは驚きましたよ」

「わしも死んだと思ったんだがの。この通り……いたたたた」

 

 元気なところを見せつけようとしたのだろう。上半身を起こそうとして、そのあまりの痛みに苦悶の声をあげる。

 

「無理はなさらないでください」

「せっかく治したんだから、自分から痛めるのはやめてください」

「お主が治しただと?」

「そうですよ」

 

 余程意外なことだったのだろう。自来也は目を見開いて驚くと、白に聞き返してきた。

 

「私も掌仙術だけですが拝見しました。その技量はシズネさんに勝るとも劣らないものをお持ちです」

「つまり、命の恩人な訳です。……この借りはでかいですよね?」

「わしは、水に沈んだはず……つまり人工呼吸を受け「受けてません」……つまらんのぉ」

 

 白やカツユの言ったことを完全に無視して、自来也は自分が受けたであろうことを話そうとするが、白に遮られて残念そうに呟き、溜め息を漏らした。

 

「お主の見立てでは、わしはあとどれくらいで回復する?」

「自然治癒なら、1週間もあれば、動けるくらいにはなりますよ。薬を調合すれば、もう少し早くなるかもしれませんが……」

「そうか」

 

 なんとも言えない沈黙が広がり、少し気まずくなるが、カツユが慌てたようにして、新しい情報を知らせてくる。

 

「っ!? ナルト君の九尾化が始まりました!」

「……尾は何本か分かるか?」

 

 慌てるカツユに、それまで黙っていた自来也が訊ねる。

 

「……4本です。カカシさんたちが蘇ったペインを抑えに入ったのですが、その際ペインにカカシさんが……」

「倒しただけで、封印したりバラバラにしたりしなかったんですね……」

 

 最後には蘇ると聞いていても、里の者が亡くなるという行為に胸が痛いのだろう、沈んだような声でカツユは話す。

 

「四本か……ギリギリだの」

「ペインは、ナルト君だけを連れて里の外に向かったみたいです。他の人たちは口寄せ動物たちと戦っています」

「なんか、知ってるのとだいぶ変わってるな……」

 

 カツユからの情報だけでは、現地の状況がうまく把握できないが、かなり混戦状態になっていることだけは分かった。

 

 少し考え込んでいた瞬間を狙っていたのだろう。自来也は乱獅子髪の術を白に向けて使用してきた。

 

 その白い自来也の髪が白を捉えたかに見えたが、その場所に白の姿はなく、髪は空を切る。

 

「何ですか? 今度は緊縛プレイがしたいとか言い出すんじゃないですよね? もう一度死んでみますか?」

「緊縛プレイ……それもいいかもしれん」

 

 術での捕獲が失敗し、更に髪の毛が凍っていく現象を、冷や汗を滴らせながら見ていた自来也は、顔をこわばらせながらも、ふざけた回答をする。

 

「次やったら、治るまで永眠してもらいますね」

「それは矛盾しとらんかのぉ……」

「で? 何故捕らえようとしたんですか?」

 

 自来也は言いにくそうに話し出す。

 

「いやなに……。お主が、あまりにも詳しく知りすぎておるのでな……ちょっと」

 

 2人の言い争いもここまでで、更なる情報が入ってくる。

 

「尾が……6本までは確認できましたが、里の外に出たのでこれ以上はわかりません……本当に大丈夫なんですよね?」

「はい、もうすぐ終わりですね」

「6本はまずいぞ!」

 

 落ち着いている白とは対照的に、自来也は尾の数を聞いて焦っていた。自来也は、尾の数が4本の段階で1度死にかけていたからである。そのため、6本と聞いた瞬間に、顔を青ざめさせていた。尾獣化とは聞いていたが、尾の数が6本までいくとは思ってもいなかったのだろう。

 

「自分の愛弟子くらい信じたらどうですか?(どうせ、最終的には9本出るんだし)」

 

 顔を青ざめさせて、慌てる自来也に冷ややかな言葉を投げ掛ける。それを聞いた自来也は、落ち着きを取り戻し、逆に開き直った。

 

「……そうだの。1度は死んだのだ……心配はすれども、後は見守るだけだのぉ。それより、この氷をどうにかしてくれんか?」

「取り敢えず解きますが、大人しく寝てください。あなたには教わりたいことがあるので」

「そうだったか……男自来也。美人の願いは無下にはせぬ!!」

 

 本当は決めポーズでもやりたいのだろう。顔をしかめながら言いきった。

 

 何度も身体を動かして痛みに顔をしかめる自来也に白は呆れる。

 

 カツユはその言葉に疑問を浮かべるが、木の葉の方が心配なため、そちらに集中しており、聞くだけで、なにも言わずにいた。

 

(間違えられてるのは苛つくけど、我慢するか……誤解を解いて、変に意固地になられても面倒だし)

 

 氷遁を解くと、自来也は髪を元に戻していく。それを確認してから、白もベッドに戻っていった。

 

 ベッドに戻り、巻物から兵糧丸の入った瓶を取り出して、中の薬を飲み込みチャクラを回復させる。

 

 自然回復が望ましいが、これ以上何かする場合、今のチャクラ量では、些か心許ないためだった。

 

「しかし、何もできないとなると暇だのぉ」

「そんなに暇なら、小説のネタでも考えてたらいいじゃないですか」

「そう言えば、何かを書こうとしていたような……」

 

 水に沈んだ時の記憶が朧気で出ないのだろう。思い出そうとするが、思い出せずにいた。

 

 そんな自来也に一応警戒しつつ、白は仮眠をとる。油断などしようものなら、何をされるか分かったものではないからだ。

 

 それからしばらく経ち、全てが終わったことを聞かされる。

 

「あなたの言った通り、里の人たちは生き返りました。俄には信じがたいことですが、輪廻眼とはすごいのですね」

「綱出姫は無事ですか?」

「はい。ただ、かなり疲れているようで、眠ってしまいました。今は、サクラちゃんが看てくれています」

 

 そのカツユの言葉に、白は安堵して、横を見ると、自来也は目を閉じ寝てしまっていた。

 

「これでナルトも英雄ですか」

「それを言うのであれば、里のみんなが英雄ですよ。ただ、今回のことでナルト君を、里のみんなが認めてくれるのは間違いないですね」

「そうですね。ナルトが目的で、ペインが里に来たのがバレなければですがね」

 

 悪どい笑みを湛える白に、カツユは押し黙ってしまう。確かに、九尾が目的でペインが木の葉の里に来たのであれば、今回のことはナルトが木の葉の里に居るせいだととられても不思議ではない。

 

 綱手姫がナルトを気に入っているのを知っているだけに、カツユは何も言えないのだった。

 

「俺も鬼ではありません。あなたが約束を守るのなら口外しませんよ?」

「分かりました。約束については必ず守ります。しかし、自来也さんに関しては、知らせないというのは難しいと思います……知らないかもしれませんが、自来也さんは自由気ままに過ごされているので、おそらく噂が届くのも時間の問題なのです」

「まあ、それはこれからの交渉次第ですかね」

「交渉ですか?」

 

 波の国との同盟についての話までは聞いていないようで、そのことを説明するとカツユは納得した。

 

「それで、最初の状況説明に繋がるのですね」

「そういうことです」

 

 

 

 その後数日経ち、多少動けるようになった自来也から口頭だけで術を教えてもらっていたが、自来也が土遁と火遁がメインなため、教わることがかなり少なくなってしまっていた。

 

「まさか、黄泉沼が土遁だったなんて……沼なんだから水遁でしょう!?」

「わしに言われてものぉ。それにしても、物覚えが早い。……お主、仙人になってみんか?」

「妙木山ですか……ちょっと考えさせてください」

「うむ、分かった。……師弟で寝食を共にする。これは素晴らしい案かもしれん」

「…………」

 

 自来也が何を考えているのか丸わかりな発言を聞いた白は、何も言わずに呆れたような目を自来也に向けていた。

 

 

 

 波の国との交渉の時の連絡役ということで残っていたカツユから、予想だにしない言葉を聞かされる。

 

「未だに目を覚ましません……」

「……さて、色々と準備をしなければならないので、これで失礼しますね」

「待ってください! 疲れて寝ているだけなんです!」

「それは、昏睡状態と言うんです! むしろ、その状態で口寄せであるあなたが消えないことに驚きですよ!」

 

 通常の口寄せであれば、術者が気絶したりした段階で、口寄せ契約した動物も消えるのだが、カツユが消えなかった為に、白は綱手姫が休息を取っているだけと思っていたのだった。

 

「始めに大量のチャクラをいただきましたから、それがなくなるまでは大丈夫です」

「最初の段階で終わってた……」

 

 自分の行動が始めから無駄だったと分かり、軽く絶望した白は、旅立つ準備を始める。

 

「さてと……。妙木山に向けて行きましょう」

「何故妙木山に行かねばならん? わしは、妙木山に行くなど一言も言ってはおらんぞ。師弟の旅と言えば、各地を転々と回らねばなるまい! 特に、この身体を早く治療するためにも、湯の国は欠かせぬ! 混浴はあるのかのぉ……」

「…………」

 

 最後に本音を漏らす自来也を、どうしてやろうかと考えていたところで、カツユから提案があった。

 

「取り敢えず、交渉の内容次第と言うことでしたら、それまでお待ち願えませんか? もし、よければ自来也さんを救ったことを伝えることもできますし」

「そうだった……。最悪そっちの方向で」

 

 早くも自来也に見切りをつけて、カツユに伝えるが、それを自来也本人から止められた。

 

「それはちと待ってくれんか。これから師弟で旅に出なければならんのに、生きているのが分かれば、綱手のやつに何をされるか分からん」

「「…………」」

 

 こういった人物だと分かっていても、白とカツユは自来也に対して、呆れてものが言えなくなってしまう。それでも、気を取り直し話を進める。

 

「むしろ言ってもいいかもしれない」

「交渉状況によってはすぐに使いますね」

「再不斬さんには伝えておいてください」

「分かりました」

「いや……。わしの意見は……?」

 

 自来也の発言を無視し、白とカツユで、交渉時に出るであろう内容と、それに対する答えを考えるなど、話を進めていくのだった。

 


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