白物語   作:ネコ

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68 因縁?

 白はネジとの会話後に、紅班のメンバーが集まっている場所へと向かった。

 

「みんな2次試験通過おめでと~」

「ありがとよ」

「ああ」

「…………」

「ありがとう」

 

 2次試験の通過に対する祝福を述べたのだが、紅だけは違和感に気付き、白へと問いただしてきた。

 

「……白。あなた、どうやってここに入ったの?」

「暗部の方に教えてもらって連れてきてもらいました。……紅先生の口利きではなかったのですか?」

「……いえ。それならばいいわ」

 

(怪しまれても仕方ないかな……)

 

 紅の疑問も当然だった。この会場は、試験官が周囲の警護に当たっており、関係者以外が、簡単に入れるものではない。白も紅班で関係者と言えば関係者ではあったが、理由を説明した所で簡単に入ることはできなかっただろう。そのことで紅は聞いてきたのだが、白の言った内容で、火影が手を回したのだろうと納得してしまった。

 

「白は気軽そうでいいよな」

「<全く気軽ではなかったけど……>」

「何か言ったか?」

「なんでもない」

 

 最初に軽めの挨拶を行ったせいだろう。キバは白に対して呑気に言ってくるが、白にとってはストレスの溜まる2次試験だったため、小声で愚痴を言ってしまう。

 

 ヨロイが医療忍者に運ばれて行き、サスケがカカシに連れて行かれたところで、再度ハヤテの声が聞こえてきた。

 

「さて、次を始めます」

 

 そこからの展開は原作と一緒かと思ったが、順番が違っていた。次の対戦が……

 

『ザク・アブミ VS アブラメ・シノ』

 

 だったのである。しかし、対戦の結果が変わることはないどころか、無傷でシノは白たちのところに戻ってきた。それに対して、紅は一安心といった様子でいたが、キバはシノに対抗心を燃やしているようで、拳を握りしめるてやる気を漲らせているようだ。

 

(シノってどこかに攻撃をうけなかったっけ? ……まあいいや、勝ってるんだし。それにしても、キバ対抗心燃やしすぎ)

 

 まるで、それを叶えるかのように、次の対戦者が電光掲示板に映し出される。

 

『ウズマキ・ナルト VS イヌヅカ・キバ』

 

 対戦相手が変わることはなかったが、次々に順番が変わっていくことに白は少し驚いていた。

 

(これは俺がいる影響なのか? ……でも、順番が変わっただけで結果は変わってないし……、問題は……ない……のかな?)

 

 ナルトとキバの結果も変わることなく、ナルトの勝ちで終わった。

 

 ナルトはまだまだ元気いっぱいといった様子で上へと階段を上がってくる。そして、ナルトがカカシたちのところへ移動する際に、ヒナタが勇気を振り絞り、ナルトへと声を掛けて薬を差し出していた。

 

「ナルトくん……。これを……」

「何だこれ?」

「この場面で渡すなら薬に決まってるでしょ。少しは闘うこと以外のことも考えた方がいいよ」

 

 この薬に関しては、ヒナタが色々な分野の勉強に手を出していた時に、白がヒナタに作り方を教えていたものだった。ヒナタには残念ながら医療忍術の才能がなかったため、白がいない場合の怪我の手当て方法としていたのである。今回は、それを生かして、怪我をしているナルトに自ら手渡そうとしているのだろう。

 

 白からの無言の早く受け取れというプレッシャーを感じたのか、ナルトは恐る恐るといった感じで薬を受け取った。

 

「あ……ありがとだってばよ」

「う……うん……」

 

 ナルトはそう言うと、カカシたちの元へと行ってしまった。続いてキバが担架に乗せられて運ばれて来た時にも、同じように傷薬を渡そうとするが、キバ本人によって渡す前に遮られる。

 

「いいかヒナタ……あの時に分かったと思うが、砂の奴と当たった時は絶対に棄権しろ。今の俺たちじゃ絶対に勝てない」

「……うん。分かってる」

「分かってるならいいが……」

 

 そこで、次の対戦者が電光掲示板に映し出され、それを見てキバは更にヒナタへ顔を向けた。

 

「ヒナタ……あいつとは「はいはい。怪我人はさっさと移動、移動」……って白!? お前は分かってるだろ! あいつは……」

「担架で運んでもらっているんだからこれ以上迷惑をかけない! すいません。行ってください」

「あっ! おい!?」

 

 キバは何かをまだまだ言いたそうにしていたが、怪我を治す方が優先とされたのだろう。担架を持っていた医療忍者の2人は困惑しながらも、キバを連れて会場を後にした。

 

(次の対戦はヒナタとネジか……)

 

 電光掲示板には『ヒュウガ・ヒナタ VS ヒュウガ・ネジ』と映し出されていた。

 

 それを見て動揺しているのはヒナタのみで、ネジの方は白をちらりと見てから下の広場へと降りていく。

 

「ヒナタ。出番だよ」

「……そ……そんな……」

 

(確かにこの組み合わせって何か悪意を感じるよな……)

 

 3次試験の始まる前に、火影が言った内容では、各里の保有する戦力を見せつけると言っていた。そのような中、日向家は木の葉の里でもかなりの戦力となる。それにも関わらず、その日向同士を闘わせるというのは、白にとって納得できるものではなかった。他の里との合同なので理解はできてはいたが……。

 

「では4回戦を始めます。……開始!」

 

 ハヤテの合図と共にヒナタは構えるが、ネジは特に構えもせずにヒナタへと語りかけた。

 

「闘う前に言っておく。……あなたでは俺には勝てない。棄権しろ」

「……えっ?」

 

 ヒナタはネジの言ったことがすぐには理解できなかったのだろう。ネジの言った言葉に驚いているようだ。

 

「……ハナビ様に負けてから、宗家としての責務から逃れて鍛錬を怠るばかりか、更には未だ自分に自信を持てないでいる。……そんな考え方を持っていては、宗家どころか日向家としての格を落としていることにすら気付いていないだろう?」

「…………」

「何も言い返せないか……かなり甘やかされていたようだな。だから分家からも落ちこぼれと言われているんだ。……あいつがあなたを変えようとしていたようだが、あまり効果は無かったみたいだな。自分を変えることもできないようでは、この試合自体が無駄だ。早々に棄権しろ」

 

 ネジにとっては、ヒナタに対する憎しみの想いもあったのだろう。棄権を促すことで、争いを回避しようとしたようだが、そこにネジの一方的な発言に対して怒鳴り声が入ってくる。

 

「いい加減なこと言うな! そんなやつの言うことなんて気にするなヒナタ!」

 

 ナルトは柵を握り締めて身を乗り出し、今にも下へと降りてヒナタの代わりにネジへと襲いかかろうとする勢いだ。

 

 そんなナルトの声で決心がついたのか、ヒナタは表情を引き締めネジを見つめ直す。

 

「これ以上は無駄のようだな」

「……私はもう逃げない! 勝負です!」

「いいだろう……」

 

(やっぱり闘うことになっちゃったか……)

 

 ヒナタとネジの両者が構えを取ったところで、最初に仕掛けたのは意外にもヒナタからだった。ヒナタはネジへと初撃に掌底をくり出す。それをネジが弾いたところでヒナタの顔色が変わり、すぐに後退した。

 

「これは……点穴!?」

「やはり気付いたか……気付かないと思ったんだがな」

 

 ヒナタは自分の腕にチャクラがいかないことに気付き後退した。これに気付けたのも、白との点穴を使っての鍛錬時に、チャクラを断たれた状態も試したことがあったためだ。

 

「俺の白眼は点穴を見切る。あなたと同じだ」

「えっ……」

 

 ネジは、昔白との試合にて、白が点穴の存在を漏らしたことにより、ヒナタも点穴を突くことができると勘違いしていたのだった。そのことにより、ネジはヒナタは才能があるにも関わらず、宗家の責務から逃れようとしている風に見え、強くあろうとしない姿に憤慨していたのだった。それはネジの鍛錬にも影響を与え、そのような存在に負けられないと鍛錬を積んだ結果、点穴を見切れるようにまでなっていた。

 

「今度はこちらから行かせてもらう」

「っ!?」

 

 ヒナタは防御の姿勢で対応するが、左腕にチャクラが練れないことで速度が落ち込んでおり、ネジの攻撃に対応出来ていなかった。それでも、動きの鈍い左腕を盾にしながら辛うじて凌いでいたのはさすがと言っていいだろう。しかし、じわじわとヒナタの身体全体の動きが鈍くなっていくと同時に、呼吸も荒くなっていった。

 

 ネジの方は未だに無傷で、呼吸を乱すことなく、まるで予め決められていたかのような動きでヒナタを攻撃していく。

 

「……やはりこの程度か……」

 

 その言葉以降、更にネジは攻撃の速度を上げた。ヒナタはこの攻撃について来れず両腕の点穴を全て突かれてしまう。ネジは一旦距離を取り構え直して再度ヒナタへと言い始める。

 

「もう腕にチャクラは通っていない。……最終警告だ、棄権しろ」

「……わ……わたしは……まだ……」

「警告はした」

 

 ヒナタは荒く息をあげながらも、構えを崩さずにネジへと向き合っていた。それに対してネジは、今までが遊びだったと思わせるほどの速度でヒナタへと柔拳を繰り出した。今度の攻撃は腕や脚ではなく真っ直ぐに胸へと突いてきた。

 

 ヒナタはこの攻撃により血を吐きだし、地に膝をつく。これで終わりとばかりに、ネジはヒナタを見下ろすような形で立っていたが、ナルトの声援によりネジはそちらへと視線を向けた。

 

「ヒナター! ガンバレーーーー!!!」

 

 ナルトの言葉で膝をついていた状態から立ち上がると、チャクラの練れない腕でネジへと反撃を行っていた。しかし、その顔から既に白眼が使われていないことが分かる。

 

 完全に終わりのはずだった攻撃を受けても、反撃してきたことにネジは驚き、その反撃を喰らってしまうが、柔拳を基本とした攻撃だったため、触れられた程度の衝撃しかネジにはいかなかった。

 

 そこから、ネジは更に身体の機能を奪っていくが、ヒナタは受ける攻撃を無視して反撃をしていく。

 

 ネジはそのヒナタの攻撃にイライラし始め、一旦ヒナタから距離を取った。

 

「これで終わりだ」

「…………」

 

 ここでネジからの殺意とヒナタの状態に気付いたのだろう、ハヤテが試合を止めにかかる。ヒナタは途中から無意識で攻撃をしていたのだった。

 

「この試合は終了とします! ……ネジくん!」

 

 試合終了の言葉を聞いても、止まることのないネジへ向けてハヤテが叫び、それと同時に上忍たちが動いて、ヒナタへと攻撃が当たる前にネジを止めた。ヒナタはというと、白に抱きかかえられている。

 

「ネジ……過剰な攻撃をしないで欲しいと言ったのを忘れたの?」

 

 ネジはもちろんのこと、上忍たちも含めて白の言葉に驚き、白へと視線を向けた。言葉というよりも、ヒナタを抱きかかえてそこにいるという事実に……。

 

「ヒナタは少々危険な状態なので連れて行きます」

 

 その場にそう言い終えると、掌仙術にて治療を行いつつ病院へと白は向かった。

 


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