白物語   作:ネコ

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67 3次試験?

 会場の外で、変化の術を解こうとした時に、改めて白の元へと指示が飛んできた。鷹が運んできたのである。鷹は白の肩へととまると、片脚を上げて、そこに括り付けられている紙片を差し出してきた。

 

 白が素早くその紙片を取ると、仕事は終わりとばかりに鷹はどこかへ飛んで行ってしまった。白は、気にせずに紙片の中を見て固まってしまう。その内容は、まるで図ったかのようなタイミングと内容だった。

 

 紙片に書かれた指示の内容は暗号で書かれており、サスケ班の移動が完了次第、月光ハヤテを会場へと呼び、ハヤテの任務を引き継ぐというものだ。

 

 予定では、2次試験を終えて、日を空けてから3次試験を行うはずだったので、ハヤテが今から3次試験を行うということは知らないだろう。確かに、そう言った意味では、知らせることの必要性はわかってはいたが、白は納得できていなかった。

 

(ほとんどの暗部が忙しいのは分かるけど、根の方はまだ余裕があるだろ……。しかも、なぜあの時言わなかったんだよ……)

 

 白は内心で悪態を付きつつ、紙片に書かれたハヤテの任務先へと影分身を向かわせた。

 

 ハヤテの任務内容は、砂の国から来た忍者の監視だ。同盟国とはいえ、過去に雲の国の裏切りがあって以降、他里の忍者が木の葉の里に入った時には、監視するようになっていた。そのため、砂の国の忍者の滞在している宿付近に来たまではよかったのだが……

 

(ハヤテさん見つからねーーー!!! あの人の隠遁舐めてたよ……さすがに火影が認めるだけのことはある……)

 

 白はハヤテを見つけ出すことができずにいた。複数の気配が監視しているのは分かったので、手当たり次第に確認しているのだが、その悉くが違う人だったのである。

 

 その後、時間はが多少かかったが、白はハヤテを見つけたことに安堵して近付いていく。

 

「よかった……探しましたよ」

「ヒミトさんですか……どうしました?」

「3次試験の日程が繰り上げになりました。すぐに会場へと向かってください。任務は私が引き継ぎます」

「繰り上げ……ですか?」

「ええ。繰り上げにすることの決定は火影様が決めたことのようなので、私には分かりません。ただ、会場には既に受験者が集合していますので、急いでください」

「分かりました。では引き続きお願いします。今のところ怪しい動きはありません」

「分かりました」

 

 そう言うと、ハヤテはすぐにその場を立ち去り、試験会場へと向かっていく。

 

(ハヤテさん目の下の隈酷かったけど、大丈夫だろうか……。まだ俺の任務の方がマシ……なのか?)

 

 影分身はそのまま、砂の国の忍者の監視任務へと就いた。

 

 

 

 白の影分身がハヤテの元に辿り着く少し前。3次試験会場に通過者が、整列し並び終えてしばらくしてから、火影が会場内へと現れた。

 

 当然のことながら、その場に3次試験の担当者であるハヤテの姿は無い。そのため、アンコが3次試験の進行を行っていた。

 

「まずは、2次試験の通過おめでとう! ……これから火影様よりお話しがある! 各自心して聞くように! ……では火影様お願いします」

「うむ」

 

 火影は鷹揚に頷くと、この中忍試験の目的について説明を始めた。その目的に対して、受験者からは、始め困惑の表情が出ていたが、内容を説明していくうちに理解できたのか、表情を変えていく。

 

「すなわち……これは己と里の威信を懸けた命懸けの戦いなのじゃ」

「納得いったってばよ」

「どうでもいい……それよりも、命懸けの試験とやらを早く始めろ」

「……ふむ……3次試験について説明したいところなのじゃが……実は3次試験の担当の者が……」

 

 そこまで火影が言いかけたところで、ハヤテが試験会場へと到着し、火影の前へと現れた。

 

「お待たせしました火影様」

「……来たか」

「ここからは、3次試験担当を仰せつかったこの月光ハヤテから、説明を行わせていただきます」

 

 火影が頷くのを確認してから、ハヤテはアンコからボードを受け取り、受験者たちへと振り返ると、全員を見回したうえで説明を始める。

 

「みなさん初めまして……ハヤテと言います。……まず、3次試験の目的についてです。あまり、3次試験が行われることはないのですが、1次試験と2次試験が甘かったせいか、少々人数が残り過ぎてしまいましてね。中忍試験規定に則り、3次試験にて本選へ出場する人数を減らすために行います」

「…………」

「本選には、たくさんのゲストの方が来られます。そのため、ダラダラとした試合はできず、時間も限られてくるんです……と言うわけで、これからすぐに3次試験を行いますので、体調のすぐれない方……他にもやめておきたいと思う方は今すぐ申し出てください」

「っ!! これからすぐだと!?」

「……いませんか?」

 

 キバがハヤテの言葉に驚いたような声を上げるが、ハヤテは気にせずに辞退者の確認を行う。そこで、おずおずとカブトが手を上げて辞退してきた。

 

「あのー……。僕はやめときます」

「「「「「!!!」」」」」

「えっ!? カ……カブトさん……?」

 

 少しの間、静寂が包む中ハヤテが咳き込みながら、進めていく。

 

「えーっと……。木の葉の薬師カブトくんですね……下がっていいですよ」

 

 ハヤテはボードへと書き込むと、思い出したように説明を付け加える。

 

「えー……言い忘れていましたが、ここからは個人戦です。1人がやめたからと言ってチームに影響は出ませんので、自分自身の判断でご自由に申し出てください。……他に辞退者はいませんか?」

 

 カブトはしばらくその場に留まり、ナルトや同じチームの者と会話後に、その場を立ち去って行った。その後すぐに、サスケに異常が現れ始める。

 

 サスケは急に首筋を押さえると、険しい表情をしたのである。それを見て、サクラは涙を流しながらサスケに試験を止めるよう伝えるが、サスケは聞く耳を持たず、サスケがサクラに小声で話している間に、火影側でもサスケのことについて話し合っていた。

 

「彼は試験から外し暗部を付けて監視すべきです!」

「そう素直に言うことなんて聞きませんよ、あいつは……なんせあのうちは一族ですからね」

「なに呑気なこと言ってるのよ! あの呪印は、チャクラ練り込んだだけでも、呪印が勝手に反応して無理やり力を引き出そうとする禁術なのよ!? あの子が耐えてるだけでも不思議よ! ……火影様からも言ってやってください!」

 

 アンコは自分が同じ呪印を付けているためだろう。サスケの状態の危険性をカカシへと捲し立てた。

 

「ふー……大蛇丸の事もある……。サスケはこのままカカシ預かりでいいじゃろ。それに加えて暗部に余裕はない……」

「ほ……火影様!!」

 

 アンコは火影が賛同してくれるものと思ったのだろう、火影の言葉に苦渋の表情をしている。

 

「ただし、呪印の力が少しでも暴走したら止めに入れ」

「はい……」

 

 アンコは未だに納得できていないようだったが、条件付きとはいえ、止めに入れることを聞いたことで素直に返事を返した。

 

「えー……ではこれより始めますね。この3次試験は一対一の個人戦―――つまり実戦形式の対戦となります。……丁度20名となったので、合計10回戦行い、その勝者が中忍試験の本選に進出できます。……ルールは一切ありません。どちらかが死ぬか倒れるか……あるいは負けを認めるまで闘ってもらいます。死にたくなければすぐに負けを認めてくださいね」

 

 ハヤトの言葉に、ナルトたちは息を呑み真剣な表情で聞き入っている。これまでの任務や今回の試験で、殺し合いなどしたことがないため、この3次試験がどのようになるのか想像して、緊張しているのだった。

 

「ただし、勝負がはっきりついたと判断した場合などは、無暗に死体を増やしたくないので、止めに入ったりなんかします。……以上で説明は終わりです」

 

 ハヤテの言葉で、壁の一部が動きだし、そこに電光掲示板が現れた。

 

「えー……この電光掲示板に対戦者の名前が表示されます。名前が表示された方はそのままここに留まり、それ以外の方は上に移動ください。ではさっそくですが、1回戦の対戦者を発表しますね」

 

 ハヤテが言い終えて少ししてから電光掲示板に文字が映し出される。

 

『ウチハ・サスケ VS アカドウ・ヨロイ』

 

「では、掲示板に示された2名はそのまま留まり、他の方は移動してください」

 

 対戦者以外が上へと移動し、サスケとヨロイが戦い始め、みんなの視線がそちらへと向いたところで、白はネジへと近付いていった。

 

「ネジ。2次試験通過おめでとう」

「……来ていたのか」

「まあ、一応同じ班の人が出るわけだしね」

「……知るのが早いな」

「……情報の伝達は意外に早いものなんだよ。それよりも、少し向こうで話さない?」

 

 白は人が居ない場所を指差した。

 

「この試合を見ておきたいんだが……」

「結果が知りたいなら、サスケくんの勝ち。はい、それじゃ行こうか」

 

 白はネジの腕を掴み問答無用で移動を始めた。ネジは不審な顔をしつつも特に抵抗せずに白に付いていく。

 

「さて、言っておきたいことがあるんだけど、その前に確認。ネジはまだ宗家に対して何か思うところはある?」

「!!! あるに決まっているだろう!」

「はい、静かに……まあ予想通りなんだけど、一応言っておくよ」

「何をだ?」

 

 ネジは不機嫌な声で白へと聞き返してきた。

 

「宗家を継ぐのは1人。そして、現在の宗家の跡取り候補はハナビ様。ヒナタはハナビ様のスペア扱い。このままいけばヒナタは、ネジと同じ分家になるんだよ。……それは分かってるよね?」

「…………」

 

 ネジは小さい頃からヒナタは宗家という思い込みがあったため、ずっと宗家だと認識していた。しかし、よくよく考えれば分かることだったのだが、今までの憎しみの対象としてしか見てきていなかったため、そのことに思い至らなかったのだろう。それが、白の言った言葉で、ネジは理解してしまい考え込んでしまった。

 

「……白は結局何が言いたいんだ?」

「まあ元を正せば、恨む相手が違うってことを言いたいんだけどね。……恨む相手は、雲隠れの忍びであって宗家ではないよ。まあ、殺してしまった落ち度はあるけどね」

「……大体言いたいことは分かった。だが……そんな簡単に割り切れるものではない」

「今はそれでいいよ。こっちとしては取り敢えず、手加減は不要だけど、過剰攻撃は控えてほしいと思ってるだけだから」

「……まるで、俺とヒナタ様が対戦するような言い方だな」

「当たる可能性はゼロではないから……念には念をってところかな? そろそろ試合が終わるよ」

 

 白がネジを試合へと視線を向けさせた時、丁度、サスケがヨロイを蹴りあげていたところだった。

 

 その後、上空へと蹴り上げられたヨロイに対して、サスケがリーの技を真似たことでネジが驚いている間にも、サスケはヨロイへと連続蹴りを放っていく。最初の蹴りは防がれたが、続く蹴りにヨロイは反応できずに顔面へと諸に喰らい、そこへサスケが追撃で腹部へと殴ることで地面への落下速度を加速させ、地面へと到着すると同時に、地面と挟むようにして胸へと蹴りを放った。

 

 蹴りを放った後のことを考えていなかったのだろう。サスケも攻撃後に蹴りの反動で、その場から弾け飛ばされていたが、息を荒くしながらも、ゆっくりと立ち上がり、ハヤテによって勝利者コールが成される。

 

「うちはサスケか……あれほどとはな……それにしてもあれはリーの技……」

「たぶん、リーさんがサスケ君の前で使った時に、写輪眼でコピーされちゃったんじゃないかな?」

「…………」

「それじゃあ、話は終わりってことで、また後で」

 

 白はネジにそう言うと、紅たちのいる元へと向かっていった。

 


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