白物語   作:ネコ

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65 我愛羅?

 キバたちに追いつくために向かっていたが、途中で爆発音が微かに白の耳へと入ってくる。白は、他の受験者同士の闘いに巻き込まれないよう、一直線に塔方面へと進んでいたが、その音を聞いて巻き込まれないように遠回りをした。

 

 しかし、遠回りをしたことで、逆にその現場を目撃してしまう。

 

(げっ!? 大蛇丸のやつと戦闘中かよ! ……まだ気付かれてないな。退避退避)

 

 大蛇丸はナルトとサスケとの戦闘に夢中のようで、白の存在に気付いていない。余計な諍いに巻き込まれぬよう、白は再度遠回りに進路を取った。

 

 他の受験者に目撃されないように、割と本気で移動していた為だろう。あっという間に塔へ到着したはいいものの、まだ誰も受験者は到着していなかった。それが分かったのは、受験者用の扉がどれも封をされたままだったからである。塔を一周し、確認し終えた白は、このままの姿でいると、受験者と間違われて襲われる可能性があると気付き、暗部の姿へと変化する。

 

 そして、塔の少し上の部分で受験者の到着を確認していると、一番最初に来たのは我愛羅たちだった。我愛羅たちは塔へと到着すると、入口の1つからすんなり中へと入っていく。

 

(我愛羅たちが来たってことは、もうそろそろキバたちも到着するのかな? 影分身にも連絡手段を持たせるべきだったな……)

 

 影分身にキバたちの後を追わせたのは良かったが、連絡手段を考えていなかったため、白は塔にて待機せざるをえなかった。すれ違い防止のためである。しかし、ただ待っておくのは勿体ないと感じ、影分身を更に作ってから、白は塔内へと入ると、準備を進めていく。

 

 今回の影分身は、連絡手段を持たせてあるので、何かあれば連絡が入るように対処済みであった。

 

 白が準備を行っている場所―――塔内というのがいけなかったのかもしれない。準備をしている最中に、既に到着していた我愛羅たちが白へと近付いてきたのである。

 

「こんなところで何をしている」

「……見ての通り食事の準備だが……」

 

 白は、自分の分を含めてキバたちにご馳走するため、ラーメン作りに精を出していた。そのため、匂いが部屋から外へと漂っていくことを失念していたのである。我愛羅たちは近くの席へ座ると、無言で白のやることを見始めた。

 

(休憩や暇つぶしなら他のところでやってくれよ……)

 

 スープの灰汁取りをしながら、いつまでも見てくる我愛羅たちへと、意を決して白は話し掛けた。

 

「何か用か?」

「腹が減った」

「えっ?」

「おっさん、俺たちがここに居る時点で諦めるしかないじゃん」

「運がなかったね」

 

 我愛羅たち3人は、暇つぶしのために居るわけではなく、食事の出来上がりを待っていたのだった。予想外の展開に白は固まってしまうが、ここで反論しても危険度が増すだけだと言う事実に仕方なく諦める。

 

「言っとくけど、出来上がりまで時間がかかる」

「急げ……そこまで気は長くない」

「早めに作った方が身のためだよ……」

 

 時刻は午後5時。夕食を食べるには少し早い時間だった。それでも、自分の身を守るため、白は速度を上げる。水分身に並行して麺を作らせるのである。

 

(こんなはずではなかったのに!)

 

 出汁が十分に取れないまま、その後の味付けで誤魔化しつつ、短時間でラーメンを作成し終えた。途中から、明らかにイライラし始めた我愛羅を、テマリとカンクロウの2人が話し掛けることで、なんとか治まっていたが、その度に白へと八つ当たり気味に文句を言ってくるのである。白としては、たまったものではなかった。

 

「まだなのか!?」

「早くしろよおっさん!」

「俺はおっさんじゃねーーーー!!! まだ十代じゃボケーーーー!!!」

 

 あまりの2人の言い草に素で返してしまったが、そんなことはお構いなしとばかりに2人は言い返してきた。

 

「口よりも先に手を動かしな!」

「死にたくなかったら早くしろって!」

 

 色々なやり取りを交えつつも、ラーメンを出し終えてたところで、暗部の者が部屋の前を通りかかり白を見つけるや近付いてきた。

 

「他にもいたか。丁度よかった。……何をしてるんだ?」

 

 暗部であるはずの白が、ラーメンを作っているのだから当然の反応だろう。白は早くこの場を脱出したいがために、続きを促した。

 

「何か用事があったのではありませんか!?」

「そうなんだが……。まあいい、試験官であるアンコ特別上忍を探すのを手伝ってくれ。この塔に到着していてもおかしくはないんだが、まだ来ていないようなんだ」

「わかりました! ……では諸君また!」

 

 調理道具を巻物に収納したところで、食べていた我愛羅から声が掛けられた。

 

「またと言うことは、この時間にここへ来ればいいんだな」

「確か、食事は各自でとか言ってたけど、到着してからのことは聞いてなかったね」

「まあうまいから、残りの時間ここでいいじゃん」

「いや……ちゃんと2次試験通過者には、食事の準備はされてるから……」

 

 白の言った通り、2次試験通過者は、通過後の安全の保障と、他の受験者への邪魔とならないように塔内で食事の用意がされていた。そのため、それを白は伝えたのだが……。

 

「夕食はこれでいい」

「我愛羅が気に入るなんて珍しいね」

「残り4日間よろしくじゃん」

「……俺の話聞いてた?」

「おい! 早く行くぞ!」

「まだ、説明という名の説得が!」

「こっちの方が重要だ!」

 

 白は、暗部の者に手を引かれてその場を連れ出されてしまい、その暗部の者とツーマンセルにてアンコを探すことになったのである。

 

 探すこと約1時間でアンコを発見することができた。その時のアンコは、右手で首を押さえて息も絶え絶えといった感じで苦しそうにしており、更に周囲をトラ3匹に囲まれていた。アンコにとって、通常であれば全く問題はなかったが、首に浮き上がった呪印により、まともにチャクラを練れない上に、身体がまともに動かなかったのである。

 

 弱っているアンコへとトラが飛びかかったところで、一緒に行動していた暗部の者が、トラたちに金縛りの術を使用する。

 

「こんなところにいたのかアンコ」

「……暗部の癖に来るのが遅いんですね」

「そういうな。とっくに塔へ到着していると思っていたからな」

「それについては……ぐっ!!」

「大丈夫か?(あの呪印ってそんなに苦しいもんなのか?)」

 

 暗部の者が来た……と安堵したためだろう。アンコが少し気を抜いたことにより、首筋の呪印からの影響で苦悶の表情を浮かべる。

 

 白たちはアンコへと素早く近づき、状態を確認した。その時に首筋の呪印を暗部の者は見た。

 

「あの呪印が浮き上がって……お前まさか!!」

 

 アンコは暗部の言葉に頷くと、簡単に説明をし始めた。

 

「こうなったからには中忍試験は中止だ! お前は火影様の所へ連れて行く!」

「いえ……塔に行って……」

「何を言ってる!? 大蛇丸がこの里に来た時点で戒厳令が敷かれるんだぞ! お前も知ってるだろう!?」

「……とにかく詳しい話は塔でするから……。火影様も塔に呼んで……この試験は中止にできないのよ……」

「……理由があるんだな?」

「ええ」

 

 アンコは返事をするのもきつそうにし始めたところで、もう1人から指示があった。

 

「確かヒミトだよな? 医療忍術で痛みを和らげることはできないか?」

「まあ、できないことはありませんが……」

「ヒミトはこのままアンコを連れて塔へ。俺は火影様を呼んでくる」

「分かりました」

 

 そう言い終えると、暗部の者は火影の元へいくため即座に姿を消した。

 

「応急処置にすぎませんが、取り敢えず首筋の呪印とやらを抑えます」

「ええ……お願いするわ」

 

(封印術についてもう少し勉強しておくべきだったな)

 

 掌仙術の応用で、外からのチャクラを無理やり流し込み、呪印を抑えていく。これにより、アンコは多少表情を和らげたが、これは一時凌ぎにしかならない。移動するために白は、片手をアンコの首筋に当てたまま抱きかかえて塔へと急いだ。

 

「ちょっと! この恰好はどうにかならないの!?」

「黙っててください。治療しながら、しかも周囲に配慮しながらだと結構きついんですよ。しかも、自分の治療ではないから尚更です」

 

 この時の移動の恰好は、子供を抱きしめるような形になっていたため、アンコは抗議の言葉を発し赤面していた。白はそのようなことを考える余裕はなく、治療に加えて周囲への警戒……と神経をすり減らしながら移動していた。大蛇丸にいつ出会うかと思うと、油断できなかったためだ。

 

 塔が間近に迫ったところで、何者かが攻撃を仕掛けてきたのである。練度的には大したことのない攻撃だったが、この時の白は気が立っていた。そのため、塔で待機していた影分身に攻撃を指示したのは言うまでもない。

 

 塔へと到着してからは、アンコを担当者専用の部屋へと連れて行き、その部屋のソファーに休ませた。その際に治療をやめたため、アンコは顔を顰めるが、最初よりも大分マシになったのか、治療の続きを要求をすることはなかった。

 

「取り敢えず助かったわ」

「一応これが仕事ですから」

 

 アンコは首筋を押さえたまま、ソファーへともたれ掛けて休憩していたため、白は、現在の状況―――砂の国の忍者がこの塔に既にいることを説明していた。

 

「そう……もうこの試験を突破してくるなんて……将来有望ね」

 

 話をしている最中に、塔で待機していた試験官がノックもせずに慌てた様子で入ってきた。

 

「お待ちしていましたアンコさん! 至急ご報告申し上げたいことが!」

「……何なのよ?」

 

 ゆっくりと休もうとしたところで、部屋へと試験官が入ってきたことにより、アンコの機嫌はかなり悪くなっていた。先ほどよりも声のトーンが下がっていることからもよくわかる。

 

「これを見てください!」

「ビデオ?」

 

 試験官はビデオを部屋にある機器にセットすると、モニターの右上を指差す。

 

「いいですか!? ここ! 時間を見ていて下さい!」

 

 モニターに映されたそこには、我愛羅たちが映っていた。時間は16時9分。スタートから約1時間40分である。

 

「2次試験開始……1時間39分後の塔内の録画です! 砂の国の忍び3名が……2次試験突破しました!」

「…………」

「わずか97分……下忍でこのようなことができる者など、未だかつていなかった……。これは異常です!」

「……それで?」

 

 この時、アンコは既に白から報告を受けていたので、驚くこともなく氷点下のような眼差しで試験官を見ていた。しかし、試験官はそんな視線に気付かず、興奮したように話を続ける。

 

「過去に同じような試験はありましたが、最高記録を約4時間も塗り替えています! こいつら下忍レベルじゃないですよ!」

「……言いたいことはそれだけ?」

「えっ?」

 

 その瞬間に、それまできつそうにしていたのが嘘のようにアンコが動いた。そして、それは数秒の出来事だった。何かをやり終えたアンコは、再びソファーに腰を下ろしてもたれ掛かり、少し上がってしまった息を整える。

 

 やり終えた場所に残っていたのは……ボコボコにされた試験官だった……。

 

「ヒミト。もう一回ビデオを再生して頂戴」

「この人はいいんですか?」

「騒ぎ立てる馬鹿を粛清しただけよ。気にする必要はないわ」

 

 再度ビデオを巻き戻して映像を流すと、アンコはその映像を見て少し驚くと愉快そうに表情を緩める。

 

「もういいわ」

「何かありましたか?」

「あなたに聞いていたよりも、更に上をいっているみたいね、その子たち……特に瓢箪を背負った子」

「と言いますと?」

「傷一つない。……それどころか服にすら汚れ1つ見当たらない。入口からここまで直線距離にして約10km……。猛獣……毒虫……険しい道。それらをまるで何事もなかったように来ているということよ」

「そのような能力を持っているんでしょう(というか砂を纏ってるし、砂自体を操れるんだから、汚れが付くはずないって)」

 

 その後、アンコは火影が来るまで休むということで、白はボコボコにされた試験官を担いで部屋を出て行った。

 


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