白物語   作:ネコ

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41 本気?

 ネジとの約束であった休みの日。生憎天候は小雨であった。このような天候でもやるのだろうかと思いつつ、ネジならやりかねないと、着替えを準備し日向家へと向かった。

 

 分家側の屋敷の前に到着すると、門前でネジが待っていた。

 

「来ないかと思ったが、来てくれて何よりだ」

「小雨とはいえ、この中で本当にやるの?」

「条件はどちらも一緒だ。それよりもさっさと始めよう。この時を待ってたんだ」

「待つほどのこともないと思うけどね」

 

 ネジと共に庭の方へと向かい、縁側に荷物を置いて、いつも組み手を行っている場所にて双方定位置に立つ。

 

「本気で来ないとすぐに終わるからな」

「本気でいっていいんだね?」

「もちろんだ」

「―――水遁・霧隠れの術―――」

 

 ネジが言葉を言い終えると共に、後方へと飛びながら術を使用する。小雨の影響により、すぐさま辺りは霧により視界が塞がっていった。

 

「白眼の前では無駄だ!」

「一瞬で終わらせるよ!」

 

(秘術・魔鏡氷晶)

 

 霧の中、ネジから一定距離を置いて魔鏡氷晶を配置する。ネジは完全に受けて立つつもりのようで、その場から動かず、迎撃する気のようだ。これは好都合と、左手にて印を結び、高速移動と共にネジの身体へと拳を叩き込んでいく。

 

「がはっ!?」

 

 ネジは移動しようとするが、白はその場から逃がすつもりはなく。連続にて攻撃を叩き込んでいき、ネジが倒れたところで術を解除した。

 

(霧隠れの術で氷遁の存在は隠せたはずだし、ネジにはただの高速体術に見えたはず。一応これが今の俺の本気なんだし、本望でしょ)

 

「ネジ立てる?」

「な……なんとか……な……」

 

 よろよろと立ち上がるネジに肩を貸して、縁側へと運ぶ。ネジは身体にかなりの痛みが走るのか、縁側に着くなり横になってしまった。しばらく休んだ後にネジは落ち着いたのか、先ほどのことについて聞いてきた。

 

「さっきの……あれはなんだ?」

「本気でいくって言ったじゃないか。ネジに拳を叩き込んだせいで、こっちも被害甚大。身体が出来上がってないのに、高速移動時に攻撃は厳しいね(今後は忍具で攻撃するようにしよう)」

 

 そう言って、ネジへと右手首を見せる。高速移動に伴う攻撃は、自分の肉体で攻撃するにはリスクが高すぎた。拳を叩き込むたびに、手首への違和感が徐々に大きくなり、終わった後に確認すると青黒く腫れていたのである。

 

「無理をしすぎだ」

「いやいや。本気出せっていったのはそっちでしょ?」

「病院には付き添う」

「この程度で行くつもりは無いよ(自分で治すから)」

「しかしだな」

「自分の方を心配した方がよくない? 手応え的にかなりのものだと思うけど?」

「ああ。流石にここまでとは思ってなかったからな」

「ネジが病院に行って来たら?」

「これくらいなら問題ない」

「それこそ、こっちだって問題ないよ。取り敢えず着替えてから帰るよ。午後から行きたいところもあるからね」

「ああ。しかし、ここまで差があるとは思わなかった……。まさか何もできないままやられるなんてな……」

 

 ネジは、ここまでの差があるとは思っていなかったのか、身体の痛みもあって、顔をしかめたままだった。

 

「純粋に体術だけなら負けてたかもね」

「瞬身の術か、なにかだろう?見極められると思ったが、俺もまだまだ未熟だということだな」

「まあ、体術も極めたら凄いと言うことで……。それじゃあ着替えてくるよ」

「俺は、しばらくここで休んでいく。帰る時にでも寄ってくれ」

 

 呼吸などは落ち着いたいるようだが、未だに身体は痛みで動かないようで、ネジはその場に留まることにしたようだ。ただ、着替え終えてネジのところへ行っても、未だに横たわったままだったため、ネジを病院へと無理やり連れて行き、その後、ヤマトに手配してもらった医療忍者の元へと向かった。

 

 その医療忍者は、病院ではなく、医療に関する研究所の方に配属された人だった。医療忍者に会う前に、右手首の状態を治しておく。

 

「お忙しいところすいませんが、よろしくお願いします」

「構いませんよ。準備は出来ていますので、こちらへ」

 

 紹介された医療忍者は、白一色の服を着ており、頭にまで髪が垂れ下がらないようにするためだろうが、髪全体を覆うような帽子を被っていた。その医療忍者について行き、案内された部屋へと入ると、部屋の中央に台座があり、その上に巻物が置かれていた。その巻物の上に、医療忍者が魚を乗せる。

 

「適性はあるということでお聞きしてますが、一応こちらとしても確認したいので、見せていただきます」

「分かりました」

「方法は簡単で、その巻物の手と書かれている部分に、両手を一度置き、その後両手にチャクラを集中させて中央に置かれている魚に重ね、魚の細胞を活性化させて、新鮮な状態までにもっていくことです」

 

 これについては、今までのやり方と違うために、始めは少々手間取ったが、無事に魚を新鮮な状態まで持っていくことが出来た。

 

「素質は申し分ないようです。では、他のことを覚えて行ってもらいましょう。ここは医療に関する研究所なので、技術を学ぶには良いところですからね」

「私に貴重な時間を割いてもらってもいいのですか?」

「医療忍者を育てると言うことは、里にとってとても有益なのです。特に素質があるものであれば、手を貸すのは当然と言えますよ」

 

 次に向かったのは、医療に関する知識が積まれた書庫だった。

 

「ここで、肉体に関する知識と、医療に関する知識を学んでもらいます。ただ、すいませんがここからは、自分で学んでいただいて、分からない場所があれば、まとめて聞きに来るようにしてください。私は隣の部屋にていますので」

「分かりました」

 

 医療忍者は、そう言うと部屋を後にした。白は、まずどのような本があるかを見ていく。

 

(こちらは未だに研究中のものか……。んでこっちが既に完成したものと……。まずは完成したものから見ていきますかね)

 

 自身のチャクラを使用したチャクラメスや、毒の抜き方などが書かれてはいた。チャクラメスに関しては試すことが出来たのだが、毒の抜き方については、どうしようもないので、やり方のみを覚えておく。肉体欠損による修復術も載ってはいたが、大規模な術式な上に大量のチャクラと時間が必要になっていた為、早々に諦めることとした。

 

(取り敢えず、今は自分だけで出来ることを覚えて行こう)

 

 肉体の構造については、書店にて置いてあった本の中身とそれほど変わることが無く、変わっていたことと言えば、チャクラが密接に絡みついているというものだった。そのチャクラの神経についても、人によって場所が少し違うので、参考程度にしかならなかった。

 

 そのようにして、平日の昼間はアカデミー。夜間はヤマトとの訓練。休みの日には研究所へ行き、医療忍術と目まぐるしく活動を行っていた。今のところ、任務についての同伴の要請がないので救いとも言えるが、一楽については、手鏡や片手に魔鏡水晶を持っておくという行為が手間であったので、メガネを掛けて、片方のレンズを他が見えるようにしている。

 

 これにより、片目の視覚は制限されるが、元々気配察知は得意なので、通常生活にてそれほど困ることは無い。あるとすれば戦闘の際に、後手に回る可能性があるくらいだろう。

 

 月日は経ち、アカデミー3年最後の試験を行うことになった。今回も変化の術と言うことで、火影に変化するというものだった。以前は先生という目の前の人物に変化すればあ良かったが、今回はその人物が居ないので、難易度的には上がっているだろう。

 

 この中で有利そうなのは、ダントツでナルトであると言ってもいい。定期的にナルトの様子を見るために、火影自らがナルトに会いに来ているため、見る機会がかなり多いはずだ。

 

 イルカは一枚の写真を見せて、「後は各自のイメージを基に変化すること」と言って、名簿順に試験をしていく。大体の生徒は以前と違い、それなりに火影に似ている。そのような中、ナルトだけは何度変化しても似ていなかった。後姿だけならば似ていると言えないこともないが、真正面から見ると、明らかに偽物であると分かってしまう。

 

 ナルトも以前と比べれば、遥かに上達しているのは分かるのだが、如何せんわざとやっているのではないかと思わせる変化に、イルカはもう一度やってみるように言ったが、結局結果が変わることは無かった。おそらくは、また成績が一番下となることは間違いないだろう。

 

 

 

 アカデミーも4年に進級し、授業内容もそれ相応なものとなってきた。今まではアカデミー内での授業がほとんどだったが、アカデミーから少し遠方にて行うことが増えてきたのである。

 

 内容としては、場所の把握をするためだと思われるが、演習場内にいる先生たちを探すというものだった。最初はただ立って待っているだけだったのだが、それが段々と難易度を増していき、今では隠れている先生たちを見つけ出すところまできている。

 

 なので、机上よりも実習がメインとなることが増えたのは間違いない。これからは更に、実践メインの授業が増えていくことだろう。

 

 夜間の鍛錬についても、ビシバシやると言われただけに、忍術メインではあるが水遁系をメイン、風遁をサブと言った形で攻撃用の術式を習っていた。攻撃系の術式に関しては、さすがに自身のチャクラだけでは、威力が相手に届く頃には弱いものとなってしまうために、ヤマトの術で水を周囲に作ってもらい、そこで訓練を行っている。

 

「それなりに形にはなってきたようだね」

「威力と精度がまだまだですけどね」

「確かに水龍弾は威力が、水龍鞭については精度が足りない」

「ですよね」

「ただ、この術は上忍レベルだから、今の時点で使えるだけでも大したものだよ」

「そうですか? 水が無いと使えない上に、使いこなせていない時点で、駄目だと思ってるんですけど」

 

 白としては、水の無い場所でも使えるレベルにまでもっていきたいので、結果的に不満なのだが、ヤマトとしてはこの段階でも十分のようで、今の成果に満足しているようだ。風遁についても攻撃系を1つ覚えたのだが、これについては威力はともかく、便利であるため結構な頻度で使用している。氷遁については、ばれないように使用しているため、あまり進展は無い。敢えて言うなら、剣や千本を作れるようになったくらいだろう。

 

「卑屈になることはないさ。それにしても、物覚えがよくて助かるよ。僕が任務の時にもサボっている様子は無いし、医療忍術に関しても、手が掛からないと聞いているからね。この調子なら、近々任務に同行させてもいいかもしれない」

「出来るだけ安全な任務でお願いしますよ」

「流石に最初から、そんなにきついものは無いとは思うけど、こればっかりはわからないな」

 

 暗部の任務は突発的なものが多いため、ヤマトが度々任務にて夜間の訓練が無い時はあるが、その時は霧隠れの術を使用し、水分身相手に鍛錬を行っていた。再不斬にサイレントキリングのやり方を教わろうにも、連絡がつかないので、独自に真似てやっているのが現状である。

 

 今のところ、ヤマトの木分身2体までなら、同時に相手取り、勝てるレベルになっていることから、強くなっている実感はあったが、ヤマト本体の実力はかなりのもので、木遁を使われると簡単に負けてしまうレベルである。なので、任務に関しての同伴については、安全なものであることの方がいいに決まってはいるが、ある程度の危険であっても、安心感があるのは確かだった。

 

(いざとなったら、秘術を駆使して逃げる!)

 

 今では片手印だけで氷遁秘術を発動出来、その範囲も知覚できる場所まで移動出来るだけに、瞬身の術よりも遥かに早いうえに使い勝手がいい。問題はチャクラの消費量が多いことだが、以前の使用してすぐに倒れてしまった時と比べて、チャクラ量も上がっており、連続で使用しても問題は無かった。

 

「任務と言うのはどこまで行くことになるんですか?」

「そうだね。里内での調査だったり、他国への追い忍の追跡だったり色々かな」

「やっぱり他国もあるんですか……」

「それは当然だね。特に同盟を結んでいる里との、極秘のやり取りなんかある時はよく駆り出されるよ」

「現状水分身でバイトしてるんですが、流石に他国となると維持できません。どうしたらいいですかね?」

「任務がどのくらいの期間続くか分からないから、その間休むか、もしくは辞めるしかないだろうね」

「やっぱりそうなりますか……」

「取り敢えず、今日はここまでにしよう」

「はい。それではお先に帰ります」

 

 本日分の訓練を終えて、アパートへと戻った。一楽については、恩もあるし、情報収集の場にも役立っているので、辞めるという選択肢はない。しかし、水分身の最大範囲が里内であることから、他国に出た時点で、水分身は勝手に消えてしまう。事情を正直に一楽のおやじに話すわけにもいかず、どうしようかと模索するのだった。

 


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