白物語   作:ネコ

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4 チャクラ?

「まずは、チャクラを感じることから始めるか」

 

 再不斬は何事も無いかのように言い始めた。

 

「その取っ掛かりが全く分かりません」

「日常的に使っているだろうが。と言うか、なぜチャクラ切れを起こさないのか不思議なんだが……。まあいい、まずはそのチャクラを止めてみろ」

 

 白が、チャクラの存在をよく分かっていないと言っているにも関わらず、再不斬はチャクラを止めろと言ってきた。白としては説明不足もいいところだろう。

 

「チャクラを止めてみろと言われても、止め方が分かりませんので、まずは説明をお願いします」

「チャクラって言うのは、精神と肉体それぞれのエネルギーを練り上げることで生まれる。見た感じ、お前の場合は練り上げたチャクラで、身体を強化してるみたいだな」

 

 よく考えると、説明を受けたとしても、認識できないことに白は気付き言い直した。

 

「すいません。専門用語を使われて説明されても、やっぱり分からないんで、実技指導でお願いします(言葉で色々言われても覚えられる自信ないし、理解できない……)」

「そうだな。まずは、その手足の痣を消すことから始めるか」

 

(医療忍術ってかなりレベルが高かったような? 痣くらいならそこまででもないのかな?)

 

 再不斬のいきなりの提案に驚くも、現状で既にチャクラを使用しているのであれば、それをコントロールするのにはいいのだろう。

 白は身体の痣を見回してみる。

 全身といっていいほどに痣はあった。

 

「痣は一杯あるんだ。どれでもいいから、まずは患部に手を当ててみろ」

「当てました」

 

 指示された通りに、手を足にある痣を適当に選び、当てて再不斬を見上げる。

 

「その当てている手に目を閉じて集中してみろ。他のことは一切考えるな」

 

 再不斬に言われた通りに、目を閉じ意識を手と足の接触している箇所へと集中する。この時に、手から足へと何かが僅かずつだが循環しているのが分かった。

 

 今度はその循環している流れを、自分の思い通りに出来るか試してみると、止めることも増やすことも出来たのである。

 

(これがチャクラなのかな?)

 

 目を開けて、この流れを忘れない内に繰り返していく。目を開けていた為か、流れを早くすることで痣が治っていくのが分かった。薄らとだが、手を当てているあたりが光っているように見える。しかし、その行為を続けるに伴い、身体に疲労感のようなものが溜まっていく。

 

「出来たみたいだな」

「はい。この身体の中の流れみたいなのがチャクラですか?」

「そうだ。本来は練り上げないといけないが、お前は無意識でやってるみたいだな。当分はいいが、意識して出来るようにもなっておけ」

「わかりました。ただ、結構疲れますね」

 

 チャクラと思わしきものが、身体の中を巡るのに合わせて、疲労も溜まっていく。それは、いつもの仕事よりも疲れるものだった。

 

「最初はそんなものだ。それを身体中自在に動かせるようになれば、次を教えてやる」

「えーっと。いまでも自在に動かせますけど?」

「…………」

 

 実際に最初の取っ掛かりが分かれば後は楽だった。一度身体の中にあるチャクラを認識出来れば、それを自分の意思にて動かすということが、先ほどのことでコツを掴んだため、いまでは簡単に出来る。それを伝えたのだが―――

 

「わかった。次はチャクラの量のコントロールだ。さっきみたいな力業ではなくな。痣だったから治ったみたいだが、これが切り傷や毒などの場合はかなり違ってくる。より精密なコントロールが必要な訳だ。一通り怪我が治ったら次を教えてやるよ。取り敢えずは……また明日来てやる」

「ありがとうございます。あっ! 飯を食べていきませんか? 弁当ですけど」

「飯はいらないが、そこに転がってる酒を貰っていこうか」

「どうぞどうぞ。処分に困ってたので、全部持っていってください」

 

 再不斬は、酒瓶を幾つか持つと、小屋を出ていった。

 

(さて、チャクラについては分かった。後はこれの修行方法だけど、確か木登りだったっけ? この小屋の壁でやってみるか)

 

 寝転んだ姿勢で足を壁につき、足の裏にチャクラを集中させていく。

 

(壁にチャクラを吸着ってどうするんだ? 認識の問題なのかな?)

 

 足の裏へと集めたチャクラを、壁に吸い付けるようにすると、壁からミキミキと音が鳴り始めた。

 

(これはチャクラが多すぎたか……)

 

 チャクラを減らしていき、音が鳴らなくなった時点で、足の裏が壁に吸い付いているのを確認し、登ろうとしたが、今度は身体がついてこなかった。

 

(筋力が無さすぎる。チャクラ無かったらほんとに非力なんだな……)

 

 今度は、身体の方にもチャクラを巡らせて、先程と同じくらいのチャクラを足の裏へと持っていく。そして、一歩ずつゆっくりと壁を登っていった。

 

(取り敢えず成功っと。流石に白の身体なだけのことはある。後は身体を鍛えて、忍術覚えてやることは一杯だけど、なんとかなるかな?)

 

 楽天的に考えながら、壁を移動する訓練をしてから寝るのだった。

 

 

 

 次の日も、同じように仕事から帰ると再不斬が待っていた。

 

(この人いま仕事何してるんだろう? 上忍レベルだとは思うんだけど、暗部だったかな?)

 

 再不斬の、霧隠れの里での仕事内容までは覚えていない。少し考えていたが、再不斬の一言でそんな考えはすぐに消え去った。

 

「早速始めるぞ」

「お願いします」

「ついてこい」

 

 そう言うと、再不斬は小屋を出ていったので、白も荷物を置き慌てて追いかける。

 

 再不斬が向かった先は小屋の裏手であった。そこには以前、林があったはずだが、木々が一部なくなっており、少し広めの池が佇んでいた。

 

 再不斬は、その池の上を平然と歩いて池の中央までいくと、こちらを振り返った。

 

「ここまでこい」

「(なんの説明もなしとかスパルタだなあ)分かりました」

 

 昨日の壁歩きの要領で、片足だけを水に浸けてチャクラを調節していく。

 

(今度は放出するような感じにすればいいのかな?)

 

 どうも、単純に放出するだけでは駄目なようで、浮くと言う感覚はなく、水を盛大に弾いてしまっていた。

 

(ん~……チャクラの密度を上げすぎかな? もっと必要な分だけを、水に対して放出する感じでと……)

 

 今度は、水を弾くこともなく片足を乗せることが出来た。それに伴い、もう片足を水の上に乗せようとしたところで、いきなり水が波打つ。

 

 いきなりの波に対して、慌てたことにより、バランスを崩し池に浸かるはめになってしまった。

 

「警告なしはあんまりだと思うんですが?」

「いつも、水面が荒れてないと思うな」

 

 再不斬は、当たり前のことを言わせるなと言わんばかりに言い切る。

 言っていることは正論だが、わざわざ波を立てることに対しては反感を覚えてしまう。

 

「それは、初心者に厳しくないですか?」

「俺が帰ったあと壁を歩いていたやつが何を言う」

 

 どうやら、昨日のことは既にばれていたようだった。特に隠すつもりは無かったので、どうでもよかったが、覗かれていたことにはかわりない。

 

「覗きは犯罪じゃないですか?」

「忍びはそんなもんだ」

 

 それを言われると、なぜか納得できてしまう。この世界では特に……。

 取り敢えず、不承不承納得せざるをえないのをおいておく。

 

「早くここまでこい」

「釈然としないなあ」

 

 そう言いつつも、もう一度池から上がり、今度は水面に注意しつつ歩いていく。

 

(これだと、一度でもコツさえ掴めば、大抵のことが出来そうだな)

 

 多少水面を揺らしながら、再不斬の元へと辿り着くことができた。

 

「今日はこの水面を走れるくらいにはなっておけ」

「はい」

 

 そう言うと、再不斬は今日の訓練は終わりとばかりに帰っていった。

 

(よくわからない人だな)

 

 この後すぐに走れるようになってしまったため、逆立ちでやってみたり、水面に寝てみたりと色々試し、最終的に、走っても波紋のみで、音をたてずに動くことが出来た。白はそのことに満足してから小屋に戻っていく。

 

 それを再不斬が見ていることも知らずに……。

 


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