白物語   作:ネコ

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37 先生?

 時が過ぎるのは早く、いまはアカデミーでの生活も3年目に入った。

 

 2年生での最後の試験は変化の術だったが、一応みんな自分以外に変化することが出来た。誰でもいいと言われ、最初の子が先生に変化すると、みんな揃って先生に変化し始めたのだが、まだチャクラの練り方とイメージが出来上がっていないのだろう、痩せすぎていたり、太りすぎていたり、顔の形が違ったりとまともに変化の術が出来たのは半数にも満たなかった。

 

 そんな中、先生とは違う人に変化したのは、サスケとナルトくらいだ。

 

 サスケはイタチに変化し、ナルトは女性に変化して驚かそうと思ったのだろうが、変化しきれていない。一応ナルトには見えないので、変化の術としては成功?なのだろうが、みんなから大爆笑をうけていた。

 

 その中で我慢できなかったのか、その後すぐにナルトはどこかへ走り去ってしまった。さすがに顔や体の形がアンバランスではあったが、自分が失敗したことを棚に上げて笑っているやつらは、一体なんなのだろうかと思ってしまう。

 

 後でわかったが、あの後に、街にいたずらに行ってしまったようだ。忍者アカデミーに苦情が入ったことで、先生が苦い顔をしていたのを覚えている。そのせいかもしれないが、先生も我慢できなかったのだろう、3年になってすぐに先生の交代があった。

 

「新しくこのクラスを受け持つことになった。うみのイルカと言う。これからよろしくな」

 

 その後に、今までの自分の経歴を軽く説明していた。中忍試験に合格してそんなに年数が経っていないとのことだ。忍びが自分の事を、簡単とはいえ、情報として与えるのはどうなのかと思ってしまう。

 

 その後に、生徒の名前を1人ずつ呼んで返事をさせて、顔と名前を確認すると授業を始めてしまった。名簿帳を見ながら名前を呼んでいたので、そこに生徒のプロフィール的なものが載っているのだろう。もしかしたら、前任者の先生からも聞いているのかもしれない。そのためか自己紹介を再度せずに済んでいた。

 

 授業のやり方は、前の先生と同じで変わりは無く、ナルトがいる間は、こちらへと近付いて来なかった。未だにナルト防波堤は健在である。

 

 3年目になったからなのか、定期的な試験が増えてきた。別段試験の成績が進級に影響するわけでは無い。しかし、アカデミーを卒業する時の最終試験だけが、卒業出来るかどうかに影響するとのことだった。ただし、それまでの試験は卒業後に反映されるので、覚えておくようにと言われた。

 

(スリーマンセルの振り分けだろうけど、今40人だから1人余るな……。どこかがフォーマンセルになるのかな?)

 

 白は、今のところの成績表を見る限りでは、全て40人中5位以内には入っている。通常であれば、スリーマンセルチームのトップとして振り分けはれるはずだが、イレギュラーな存在であるため、どうなるかは分からない。

 

「君たちの実技の実力を知りたいと思うので、第2演習場に出てくれ」

 

 座学をひと通り終えた頃、次は実技に入った。机上ばかりだったせいか、ほとんど生徒は外に出ることを喜んでいる。特に気合いが入っていたのは、言うまでもなくナルトだ。

 

 第2演習場と大げさに言ってはいるが、ただの手裏剣などの投擲場のことであり、それほど広い場所ではない。端的に言うと校舎横の庭である。そこに丸太の的などが置いてあるだけだった。

 

「基本忍術である分身の術からやってもらうかな。見本として、そうだな……サスケやってもらえないか?」

 

 イルカに言われたサスケは、不機嫌そうな態度を表していたが、明らかに喜んでいるのが分かる。自分の力を見せつけることが出来るので嬉しいのだろう。

 

 サスケが分身の術を使用し、3人になったところで、ナルトが目立とうと大声を出して、勝手に分身の術を行った。

 

「それくらい、俺にも出来るってばよ! 分身の術!」

 

 出来た分身の術は、1人である上に、なぜか倒れこんでいる。分身の術としては失敗なのだが、相手の意表を突くにはいいかもしれない。周りのみんなからは、その光景に笑い声と文句(サスケ君に敵うわけがない、身の程を知った方がいいなど)の言葉の嵐を受けている。

 

 それにナルトは耐え切れなくなったのか、サスケに勝負を挑み、分身に突撃して勝手に自爆していた。

 

(分身は実体がないんだから、肉眼でも地面の状態を見れば分かるだろうに……。ナルト哀れだな。今度、一楽に来た時にはスープ増量でもしてやるか)

 

 イルカは、特に止めることもなく、ナルトをそのまま放置して、次に手裏剣術など他の物へと移っていく。それを悉くサスケに見本をやらせる辺り、ナルトを挑発しているのではないかと勘繰ってしまう。確かに、サスケの成績は一番だが、見本を全て生徒1人にやらせるのは、先生としてどうかと疑問に思わせる。

 

 ひと通り終えて、約1名―――ナルトだけがボロボロになってはいたが、イルカは特に気にした様子もなく、みんなを引き連れて教室へと戻っていく。ヒナタだけは、かなり気にしていたようだが、声を掛けるようなそこまでの積極性が無いため、みんなと一緒に移動しながら、一番後ろにいるナルトをチラチラと見ていた。

 

「そこまで気になるなら。医療室に連れて行ってあげればいいと思うけど?」

「でも……。迷惑じゃないかな?」

「あれくらいすぐに治ると思うよ。まあ、あそこまで失敗して変に気遣われると、逆に惨めに思うかもしれないけど」

「……やっぱり迷惑なんだ」

「どう思うかは相手次第だから、絶対とは言えないけどね」

「うん」

 

 結局は流されるままに教室へと戻り、授業を再開した。

 

 そして次の日。授業が始まってもナルトの姿は無かった。いつもであれば、アカデミーに出てきてから、どこかにイタズラに行くのだが、今日は朝から居ない。

 

「白。ナルトが居ないようだが何か知っているか?」

「なぜ、僕に聞くのですか?」

「席も近いし、知っていそうだからなんだが……」

「予想でしたら答えられますが、どこにいるかまでは知りません」

「予想ではなにをしてるんだ?」

「ペンキを持って、街でイタズラでもしてるのではないでしょうか?」

 

 実際に、朝から街中をペンキを片手に、落書きしまくっているナルトを、情報収集役の水分身にて確認している。恐らく、また忍者アカデミーに苦情が入るだろう。白の言葉を聞いて、少し考えると、イルカ先生はすぐさま行動に移した。

 

「戻ってくるまで自習とする! 各自教科書を読んでおくように!」

 

 そう言ってイルカ先生は、教室を出て行ってしまった。教室内からは「やったー」だの「さすが白!」だのとお祭り騒ぎだ。これまでの傾向からイタズラをしているのは目に見えているが、病気などで休んでいるという可能性は、考慮しないのだろうかと思ってしまう。

 

 結局その日にナルトと先生が戻ってくることは無く、代わりの先生が途中から授業を行った。

 

 それから数日経った頃。イルカ先生のナルトに対する扱いが完全に変わっていた。以前であれば、教室にて居眠りやいたずらをしても、無視したり、「あいつはいいんだ」と言っていたのに、今では態々怒りに近付いて来るのである。ナルト防波堤が決壊してしまったので、これでは満足に勉強や鍛錬、顔覚えに集中できていない。

 

 イルカとナルトの2人で、一楽に来るようになったことを考えると、何かしらのイベントがあったのだろう。1ヶ月も掛からないうちに、こうまで変わるとは考えられなかった。しかし、これでナルトの精神は多少マシになるだろう。一楽のオヤジも嬉しそうにして、2人のチャーシューの量を増やしていた。

 

 ナルトも、内容に関してはあまり変わらないイタズラはするのだが、その回数は以前と比べるとかなり減っているように思える。特に屋外にて行う授業に関しては参加率が高い。机上で黙って聞いているよりも身体を動かす方がいいのだろう。

 

(机上の授業が一番いいんだけど、くノ一の授業よりマシか……。男女合同で行う屋外授業の方が気が楽だし)

 

 本日の授業内容は忍び組み手だった。円の中にて組み手を行うもので、始めに対立の印、そして組み手が終われば和解の印を行うというものだ。

 

 始めに呼ばれたのはサスケだった。ここまでは良かったのだが、次の言葉で固まってしまう。

 

「サスケの相手は白だ。2人は円に入るように」

「えっ?」

 

 周囲の女子生徒からは羨ましがられたが、こちらとしては大迷惑である。溜息が出そうになるが、指示されたからには仕方がないと、円の方へと向かっていると、ナルトが割り込んできた。

 

「こいつの相手は俺がやるってばよ!」

「あのなナルト。そう何度も我が儘は聞いてられないんだ。今回は体術の成績順だ。男子と女子同士で行うことにもなる。だからナルトを呼ぶのはまだまだ先だ」

 

 イルカ先生の言った内容を聞いて、この組み合わせになったことが分かった。勉強に関してはある程度手を抜いていたが、体術に関しては、周りへの牽制と言う意味を含めて、生徒に対して負けたことは無い。ただし、サスケや一部の男子とはやったことが無いので、この辺りで調整をしておいた方がいいかもしれないと思考を切り替える。

 

(こんなところで裏目に出るとは思わなかったけど、良い機会だし分からないように負けよう)

 

 あまり気にして見ていなかったので、サスケがどのくらいのレベルなのかが不明だったが、それほど強くないと分かる。はっきり自分以下であると分かるだけに、逆にどのくらいの手加減をしていいかが分からないくらいだ。

 

(まずは様子見かな)

 

 ナルトをイルカ先生が、円の外に出して控えさせ、代わりに白が円の中へと入る。

 

「では対立の印をしてから始めること」

 

 その言葉で両者対立の印を結んだ瞬間にサスケが動き出した。サスケは様子見などせずに、一気に終わらせるつもりのようだ。なんの捻りもなく、真っ直ぐに走ってきた。顔への突きをフェイントに、足を払うつもりのようだったので、それに便乗して足を払われてから受け身を取り、その受け身の移動で、さり気無く円の外へと出てから立ち上がる。

 

「円の外に出たのでそこまで!2人とも和解の印を」

 

 白は円の方へと戻りサスケと和解の印をした。女子生徒からの声が非常にうるさいことになっている。

 

「お前なかなかやるな」

「いえ。サスケ君が早くて対応できませんでした」

 

 サスケの中では、足を払った時点で終わりだと思っていたのだろう。それが、受け身を取ってすぐさま立ち上がったのだから、それなりに体術ができると思われたに違いない。

 

 それからは次にヒナタが呼ばれた。あれだけ鍛錬をしているので、クラスの生徒に負けることはないだろう。現状でヒナタに勝てるのは、体術であればサスケくらいではないだろうか。

 

 そんなことを考えながら、女子生徒たちの方へと戻ると、女子生徒に囲まれてしまった。

 

「まずは私と和解の印をしてもらうから!」

「一体何の話?」

 

 イノが囲んだなかから一歩前に出ると、堂々と腕を組み仁王立ちして宣言してきた。

 

「何ってサスケ君と和解の印を結んだでしょ! 独り占めしようなんてずるいわよ! 早く手を出しなさい! 次の3番手は、私が呼ばれるはずなんだから!」

 

 そんな話をしているうちに、ヒナタの忍び組み手は終わったようで、イノがイルカに呼ばれていた。

 

「ほら早く!」

 

 イノに無理やり右手を掴まれ、和解の印を結ばされた。和解の印を結んだイノは、上機嫌になったようで、忍び組み手をするべく円の方へと向かって行く。

 

 その後は順番に、女子生徒のほとんどと和解の印を結んでいくと言う作業に追われてしまい、まともに忍び組み手を見ていない。中にはなかなか手を離さない子もおり、次の子に文句を言われていた。

 

 こんなことは懲り懲りだと、女子生徒たちから少し離れた位置にて、ヒナタと忍び組み手を見ていると、ヒナタから声を掛けてきた。

 

「大変だったね」

「全くだよ」

「でもなんでわざと負けたりしたの?」

「そこで勝ったらどうなったと思う?」

「えっと……。どうなるの?」

「まずサスケ君のことを好きな女の子がいっぱいいるよね?」

「うん」

「もしあの場で勝ってたら、さっき以上に大変なことになりそうだったからだよ(女子だけじゃなくサスケにまで目を付けられるからなんだけどね)」

「?」

 

 ヒナタには言いたいことが伝わらなかったようで、首を傾げている。白は、詳細に説明するのが面倒になり、簡単にまとめることにした。

 

「世の中を上手く渡るには、時に負けることも必要ってだけの話」

「白は色々考えてるんだね」

「まあね」

 

 そんなことで、概ね平和な日々が過ぎていたが、それから数か月後事件は起こった。

 




ちょっとしたまとめ

白が現在使える忍術(記載時に名称変更の可能性有)
氷遁系:魔鏡氷晶、氷柱壁、@2つくらい思案中
水遁系:霧隠れの術、水分身の術、鉄砲玉、水陣壁
風遁系:大突破、烈風掌、@2つくらい思案中
医療系:掌仙術
その他:瞬身の術、隠遁の術、分身などの基本忍術

体術は中忍レベル、忍術は覚えていく方向(千殺水翔はわざと外してます)
鍛錬は覚えている忍術の改良と印スピード重視
勉強は薬学など医療と生存確率を上げるための忍術重視

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