白物語   作:ネコ

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29 外出?

 気分転換を終えた白は、午後からすぐに屋敷の外へと出た。

 

 屋敷の門から出たそこには、大きな通りが横たわっており、近くに大きな建物などは無いが、街の一部と言っていいほどの場所だった。本で見た地図からは、もっと街から離れた場所にあると思い込んでいただけに、その光景を見て白は足を止めてしまっていた。

 

(昔の地図なんて参考にするもんじゃないな)

 

 止めていた足を再度動かし、火影岩の方面へと向かって歩きながら考えていた。参考にしていた地図では、日向家の屋敷は木の葉の里の外側にあったはずだが、そこからかなり発展したのだろう。明らかに里の外側付近とは言い難い。

 

 ひとまず、道行く人に本屋を尋ね、木の葉の里内の地図と他に複数冊の本を購入した。地図については、さすがに個人の家の名前まで記載されてはいなかったが、店などの名前は大体記載されていたるようだ。大体というのは、何を基準としているか分からないが、記載されていない店が、本屋の目の前にあったからだ。

 

(店は経営次第で潰れたり、新しく出来たりするから対応が難しいのは仕方ないとして、さすがに病院の位置までは変わらないはず)

 

 地図を片手に、現在地と病院の位置を確認しながら向かっていたが、途中でそれに気付くことになった。

 

(お見舞いの品を買ってない……。病院のお見舞いといえば……)

 

 病室に着く前に気付けて良かったとは思うが、肝心の品物を何にするべきか迷っていた。歩行する速度も格段に落ちてしまう。何かいいものは無いかと、周りをキョロキョロと窺いながらあるいていた。そこで目に留まったのが花屋である。

 

 在り来たりな品物だが、無難であるし丁度良いと、白は花屋へと入っていった。

 

 店の中に入ると、さまざまな花が置かれており、入口に設置してある花からだと思われるものが微かに香ってきた。店内を見て回っていると、花の漂ってくる香りが変わっていく。花の匂いが混ざって、充満しているのではなく、それぞれの花の香りが分かるようになっていた。

 

 一通り回って見るも、どれが良いのか分からない。見た目で選ぶべきか、それとも良い香りの物にするべきか。どちらも白個人の好みであってヒナタの好みではない。それなりに長く一緒に居るが、好き嫌いについて知らないことに思い至った。

 

 更にどうするべきか悩んでいると、花屋のレジにて座っていた女の人に声を掛けられた。

 

「こんにちは。何を悩んでいるの?」

「こんにちは。お見舞いの花を何にしようか迷ってました」

「もし良ければこちらで選んであげるけど、どうかしら?」

「お願いします。こういったことには慣れてないので助かります」

「受け答えがしっかりできて偉いわね。うちの子にも見習わせたいわ。……お花だったわね。送る相手がどんな人かと、お金はどのくらいを考えているか教えてもらってもいいかしら?」

 

 送る相手と言われても、ヒナタの名前を出すわけにはいかず、その代わりに性格が内気であること等や、予算についてはそれほど気にしないでいい旨を伝えた。

 

「そうね、それだったら、この花だったらどうかしら?」

 

 女の店員が選ばれたのはアジサイだった。

 

「相手は女の子みたいだし、この時期ならこれでいいわね。あじさいの花言葉に元気な女性というものがあるから、よくなりますようにって言う意味も含まれてるから選んでみたわ。お気に召したかしら?」

「はい。それでお願いします(選ぶのが面倒だ)」

 

 花を見舞い用に包んでもらい、支払いを済ませて店を出た。ここまでくれば、木ノ葉病院まですぐそこのはずである。一応念のために忘れ物が無いかを確認する。

 

 木ノ葉病院は庭が広く、今までの病院のように、駐車場で敷地を使っていたりなどは無かった。受付にてヒナタの病室を確認して、見舞い用の帳簿に記帳してから、部屋の場所を教えてもらってから向かう。

 

 その部屋は真っ白な個室だった。音も立っておらず、誰も居ないと言われても信じてしまいそうなものだ。

 

 ベッドにて休んでいるヒナタへと近づくと、未だにヒナタはベッドにて寝ているようだった。しかし、身動きをしていないようだったので、少し慌てて駆けより、口に手をかざしてみる。息はしっかりしているし、診た限りでは外見的に異常はなさそうだ。服を脱がしてみないと確実なことは言えないが、おそらくは柔拳を受けた可能性が高い。それにより、内臓系にダメージが入り入院になったのだろうと推測している。

 

 近くに気配を感じたためだろう。ヒナタは目を覚ました。

 

「こんにちはヒナタ。入院したと聞いて心配したよ。怪我の具合はどう?」

「心配かけてごめんね。怪我については気にしないで、すぐに治ると思うから」

 

 起きたヒナタは、いつもより更に元気がなかった。白の方では、本日行った鍛錬の内容を聞いて推測を補完してしまいたかったのだが、先に言いたくないという、遠回しな拒絶の意思が含まれて、ヒナタが言っていることが分かり、確認のために聞こうとしていた内容を変えることにした。

 

「ヒナタはこの街に詳しい?」

「私もあまり出たことがないから、あまり分からないかな」

「そうか、そうだよね。僕と同じで屋敷から出たことないだろうし」

 

 ヒナタの返事を聞きながら、お見舞いに持ってきてあった花を病室に飾る。

 

「紫陽花?」

「元気になるようにだって。花屋の店員さんが教えてくれたよ。ここに飾っておくね」

「ありがとう。わざわざごめんね」

「いいよ。何か他に買ってきてほしいものはある? 午後は街中を見て回るつもりだから、欲しいものがあれば買ってくるけど?」

「ううん。気にしないで大丈夫だよ。数日で戻れるって聞いてるから、私の事は気にしないで」

「……わかった。それならこれを渡しておくよ」

 

 そう言って白がヒナタに手渡したものは、先ほどの本屋にて購入したノートと筆記用具だった。手渡されたヒナタは、どうすればいいのか分からないようだ。

 

「風景画でも描いてれば、時間なんて、あっという間に過ぎてしまうと思うよ。何に使うかはヒナタ次第だけどね」

「大事に使うね」

「無くなったらまた買えばいいよ」

「<友達からの初めてのプレゼントだし>」

「何か言った?」

「な、何でもないよ!」

 

 ヒナタは慌てているようだが、病室にて始めに会ったころよりも、元気になったように見える。その後に他愛ない話をして1時間ほどいたところで、病室を後にすることにした。

 

「また明日も来るから、今日のところは帰るね」

「うん。今日はありがとう」

 

 病室を後にして、再度街中の探索を開始する。屋敷へと戻る時間を考慮すれば残り2時間ほどしかない。その為、主要となる場所を本日は巡ることにした。始めにメイン通りを進み、どういった店があるのかを把握しつつ、火影の居る建物の近くまで向かう。そこまでたどり着いたところで、そこから里の出入口へ向けて違う道を通って行った。この辺りは、普通の店もあるにはあるが、店メインというよりも、どちらかというと宿屋がメインのようだ。

 

 里の出入り口付近には、前面と片側の側面の壁取り払われた小屋が建ててあり、そこに2人ほどが座っているのが見えた。額当てからして木の葉の忍だとは思うのだが、何をしているのかが分からない。興味本位で聞いてみることにした。

 

「こんにちは。ここで何をしてるんですか?」

「ん~。なんだガキか。こっちは忙しいんだからどっか違うところで遊んでろ」

「そこまで言うことないだろう。ごめんな。お兄ちゃんたちは、ここを通る人たちで、怪しい人が居ないか確認する仕事をしてるんだ。わかるかな?」

「あっははっはは!!! お兄ちゃんってガラかよ! これは他の奴に言わないとな! そうだ! お前が幼女を狙っていると付け加えといてやる!」

「おい! いきなり何言い始めてる! 全くの誤解だ! そんなことしてみろ! お前の秘密もばらしてやるからな!」

「俺に秘密なんてないね!」

「ほお。実は狙っている娘がいるというのを、俺が知っていたらどうするよ。」

「そんな……なぜ知ってる!?」

「カマ掛け成功!」

 

 この後も、何やら2人で盛り上がっていたようだったので放っておき、白は屋敷へと戻っていった。戻ってからは、購入した本を読み鍛錬を行う。アカデミーの内容の載っている本を購入しようとしたのだが、内容については、小学生レベルのものが多かったので、より専門的なことが載っている本の方を購入していた。

 

(明日は忍具類の購入と街の探索の続きで、ラーメン屋一楽を探してみるのもいいかも)

 

 現在滞っているのは医療系忍術と普通の忍術である。基礎的なことは書いてあるのだが、応用が書かれたものが今回寄った本屋には置いていなかった。もしかしたら本屋には置いてないのかもしれない。見つからない場合はあまり気は乗らないが、ある人に教えを乞うしかないだろう。ただし、その場合1人は後に危険に晒される可能性が高すぎる。もう1人は見返りを求められるかもしれないが、そのくらいは問題ないだろう。

 

 結局はここ数日の内次第なのだが……。

 

 忍術の書について見つけることが出来たのは、アカデミーの本に毛が生えた程度の、応用的なものしかなかった。聞いたところによると、下忍になった際に担当の上忍などから授かるものであり、それ以外だと家系に忍者が居れば教わることがあるというものだった。

 

 このままでは、忍術に関しては、いまある術の改良くらいしかあまり出来そうにない。改良が完成次第、教えを乞うしかないだろう。

 

 医療に関しては、薬師カブトを探すつもりだ。どこかの医者の息子と分かっているだけなので、調査が難しいかもしれない。こちらはリスクが高いが、それなりにメリットが大きいのも確かだった。この里で今いる最高の医療忍者であるはずなので、期待が大きい。その選択の前に、居る場所を見つけられればという、前提条件が付くのがあれだが。 

 

 数日後にヒナタが退院する日がやってきた。一緒に屋敷へと戻り、ヒナタの部屋に行った際見せてもらったのだが、渡したノートには風景画を描かずに、どうやら今までに持って行っていた花を、押し花としていたようだ。

 

 嬉しそうに出来上がりを見せてくれたので、「よく出来てるね」と言っては見たものの、このままでは枯れてしまうのではと思わずにいられなかった。

 

 入院前よりも元気になっていることは確かなので、余計なことは言わず、街中を巡ったことなどを色々と話してその日は終わった。

 

 時間はまだあるとは言え、医療に関しては、薬師カブトの件は諦めて、自分でやっていくしかないだろう。一通り街を探してみたが、見つけることが出来なかった。それ以前に、薬師という医者すら見つからなかったのでどうしようもない。

 

 人体に関する資料に関しては本屋にあったのでそちらで勉強していくしかないだろう。実践が出来ないので、どのくらい力量が上がっているかの把握が出来ないのが難点なところだ。

 

 忍術に関しては、今の忍術の改良がうまくいけばいいのだが、それが無くとも最低限の事は出来るだろうが、今は将来に備えて力を付けておかねばならない。そう思いながらその日は就寝した。

 


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