白物語   作:ネコ

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21 遭遇?

 街道での二人組の話を聞いた通りに、北方面へと突き進む。もちろん目立たぬように、街道をそのまま通ることはせずに、離れて並走している。このような速さで街道を進んでは、私を怪しんでくださいと言っているようなものだからだ。

 

(かなり北っていう話だけど、どのくらいか分からないのが問題だよなあ……)

 

 いくつか分岐路はあったが、こんなに近くはないだろうという思いで、通りすぎていた。

 

 波の国の大きさを考えると、火の国は遥かに大きく、気持ち的にはその中央付近にあるのでは?と思っていたりもするのが原因だ。

 

 二日ほど進んだところで、さすがに行きすぎたのではないかと思い直し、次の分岐路にて曲がることを決心した。

 

(もう曲がる! 見つけたら曲がる! 絶対曲がる!)

 

 そして、実際に分岐路があった。しかし、想像していたよりも道幅が狭く、長年使っているようには到底見えない。本当にこんなところを通るのだろうかと一瞬思うが、一応木の葉の隠れ里だし、と思い直し、分岐路を曲がって直進する。

 

 その結果、もののみごとに到着した―――

 

 

 

 行き止まりに……。

 

 

(ついてない……。と言うか始めから、怪しいと思った直感を信じるべきだった……)

 

 分岐地点から半日ほど費やして進んだにも関わらず、結果がこれである。精神的にキツいものがあったのは言うまでもない。ここまでの道のりが無駄だと分かってしまったのだから。

 

 実際には、行き止まりと言うよりも、より正確に言うならば、行き止まりではなく、獣道がある、というべきだろう。その獣道が奥の方へと続いているが、草木が生い茂っており、これは木の葉の里への入口では有り得ないだろうと分かってしまう。

 

 原作では、確かナルトたちは普通に道を歩いて、波の国へと向かっていたはずだ。こんな獣道を通るなど考えられなかった。

 

 変化の術を使用してはいるが、人とあまり関わらないようにと、あれから人との会話を避けて、情報収集を怠ったことが、いま完全に裏目に出てしまっていた。

 

(いまさら戻るのもなあ。既に夕方だし、ここで野宿でもするか? ……でも、道があったってことは、少なくとも昔?は誰かが通っていたってことであって、この奥に人が居る可能性もある訳で……)

 

 しばらくその場で立ちすくみ、どっちにすべきか悩んだが、結局結論が出なかった。

 

 夕暮れも近くなってきていたので……。

 

(迷った時の天頼み!)

 

 と、コイントスにて決めることにした。

 

(適当に平べったい石はーっと。あったあった。こちら側を少し削って、こっちが表でいいかな)

 

 懐からクナイを取り出し、平べったい石を削り始める。簡易なコイン変わりだが、お金がお札である以上、手元にコインがないので作るしかなかった。出来上がったコイン替わりの石を、右手で弾き上へと打ち上げる。

 

(表だったら進む。裏だったら戻る)

 

 コインが落ちていくまでの間が、コインに集中していたせいだろう、とても長く感じるくらいに見入ってしまっていた。そのため、周囲に対する警戒心が緩んでいたと言っても過言ではない。

 

 なので、気付いた時には、誰かが獣道の方からかなりの速さで、こちらの方へと来ていたのである。相手の気配が薄かったのもあるが、それによって、かなりの接近を許してしまっていた。更に言うならば、こちらへと真っ直ぐに相手が向かってきたこともあり、白はかなり焦っていた。そのため、波の国のようなこともあって、攻撃されると思い込んでしまい、先手必勝とばかりに先に攻撃をしてしまっていたのである。

 

(―――水遁・水乱波!―――)

 

 草むらから出てくると同時に相手へ向けて放つが、難なく躱される。

 

 この時点で、不意を突いたにも関わらず、簡単に術を躱されたことで、逆に冷静になれた。

 

 気付いた時には、かなり近くまで来ていたので、焦って攻撃してしまったが、先程の動きで、相手が自分よりも格上だと判断し、すぐに逃げの一手を打つために準備をする。

 

 相手の忍者は、避けた位置のまま立ち止まり、油断なくこちらと後方を警戒しているようだ。相手の忍者をよく観察すると、小脇に人を抱えているのが見える。

 

(人攫いか? 後方を気にしているということは、追手が来ている可能性が高いのかな? ……でも、これってこの忍者をこのまま素通りさせれば、こちらには被害はこないんじゃ? この人確実に自分より強いみたいだし。安全第一にしよう、そうしよう)

 

 少しの間、互いに睨みあうような形で牽制していたが、白は自分の右手にクナイを持ったままだということに気付き、懐に収めて話しかける。

 

「えーっと。さっきは驚いてこちらから攻撃してしまいましたが、どうやら間違いだったようです。どうぞお通り下さい」

 

 そう言って、少しずつ道を開けるようにして、道の端へと移動していく。

 

 忍者は、こちらの意図が分からないのだろう。少し困惑しているようだったが、何を思ったのか、何も言わずにいきなり右手にクナイを持ったかと思うと、こちらへと向かってきた。

 

 この時クナイを防げたのは、再不斬との鍛錬のおかげだろう。相手がこちらに向かった瞬間、懐からクナイを取り出し、防いだうえで、力では勝てないと判断し、白は後ろに飛ぶことで威力を軽減した。そして、もしかしたらと、逃げる為の一手として準備していた水瞬身の術で、咄嗟に移動し忍者から離れる。その後は、元来た道を全力疾走した。

 

 しかし、嫌なことは続くもので、気配が追ってきているのが分かる。

 

(人攫いなら、その子だけで満足してろよ! 自分に構うな!)

 

 悪態をつきつつ、本気で逃げる為に術を使う。

 

(―――氷遁・氷柱壁!―――)

 

 氷の柱を幾重にも重ねて壁を作り、視界を塞いだうえで変化の術を解く。さすがに変化の術を維持しつつ全力疾走しながらでは、これから行う術に対する集中力が足りないと判断したためだ。

 

 鍛錬の時は術のみでの使用でやっていたので、このように他の事をしながらと言うのは、経験がほぼなかった。そのため、変化の術を解いた時のほんの少しの時間が、この時には大幅なタイムロスになってしまったのは仕方ないことだろう。

 

(―――氷遁秘術・魔鏡……)

 

 氷遁秘術・魔鏡氷晶にて逃げようとしたが、その前に追ってきた忍者に意識を刈り取られ、白はその場に倒れてしまった。

 

「まさか相手がこんなガキだったとは。しかも氷遁か……。血継限界持ちとは運がいい。他にもいい手土産が出来たな」

 

 男はそういうと、白をもう片方に抱えて走りだした。が、その走り出した足を止めてしまう。

 

「<無駄に時間を取ってしまったか>」

 

 男の後方には、1人の和風の着物を着た男が立っていた。

 

「日向家の白眼を渡すわけにはいかん」

 

 その和風姿の男を見た瞬間に、子供を抱えたまま逃げ切れる相手ではないと判断したが、その時には既に遅く。和風男の接近を許してしまう。しかし、敵に背を向けて逃げることも出来ず、かといってまともに戦えば勝ち目はない。咄嗟の判断で、白を追手の男に投げつける。

 

 血継限界は欲しいところだが、今回の任務内容は白眼の確保にある。欲を張って任務を達成できなければ意味が無い。そのため、男に投げつけることで、その隙に逃げるつもりであった。実際に投げた瞬間に背を向けて走り出したのである。

 

 しかし、和風姿の男は、投げつけられた白に対して、見向きもせずに易々と避けて、背後から男の心臓へと一撃を加えた。

 

 それにより、男の心臓は止まり息絶えた。

 

 和風姿の男は、倒れた男に対して、手ごたえはあったがまだ生きているかもしれないと、油断せずに観察する。そして、男が死んでいることを確認してから近づいていった。

 

「ヒナタは……気を失っているだけか」

 

 身体の状態を確認し、安堵の表情でヒナタをそっと抱きかかえて、先ほど投げつけられた白の元へと行く。

 

「この子もどうやら木の葉から攫われたようだな……あの場にて投げつけてきたということは、優先順位としては日向の白眼が上なのは間違いない。しかし、この子供を攫っていたということは、それなりに手に入れておきたい何かがあると見た方がよさそうだな。外傷的には先ほど投げつけられた時の擦り傷くらいか。それにしても潜在チャクラが多いな。ヒナタのよい相手になるかもしれん」

 

 大雑把に観察し、白も抱きかかえたところで、和風姿の男の部下の者が数人到着した。

 

「当主!お怪我はありませんか!?」

「心配は無用だ。そこの忍びから何か情報を得られるかもしれんから連れていけ」

「生きているのですか?」

「いや……。死んでいる」

「分かりました。こちらで調べておきます。ところでその子は?」

 

 部下の男は不思議そうに、当主と呼ばれた男が抱えている子供を見ている。男たちに与えられた情報では、日向家の子供が狙われているとしか聞かされておらず、既に攫われたので必ず奪還するようにと言われただけだ。その情報と照らし合わせても、1人は本家の嫡子だと知ってはいるが、もう1人には日向家において見覚えが無い。

 

「それについては、後で説明することにしよう。事後処理は任せたぞ」

「分かりました」

 

 問いかけた男は大人しく引き下がり、死んだ男を背負うと、木の葉の里へ向けて移動を開始した。

 

 残った男たちは、周囲の状況を確認し、情報となる物がないかの探索を行うこととした。

 


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