白物語   作:ネコ

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20 逃亡生活?

 次の街について、始めにやったことと言えば、変化の術にて街の人に化けて、食料などの必需品を買い込んだことだ。もちろん、ひとつの店で買い込むことはせずに、色々な店で分けて購入する。ひとつの店で購入すると怪しまれるかもしれないからだ。

 

 あの尾行をしていた雇われの人たちが、途中で立ち寄った店に行くことで、正体がばれる可能性がある。それを報告するかしないかで、時間がどのくらい稼げるのかが変わってくるが、安全策を取るのなら、この街での宿泊するのは諦めて、早々に先を急ぐ必要性がある。食料などの必需品さえあれば、野宿をする為の品を既に前の街にて購入してあるので、最低限は問題は無い。

 

 ただ残念なことは、柔らかい布団でゆっくりと休めないことだろうか。寒い季節に毛布などがあるとはいえ、外での野宿はつらいものがある。小島でそれなりに慣らされたとは言え、実際に1人で行う野宿は初体験だ。不安もある。

 

 今はまだ、夕方にも至っていない。街道をまともに通れないので、どこまで進めるか分からないが、完全に暗くなってしまう前に、寝床になりそうな場所を見つけなければならない。

 

(夜にもし雨が降ってきたら、それを避けれる場所があればいいんだけど)

 

 この街の住人に変化したせいか、特に怪しまれるような視線を感じることなく、街を出ることが出来た。

 

 予定通り街道を通らずに、街道が見える位置にて並走する。途中に街道の分岐点などがあったが、方角的に村か何かがあるのだろう。人が通ってないことを確認して横断しつつ、先へ先へと進んでいく。

 

 夕方になり、そろそろ寝床を見つけなければと探すが、そんなに都合のよい場所など見つかる訳もない。

 

(進むか、休憩か2つに1つ……。取り敢えず、お腹も減ったし飯を食べよう)

 

 買っておいた弁当を食べながら考える。

 

 進むのであれば、街道を暗闇で見失うことのないように、今並走している距離よりも更に近づくか、完全に街道を走るかである。今はまだ人通りが少しはあるが、夜間になれば、人通りなどほぼ居なくなるだろうし、もし人が居て見られても、顔など分かりはしないだろう。

 

 休憩に関しては、最低限だが、出来る限り周りから見えにくく、さらに雨が凌げる場所が条件だ。今から探したとして、罠を張って、となるとそのような場所が、見つけられるのか不安な部分がある。

 

 弁当を食べ終わり、結局答えの出ぬまま先へと進む。

 

(よし! いい場所あったら野宿! 無かったらそのまま突っ走る!)

 

 方針を決めたら即実行とばかりに立ち上がり、籠を背負い直し、西へ向けて街道沿いに進んでいく。

 

 空が曇っているために月明かりが乏しい。現在は街道にかなり近い位置を並走している。街道に人はいないが、一応用心するに越したことはない。街道でなければ、動物と勘違いしてくれるだろうという期待もある。

 

 どれくらい走っただろうか。時間的には恐らく真夜中あたりになるだろう。ポツポツと遠目にだが、明かりの見える所まで来た。更に近づくと、そこが次の街であることが分かる。

 

(結局次の街に到着してしまったか……。まあ、結果オーライかな)

 

 時刻が時刻だけに、街の中は静まり返っている。少数ではあるが、飲み屋の帰りなのか、フラフラしながら帰っている者もいるが……。

 

(朝までの休憩になら使えるかな?)

 

 周囲に誰の気配もないことを確認してから、酔っぱらいの1人を気絶させ、路地の方に引き込む。周りから見えないように近くにあった箱を使い、埋め尽くすようにして酔っぱらいを隠してから、その者に変化して休憩することとした。

 

 これでもし見つかっても、言い訳くらいはする時間もあるだろうし、その間に逃げればいい。水瞬身の術は、今のところそう何度も使えないが、この場を逃げることくらいなら容易いだろう。

 

 軒先と、近くにあった箱などで簡易な雨と風避けを作り、そこで休憩をとった。

 

 不満はあるが仕方ない。地面は固いし冷たい。風避けがあるにしても、場所が路地のせいで風が通るので寒い。気絶させた男の酒臭いにおいが漂ってくる。そんな中で眠りについた。

 

 夜明けになり、薄らとだが明るくなってきたことで目が覚めた。特に誰かに起こされた訳でもないし、襲われた訳でもないようだ。路地に入ったところなので、見つけにくいというかわざわざこんなところに入ってくる者もいないだろう。

 

 気絶させた男の状態を確認してみるが、意外に温かかった(顔と手については少々冷たかったが)どうやら凍死はしなかったようだ。箱で埋め尽くしたせいで、小さな密室に近い形になり自分の体温で温まったのだろう。地面は結構冷たかったが、この男の着ている厚着の服を見れば、あまり影響はなかったのかもしれない。

 

 男についてはそのまま放置し、箱を片付けておく。直に寒さで目が覚めるだろう。誰かに見つかってもただの酔っぱらいが寝てるくらいにしか思われないはずだ。

 

 片付け終わり、変化の術にて、この街へと入った時の男の姿に戻し、街の目立たなさそうと思われる場所から街の外に出る。

 

 堂々と街への出入口を通っていては、注目を集めてしまう可能性がある。一応、数人通っているのは見えたが、怪しまれるのは既に懲りているので、同じことが無いように注意していくだけだ。

 

 ここから火の国は近いはずなので、そこに入ってしまえば、このコソコソと隠れた生活ともおさらば出来るだろう。

 

 まずは移動する前に食事をするべく街道から見えない場所まで移動を行う。そこで火を焚き朝食をとる。多少煙が出てしまうが、こんな夜明けに、そこまで気にする人はいないだろう。煙自体も薄らと漂う霧で見えにくいはずだ。食事を簡単に作り、食べ終えて片付けをし、先を急ぐ。

 

 街道沿いに行くと、また分岐点に差し掛かった。店にて描かれてあった地図を思い出す。

 

(そろそろ北の方に行くべきかな?)

 

 木の葉の里の正確な位置が分からないので、この辺りからはほとんど適当と言うか勘頼りである。火の国に入り次第と言うか、火の国と波の国の境が分かっていないので何とも言えないが、ある程度進んだところで、街道を通っている人に尋ねるつもりだ。

 

(正確な地図があれば、何とでもなるのだけど。みんな、なぜ地図を作って普及しないのかが不思議だなあ。やっぱり戦争の影響?たまに街道抉れてるところとか見かけるし、原作通りならこの後も危険なんだよなあ)

 

 分岐路を北に向かって進んでいく。街道は意外と人通りが多く、行商人や旅人などが行き交っていた。

 

(これだけ人の通りが多ければ、自分が街道に入っても分からないだろうけど、先を急ぎたいし……。軽食店で休むくらいにしとくかな)

 

 そう考えている間に、店が数件見えてきた。街道から見えないように店の裏手に移動し、何事もなかったかのように街道へと出て、店の中へと入っていく。

 

 未だに昼前。11時頃だというのに店の中は人で賑わっていた。街道には結構な人数が通っているのし、この次の事を考えると、ここで飯を食べるか、持ち帰るかしないといけないだろうから、店に人が多いのは理解できるが、まさか店内で待たされるとは思っていなかった。外に行列が出来ていなかったので、何も考えずに入ってしまったことに少し後悔する。

 

 待たされることしばし。注文して、料理が来て、食事をして、支払いを済ませ、結局店を出たのは12時過ぎだった。

 

(あんなふうに行列を待つのってなんか懐かしいな……)

 

 感傷に浸りつつも、身体は無意識で勝手に動いていく。また店の裏手に回って、街道から離れた場所を北へと並走していく。

 

 街道の通りが少なくなってきたところで、木の葉の里がどの辺りかを確認するため、一度街道に出て、人に尋ねることにした。

 

(行商人っぽい人がいいけど、見る限り居なさそう。適当に向こうから歩いてくる人に聞けばいいか)

 

 街道を少し歩くと、2人組がこちら方面へと歩いてくるのが見えた。2人は談笑しながら歩いているようだ。話好きならば丁度いいとばかりに声を掛ける。これがもし、相手側一人だと警戒されて話しかけづらいが、相手側が2人、さらに言えば、互いに談笑しているような人たちならば、それほどこちらを警戒したりはしないだろう。

 

「お話の最中にすいません。お尋ねしたいことがあるんですが、いいですか?」

「ん? なんだ?」

「火の国にある木の葉の里ってところに行きたいんですが、場所が分からなくって困ってたんです」

「ん~。おまえ場所知ってるか?」

 

 1人の男は思案気な顔をすると思いつかなかったのか、もう1人の方を見て尋ねている。

 

「知ってるって言えば知ってるが、正確な場所は思い出せないなあ……。俺が行ったのってかなり昔だぜ?」

「大体の場所だけでもいいので教えてください!(それがないとどうしようもない!)」

 

 土下座でもしそうな勢いで頭を下げる。

 

「おいおい、そんなことしなくっても教えてやるよ。……ほとんど覚えてないけどな」

「それでも構いません」

「えーっと。俺らが来た道をかなり行って、どっかの分岐路で左に曲がるんだ。それくらいしか覚えてねえな」

「ありがとうございます!(とりあえず北にこのまま進んで途中左に行けばオーケーと)」

「あ~。いいっていいって。大した情報でもないしさ」

「親切で言っておくが、木の葉の隠れ里は大陸の中心にあるせいか、結構色んな所から狙われる場所らしいからな注意しろよ。一番いいのは近づかないことだけどな」

「ご忠告ありがとうございます。(確かに危険だけど、ある程度原作知ってる分、安全と言えば安全なんだよね。普通に暮らす分にはだけど)」

 

 礼を再度2人組に言って先へと進む。取り敢えずは、先ほど言われた通り北へ真っ直ぐに。

 


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