白物語   作:ネコ

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14 小島?

 半日ほどたった頃。と言っても、朝日が出てしばらく経ってから、島が見えてきた。

 

 ひと通り再不斬から教わった後、男たちには死んでもらい船外へと出た。

 

 船外はかなり明るく、一瞬目を薄めてしまうほどの光量だった。目が馴染んできたところで、帆の操作をしている船員たちへと目を向けると、疲弊のためか帆を張っている者達の動きはかなり鈍いことが分かる。

 

 追ってきている船を確認するため、船の後方を見ると、確かにこの大型船ほどではないが、それなりに大きな船が数隻、追いかけてきているのが見えた。

 

(こちらはだいぶ遅いから追い付いてもよさそうなのに、わざと距離をおいてついてきてるなあ)

 

 いまの速度は、出航していた時の速度とは、比較にならないくらい遅く、いつ追い付いても不思議ではなかった。もともとが、小島に追い込むことが目的なのだから当然かもしれないが……。

 

 この調子であれば、船底にいる者もかなり疲弊していることだろう。

 

 小島が近づいてきたので、周りから見えない船の影部分に入り込み、水分身を行う。周りは海のため、水については事欠かない。

 

(いまのチャクラでは5人が限度かな?)

 

 変化の術を維持しながら、チャクラに余裕を持たせてとなると、今の人数になってしまうが、疲弊した相手である以上、十分な戦力だろう。

 

 それぞれに、再不斬から渡されたクナイを持たせ、本体は見逃しがないように、船全体が見える位置に陣取ることにする。帆を上の方で操作している船員が、島に向かっていると何度も言ってはいるが、副船長の指示が変わることはない。副船長は変化の術にて再不斬が成り代わっているので、指示が変わることがないのは当然だ。また、上にいるのが数名なうえに体力が限界に近いのか、声もギリギリこちらに届くくらいなのも原因だろう。下にいる者たちもその声を聞く余裕すらないのだから。

 

 遂に小島へと接岸、というよりも座礁に近い形で到着し、ガリガリと音を立てながら錨を下ろしたところで、計画を実行した。

 

 船外には数十名居たが、終わるのはすぐだった。みんな疲弊していたと言うのもあるが、帆の一番上に変化の術を解いた再不斬が、帆の操作をしていた船員を降りながら斬っていったのである。

 

 再不斬が降りてから一緒に殲滅したため、時間はさほどかからなかった。そのため、船底にいる船員を片付けようと、中に入ろうとしたところで、船内からもうひとり再不斬が出てきた。

 

「ここは終わった。白はこの船に入ってくるやつらを殺っておけ」

「わかりました。再不斬さんはどうするんですか?(これって再不斬さんひとりで出来たんじゃなかろうか)」

「後ろの2隻を潰してくる」

「わかりました(腹減ったなあ)」

 

 少しすると、鈎爪のような物が船に幾つも取り付けられ始めた。そのまましばらく待っていると、案の定海賊たちが昇ってきたようだ。

 

 船へと昇りきった海賊たちは、船の甲板の様子に唖然としていたが、その隙をついて、声を出させる前に止めを刺していく。

 

(第1陣はこれで凌いだけど、後何人くらいいるのかな?)

 

 また、船に取り付けられた縄が、揺れているのを確認し、先程やった遺体は移動させておく。仲間がいなければ、船内に入ったという風に、思わせることが出来るだろうと言う狙いだ。

 

 第2陣に関しては、船に昇りきってから、少し驚きはするものの、船内へ向けて歩を進めたので、後ろから急襲した。

 

(後詰めに報告とかしないものなのかな?)

 

 第2陣の処理を終えて甲板に戻ると、再不斬がいつの間にか戻って来ていた。

 

「お早いお帰りですね」

「水分身を置いてくるだけだったからな」

「殺してはいないのですか?」

「今はな」

 

 そろそろ第3陣が昇り終えてもよさそうだったが、なかなか来ないことを不思議に思っていると。

 

「下の奴等なら片付けたぞ」

「えっ?」

 

 船の縁から接岸した場所を見てみると、そこには倒れた人で埋まっていた。人数的には20人くらいだろうか。特に悲鳴が聞こえた覚えが無いので、ほぼ一瞬でやったことになる。

 

(これだけの腕があって、なぜガトーの部下に殺られたのか不思議だ……。カカシさんとの戦闘のせいかな?)

 

「後は、追ってきていた残りの船の奴等から情報を聞き出して殺るだけだな」

「島には他に居ないんですか?」

「居ないと言っていたが、いまは気にするな」

「では、これから残りの船の方に行きますか?」

「白はこの船の積み荷で、食糧と金になりそうなものを運び出しておけ。大きいものは無視して構わん」

「時間は何時までですか?」

「取り敢えず夕方になったら声をかける。そこまででいい」

「分かりました。ご飯食べててもいいですか?」

「好きにしろ」

 

 再不斬はそう言うと、島の方へと行ってしまった。

 

 それを見送ってから早速ご飯にするべく積み荷の元へと行く。昨日から何も食べていないため、お腹が空いて仕方ない。前までであれば、お腹が減ってもそれほど気にならなかったが、毎食きっちり食べ初めてからは一食抜くだけでやる気ダウンに繋がってしまう。

 

 まずは甲板にある積み荷への蓋を、水分身と協力して上げる。蓋を開けたところで、備え付けてある階段を下り積み荷の置いてある部屋へと行く。その部屋には調理場も付いており、どうやら食材とその他の積み荷で分けてあるようだ。

 

(調理場があるのは丁度いいけど、すぐ食べたいし作ってあるやつを探すかな)

 

 調理場の方へと向かい、鍋の中を確認すると本日の残りであろう料理が、幾つかそのままになっていた。おそらくこの調理をしたのは海賊の仲間だろう。そのために、片付けるのを止めて、計画を実行に移したのでそのままになっていた。もしかしたら、そのまま食べるつもりだったのかもしれないが……。

 

(でもこれに毒が入っていないとも限らないし、面倒だけど自分で作った方が安全か……)

 

 使用してない鍋をひとつ取り、材料を水分身それぞれで分担して切っていく。今回はじゃがいも、にんじん、豚肉、これらの材料から作れるものとして選んだのが肉じゃがだ。もし再不斬が食べに来てもいいように、すき焼きと似たような物の方がいいだろうという考えもある。ご飯も炊きはじめて準備は完了した。

 

(出来るまで少し時間があるな)

 

 出来るまでの間に、船に積んである階段を接岸している部分へと設置することにした。設置してから分かったが、接岸している場所用の階段でないため、少し急なものとなってしまった。無いよりマシと思い設置する。この階段が意外とひとつひとつのパーツが重く、設置に手間取ってしまう。

 

(結構きついな……)

 

 四人でやっているとはいえ、本体よりも力の無い水分身では、結局本体が力を入れないといけないので、きついことには変わりない。

 

 階段の設置が終わったところで、汗だくになりながら調理場へと戻ると既に料理は出来ていた。軽く汗を拭いてから食事をとっていると、夕方に来ると言っていたはずの再不斬が現れた。

 

「いい匂いだな」

「再不斬さんもどうですか?(なんかタイミングよく現れたけど、どこかで見てたのかな?)」

「いただこう」

「どうぞ」

 

 港町の時と同じように、どんぶりに肉じゃがをのせて肉じゃが丼にして再不斬に手渡す。再不斬の表情は分かりにくいが、やはり嬉しそうに見える。

 

 食事を終えてから、寝る場所やこの島から出る際の船などについて確認しようとすると、先に再不斬の方から話してきた。

 

「この島に人はもういないはずだが、油断はするな。生活する場所はここからすぐのところにあった。ここでお前を鍛えた後にここを出る。最低でも冬前には出る予定だからそれまでにものにしろ」

「努力はしますが、ものに出来るかはわかりません」

「……期限はさきほど言った時までだ」

「出来る限りはやりますよ。自分のためですから」

「食べ終わったら食糧から運ぶ。荷車があったからそれを使っておけ」

「再不斬さんは手伝ってくれないんですか?」

「修行だと思ってやっておけ。俺はやることがある」

「では先に、生活する場所だけ教えてください」

「ついてこい」

 

 再不斬と共に、海賊たちの使っていたであろうアジトの場所を確認し、そこにあった荷車を引いて船へと戻った。

 

 転がっている遺体については、通行に支障が出ていたので、海へと落としスペースを開ける。

 

 そこからは、延々とアジトと船を行ったり来たりであった。金になりそうなものも多かったが、それ以前に船員たちを賄う為の食糧が、予想以上に多かったことがある。船旅の日数が少ないことから、甘く見ていたが、あの人数を考えればそれも当然だろう。

 

 食糧以外は小物とはいえ、アジトに運び終えた頃には、夕方になっていた。

 

(もうそろそろ時間のはずだけど、何してるんだろう? 取り敢えず疲れたけど、夕食の準備でもしておくかな……。多分再不斬さんは料理なんてしないだろうし)

 

 夕食は、昼に作った物を温めるだけにして、ご飯だけを追加で炊くことにした。

 

 辺りが暗くなってきた頃に、再不斬は戻ってきた。

 

「一応一通り運び終えましたよ」

「それはご苦労だったな。あと、食糧については保存がきくようにしておけ」

「具体的にはどうすれば?」

「それは自分で考えろ。俺もそこまでは知らん」

「適当にやっておきます(無茶ぶりだなあ)」

 

 再不斬は、自らどんぶりを手に取り食事を取る。こちらも、それに合わせて夕食を取った。

 

 今日のところは、これで終わりらしく、再不斬に何をしていたか聞いてみると、この小島に探知結界などを張っていたと簡単に教えてくれた。

 

 確かにこれで、他に人がいないか分かるだろう。

 

 食糧に関しては、氷遁で凍らせることにした。ここには、冷蔵庫なんてない。最悪食べられなくなれば、この島にて食糧を探すことになるだろう。

 

 冬までそれほど時間があるわけでもないのが、逆に救いかもしれないが……。

 


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