白物語   作:ネコ

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12 出航?

 船を間近で確認するべく、港まで来てみたが、停留してある船はかなりの大きさだった。木造でどうやって、ここまでの大きさの船を造れるのかが不思議でならない。

 

 その大型船の内部を見てみたかったが、現在進行形で荷物の積み込み中であり、邪魔になりそうだったので諦めた。

 

 この規模の大型船は、目の前のこの一隻だけのようだが、他の船も大概にして大きいことには変わりない。

 

(一番大きなこの船には、百人くらい軽く乗れそうだな……)

 

 岩の上に乗って海沿いに歩きつつ、海の中を覗いていく。海の水は透き通っており、かなり深くまで見渡せた。

 

(本当ならこれくらい綺麗なのが当たり前なんだよな。ゴミなんてひとつもないし。多分あっても釣具くらいかな?)

 

 感傷に浸りつつ元の位置へと戻り、港にある時計を確認すると、10時40分を指し示していた。集合の時間が近付いていることがわかる。

 

(そろそろ集合時間だし行きますかね)

 

 集合時間よりも少し早くなるが、遅いよりはいいかと思い、宿の前へと歩いていく。宿の見える位置まで来ると、宿の前には既に再不斬が待っていた。

 

「お待たせしました」

「まだ時間前だが、もういいのか?」

「ひと通りは準備はできました。ただ、食事などはどうしましょう? 船旅の日程が分からなかったので、そのあたりは何も買ってませんが……」

「それは相手持ちだから気にしなくていい。準備ができたなら行くぞ」

「どちらへですか」

「そこだ」

 

 再不斬が示したのは、宿の前にある例の会社だった。再不斬は、そう言うと歩いていき建物の中へと入っていく。

 

 白も遅れないように、続いて建物へとついて入った。中へと入ると、再不斬は昨日の人と何事かを話しており、最後に「先に行っておく」と言って、白の方へと向き直り、出入り口の方へと歩いていく。近くに来た際に、首だけをくいっと捻り、言外に行くぞと言っているようだ。

 

(これってついてくる意味あったのかな?)

 

 再不斬の話していた相手に軽く会釈をしておき、建物を出て再不斬の後を追いかける。再不斬は、港の方へと足を向けていたが、途中の飲食店の手前にて立ち止まった。

 

「ここで食べていくか」

「昼食は出ないんですか?」

「ああ」

 

 再不斬は、返事をすると同時に店の中へと入っていく。なぜ、この店にしたのか不明だが、途中で昼食の事を思い出したんだろうと納得し、後に続いて店の中へと入る。

 

 昼にはまだ早いせいか、店内に人は居らずガランとしていた。再不斬は奥の席へと座り、メニュー表を一瞥すると、すぐさま店員に注文する。

 

(決めるのはや!)

 

 同じテーブルにつきメニュー表を見ると、丼物がメインのようだ。どうやってここが丼物屋であるのが分かったのか不思議だったが、深くは追及しない。それよりも―――

 

(丼物好きになってしまったか……)

 

 再不斬と同じカツ丼を注文し、出来るまで待つ。待つこと約10分。注文の品が届いたので、それを食べつつ再不斬の様子を然り気無く確認すると、分かりにくくはあるが、喜んでいるように見える。

 

(機嫌がいいのは良いことだけど……。これから船旅がどれくらいかかるか分からない。しばらく丼物はさすがに無いと思うから、その時は機嫌が悪くなったりするのかな?)

 

 どうでもいいことを考えつつ食べるが、量が多かったのと、これから船に乗ることを考えて半分ほど残した。さすがに船酔いはないとは思うが、もし酔ったら最悪な状況になってしまう。それを少しでも減らすべく残したのだが、こちらがもう食べないことを知ったのか、再不斬が声をかけてきた。

 

「残すのか?」

「ええ。船に乗ることを考えると、満腹で乗りたいと思いません。酔うかもしれませんし。もともとこれほど食べれません」

「じゃあ俺が食べてやる」

 

 そう言うと、手が霞むほどの早さで目の前にあったどんぶりを持っていき、一気に食べてしまう。半分ほど残っていた中身はすぐに消えていった。なかなかの食べっぷりである。

 

「ではいくか」

 

 再不斬は満足したのか、テーブルの上に代金を置くと、そのまま店を出ていってしまった。仕方なくテーブルの上の代金を店員に手渡し後を追う。

 

「店員に代金は渡さないと、無銭飲食でそのうち捕まりますよ?」

「他に客は居なかったから問題ないな」

「問題大有りです」

「細かいことにこだわるな」

「あれって細かいですか? 普通、代金は店員に渡しますよね? あれ? もしかして渡しません?」

「金は払ってるんだから、気にしなくていいことだな」

「そんなもんですか?」

 

 自分の常識が無いのか、再不斬がおかしいのか、こちらに来ての経験が少ないので、分からずじまいでこの場は終わった。

 

 船場までたどり着くと、再不斬は大型船の方へと進んでいき、船の近くにて積み荷のチェックを行っていた男と話し、こちらを指差すと船に乗り込んでいった。

 

(あの大型船に乗るのか……。嵐とかに対しては安心だけど、木造っていうのが不安だなあ……)

 

 再不斬がおそらく説明したのだろう、軽く会釈するだけで通ることが出来た。

 

 船に乗り込むと、真ん中に大きな穴が開いており、そこに荷物を詰め込んであり、丁度その穴に蓋を閉めるところだった。

 

 そんな光景に興味は無いとばかりに、再不斬は船内に入っていく。おいていかれては、探すのが面倒になりそうなので、後で色々見て回ろうと思い、今は再不斬の後を追った。

 

 船内には所々で鉄板も使われていたが、ほとんどがやはり木造だった。部屋数は少なく、最初の2部屋は船長と医務室であり、残り4部屋の内2部屋は来賓用の部屋のようだ。そして、残りが船員用の大部屋であった。そして、白たちは大部屋へと割り当てられていた。

 

 大部屋の中には、特にこれと言って何かあるわけでもなく、トイレがついているくらいだろうか。光を入れるための小さな窓が幾つかついており、そこから日の光が入ってきてはいるが、全体を照らすには足りていない。

 

(この部屋にはトイレだけで、シャワー室とかついてないのか……。トイレは多分海にそのまま流しタイプかな? そうじゃなかったら部屋に臭いがこもるだろうし。こもったら嫌だな……)

 

「船の日程だが、何事もなければ3日で着くそうだ」

「意外に早いんですね(これだけの木造大型船をどうやって移動させるんだろう?)」

「風がよければ更に早いらしいがな」

「船の中を見て回ってもいいですかね?」

「自己責任で勝手にするといい。俺はここにいる」

「分かりました」

 

 船員と思わしき人に声をかけて、見て回ることにしようと、船内から外へ出ると、そこには人が並んでいた。

 

「全部で10班いるな」

「いるようです」

「では、1~6の班は船底で動力確認と順番決め。7~10班は帆の操作をしてもらぞ」

「そら、移動開始だ」

 

 残るのがおそらくは船長で、船内に案内するのが副船長なのだろう。あくまでまもたぶんだが……。

 

 通行の邪魔になりそうだったので、大部屋へと入り、みんなが過ぎ去るのを待ってから、その後を追う。

 

 通路に一番奥には階段があり、2階分ほど降りると、1番下の階―――船底のようだ。そのままついていくと、そこには巨大なカラクリが置かれていた。おそらくは、あれを十数人で回すことで推進力を得るのだろう。

 

 謎が解けたところで、船内から出る。そこでは、帆の操縦訓練を行っていた。閉じたり、開いたり、向きを変えたりと、命綱もなしによくあの高さでやるものである。

 

「よし。後少ししたら出航だ!今のうちに飯食っとけよ!」

「おおーーー!!!」

 

 船長と思わしき男は数人つれて、船外にある部屋へと進んでいく。そのあとについていき、間近で見ると、そこは操舵室だった。

 

(舵取りは帆だけじゃなかったんだ)

 

 そのまま、船の縁沿いを歩き、1周したところで再不斬の元へと戻ると、そこには既に数十人がたむろしていた。先程の飯の合図があったので、ここにて食べる気なのだろう。

 

 再不斬は、元の暗い位置にいるためか、入ってきた船員たちが明るいところに居るため、あまり影響は受けてないようだ。自分も再不斬の方へと歩み寄り壁を背に座り込む。

 

「探検ごっこは終わりか?」

「探索と言ってください。海に出るにあたって、その船のことを知ろうとは思いませんか?」

「着くまでの日数と海賊との遭遇数しか興味ないな」

「そう言えば、海賊って本当にいるんですか?」

「いるにはいるが、こんな大型船を襲うようなやつはいないだろう」

「それなんてフラグですか……」

「フラグ?」

「いえ。海賊との遭遇はほぼないんですね?」

「そうだな。普通の船だと、週に1回は狙われているようだがな」

「危険なところですね」

「そのお陰で、安く乗ることが出来てるがな」

 

 話していると、大部屋の扉が開かれて、男が入ってきた。

 

「休憩は終わりだ! 出航するぞ! それぞれ持ち場につけ!」

 

 男は手を叩きながら、部屋内にいた男たちを急かす。その声に、飯を食べていたり、休憩していた男たちは、慌てて部屋を出ていった。残ったのは自分達二人と、先程操舵室に入っていた内の数名のみ。

 

「あんたらは、一応護衛だからあまりウロウロしないでくれよ。働いてる者に対して目障りそうだからな。何かあったら呼ぶ。その時に対応してくれ」

 

 男は言いたいことだけ言うと、部屋を出ていった。

 

(暇だなあ)

 

 しばらくすると、窓の景色から船が動いているのが分かった。これから、数日間ここにずっといるかと思うと気が滅入りそうになる白だった。

 


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