白物語   作:ネコ

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109 仙術?

 穢土転生が解けたことは白にも分かった。本部への情報が各戦場から入ってきたからだ。

 

 クシナの方へ意識を一瞬向けて状況を確認する。そこでは丁度マダラが他と同じように散っていくのを見てとれた。

 

(誰かが穢土転生を解いた! これで使える!)

 

 白は、すぐさま仙人モードのために目を閉じ力を溜めていく。そして仙人モードになってから、一番近くにいるチャクラを持つ者へと近付いていった。

 

 それらは、後方から連合軍を襲おうとしていた白ゼツたちだった。そのチャクラの量は微々たるものに抑えられ、奇襲をしかけようとしているのがよくわかる。

 

 白はついでとばかりに、白ゼツたちを始末することに決めた。仙人モードにはそう長い時間なっていることはできないが、その分術の威力は桁違いに上がっている。敵1体を水龍鞭で絡め取り、他の敵には逃げられないように氷牢の術で囲む。

 

 そして、仙人モード時に使える氷遁系の最大の術を放つ。

 

(―――仙法氷遁・雪月花―――)

 

 氷牢の術の内部のあらゆる物を凍らせていく。それは空気中に漂う塵や埃も凍らせていった。それが地面へと雪のように降り注ぎ、凍った地面に積もっていく。それは結晶となり見た目は花のようだった。その花は成長していくと、逆に蕾になる。そして、一定の大きさになると、一気に破裂して周囲へと千本を飛ばしていった。

 

 蕾の近くにいた白ゼツたちに避けるすべはなく、その攻撃を喰らう。その千本は地面に落ちるとまた花の結晶となり蕾へと変わっていく。それは中の白ゼツたちが全て息絶えるまで続けられた。その氷牢は上空から見れば、月のように丸くなって見えただろう。

 

 白ゼツの処理を終えた白は仙人モードを解いた。それと同じくして氷牢の術も解けて、バラバラになった白ゼツたちが現れる。

 

 捕まえておいた1体を髪縛りの術で縛り、懐から巻物を取り出して術を行使する。

 

「穢土転生!」

 

 穢土転生の術が発動し、白ゼツを生贄に周辺の塵が集まっていった。

 

「またか……。穢土転生は止めたはずだ……それにイザナミを使ったはずの右目が見えるだと……?」

「失礼しますよ」

 

 穢土転生されたイタチの頭に、操るためのクナイを保険で入れておく。ないとは思うが、クシナの時のように暴走されてはかなわないからだ。

 

 イタチは自分の身に、最初何が起こったのか分からずにいたが、白を見て何か思い出したのか話し出す。

 

「そうか……。あの薬を作ってもらった時か」

「その通りです。それにしても……止めたのはイタチさんだったんですね」

 

 波の国にイタチが訪れていた時に、白は、イタチを診察するに際して、イタチが吐血した時の血を回収していたのである。

 

 その後、サスケとの決闘で死ぬことが分かっていたので、穢土転生を行うために、手に入れていたのである。しかし、死んでいないのか、それとも既に穢土転生されたのか、術は成功しなかったので、そのまま持つ形となった。

 

「しかし、今更俺に何の用だ? 穢土転生を止めた以上、残るのはうちはマダラだけのはずだ」

「それが、ちょっと状況が変わりまして」

「どういうことだ?」

「それよりも、少し離れましょう」

 

 イタチと共に陰遁でその場から離れる。先程の氷遁のせいだろう。連合の忍びと思わしき者たちが近付いてきていた。

 

 ある程度離れたところで、状況を伝えるために本部へと連絡を取ったところで、白は驚かされる。

 

「最悪だ……」

「どうした?」

 

 頭を抱える白にイタチが訊ねる。白は肩を落としてイタチに状況を説明していった。

 

 それは、面の者がマダラではないこと、マダラが穢土転生から解放されて、既に不死者となってしまったことに続いて、各戦場の状況なども説明していく。

 

「白は、どこまでの術が使える?」

 

 白は自分の情報を伝えた。イタチから情報が漏れることがないこともそうだが、さっさとこの大戦を終わらせるため、という理由の方が大きいだろう。

 

「六道仙人の道具に、九尾の力を持った者を閉じ込めたといったな?」

「ええ。それがどうしたんですか? もう奪われて手元にないですよ」

「それにマダラを封じればいい」

「ですから、手元にないんですって!」

 

 白はイタチに、何度言えばわかるんだと、少し強めに言うが、イタチは慌てることなく諭すように言い返す。

 

「それならば、奪い返せばいい。おそらく、それを奪ったのは、九尾が手に入らなかった時のための予備だ。白の話が本当であれば、残るは八尾と九尾だけだが……、既に八尾はその一部を外道魔像に取り込んでいる。後は九尾さえ手に入れれば、十尾を復活させることは可能ということだろう」

「でもですよ、既に外道魔像に取り込まれてる可能性が……」

「その可能性は低いな……。暁にいる時に、簡単な説明を受けたが、九尾は最後に吸収させなければならない。一番強いのもそうだが、そうしなければ、十尾をコントロールすることが難しくなるそうだ。つまり、九尾の一部だけでは、コントロールが効きにくい可能性が高い」

「じゃあ、それを吸収する前に奪取してしまえば……」

「十尾復活の妨げはできるし、マダラを封じることもできる」

 

 自信満々に言い切るイタチに、白はある疑問が浮かぶ。

 

「でも、その道具を使いますかね? 今九尾化したナルトと戦ってますが……」

 

 白は、ナルトたちへと指を指す。

 

「戦っているのがいい証拠だ。まだ、諦めきれていないのだろう。後は白が吸収される前に奪えばいい」

「簡単に言ってくれますね……」

「サポートはしてやるから行くぞ。早く終わらせたいのだろう?」

「ええ。ではお願いします」

 

 白は、イタチと共にナルトたちの元へと走っていく。

 

 しかし、時は遅く白たちが着いた時には、既に外道魔像へと取り込まれたところだった。外道魔像は、頭を抱えて苦しみだす。

 

「…………」

「取り込まれたな」

 

 イタチは冷静に状況を口に出す。外道魔像は瓢箪と壺を口に放り込んでからというもの、苦しみ続けている。

 

 呆然と見つめる白とは別に、イタチはこの場での状況を分析し終わったのか、白へと話しかけてきた。

 

「マダラも輪廻眼で間違いないな?」

「……え? ……ええ」

「今の状況は分かるか?」

「普通のスサノオを出した状態でマダラは止まっていますね。クシナさんの鎖でその場から動けないようです。まあ、動かないだけかもしれませんが……」

 

 更にマダラの方の状況を聞いたイタチは頷くと、白へ作戦を説明をしていく。

 

「と言うわけだ。理解できたか?」

「確かにできないことはないですけど……」

 

 言い淀む白を説得するようにイタチは話す。

 

「これで戦争も終わりだ。そうなれば、今までのような諍いも少なくなっているだろう。俺のようなやつが居なくとも安全だ」

「その間、俺って結構無防備になるんですが……?」

「早く終わらせたいのだろう? それに心配ならば影分身を置いておけばいい」

 

 この言葉が決め手となり、イタチの作戦に白は乗ることにした。そのために一旦イタチを棺の中へと戻してから、影分身を使い、その後にクシナへと意識を繋げる。

 

 マダラと五影たちとの戦いは、結局時間稼ぎにしかなっていなかった。

 

 それでも、マダラ相手に時間を稼げるだけでもその実力は高いと言えるだろう。

 

 白はクシナを操り、イタチをマダラのいる戦場へと口寄せする。五影やマダラはそれを黙って見ていた。五影はいきなりの事態にただ呆然と。マダラは興味があるのか、何が口寄せされるのかを見ていた。

 

 そして出てきたイタチを見て五影たちが騒ぎ出す。

 

「うちはイタチだと!?」

「ナルトの話では、カブトの穢土転生体ではなかったか?」

「クシナさんが口寄せしたということは、これも白の仕業なのかしら?」

 

 イタチはそんな五影たちなど気にもせずにスサノオを展開する。

 

「俺が奴を倒すまでの間、あんたたちは、マダラと俺を離れた位置から囲んでくれ」

「なんだと!? 貴様、誰に向かって「雷影!!」なんだ!?」

「イタチ……。やれるのだな?」

「ああ」

「分かった」

 

 綱手の言葉に対して端的に返事を返すと、イタチのスサノオは更に姿を変えていく。それを見て五影たちはマダラを囲むような形でそれぞれ走って行った。自分たちでは時間稼ぎしか出来ないことが分かったのもあるが、スサノオにはスサノオを……穢土転生体には穢土転生体をぶつけるのが一番いいと判断したためだ。

 

「それは……貴様もうちはか……スサノオまで出せるとはな」

 

 白はクシナを操り、鎖をマダラから解くと、五影の方へと伸ばしていく。

 

 それを許すマダラではなかったが、行く手をイタチに防がれていた。

 

 マダラは仕方ないとばかりにイタチへと剣を振るうが、八咫の鏡に防がれて、逆に弾き返される。これにはさすがのマダラも驚いていた。自分の攻撃が初めて防がれた上に、自分へと弾き返されたのだから当然だろう。

 

 イタチは牽制とばかりに、勾玉を飛ばすが、マダラに当たるものの、ほとんど効果が無かった。

 

「それは八咫の鏡か……。攻撃は弱いが、防御に徹すれば面倒だな……」

「俺も穢土転生体。十尾を倒すまでの時間稼ぎをさせてもらう」

「確かに、そこにいる五影よりも厄介ではあるが……」

 

 マダラとイタチが話している間に、五影がマダラとイタチを囲むように移動し終えたところで、それぞれを鎖が繋ぎ終わる。

 

「五行陽陣!」

 

 クシナが叫ぶと、五影を人柱にして光が真っ直ぐに立ち昇り、それを埋めるようにして光の壁が出来上がる。それぞれが火、風、雷、土、水の光の柱を上げていたが、柱同士を壁が繋いだ時に色は変わり、柱も壁も白一色となる。それは夕焼けに包まれ始めたその場を、昼間のような明るさへと戻すほどだった。

 

 その囲いが出来たのを見たイタチは、八咫の鏡を前面に出して、完全に防御の形を取った。

 

「なるほど。確かに時間稼ぎにはうってつけだ。これでは出るに出れんな……。しかし、穢土転生体である貴様やミトの一族ならともかく、今の五影たちのチャクラがいつまで保つかな?」

「俺は俺の役割を果たすだけだ」

「ふん。まあいい。そこまで言うならば遊んでやろう」

 

 マダラは八咫の鏡に注意を払いながらイタチへと攻撃を放つが、それを悉く躱されてしまう。八咫の鏡の大きさが、スサノオの半分を覆うほどの大きさなのもあるが、マダラがスサノオの完全体を出さないのが大きいだろう。五行陽陣のせいで出せないと言った方が正しいかもしれないが。

 

 しばらく、スサノオ同士の闘いは決着が付かずにいた。マダラは、五影たちのチャクラが切れるまでの遊びだと割り切り、八咫の鏡をどうすれば潜り抜けられるかを試していた。イタチの方はそれをさせまいと、勾玉で牽制しながら防いでいく。

 

 五影たちのチャクラが段々と弱弱しくなっていくなかで、マダラは勝ち誇ったようにイタチへと話し掛ける。

 

「そろそろ終わりのようだな。この結界が解け次第行かせてもらうぞ」

「ああ。そろそろのようだな」

 

 イタチは勾玉を放ち八咫の鏡で隠れるを繰り返す。怪訝な表情をするマダラは、それでも遊び感覚でイタチへと攻撃していった。

 

 そして、勾玉を放ち続けた結果、マダラのスサノオの一部に亀裂が入る。そこは、マダラ自身が1番始めに自分の攻撃を反射されて受けた場所だった。イタチは同じところを執拗に勾玉で攻撃していったのである。

 

「弱い攻撃でも数を受ければ、ひびくらいは入るか……」

 

 ここで、イタチはスサノオの両手に勾玉を出すと、マダラへ向けて突撃した。

 

「ひびを入れたくらいでいい気になるな」

 

 ひびが入ったスサノオを修復するには、一旦スサノオを解いてから再構築せねばならない。それを知ってか、イタチはひびの入った箇所へと、勾玉の連続攻撃を叩きつけるつもりだと考えたマダラは、逆に攻撃を仕掛けてやろうと構える。

 

 穢土転生体であるので、勾玉の連続攻撃を喰らっても修復できるが、それ以前に勾玉の連続攻撃を受ける前に、イタチへと攻撃を当てれば、勾玉の連続攻撃を喰らうことも無く、マダラ自身も傷つけられることはないと考えたからだ。

 

 しかし、マダラのその考えが仇となる。

 

 イタチは勾玉を投げつけて、更にひびを大きくして次を放とうとするが、その前にマダラの攻撃がイタチへと当たる。

 

 マダラはにやりと笑い、同じくしてイタチも笑う。

 

 次の瞬間マダラは驚愕の表情へと変わった。

 

「これは……十拳剣だと!?」

 

 マダラのひびの入ったスサノオを突き破り、イタチの持つ十拳剣はマダラへと刺さっていた。

 

 マダラは逃れようとするが、スサノオごと一気に十拳剣に吸い込まれていってしまう。それを確認した白は、五行陽陣を解除した。

 

 白の操るクシナにより、限界までチャクラを絞り出された五影たちは、その場で力尽き倒れている。それをイタチと共に回収してから白はイタチへと話し掛けた。

 

「取り敢えず、なんとかなったみたいですが、こっちはちょっと凄いことになってます」

「何があった?」

「本部が十尾の放った攻撃で吹き飛びました。それに加えて、十尾に向かって行った連合軍も、大半が十尾の攻撃を受けて壊滅状態まで追い込まれています」

「そうか……では口寄せするぞ」

「ええ。お願いします」

 

 白はイタチの口寄せにより、五影たちの元へたどり着くと、真っ先に綱手のチャクラを回復させた。

 

 それでも、疲労が激しいのだろう。こちらを見るばかりで、話す余裕はない。白は薬を各五影へと配っていった。

 

 そして、少し回復させたところへ自来也たちが現れる。かなりの速度で走ってきたのだろう、その顔には汗が滲んでいた。

 


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