白物語   作:ネコ

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107 マダラ?

 ナルトが感動の再会を果たしている中、白は憂鬱な気持ちで現実逃避をしていた。

 

「お前大丈夫か?」

「…………」

 

 テマリからの声掛けにも反応せずに、白は本部の状況を見ていたのである。どこにいれば一番安全なのかを確かめるために。ここからの知識が無いために、白は本部に行って感知班として頑張るのか、それとも医療部隊に居た方がいいのか迷っていた。

 

 しかし、戦場に安全な場所など無く、あるとすれば、雷影がいなくなったこの場が、今のところマシだと言えるだろう。

 

 その後、水影の方も封印されたということで、忍び連合の第4軍は1箇所に集まることになった。

 

 負傷者は後方に運ぶ余裕もほとんどなく、その場で手当てをしていく。

 

 動けるものは、戦場に散らばった忍具の回収や、他の部隊への増援に向かうべく、隊を分けたりとしていた。

 

 白も本部を通して全体的に有利にことが運んでいることを知りホッとする。この様子ならば、後は尾獣とマダラをなんとかすれば良いと考えていたからだ。魔像がどこにあるのかが分からなかったが、マダラは尾獣チャクラを纏った者たちを連れて、違う場に居ることが分かっている。

 

 今度は制御するために、話している背後からクナイを頭に刺し込む。これにより、一瞬クシナの動きが止まるが、また元の状態に戻った。

 

「あっ。紹介するね。こっちの子が今回私を穢土転生してくれた子。名前は……なんだってばね?」

「白ですよ……」

「ああっ!? お前白だってばよ! なんであの時」

 

 しかし、ナルトの言葉もそこまでだった。急に現れた巨大なチャクラを感じ取ったからだ。

 

 白は、ここが安全な場所であるという考えが間違いだったことを悟る。そのチャクラは余りにも馬鹿げた大きさだったからだ。

 

 感知タイプの忍びは他にもいたのだろう。一斉にそのチャクラの方を向く。その周りの忍びも異変に気づいたのか、同じ方向を向いていく。

 

 そこには、穢土転生体が2体、石柱の上に佇んでいた。1体は無であることは分かったが、もう1体に見覚えがない。その見覚えのない方が膨大なチャクラを宿していた。

 

 その人物の正体は、土影の言葉で誰なのかが判明する。

 

「うちは……マダラ……」

「えっ?」

 

 その名前を聞いて白は、混乱していた。

 

(あの面がうちはマダラじゃなかったのか……。じゃあ裏で操ってたのは誰だ?)

 

 白の混乱など気になどせずに、うちはマダラと無は会話をしている。それは連合側も話し合っていた。しかしそれは話し合いと言うよりも白と一緒で混乱していたと言った方がいいだろう。

 

 その混乱から脱したのは風影である我愛羅だった。我愛羅は、砂を操り死角から攻撃するが、容易く避けられてしまう。

 

 それを切っ掛けにうちはマダラが連合軍に対して攻撃を開始した。

 

 その動きは素早く、次々と忍びたちは殺られていく。封印しようにも速すぎて簡単に逃れられてしまうことから、クシナも手が出せずにいた。

 

 その中で辛うじて攻撃らしい攻撃を出来たのは、五影とナルトだけだった。

 

 白はと言えば、嫌々ながらも無の監視をしていた。塵遁を使われるといやなので離れていたのだが、土影の言葉で嫌々なのが嬉しい表情へと変わる。

 

「分裂体では塵遁はつかえんぜ!」

 

 無が塵遁の恰好を取るが、塵遁が発動しなかったのである。それを見て白は安心して監視をしていた。その安心も頭に陰が差したことで怪訝に思い、上を見た時に焦り出す。

 

 白たち連合軍の上部には巨大な、惑星かとも思える大きな岩が落下してきていた。

 

 白は無の監視を一旦取りやめて、急ぎ移動を開始する。地上では混乱が増していたので、敢えて上空へと移動していった。その落下してきている岩を超えたところで、その更に上から岩が落ちてきているのを見つける。

 

(一体何個落ちてきてるんだ……?)

 

 結局落下個数は2個であった。1個目は途中から土影によりゆっくりとした落下へと変わっていき、その間に、巨大な岩の下にいた忍びたちは、蜘蛛の子を散らすように、急ぎ落下地点から離れていく。

 

 そこに我愛羅の砂が合わさるが、2個目の巨大な岩の落下を受け止めきれることができずに、2個目のその勢いのままに落下した。落下した瞬間、地震が起き、土煙が辺り一帯を覆い尽くす。

 

 土煙が晴れたそこには、落下した岩が飛び散り、ほとんどの忍びたちがその下敷きになったのが分かる。

 

 その中でゆっくりと元に戻る存在が3体いた。

 

 マダラ。無。クシナである。

 

 クシナはマダラに近付くと、封印の鎖で縛りあげた。それをマダラは冷めた目で見つめる。

 

「油断したわね。このまま封印させてもらうわ」

「その髪は……ミトの子孫か……。こいつも穢土転生のようだがお前がやったのか?」

「いえ。それは僕の弟子がやったものです。今は敵同士ですので気にしなくても構いません」

「そうか……」

 

 マダラは鎖など気にもせずに、無の中のカブトと話を進める。カブトもマダラが慌てない様子から、特に動くことなく隣で悠長に話をしていた。

 

 クシナはチャクラの量を増やして、鎖を強固にしていくが、マダラの表情が変わることはなく、その場から動くこともない。逆にクシナの表情から焦りが見え始めた。

 

「これでも無理だなんて……」

「この程度で俺を縛れると思うな」

 

 その瞬間。チャクラが高まっていき、鎖が引きちぎられた。それをクシナは呆然と見ている。

 

 ただ、この瞬間を狙っていた者もいた。

 

(八卦封印式!)

 

 仙人モードになった上で、クシナを操り、封印術を使用したのである。

 

 クシナの身体から一瞬にして、辺りの空間を根こそぎ削り取る形で、黒い光が広がる。

 

 そのようなことを想定していなかったのだろう。マダラと無は、黒い光に包まれてしまった。

 

 その黒い光が消えた後には、身体中に幾何学的な模様を身体に刻まれたクシナが倒れていた。白は素早くクシナへと近付き、封印札を更にその身体へと貼っていく。しかし、それもすぐ塵が集まり修復していった。その上に更に封印札を重ね掛けする。

 

 そして、仙人モードを解いたところへ、雷影と綱手姫が到着した。

 

「マダラはどこだ!」

 

 雷影は周囲を見渡して叫び、火影は額の封印を解いて、忍法創造再生を使用する。それに遅れるようにして水影も到着した。

 

「準備はできたぞ。土影と風影は私がみる」

 

 綱手は、土影へと近付いて癒していく。その間に五影のうち、後で来た3人は辺りを注意深く確認していた。

 

 そこへ、我愛羅が言いにくそうに白たちの方を見る。白は、微妙な顔をしてその3人を見ていた。

 

「あんたたちには悪いが、マダラ封印に成功したようだ」

「なに!?」

「どういうことか説明しろ」

「白? あなたがやったの?」

 

 五影からの睨み付けるような視線に耐えながら、白は説明していく。

 

「つまり、あなたも穢土転生が使えるのね?」

「それよりも、マダラの驚異がなくなったのならば、もうひとりの黒幕の方にいくぞ!」

「雷影すこし待て! 穢土転生の止め方を聞く方が先だ!」

 

 簡単にだが、穢土転生の説明を行った上で、止め方を説明する。

 

「つまり、術者を見つけねば意味がないということか?」

「そういうことですね」

 

 綱手は納得したのか頷くと、クシナの方へと視線を移した。クシナは目を開けてから立ち上がってからというもの、腹のあたりを擦っている。ナルトは心配そうに声を掛けていた。

 

 部隊を幾つかに分けて、カブト捜索に入るよう指示を出していく。特に、カンクロウの奇襲部隊が、一番敵のアジトに近いことから、本部との連絡をやり取りしていた。

 

 そこへ白が言いにくそうに、綱手に伝える。

 

「えーっとですね。敵のアジトにはいませんでしたよ」

「どういうことだ?」

「敵のアジトからこちらへ来たので……もし、周辺を探すのならば、一番近いのはヤマトさんたちになると思います」

「たち……だと?」

 

 不審な目で見つめる綱手に対して、白は思い付いたように、仕返しを敢行する。

 

「まず、捕らえられていたヤマトさんは助け出しました。アジトに潜入したメンバーですが、3人です。俺と、前に木の葉を襲った元暁メンバーの小南さん。それと、自来也先生です」

「自来也だと!? ……穢土転生体か?」

 

 綱手は白の胸ぐらを掴み、説明を要求してきた。サクラのように、身体を締め付けはしてきてはいないが、服で首がしまっていく。

 

 綱手の手を叩き喋れないことを伝えると、しばらくして落ち着いたのか、手を離した。

 

「詳しく説明してもらおうか」

 

 綱手の剣幕は変わることなく白を睨み付ける。白は、自来也が生きていることと、生活の放蕩振りを若干脚色を付けて綱手に話すと、綱手の顔に青筋が立ち始める。

 

「そうか……あいつはそんなに楽しそうに暮らしていたのか……こちらのことを考えもせずに……」

 

 その後、アジトの場所などを説明していく。元々アジトの場所は、大体の位置を把握していたのだろう。特になにも言われることなかった。

 

 怒りの矛先が自来也にいったことに、白はホッと一息ついてから現状の把握をするため、影分身へと意識を向ける。現状で一番大変なところは、既にナルトのところと言ってもいいだろう。

 

 白の説明を元にして、綱手は再度本部とのやり取りを開始する。

 

 カブトが何処にいるか分からない以上、どうしようもない。

 

 穢土転生で蘇った者たちの封印は、ほとんどが完了しているので、これ以上の危険はマダラと名を偽った者だけ、という認識を持った白は、後はナルトに任せようとその場に座り込む。

 

 しかし、その認識は甘かった。

 

「みんな離れて!」

 

 急にクシナが叫ぶと、クシナの身体が膨れ上がり、その次の瞬間。爆発してマダラと無が出てきたのである。

 

 クシナが叫んだときには、みんな異変を感じ取り、即座にその場を離れていた。

 

「なかなかの封印術だったな……。破るのに苦労したぞ」

「おそらくは八卦の封印式でしょう」

「いい暇潰しにはなったな」

 

 緊張感のない言葉をマダラは無と交わしている間に、五影は連合の忍びに指示を出して後退させる。相手が相手だけに連合の忍びでは敵わないと分かったのだろう。ここに至っては忍びたちの準備した封印すら意味が無いことが分かる。

 ただ、少しの時間ではあったが、封印で時間が稼げたために五影の回復が完了したことは、連合側にとっては良かったのかもしれない。

 

(はい、戦略的撤退! あれが効かないんなら、俺の出る幕なしっと……)

 

 白は五影が後退指示を出した瞬間に、一番早く後方、と言うよりも遥か彼方まで移動していた。

 

 安全と思われる場所まで移動してから、周囲へと気安めだろうとも結界を張り巡らせ、クシナを通して状況を確認する。

 

 そこには辺り一面を巨大な木が、横に幅広く拡がっていた。

 

 前面には疲れた状態のナルトが、クシナに支えられている。一旦は木の進行を防いだのだろう、木は円形状に抉れて止まっていた。

 

 そんな疲れた状態のナルトの前に五影が立ち並ぶ。

 

「ナルト。お前はこの場以外に集中しろ」

「だけど!」

「ここは任せてもらおうか」

 

 未だに言い淀むナルトを五影たちが、口々に説得していく。

 

 もはや、ナルトがこの戦場にいる時点で、最初の計画は破綻しているのだ。それならば、ナルトを戦力としてみるのも当然だろう。

 

 もうひとりのマダラを名乗る面の者の方が、穢土転生体であるマダラよりも、危険度が高いと言うのもあった。マダラの実力から言って、普通の忍びでは足手まといになってしまう。そのため、五影はその場に残ることにしたのだ。

 

 穢土転生体のマダラを五影で足止めし、その間にカブトの穢土転生を連合の忍びで止める。そしてナルトが面の者を倒せば、全てに片がつくという計画だ。

 

「この戦争……勝つぞ!」

「ああ!! もちろんだってばよ! じゃあ、かあちゃん行ってくる!」

「絶対に勝ってくるってばね!」

 

 親指を上に付き出すクシナにナルトは頷き、影分身を消すと、その場から去ってしまった。

 

 連合軍は、他の戦場に向かったため、その場に残るのは、五影とクシナだけとなる。

 


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