白物語   作:ネコ

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103 帰還?

 水分身がたどり着いたそこでは、ナルトがサスケに向けて話しかけているところだった。

 

(あれは、うちはマダラと白ゼツか……)

 

 場は膠着しており、誰もその場を動こうとはしない。

 

 その中で、ナルトは自分の想いをサスケへとぶつけるが、サスケはそれを冷めた眼で見つめるばかりだった。

 

 しかし、ナルトの次の言葉に反応してしまう。

 

「俺も……お前の憎しみを一緒に背負って死んでやる」

「お前は一体なんなんだ!? 何故俺に構う!?」

 

 さすがのサスケも、ナルトの言った内容が理解できなかった。そのため、サスケは大声を上げて、ナルトに問う。

 

 ナルトはその問いに対して笑みを作ると、ハッキリとサスケに聞こえるように答える。

 

「友達だからだ!!」

 

 サスケはその言葉に目を見開き、ナルトを見つめる。

 

 予想だにしていなかった言葉だったのだろう。

 

 そのことだけで、一緒に死ぬと言う考えそのものも理解できなかったのだろう。

 

 サスケは、自分なりに言いたいことのまとめきれていない話続けるナルトを、次第に睨み付けていく。

 

 カカシも、その言葉に納得できなかったのだろう。サクラに言った言葉と、同じような内容をナルトに伝えるが、ナルトの想いを変えることなどできなかった。

 

 ナルトはそれまでの顔つきを変えて、真剣な表情をすると言い放つ。

 

「サスケとは俺がやる。これは誰にも譲れねえ」

 

 サスケはそれまでとは違い、口許に笑みを浮かべる。それは呆れているようでもあり、納得したようでもあった。

 

 その後すぐにマダラによって、サスケたちはその場から消え去ってしまう。

 

 それを見たナルトは、急に周りにいた影分身を解くと倒れてしまった。徐々に沈んでいくナルトを慌てたようにしてカカシが支える。

 

 サクラもそれを見て慌て始め、カカシに諭され急いでナルトの顔へと手を翳す。

 

 ナルトの回復をして戻ってきたカカシに向けて白は、歩み寄る。カカシに言ったことを実行するために。

 

 サクラは、近付いてきた白を忘れていたことに、ばつが悪そうな顔をするが、何か記憶に引っ掛かるものがあったのだろう、じっと白を見つめる。

 

 カカシは近付いてくる白を見て警戒するも、サクラの次の言葉でそれが揺らいでしまった。

 

「…………あっ! あんた白でしょ! ……って、なんであんたが波の国にいるのよ!? あれからヒナタ大変だったのよ!! 大体生きてるなら生きてるで、連絡くらい寄越しなさいよ!」

 

 白の事を思い出したのか、一気に捲し立ててくる。白はそれには答えずに、持っていた手紙をカカシに手渡した。

 

「絶対にあんな条件は認められません! もし、その条件を飲めと言うならば、木の葉に対して嫌がらせしまくります!」

「条件?」

 

 話の内容についていけないカカシは疑問を浮かべると、白に聞き返した。

 

「取り敢えず、その手紙を読んでください。それと、もうすぐ綱手姫が意識を取り戻すので、その内容を里の上役にもちゃんと伝えてください」

「それは本当!?」

 

 反応したのはカカシではなくサクラだった。サクラは白に詰め寄り、逃がさないとばかりにその肩を掴むと、問いただしてくる。

 

 ただ、そのあまりの力に水分身である白が耐えきれるはずもなく、ただの水となって崩れ去ってしまった。

 

 呆気に取られているサクラたちを余所に、白は移動を開始する。

 

(今のサクラに捕まったら、ただじゃすまない……)

 

 白は辛うじて意識のある香燐を連れて波の国へ急ぎ戻っていくのだった。

 

 

 

 白本体は、波の国への帰還中、頭を押さえて頭痛を堪えながら、再び影分身を使っていた。

 

 影分身を再び雨隠れの里に向かわせるためである。

 

 最後に小南が言った、白が居ては会いに行けない、という言葉から、今度は隠遁を使い小南の後を追うことに決めたのだった。

 

 そして、こっそりと長門たちを回収するために、影分身に巻物を持たせる。

 

 何事もなく波の国についてからは、影分身を解除して香燐の治療に当たる。そのついでとばかりに、身体の歯形も消していく。

 

 何度か自来也が潜り込んで来ようとしたが、再不斬に会う際に1度出し抜かれた経験から、感知結界を張り巡らせているため、その都度撃退していた。

 

 白本体が波の国に戻ってきた時には、香燐は元気な状態に戻っていた。

 

「なんだつーの! このおっさんは!?」

「やはりおなごはいいのう。少しでいいからその胸を触らせてもらえんだろうか?」

「それはセクハラです」

「さわらせるわけねーだろ!!」

 

 香燐は叫び、胸を腕で隠しながら、自来也から後ずさる。白は特に止めるつもりもなく、ただ淡々と事実を述べるのみだった。

 

 白は仙術の修行を行う過程で、自来也に男であると知られてしまっていた。

 

 その修行方法とは、自来也に仙術チャクラを流してもらい、その感覚を掴むと言うものだった。その際に、自来也のチャクラを、身体の隅々にまで行き渡らせたことで知られてしまったのだが、後の祭りである。

 

 1度引き受けたからには、と言うことで、ある程度形になるまで面倒を見てもらえることになっていた。

 

 その感覚を掴んでからは、自分で仙術チャクラを少しずつ練り上げる。

 

 余分に取り込んでしまった分については、自来也に吸い取ってもらうことで石化を防いでいた。

 

 しかし、それも短い期間で修得しつつあった。そこへ、香燐を連れた白が戻ってきたのである。

 

 その顔と胸を見て、自来也は心配すると共に、無事と分かるとテンションが上がり始め、香燐に構い始めたのだった。

 

 影分身に溜まった仕事を消化させて、その間に白本体は仙術の修行を再開する。

 

 香燐については、行く宛も無いことから、この波の国に滞在することになった。

 

 そして、やっと本格的に仙術の修行ができると張り切っていた矢先に、影分身から白本体に連絡が入ってくる。

 

 白が考えていたよりも事態は早く進行しており、影分身が雨隠れの里についた時には、小南のチャクラは感じ取れなかったのである。

 

 記憶を頼りに、一旦上空へ移動した白は、秘術を使い高速移動しながら水面上を見渡していく。

 

 目的の人物は程無く見つかるが、既に死んでいた。その表情はもう変わることないが、悔しそうな表情に白には感じられた。

 

(殺されたばかりかな? ……この人をうまく使えば、貸しが作れるな)

 

 小南の死体を巻物に収めると、白本体に連絡を取り逆口寄せで一気に波の国へと戻る。

 

 白は巻物を受け取ると、影分身に治療小屋の外にいる自来也と香燐を呼びに行かせ、寝台の上に巻物から小南を出して横たえる。

 

「小南!?」

「誰?」

 

 診療所に入ってきた2人を見た白は、影分身を全て解除して巻物から兵糧丸を取り出す。

 

 自来也は寝台に駆け寄るが、それが遺体と分かると、悲しそうな表情をして呟いていた。

 

「すまなかった……。わしはもうお前たちに会うまいと思っていた……。わしのことなぞ忘れて、平穏に暮らしていくとばかり思っておった……」

「〈で? その人だれなんだ?〉」

 

 香燐は白に小声で聞いてくるが、その声を無視して白は、香燐の口に無理矢理兵糧丸を飲み込ませる。

 

「あまり時間は無いので、自来也先生も手伝ってください」

 

 自来也にも同じように兵糧丸を渡して飲ませ、白は自らも飲み込むと、メスを取り出して香燐に近付く。

 

「ちょっと血を貰うよ」

「はっ?」

 

 白は香燐の腕を掴み小南の元へ連れていくと、香燐の腕をメスで切り裂く。それは小南の口の中へと入っていくが、量は少しどころではなかった。

 

「痛っ!? いきなりなにすんだ!!」

 

 香燐の言葉を無視して白は香燐の腕の傷に応急処置を施してから、これから行うことの説明をする。

 

「これから起死転生という術を使用します。死んだばかりなので、まだ間に合うかもしれません。成功しても失敗しても、チャクラをかなり持っていかれるので、そのつもりで。それと、もし、この人が雨隠れの里に戻ろうとしても自来也先生が止めてください。二人とも手を出して」

 

 それぞれの手を自分の肩に乗せると、白は小南の心臓に片手を乗せるようにして当てる。

 

「香燐は医療忍術を使用する感覚でチャクラを送って。 自来也先生は仙術の時の感覚でチャクラを送ってください。では始めます」

 

 有無を言わせぬ迫力で言い終えると、小南の胸に当てていない方の手で印を組む。

 

「―――起死転生―――」

 

 その瞬間。白からと言わず、自来也や香燐からも、反強制的にチャクラを小南の身体は吸い取り始める。

 

 一番消耗が激しいのは、術者である白で、みるみる憔悴していった。その代わりに小南に生気が戻ってくる。

 

 この術は、大蛇丸が開発していた不屍転生に改良を加えたものだった。この術の資料については、香燐のいた研究所にあり、そこで読むと同時に改良を施していたのである。

 

 不老不死に興味があったのもあるが、それを他人に使えないかと考えたのである。砂隠れの里のチヨが、転生忍術を使用していたことから、応用できるはずと研究した結果がこれだった。

 

 胸に当てた手から、心臓の鼓動を感じ取った白は、手を離して安堵の溜め息を漏らすと、そのまま倒れこみ気絶した。

 

 起死転生には条件が幾つかあった。死後24時間以内や大量のチャクラを要することなどである。しかも、理論だけが完成しているだけで、白が使ったのは今回が初めてだった。使用者が死亡することが無いと分かってはいても、もし、自分のチャクラを全て取られそうになった場合には、手を離すつもりでいた。手を対象者から離すだけでこの術の効力が切れるためである。

 

 失敗にはさせたくないことから、無理矢理その場全員のチャクラ量を上げた上で、香燐の血に宿る再生能力に賭けてみたのだった。時間があるのであれば、他にも人を呼び寄せることは可能だったが、いつ死んだか分からない以上、すぐに術を行う必要があった。

 

 結果は成功と言っていいだろう。白も気絶したとはいえ、それも次の日には起きれる程度のものだった。小南の意識は未だに戻らないが、香燐が面倒を見ている。

 

 働かざる者食うべからずの精神で、香燐には診療所の手伝いをさせていた。毎日文句を言いつつも、言うことを聞く辺りが香燐らしい。

 

 自来也も小南の件で、白に対して嫌そうな顔をせずに、言うことを聞いてくれるようになったのは大きいだろう。今までは、色々なところに廻りたいという自来也の要望を、白は抑えてきていたのだから。

 

 そんな白はと言うと、カンパニーの運営と仙術の修行に精を出していた。

 

 基本的に島の守りは自来也に任せて、診療所については香燐に任せている。後は波の国を富ませていけば、ナルトたちがなんとかするだろうと思い、それを手助けする意味合いも含めて輪廻眼の回収を阻もうとしたのだが、失敗に終わってしまった。

 

 忍界大戦の結果が分からないための措置だったが、不安であることに変わりはない。

 

 白が五影会談から波の国に戻って数日後に、木の葉の里から物資の支援要請がきた。霧隠れの里に関しては、照美が長十郎を連れて帰る際に再不斬へと言伝してあった。再不斬はそれを聞いて、嬉しそうに承諾してしまう。大戦と聞いて心躍っているのだろう。

 

 照美たちが帰ってから、再不斬は白に大戦の行われる大体の位置を聞き出すと、すぐに出て行ってしまった。いつ行われるか分からないにも関わらず、だ。

 

 波の国からの支援は食料品や医療品などの雑貨的なものだけで、人的な要求が無かったのは白にとって喜ばしいことだった。

 

 木の葉からの書面に付随して、条件に付いても解除する旨が書かれていた。これにより、物資の過剰要求を通そうとしているのだろう。白の言った嫌がらせをするという言葉が、多少なりとも効いたかもしれないが……。

 

 結局、物資の使用者は一緒なため、霧隠れの里と木の葉の里の要求は一緒なのだが、そこまで両里間の連携は取れていないようであった。自里のことで精一杯なのだろう。白はその要求を呑む旨の手紙を書いて、それぞれの里に送った。

 

 それから数日後に小南が目覚めることになる。

 


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