突如現れたガストレアウイルス。それは世界の終わりの始まりだった
時を同じくして現れた呪われた子供たちと呼称される少女たち。体内にガストレウイルスを持ちながらも人の形をとっており、さらにはその力を使用することができる。彼女らは唯一と言っていいガストレアの対抗策になりうる存在だ
だが、人々のガストレアへの恨みが、悲しみが。ガストレアウイルス。あるいはガストレアの象徴でもある赤い瞳に対して向けられるようになった
悲しいことだ。罪もない子供たちが攻撃されるようになってしまった
民間警備会社。プロモーターとイニシエーターだったかな。それぞれペアを組みガストレアへ立ち向かう組織だったっけ
俺はあれがあまり好きじゃない。子供達にはこれ以上苦しんでほしくないんだ
「だから、たかさんは傭兵を名乗り依頼を請け負っていると」
「ああ、ここまで安定させるのには苦労したもんさ」
とある屋上の上に青年、少女がいた
少女に苦笑してみせる。少女の名前は千寿 夏世、呪われた子供たちの一人でイニシエーターだ。プロモーターの名前は伊熊 将監。何かと苦労が多いと聞く
初めて出会ったときの記憶は今も鮮明に残っている。抜け殻のような少女で、自身を道具だと言っていた彼女の瞳にはもはや絶望すら無かった
拒絶することもなく自身に起こる不幸をただただ受け入れていく。一切の感情が無かったのだ。あれからしばらく経った。物静かな子だが今では色々な表情を見せてくれるようになった。初めて笑ってくれた時は涙を流して喜んだものだ
あの時初めて将監の顔を見たときは怒りに任せてぶん殴ったのも懐かしい記憶だ。ちなみにあれ以降貴文かなり嫌われているようで何かあるごとに切られそうになっている
「懐かしいです。あの時は驚きました、将監さんが殴られたのもですが・・・私たちをちゃんと人として扱ってくれる人がいたことに」
これが彼女たちの現状だ。理不尽な運命に翻弄され救いを求めている。今まで何人もの子供達と出会ってきたが皆同様に暗く思い過去を持っていた。世界が彼女たちを拒絶するのであれば俺は小さくてもそんな子供達の休める場所を作ってやりたい
貴文はそこまで考えてから思考を切り替える
最近妙な胸騒ぎがする
ここ数日の間で確実に何かが動き出している。先日、里見蓮太郎という民警がとある事件に関わった。とある刑事のツテで聞いた話だが感染者に第三者が関わっているとのことだ。色々とヤバイ匂いがするとの警告付きの情報である
そして明日は防衛省に来いと政府から直々に連絡がきたのだ。何か大きな事があったのではと疑っても仕方がないだろう。当然このことは夏世には伝えていない
「・・・人生を狂わされたのは皆同じなんだ。人ってのは本当に情けない生き物だよな」
これは自身にも当てはまることだ。何かを憎まなくては気が狂いそうになる気持ちはきちんと理解しているつもりだ。内心自嘲しながらもそれを表に出さないように空を見上げた
「たかさんはそう言う人です。私知ってます」
そういった彼女の表情は昔とは違う暖かい表情だった