学園艦誕生物語   作:ariel

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いつのまにやら50話まで来ました。当初は以前にも少し書きましたが、この物語の一章の部分で終わり、別の話として二章以降を書く予定だったため、これだけ続くとは考えていなかったです。

今のところ、なんとか一週間に二話投稿するペースは守れているかな…と思いました。このペースを少なくともこの章が終わる頃までは続けたいなと考えています(最終章の五章を書く頃は、ちょっとリアルに変化が出そうなので、ペースが落ちそうですが)。ということで、第50話をお楽しみください。


第50話 騒動の発端

1975年4月中旬 大洗女子学園

 

 

「辻さん、この申請書どうやって書いたらいいですか?」

 

「辻さん、私達新しく部活を立ち上げたいのだけど、学園長に直接交渉しないと駄目かな?出来たら辻さんに学園長との交渉はお願いしたいのだけど…いい?」

 

大洗女子学園の入学式が終わり、二週間が過ぎようとしていた。入学式の際、入学生を代表して挨拶を行なった辻正子は、自然と同級生達から頼られる存在となり、様々な相談が辻の元に舞い込んでいた。また同部屋の中村静子との何気ない会話の中で、自分が辻政信の孫だという事が中村に知られてからは、あっという間にその事実が同級生達の間を駆け巡り、辻への相談やお願いの数は倍増した。辻は中村の口の軽さを恨んだが、事実が広まってしまった以上はどうする事も出来なかった。そしてその原因を作った中村をこき使いながら、学業の傍ら様々なやっかい毎の解決に乗り出す日々を送っていた。もっとも、元々黒森峰女学園ですら入学可能だった辻にとって、大洗女子学園の授業は簡単過ぎるようで、学業については比較的楽な時間を過ごす事が出来ていた。

 

「中村、総務課に行って教室の使用申請書を5部もらってきて。それと、学園長と今日の17:00から会いたいから、秘書課に頼んでその時間の学園長の予定を抑えてもらって。あと…」

 

「辻さん…仕事多すぎるよ…。このままじゃ、私は全然自分のやりたい事もやれない…って、ごめんなさい、ごめんなさい。」

 

「な~か~む~ら~。一体誰のせいで私がこんなにたくさんの相談事を引き受ける羽目になったと思っているの?あなたの口が軽いからこんな事になったわけだから、その責任はとってもらいます!」

 

「辻政信の孫だったという件は私のせいかもしれないけど、辻さんがうちの入試でトップだったことは学園長がバラしたんだから、その責任は学園長が…いえ、なんでもありません。すぐに事務方まわりしてきます!」

 

これ以上は何を言っても自分の立場を悪くするだけだと理解した中村は、一刻も早く辻から逃げ出すために急いで廊下に駆け出していった。そしてその中村の後姿に『30分以内に戻ってこい!』という辻の言葉が追いすがってきた事で、中村の足取りは重いものに変わった。いくら辻からこの場で逃げ出した所で、居室が同じためどうせ夜には顔を合わせる事になる。それを理解している中村は、辻の所から駆け出してきっかり30分後に、辻の元に戻ってきた。

 

「中村、ご苦労さま。学園長の予定は抑えられたのね?そう、それならいいわ。とりあえず、私の仕事は一段落ついたから、学園長の所に行く17:00まで少し学園艦を散歩でもしましょうか。」

 

「そういえばまだ私たち、ほとんど学園艦を回っていなかったですよね。私もご一緒していいんですか?」

 

入学式から今まで、なんだかんだと辻に付き合わされていた中村は、辻と同様に未だに学園艦を探索する機会がなかった。そして、今日はどんな風の吹き回しか、辻が自分を誘って散歩でもしようと言ってくれている。中村は、この絶好の機会に学園艦を出来るだけ周ってみようと考え、辻の気が変わらないうちに急いで出かける支度をした。

 

二人の少女が学園を出て学園艦の後方に向かってしばらく進むと、学園のグラウンドが見えてきた。辻は前から少し気になっていたのだが、このグラウンドには古めかしい赤レンガ造りの巨大な倉庫が併設されていた。なんでこんな時代がかった倉庫がここに設置されているのか辻は理由を知らなかったが、どうせ空の倉庫だろうから、そのうち何処かの部活のために学園長から使用許可を取ればいいだろうと考えていた。

 

「中村?中村のお父さんはこの学園艦の建艦に関わっていたと聞いているけど、なんでグラウンドにあんな古めかしい赤レンガ造りの倉庫があるのか知ってる?」

 

「私も理由は知らないですね。そもそも私の父は建艦に関わっていただけだから、上の街についてはあまり関係ないような・・・」

 

「そっか・・・結局、学園長に聞いてみるしかないってことか。まぁいいわ。今日ついでに聞いてみるから。」

 

その後二人の少女は、学園艦の後甲板に設置されている街まで散歩を続け、入学して初めて見る街並を楽しんだ。途中で買い食いなどをして久しぶりの自由な時間を謳歌した二人だったが、気がつくと時計は16:30を超えており、辻が学園長の元に行く時間が迫っていた。

 

「よし、今日はここまで。また今度空いている時間にこの続きは一緒に周りましょう。さぁ、学園長の所に行きましょうか。」

 

「えっ?私も行くんですか?私これまで学園長室なんかに入ったことないのですけど。」

 

「うん、中村にはいつも上手に逃げられていたからね。だから今日は逃げられないように時間になるまで一緒にお散歩したの。ということで、諦めて私と一緒に来るように!」

 

道理で珍しく散歩に誘ってくれたわけだ・・・と、中村は今更ながらに辻に嵌められた事を悟った。

 

 

 

学園長室

 

 

「はぁ・・・今日も面談ですか・・・アポイントを取るようになってくれた事は良いのですが、こう毎日来られると私も困るわけで・・・。それで、今日の要望は何ですか?」

 

17:00丁度に辻が学園長室に入ってきた事を見て、学園長の青山はため息をつきながら、辻と何故か一緒に入ってきた中村に応接セットのソファーを勧めた。入学式が終わってまだ二週間近くしか経過していないが、辻は毎日のように学園長室に押しかけ、学園長の青山に様々な要望を出していた。当初は、夕方頃にいきなり辻に学園長室に押しかけられ、青山はあたふたして対応する羽目になったが、『面談を希望するならアポイントを取るように』と言ってからは、一応アポイントをとっているようだ。とはいえ、こう毎日にわたって決まった時間に会う事になってしまっては、アポイント以前に、青山も『どうせ今日も来るだろうな・・・』という諦めにも似た心境になっていた。

 

「毎日要望があるから、来ているだけよ!大体、本来なら要望を出す本人が直接ここに来ればいいけど、それをやっていたら学園長の予定全部詰まっちゃうよ?だから私が気を使って、こうやって生徒の要望を全部纏めて持って来ているだけでしょ!感謝してもらわないと!」

 

そう言って、辻は青山に生徒からの要望を纏めた書類を手渡した。書類を受け取った青山は一通り目を通すと、書類の片隅に自分のサインを入れていく。基本的に辻が持ってきている要望は、『新しい部活を立ち上げるための許可申請』や『放課後の教室の使用許可』といった、比較的簡単に解決可能なものばかりだった。とはいえ、これを全て要望者が直接青山の所にそれぞれが持ってくれば、たしかに辻が言うとおり青山の予定はパンクしてしまう。そのため辻に憎まれ口を叩きながらも、青山としては生徒達の纏め役として動いている辻に感謝していた。

 

「・・・辻さん、書類に全部サインはしました。これで、5件の新しい部活の立ち上げは問題ないでしょう。それと、それぞれの活動に使う教室の使用許可もこれでいいと思います。一応確かめてください。あと、水産科の夜間活動の申請ですね?これは水産科の先生とも相談しなくてはいけませんから、この場で回答は出来ませんが、次の学園艦運営会議の議題に架けてみますので、少し待ってください。」

 

青山から書類を戻された辻は、書類のチェックをして全てに学園長のサインがある事を確認すると、書類を中村に手渡して『明日、担当の事務に提出しておいて』と伝えた。そんな辻と中村の姿を見ながら、青山は『この子はたしか辻さんの同部屋の子だったな。それが理由で辻さんに扱き使われているんだな』と少し憐れむような視線を中村に向けていた。

 

「学園長?なんで、中村に憐れむような視線を向けてるのよ。もっとも憐れまなければならないのは、この私よ!大体、学園長が入学式でいらない事を言ったから、私がこんな事になっている訳でしょ?そういう意味では、私も中村も学園長の被害者よ!」

 

「いやいや、私も辻さんに申し訳ないとは思っているのですよ。ただ、なんだかんだと言いながらも辻さんは結構楽しそうに学園生活を送っているようですね・・・。まぁ、辻さんには感謝していますから、一段落ついたらそれなりのご褒美を用意します。ですから、それまでは生徒達の纏め役をお願いしますよ。」

 

辻は青山の言葉に最初は厳しい視線を向けたが、『ご褒美』という言葉に反応して表情が緩んだ。もっとも、その『ご褒美』というのは辻に肩書きを与える事だったようで、二学期に入った時点で青山が辻を生徒会長に指名したことで、辻は青山の元に怒鳴り込む事になる。とはいえ、その頃には大洗女子学園の生徒達は、自然と辻が自分達の代表だと考えていたため、学園長の指名をむしろ歓迎する事になる。そして、同部屋というたったそれだけの理由で辻にこき使われていた中村も、辻によって無理やり副会長に指名され、呆然とした表情でその任命状を受け取る事になる。もっとも、学園の生徒達は辻と中村はセットとして考えていたようで、こちらについても誰からも文句が出る事なく、すんなり決まる事になる。

 

「まぁ、ご褒美がもらえるならもうしばらく頑張るよ、学園長。ところで、前から気になっていたのだけど、うちのグラウンドにあるあの古めかしい倉庫は何?もし空いているなら、あそこも部活の活動場所として解放して欲しいのだけど。」

 

いつもであれば辻が何かを聞いても直ぐに返答する青山だったが、今回の辻の質問には即答を避けた。辻は、『何か問題のある事を聞いてしまったのか?』と思ったが、青山の顔を見ると怒っているような雰囲気はなく、どちらかというと返答に悩んでいる雰囲気だった。

 

「まぁ、結果的には失敗してしまった事なので、辻さんに話すべきか迷いましたが、私にこれだけ協力してくれていますから、一応あの倉庫について話しておいた方が良さそうですね。辻さんも知っているかもしれませんが、私はこの学園の学園長になる前に、黒森峰女学園の学園長の元で一年間研修を受けていましてね。その時にあの学校の戦車道を見学する機会があったのです。そして、可能であればうちの学園でも戦車道を始めたいと考え、茨城県と文部省に、その事を申請したのです。」

 

青山が戦車道開始を申請した結果、当時はまだ政治力を持っていた茨城選出の国会議員の橋本登美三郎が音頭を取って、文部省に予算支出を認めさせた経緯がある。そしてその予算により戦車などを格納する建物を作る事は出来た。しかし、次の予算でいざ戦車を購入しようとした矢先、首相の田中角栄と共に橋本も失脚してしまったため、戦車購入の予算は却下されてしまった。そのため、戦車を格納する倉庫だけが存在しており、非常に宙ぶらりんな状態になっているようだ。その話を青山から聞いた辻は、呆れたような表情を見せた。

 

「学園長・・・まさか、あの倉庫はいつか予算が認められた時に戦車を格納するため、そのままの状態にしておく、ということ?馬鹿じゃない?私は政治の事はよく分からないけど、たぶん戦車購入の予算なんて絶対に降りないと思うよ。」

 

「そうですね・・・たしかに辻さんの言うとおり、おそらく予算が降りる事はないでしょう。ただあそこまで立派な建物を作ったのに、戦車がないというのは私としては非常に悔しくて、なかなか諦める事ができないのですよ。ですから、私の気持ちの整理がつくまでは、あの倉庫の使用は禁止です。これは学園長としての決定です。」

 

その答えを聞いて、この学園長にも拘りがあるんだなと辻は考えたが、建物だけあって肝心の物がないというのは確かに悔しいだろうな・・・という事は理解出来た。また辻はこれまで戦車道の事はほとんど知らなかったが、学園長がここまで拘る以上は、余程面白い物なのだろうな・・・と考えて、中村に尋ねた。

 

「中村?私は戦車道の事はよく知らないんだけど、公立の学園艦で戦車道やっている所は、結構あるの?」

 

「そうね・・・辻さん。小規模に戦車道をやっている公立艦は結構ありますよ。そして、毎年それぞれの地方毎の学園艦で、地区大会のような小規模な試合が行われています。」

 

「そうなんだ・・・うちのクソ姉が居た知波単学園では戦車道が盛んだったようで、『全国大会が~』とか『定期戦が~』と良く言っていたけど、地区大会なんてあるんだね。」

 

「・・・辻さん。知波単学園は戦車道でも黒森峰女学園と並ぶ超名門校ですよ。それに、公立艦で全国大会に出る学校はないです。全国大会は、かなりの数の戦車が揃っていないと戦えないですから、それぞれの学園で二・三両しか戦車を所有していない公立艦では出場出来ないですよ。そういう理由で、全国大会に出場出来るのは国立艦ばかりで、基本的に国立艦15校による戦いが全国大会になっているのです。」

 

中村の答えを聞いた辻は名案が浮かんだのか、満面の笑みで青山に話しかけた。

 

「学園長、これよ!前に学園長言っていたでしょう?『うちの特色が出るような物を何か作りたい』と。うちで戦車道始めて全国大会に出れば、公立艦で唯一の全国大会出場校として特色でるよ。」

 

辻の迷案を聞かされた青山は、呆れたような顔をして辻に答えた。

 

「ですから辻さん、その戦車を購入する予算がないのです。聞いていなかったのですか?それに戦車を購入したとしても、全国大会には出られないのです。全国大会の規定は厳しく、太平洋戦争時に使用していたオリジナルの戦車部品で半分以上構成された戦車でなければ出場出来ません。現在購入可能な戦車は、当時の戦車を模して作製された新造の戦車ばかりですから、それらの戦車では規定違反になってしまうのです。」

 

最近でこそ戦車道連盟も修理部品の問題から多少規制が緩くなってきているが、それでも『オリジナルの戦車部品で半分以上構成されていなければならない』は、通常の公立艦にとっては厳しすぎる条件で、そのため全国大会への新たな参入は事実上出来ない状態だった。連盟としては全国大会においてレベルの低下を避けたいという意向もあるようで、おそらく今後規制が徐々に緩和されていったとしても、公立艦が参入出来ないような形になるだろうと予想されている。

 

「だったら、そのオリジナルの戦車を手に入れればいいじゃない!それこそ、国立艦が使用している戦車を少し融通してもらえば、この問題は解決するよ!中村、手始めにまず黒森峰女学園から戦車を奪いに行くよ。」

 

「辻さん・・・そんなの無理だよ。全国大会に出場出来る規模の戦車隊を維持するのは、物凄く大変だと思うし、それに国立の学園艦だって、私達に融通してくれるような余分な戦車なんて持ってないと思うよ。」

 

「中村さんの言うとおりです。おそらく各国立学園は、融通などしてくれないでしょうね。まぁ、うちとしては、とりあえず関東地区大会に出られるだけの戦車を揃える事が目標になるでしょうね。とはいえ、どれだけ時間がかかっても、私は必ずうちの学園で戦車道を始めて見せますから、辻さん達も期待して待っていてください。」

 

学園長が大見得を切ったのを辻は不審そうに眺めていた。学園長の青山は確かに良い人間だが、押しが弱い・・・それが辻の青山に対する評で、その評はほぼ正解だった。とはいえ、学園長がこれだけの大見得を切った以上は、一応学園長の顔を立てておくかと考えた辻は、その時は何も文句を言わずに、中村を連れて学園長室を後にした。

 

 

 

大洗女子学園 生徒寮 0001号室

 

 

学園長室を後にした辻と中村は、その足で生徒食堂に向かい夕食を食べた後、自分達の居室に戻ってきた。居室に戻った辻は、先程の学園長室で交わされた会話を思い出し、中村に戦車道に関する話を質問した。中村は、自分自身は戦車道に参加した事はなかったが、テレビ中継されるギャラクシーリーグの大ファンであり、戦車道に関連する雑誌なども購入していたため、最近の戦車道の事情についても詳しいようだ。

 

「中村?さっきの学園長室の話で、なんとなく理解出来たんだけど、なんで国立艦はそんなにたくさんのオリジナルに近い戦車を持ってるのよ。」

 

「えっとね、辻さん。そもそも国立の学園艦は、元々戦車道を行なうために作られた学園で、開校時に旧連合国の様々な国からのテコ入れがあったのよ。だからその時に前の大戦で使用した戦車を無償で渡されているのよ。例えば、サンダース大付属高校ならアメリカ、プラウダ高校ならソ連と言った感じでね。お祖父さんから聞いていないの?」

 

「お祖父様は、私が生まれる前に亡くなってるから、聞いてないよ。なるほどね、サンダース大付属とかプラウダは、そういう関係で太平洋戦争時のアメリカやソ連の戦車を持っているということか。でも、うちのクソ姉の居た知波単学園もそうだし、黒森峰女学園も外国の手は入ってないよね?」

 

「あの二つの学校は更に特殊。知波単学園の方は戦車道池田流が後ろについてるし、黒森峰女学園の方は西住流ね。どっちも戦車道の巨大流派で、終戦時のゴタゴタに乗じて大量の戦車を手に入れたと言われているわ。それこそ、辻さんのお祖父さんがこの話には絡んでるんじゃない?」

 

自分の祖父の事なのに、本当に何も知らないのだな…と、中村は少し呆れて辻の方を向いた。池田流と西住流がどのように終戦後に大量の戦車を手に入れたのかは、あまりよく知られていないが、学園艦が出来る経緯、そして戦車道が大戦後に再び始まった歴史を考えれば、おそらく目の前の少女の祖父が深く絡んでいる事は間違いない。中村も、様々な戦車道関連の本をこれまでに読んでいたが、二つの流派が戦車を手に入れた話について書かれた本は読んだ事がなかった。辻は中村の話を聞いてしばらく考え込んでいたが、中村の視線に気付いて、自分が考えていた事を話した。

 

「そういう理由があると、さっき学園長も言っていたように各学園で使っている戦車を譲渡してもらう事は難しいでしょうね。特に外国の手が入った学園艦では、まず渡してくれないでしょうね。でもそれだったら、知波単学園と黒森峰女学園の大元に頼みに行ったらどうかな?」

 

「辻さん、まさか池田流や西住流に行って、『戦車ください』と言うつもりなの?それこそ無理よ。第一、いきなり行っても門前払い喰らうだけだよ…。」

 

「そんな事やってみなければ分からないでしょ!とりあえず、駄目元で突撃しましょう。西住流は熊本にあってちょっとここから遠いから、愛知の池田流からね!中村、あんたもついて来なさい!」

 

辻の言葉を聞いて、中村は目の前が真っ暗になった。これまで入学の少し前から、目の前に居る辻と付き合ってきて分かった事は、辻が何かする時は自分も必ず巻き込まれるという事だ。そして、今回も辻は自分を巻き込む気満々だ。おそらく自分はそれから逃げる事は出来ないだろう。しかし、ここから愛知まで行くと言う事は、学園を無断欠席して出かける事になる。学園を無断欠席した事が親にばれたらどうしよう…中村は不安で一杯だった。そして、愛知に行ったからといって目的が達成される可能性は限りなくゼロに等しく、門前払いされる可能性の方が圧倒的に高い。

 

「授業の方は大丈夫。私が学園長に一筆書いておくから。という事で、まだ大洗港に学園艦が停泊しているうちに出発よ。交通費は問題ないわ。私これでもそれなりにお金あるから。それじゃ、学園長への手紙これから書くから、中村は移動の準備しておいてね。たぶん、明後日には出発することになるから。さぁ、楽しい事になってきたわね~。」

 

辻の口からは、中村を完全に地獄に叩き落す言葉が発せられた。そしてここから、大洗女子学園、知波単学園、黒森峰女学園はおろか、戦車道連盟や池田流そして西住流まで巻き込むことになる大騒動が開始することになる。




このまま行くと、四章がかなり長くなってしまうな…と思い始めました。当初考えていたネタを全て詰め込むと、なかなか四章が終わらなくなりそうなので、色々とネタを削りながら書いています。前回の話から登場中の辻のルームメイトですが、辻にこき使われ色々と貧乏クジを引く羽目になっています。当初はこのルームメイトの名前は決めていなかったのですが、某戦争漫画を参考に『中村』としました。←たぶん知っている人は、すぐに分かるネタですがw。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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