ミッドチルダに降り注ぐ豪雨。先程まで静けさと蟲の鳴き声が支配していた森林地帯にも、大粒の雨が降り頻っている。
そんな大雨の中を、ギンガとウェンディは突き進んでいた。目的は、突如いなくなった姉妹を探すこと。
「ギンガ! キリがないッスよ!」
ライディングボードで飛行しながらギンガに叫ぶウェンディ。雨は止む気配を見せず、このまま捜索を続けても埒が明かない。
その時、2人の下へ司令官であるラウムから通信が入った。
「ギンガ、ウェンディ。一旦何処かで雨が上がるのを待て」
陸士315部隊の司令室でも、ノーヴェの捜索は行われていた。
エネルギー反応を辿ったり、チンクが通信を繋げようとしていたのだが効果は見られない。
〔ですが!〕
「ただでさえ視界が悪い森の中だ。無駄に消耗しても仕方あるまい」
確かに、夜の森の中は視界が悪い。加えて大雨の中では捜索どころではないだろう。
「予報ではすぐにやむらしい。だから今は待て」
〔……了解〕
ラウムの指示をギンガは渋々受け入れる。だが、淡々と話していたラウムも捜索が進まない歯痒さに、握る拳の力を緩めなかった。
◇◆◇
ノーヴェが目を覚ました時、最初に感じたのは火の温かさだった。
パチパチと、枝が燃えて暗い周囲を明るく照らしている。それと同時に、熱が濡れた体を乾かしてくれていた。
「ここは……」
意識を取り戻したノーヴェは、ここが先程までいた森の中ではないことに気付いた。
岩肌で囲まれた空間で、外は未だ雨が降りしきっている。恐らく、ここは洞窟の中なのだろう。
「目が覚めたか」
ふと聞き慣れた男の声が聞こえ、ノーヴェは振り向く。
焚き火の向こう側にはさっきまで彼女と死闘を演じていた少年、アースが洞窟の壁に寄り掛かり座っていた。
「アースッ!」
警戒し、立ち上がろうとするノーヴェだが、体にダメージが残っており、上手く動くことが出来ない。
「無理をするな。俺も、もうお前と戦う気はない」
アースの言う通り、彼から戦意は感じ取れない。バリアジャケットも解除したようだ。
しかし、油断は出来ない。ノーヴェはアースを睨みながらも、大人しくその場に収まった。
そこで、ノーヴェは自分の身体に何かが掛かっていることに気付いた。ファーの付いた茶色いジャケット。それはアースが私服として来ているものだった。
「……何だよ」
上着とアースを交互に見ると、視線に気付いたアースはそっぽを向きながらツンとした態度を見せる。炎の明かりで分かりにくかったが、若干頬が赤くなっている。
ノーヴェが風邪を引かないよう掛けたのだが、自分の行為が気恥ずかしいのだろう。
「別に」
彼の様子がおかしくて、ノーヴェは思わず笑みを零す。やっと、自分達の関係が戻った。そう思いながら、アースの上着をギュッと抱きしめた。
無言で焚き火を囲う2人。色々と話したかったはずだが、急に2人きりで密接したムードになると何から話していいのか分からなくなる。
「あ、あのさ」
遂にノーヴェが話を切り出した。今まで洞窟の外を眺めていたアースがノーヴェを見る。
「何で、急に戦えなんて言い出したんだ?」
ノーヴェは、まず疑問に思ったことを口にした。話し合うつもりが、いきなり相手に襲われたのだ。疑問を持つな、という方が無理だろう。
すると、アースは表情をやや暗くして答えた。
「俺は……お前に感化されることが怖かったんだ」
ノーヴェは思わず目を見開いた。頑なにソラトへ固執していたアースが、まさか自分に感化されていたとは。
それは同時に喜ばしいことでもあった。成果がないと思っていた説得も、効果はちゃんとあったのだ。
「俺は今まで、ソラトを憎んで生きてきた。10年もの間、俺は怒りと憎しみしか知らずにマラネロの元で鍛えてきた。ソラトと、マラネロを殺す為に」
アースが吐き出す心の内を、ノーヴェは以前も聞いたことがあった。
マラネロによって生み出されたソラトのクローン。記憶と存在意義を奪われ、残ったのは植え付けられた、オリジナルへの憤怒。
同じように勝手に造り出したマラネロへの憎しみもあったが、今はソラト抹殺の為に嫌々ながら協力している。
「けど、最近はソラトと同じくらい、お前が俺の中を占めていく。それは怒りでも憎しみでもない、俺の知らない感情だ」
穏やかな声色でアースは話を続けた。
今まで負の感情しか持たなかったアースが感じたことのない思い。その正体が分からず、彼は温かさと同時に恐れを抱いていた。
「これ以上割り込まれれば、俺はソラトを憎む自分さえ失いそうで怖くなった……だから、ここで決着を付けたかったんだ」
未知の感情に支配され、たった一つだけ貫いてきた生き方すら失う。それを恐れたアースは、いっそノーヴェを亡き者にしてしまえば自分が保てると思った。
しかし最後の最後でトドメを躊躇い、結局は洞窟の中で彼女の目が覚めるまで面倒を見ていた。
「俺は甘くなってしまった……甘さは弱さだ」
アースは木を燃やす炎を見つめながら、自室でタイプゼロ・フォースに言われたことを思い出していた。
弱くなったな。その言葉通り、アースは自身の中の弱さを感じていた。ノーヴェを想い、他人に甘くなってしまう。それではソラトを殺すという悲願を遂げることは出来ない。
「俺にとって、ノーヴェはこの炎のようだ。温かさをくれるが、近付きすぎると心まで焦がす……教えてくれ、俺に何をしたんだ?」
虚無だった自分の心に灯してくれた火が、今度は自分の身を焦がそうとする。この想いの正体が知りたくて、アースはノーヴェに問いかけた。
「何って……」
一方、ノーヴェは戸惑っていた。
アースの心の壁を砕きたいと思っていたが、まさかここまで影響を与えていたとは、ノーヴェ自身も知らなかったのだ。
そして、ノーヴェに向けられた"負ではない"感情。それはまるで、愛の告白のようにも聞こえた。
「つまり……アースはあたしのこと、好きなのか?」
恐る恐る、ノーヴェはアースを問い返してみた。
時が止まったかのような長い沈黙の後、突然アースは火でも付いたかのように顔を真っ赤にした。
「な、何だ、この感覚は!? 体が煮えるように熱い……!」
「あ、アース?」
「何も言うな!」
態度が急変したアースに、ノーヴェは唖然とする。しかし、アースはノーヴェの顔を見ず、声すら聴こうとせずに頭を抱える。
身を縮こませ、頭から湯気を出しそうな勢いで悶えるアースを、ノーヴェは少し可愛いと思ってしまった。
「俺がノーヴェを……これが、好きという感情……?」
必死に"好き"というものを理解しようとするアース。初めての感覚に、未だ戸惑いながらも思考が感情に追い付いてきたようだ。
「そうか……」
心臓を高鳴らせながら、アースは漸く顔を上げる。視線の先には、彼が初めて愛しいと思えた女性。
驚きながらも、ノーヴェはアースを心配していた。
「ノーヴェ」
「お、おう」
やっと落ち着いたアースはノーヴェに呼びかける。
急に呼び掛けられ、思わず正座をしてしまうノーヴェ。
「俺は、お前が好きらしい」
今まで見たこともないような穏やかな表情で、アースはそう言った。その姿はやはりソラトに似ているが、彼とは全く違う印象を受けるノーヴェ。
彼は"ソラトの偽物"ではなく、"アース"という1人の人間なのだ。
遂に出された結論と、想っていた少年からの告白に、ノーヴェは喜びのあまり大粒の涙を流してしまう。
「ど、どうした!? 何処か痛むのか?」
いきなり泣き出したノーヴェに、今度はアースが心配をしてしまう。
だが、ノーヴェは涙を零しながらも笑顔で答えた。
「バカ、あたしも好きだよ!」
やっとのことでアースと想いが通じ合ったノーヴェは、燃え盛る焚き火を当たりながら心臓の鼓動が早くなっていくのを感じていた。
視線の先には、先程まで見たこともないような人間らしい仕草をしていたアースがいた。今は、彼は大人しく座っている。
ノーヴェへの恋心を自覚した今、何かを考えているようだった。
「アース……これから、どうすんだ?」
沈黙を続けるアースに、ノーヴェは耐え切れず尋ねる。
すると、焚き火を見つめていた視線がノーヴェの方を向いた。
「俺は……お前に、共に来て欲しい」
アースは右手をノーヴェの方へと伸ばす。
今も意識は自分の方に向けられている。そのことが嬉しくて、ノーヴェはアースの手を取ろうとした。
「何処へ、だ?」
しかし、ノーヴェは敢えて聞いた。アースは
まだ希望を捨てたくなかった。きっと、これから時間を共にしようという意味だろうと思いたかった。
「マラネロの元へだ」
アースは迷いなく言葉を発する。ノーヴェの希望が砕けた瞬間だった。
「何で……何でだよ!」
「勿論、マラネロに味方するつもりは俺もない。奴にもいずれ報復する」
ノーヴェへの想いに対する迷いがなくなった今、アースの瞳には再び復讐の炎が燃え上がっていた。
「だが、まずはソラトだ」
アースはソラトを狙うことを止めてなどいなかった。寧ろ、意欲は更に高まっていた。
さっきまで赤く染まっていたノーヴェの顔色が青く変わっていく。
「もうソラトを狙う必要はないだろ!」
「あるんだよ」
アースの冷酷な面に、ノーヴェは閉口してしまう。
「本物を殺すことで本物以上の存在となって、新たな人生を始める! 今の生きる理由を果たした時、傍にノーヴェがいて欲しいんだ!」
偽物として生み出された自分が、
そして、望まれなかった命を勝手に生み出したマラネロにも裁きを下すこと。
それがアースの生きる理由全てだった。
「どうしたんだ、ノーヴェ」
結局、アースの歪みを変えることが出来なかった。
絶望に満ちたノーヴェの心に気付かず、アースは狂喜の笑みを浮かべる。
「戦いたく、なかったんじゃないのか?」
「……ああ」
ノーヴェは以前、アースに感じたことを言ってみた。
前回と違い、彼は素直な気持ちを想い人へ伝える。
「けど、俺にはこの生き方しか出来ない。今更ブレる訳には行かないんだ」
今更捻じ曲げることの出来ない生き方を、アースは今までしてきた。そのために奪ってきた命もある。
それが正しいかどうか、アースには関係なかった。ただ、これまで信じて生きて来た道を簡単に変えてしまえば、アースは今度こそ自分を見失ってしまう。
こればかりは、もうノーヴェにもどうすることもできなかった。
「だから、ノーヴェ」
アースはノーヴェを求めるように再度手を伸ばす。だが、ノーヴェはその手を取ることが出来なかった。
「……そうか。それでもいい。俺達は敵同士だ」
伸ばした手を戻すアースは、今まで通り鋭くノーヴェを睨んだ。視線の先には、もうノーヴェは映っていない。あるのは、ソラトとマラネロへの怒りのみ。
上着を羽織ると、懐からジェットエッジの待機形態である黄色いクリスタルを取り出し、ノーヴェに投げ返した。
どうやら反撃されないよう、奪っておいたようだ。
「通信が入ってるみたいだな」
「なっ!?」
冷静に指摘すると、ノーヴェは焦りながら着信履歴を見た。1時間程前からチンクの名前がズラリと並んでいる。
部屋から抜け出し、無断でアースに会いに来ていたノーヴェは冷汗を滝のように流していた。
「雨も上がった。後は適当に回収して貰え」
アースの言う通り、外はすっかり雨が止んでおり、月が夜空に顔を出している。
今頃、ギンガ達がノーヴェの捜索を再開しているはずだった。
「こうしてお前と話す機会も、もうないだろう」
アースはノーヴェから離れ、転送装置を作動させる。緑色のエネルギー光がアースを包んでいく。
「待て、アース! 何であたしを攫わなかったんだ!?」
ノーヴェは最後の疑問をアースにぶつける。
洞窟で雨宿りなんかしなくとも、アースは気絶したノーヴェをマラネロの研究所に連れ帰ることが出来たはずだ。
「……話がある。そういう約束だったろう」
最後の最後にアースは想いを寄せる相手に笑みを見せ、姿を消した。
相思相愛の仲となった。なのに、結ばれず、敵同士という関係のまま。
「バカ……」
焚き火はすっかり消え、月の光だけが悲しみに震えるノーヴェの背中を照らしていた。
◇◆◇
ギンガ達に連れ帰られたノーヴェは、無断外出と無策な敵への接触を咎められていた。
「全く、どれだけ我々が心配したと思っている!」
部隊長室に、チンクの叱り声が響く。事実、ノーヴェの身を一番心配していたのはチンクだった。
ノーヴェは暗い表情でチンクの説教を黙って聞いていた。
「……チンク、済まない」
今まで沈黙したままノーヴェを見据えていたラウムが、ふと立ち上がる。
突然動き出した上司に、チンクも口を止めて下がった。しかし、言葉の意図が分からず疑問符を浮かべる。
「ノーヴェ」
目の前に立ったラウムに呼ばれ、ノーヴェは俯いていた顔を少し上げる。
次の瞬間、ラウムはノーヴェの頬を引っ叩いた。上司の急な行動に、傍から見ていたチンクは目を見開いて驚く。
「ら、ラウム殿!?」
「何故叩かれたか、お前なら分かるな?」
やり過ぎだと講義しようとするチンクを無視し、ラウムは淡々とノーヴェに話す。
叩かれた状態のまま、ノーヴェは呆然と立ち竦む。
「お前は規則を破った。周囲に心配と迷惑をかけた。それがどれ程危険か、予想出来ぬこともないだろう」
ラウムは冷たい視線で、生気の抜けたようなノーヴェを射抜く。
「何より、お前が死ねば誰が奴を迎え入れるというんだ?」
ノーヴェの身体が反応する。アースを受け入れることは、自分の役目。しかし、アースはそれを拒んだ。
「あたしは……」
「今は、拒まれたのだろう」
ラウムは敢えて、冷たい現実を突き付けた。ラウム達は、洞窟でノーヴェ達の間に何が起きたのかを知らない。だが、ノーヴェの傍にアースがいない上、ノーヴェの態度から容易に結果の予想が出来た。
辛い現実に再度向き合わされ、ノーヴェの眼に再び涙が溢れそうになる。
「その程度で、諦めるのか?」
冷徹な態度を変えることなく、ラウムは言い放つ。
「ノーヴェはここで諦めるような覚悟で、こんな危険を冒すような真似をしたのか? アースへの想いはここで終わっていいものなのか?」
ラウムの言葉の一つ一つが、ノーヴェの心を揺さぶる。
「終わらせない! あたしは、アイツを絶対諦めない!」
ここで終わっていいはずがない。何度も擦れ違う運命だとしても、ノーヴェはアースを絶対に諦めきれなかった。
「俺は隊長の立場故、お前を罰する。だが、個人としてはお前の覚悟を尊重したい。真にやりたいことを、己の意思で貫き通せ」
ラウムは漸く普段の態度に戻り、ノーヴェに話した。
どうやら、規則を破ったことよりも意気消沈していたことが気になり、喝を入れたかったようだ。ラウムの意図が分かり、チンクも安心する。
「ノーヴェ・ナカジマ。一週間の謹慎を命じる。話は以上だ、戻っていい」
「はい、失礼します」
幾分か闇の晴れた様子で、ノーヴェは部隊長室を出た。
「チンク。お前も行っていいぞ」
「……失礼します」
席に戻ったラウムは、心配そうにノーヴェが去った後を見ていたチンクに声を掛ける。
すると、チンクはラウムに頭を下げ、ノーヴェを追って行った。
「……やはり、俺は隊長に向かないな」
1人になった部屋で、ラウムはノーヴェを殴った右手を見て呟いた。
◇◆◇
「うああああああっ!」
マラネロ達のアジトにある訓練室では、帰還したアースの雄叫びが響いていた。
いつもならばソラトへの怒りを表に出して訓練に励んでいたのだが、今は違った。
頭の中からノーヴェへの想いを消し去る為、そして彼女への喪失感と虚無感を振り払う為、大剣を乱暴に振るっていた。
「くそがぁぁぁぁっ!!」
砲撃魔法を放ち、ネオガジェットを次々とスクラップに変える。
しかし、いくら壊そうと、いくら暴れようと、アースの心は晴れない。
こんなに悲しくなるなら、知らない方がよかった。許されない想いなら、最初から抱かなければよかった。
心の闇を晴らす方法を他に知らず、アースは我武者羅に全てを破壊する。
ソラトに、マラネロに、ノーヴェに、そして何も出来ない自分に怒り、アースは魔力切れになるまで暴れていた。
一方、マラネロの研究室には、4人の弟子達が集っていた。
「何だ、ロノウェ。お前が一番かよ」
前回の襲撃ではスズメバチの姿を見せた男、フォラスが椅子に座っているロノウェに突っかかる。
「君達が来るのが遅いんだよ。それに、僕は君と違って仕事が早いんだ」
「んだと? 全部機械頼りの癖に」
「よせ、フォラス」
「短気は早死にするぞ」
ロノウェに挑発され襲いかかろうとするフォラスを、ウィネが冷静さを崩さずに抑える。
その後ろでは、黒髪にパーマが掛かった男、エリゴスが嘲笑している。
どちらも、フォラス同様に獣人としての顔を持ち合わせている。
「やぁ、お揃いだね」
マラネロの軽快な声で、騒がしかった研究所内が一瞬で静かになる。
4人の男達は、歩いて来る部屋の主に頭を下げた。
「ロノウェ・アスコット、フォラス・インサイト、エリゴス・ドマーニ、ウィネ・エディックス」
マラネロは、この場にいる人間の名前を一人一人呼ぶ。
今回彼等に招集を掛けたのは、他でもないマラネロだった。
「改めて。遠路遥々、ご苦労だったね。私の優秀な弟子達」
「はっ!」
彼等は各次元世界に研究所を持ち、それぞれ研究に勤しんでいたのだ。
マラネロの挨拶に、4人はそれぞれ頭を下げた。普段は主に性格面の問題で衝突することがある4人だが、全員等しくマラネロに経緯と畏怖を抱いている。
「さて、君達を呼んだのは他でもない」
丸眼鏡を怪しく光らせ、マラネロはモニターを起動させる。
映し出されたのは、これまでの機動六課との戦闘場面だった。
「この実験素材を捕えること。捕えた後は好きにしてもいい」
敵対する優秀な魔導師や騎士達を実験素材と言い放つマラネロに、ロノウェは漸く理解した。何故、自分の師匠が今まで六課を潰そうとしなかったか。
マラネロは敵ですら自分の道具にしか考えていなかったのだ。
「私は聖王の器とエースオブエースを」
ウィネ・エディックスが顎に手を乗せ、なのはの映像を眺める。
「俺はプロジェクトFの残滓でも取るか」
フォラス・インサイトは、プロジェクトFによって生み出された経緯を持つ、フェイトとエリオを見据える。
「我輩は夜天の書に興味がある」
エリゴス・ドマーニは漸くやる気のある態度ではやてとヴォルケンリッターの活躍を見ながら、指で前髪を弄る。
「……じゃあ僕はタイプゼロとナンバーズをバラすよ」
そして、ロノウェ・アスコットはナカジマ姉妹を狙うことを宣言した。
それぞれ狙いが決まったところで、マラネロは満面の笑みを浮かべる。
「では、健闘を祈るよ」
狙われたとも知らず、事件解決を目指す六課の面々。
狂気の科学者達の毒牙が今、迫ろうとしていた。