異界の魂   作:副隊長

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4話 お仕事

「ねぇ、ケイ。ちょっと良い?」

「改まって何だいユニ」

「組んでみたい人がいるんだけど、ダメかな?」

 

 ラステイションの教会。女神候補生であるユニは、ラステイションの教祖である神宮寺ケイに尋ねた。

 

「へぇ、君が誰かと組みたいと言うとは以外だね。相手は誰だい? 防衛隊の人か?」

「ギルドの人」

「ふむ。名前は?」

「四条優一って奴」

 

 そんなユニの申し出に、ケイは僅かばかりに驚きつつ、促す。教祖であるケイから見ても、ユニと言う女神候補生の少女は優秀である。姉である女神、ノワールと比べてしまえば流石に見劣りしてしまう部分はあるが、それでも全体的に隙が無くどんなことでもそつなくこなす少女であった。それ故、他者の助力を得ずとも大抵の事を自分でできてしまう為、これまで誰かの力を借りたいなどと言う事はなかったのだが、どういう心境の変化があったのだろうかと、思う。そう思うようになった経緯までは解らないが、どちらかと言えば好ましい変化と思える。

 

「聞かない名前だね。なんでまた、急に?」

「この前行った討伐で少し、ね。そんな事より良いの? 駄目なの?」

「教祖としては、簡単に承認する訳には行かないね。良く知らない人物なら尚更だ」

「う、やっぱり」

 

 とは言え、ケイもラステイションの教祖だ。女神不在の今、唯一の女神候補生を得体の知らない人物と組ませる事に簡単に頷く事は出来なかった。ラステイションの女神、ノワールに何かあった時、ユニがラステイションを背負って立たなければいけないからだ。

 そんなケイの反応を予想していたのか、ユニは少し残念そうにするも、あっさりと引き下がった。最初から無理だと思っていたのだろう。

 

「とは言え、ユニの言葉を無碍にする訳にもいかないか」

「え……?」

 

 話は終わりだと去ろうとするユニに、ケイはそう言葉を続けた。話自体は、ケイとしても完全に駄目だと思ったわけでは無かったからだ。予想外なケイの言葉に、ユニは一瞬呆けたような声を零す。

 

「ふふ、解らないなら調べればいいって事だよ。ユニから男の人の名前を聞くとは思わなかったからね。僕の知らないうちに成長しているんだね」

「ちょ、なんか変な勘違いしてない!?」

 

 ケイはふんわりと笑い、そう付け足す。ユニがまた一つ成長するかもしれない。そう考えれば、少しぐらい時間を割いても構わないか。ラステイションの教祖はそんな事を考えつつも、表情には出さずただ笑みを深める。そんなケイに、ユニは少し頬を赤くしながら詰め寄っていく。ラステイションの教会には珍しく、騒がしくなっていた。

 

 

 

 

「おーい四条、見つかったぜ」

 

 動かしていた手を止め、名前を呼ばれた声に振り返る。長い時間を地面相手に中腰で探し物をしていた為、立ち上がり際に一伸びすると少しばかり心地が良かった。一呼吸着いたのちに、僕の名前を呼んだ相手に視線を向ける。身の丈程ある大きな剣を腰に携えた男性が此方に向けて笑みを浮かべていた。

 天宮リント。それが彼の名で、今回の討伐兼採取の依頼で手を組んだ相手であった。

 既に僕がラステイションに住み始めて数週間が経ち、何度か組んだ相手である。彼は長くラステイションを拠点にしているようで、ギルドの仕事に関しても僕等よりも遥かに先輩であり、良い相談役になってくれてる。ユニ君と別れてどうなる事かと思ったが、リントさんと知り合えたことで、何とか人並みに暮らす事が出来ていた。

 

「ああ、漸く見つかりましたか。思ったより時間がかかっちゃいましたね」

 

 辺りの魔物を散らした後に探し物をしていたのだが、なかなか見つからず思いのほか時間がかかってしまっていた。討伐自体も中々骨の折れる仕事であるため、その後に目的のものを探すというのは大変であった。流石に報酬がそれなりの額あるだけあって、少しばかり疲れていた。思わず、ふうっとため息が零れる

 

「だな。だがこれで依頼は完了だ。ささ、物も見つかった事だしとっとと帰って報告するか」

「ですね。確か、宝玉って言いましたね、ソレ」

 

 リントさんの持つ素材を見詰め見詰め尋ねる。何でも市場には滅多に出回らない代物で、かなりの価値があるアイテムの様だ。玉と言うだけあって、丸い形をした石なのだが、どこか不思議な力を感じる。

 今回の依頼はラステイションの協会からのモノであり、何に使うかまでは知らされていないのだが、モノがモノだけに、何か凄いモノを作ったりするのかと勘ぐってしまうのも仕方が無いだろう。

 

「ああ、まったくこんなものを何に使うんだろうな。まぁ、俺としては悪事にさえ使わないなら、なんだって良いんだけどな」

「そうですね。でも、どうせなら人の役に立つ事に使ってくれると嬉しいかな」

「まったくだ。それなら、プラネテューヌまで来た甲斐があるってもんだな」

 

 互いに笑みを零しつつ、言い合う。現在地は、バーチャフォレストと言う森の奥深くだった。普段生活の拠点としているラステイションから離れ、その西に位置した国であるプラネテューヌと言う国に来ていた。ラステイションは産業の中心であり、工業地帯と言う事もありあまり多くの緑が見れる事は無いが、プラネテューヌはラステイションと比べると、緑豊かな国と言う印象を受ける。無論、ラステイションに緑が無いと言う訳では無いのだが、広大な都市部の印象が強いせいか、どうしても自然が少ないと感じてしまう。

 都市と言う点ではプラネテューヌも負けてはいないのだが、国全体的に見るとラステイションと比べるて、自然豊かな国だと感じた。

 

「しかし、今回は汚染された奴が妙に多かったな」

 

 来た道を戻りながら、リントさんが思い出したかのように零す。汚染された奴と言うのは、簡単に言えば凶暴化した敵の事になる。言われてみれば、妙に多かった気がしないでもない。目にする魔物数体に一体は汚染されていたように思える。……良く考えるとこれは相当多いのではないのだろうか?

 ゲイムギョウ界と言うのは、四人の女神が存在しており、その女神を信仰する事で女神の力が強まり国を治める女神の力によってより国が豊かになると言う仕組みなのだが、現在は四人の女神の他にもう一つ信仰される組織があった。犯罪組織マジェコンヌと呼ばれる組織である。

 マジェコンヌと言うのは、犯罪神と言う神を崇める組織であり、大雑把に言うと女神に対して敵対している組織であった。そして、驚く事にその組織は、国を統治する女神たちよりも遥かに人々の支持を集めていた。

 で、魔物と言うのは、女神以外が多く支持されていると凶暴化するようで、その影響が世界の各地で現れていると言うのが、実際にゲイムギョウ界に住んで得た知識であった。

 

「犯罪組織の力が強くなっているんでしょうね。女神候補生には頑張って貰いたいところですね」

「ああ。だけど、俺たちがこうやって地道にラステイションの名前を背負いながら仕事をこなす事でも、少しは力になる事が出来るんだぜ」

「成程。良い仕事をすれば、ラステイションのギルドの株が上がり、最終的には女神の名が売れると言う訳ですか。広告ってわけですね」

「そう言うこった。直接は無理でも、俺たちも女神さまの力になれるんだ。悪い気はしないだろ?」

「ふふ、そうですね。自分たちでも役に立てると思うと、嬉しいですよ」

 

 そう考えてみると、確かに自分も女神候補生の力になれている。そう考えると何処か誇らしく感じた。ぼんやりと、以前に知り合った女神候補生の女の子の顔を思い出す。ギルドで別れてからそれっきりだが、無理をしていないだろうか。そんな事を心配してしまう。優秀な子であるのだが、何処か放って置けない女の子だった。

 

「んじゃ、サッサと帰りますか」

「ええ、行きましょう」

 

 あの子は今日も頑張っているのだろうか。そんな事を思いながら、帰路についた。

 

 

 

 

 

「やぁ、四条君。少し良いかい?」

「おや、班長さん。お久しぶりです」

 

 宝玉をギルドの届けて数日後、新しい仕事が無いかとギルドで情報を見ていたところで、声を掛けられた。相手は防衛隊の班長さんで、シーハンターと戦った時にお世話になった人であった。あの一件以来妙に目をつけられてしまったのか、三回ほど名指しで仕事をお願いされたことがあり、既に顔見知りと言っても差支えが無い程度には仲良くなれていた。こう考えてみると、最初に出会ったユニ君と言い、一緒に組む事が多いリントさんと言い、人との縁には恵まれているのかもしれない。

 

「実は、今回もお願いしたい仕事があるんだ」

「解りました、聞かせてもらいます」

「ああ、ありがとう。今回は、協会の教祖様直々の話でね。腕利きを探していたんだ」

「教祖様、ですか。なんか、凄いところからの話ですね」

 

 班長さんの言葉を聞き、少しばかり驚く。教祖と言うのは女神に直接仕え、その補佐をするのが仕事である。いわば秘書であり、ラステイションに居る人間としては最も力を持つ人物であった。現在女神が不在であるようなので、実質国のトップからの依頼と言える。

 そんな人物からの依頼を、こう言っては失礼だが、防衛隊の班長が持ってくると言うのはどう考えてもおかしい事だと思う。思うのだが、班長さんとは何度か一緒に仕事をしている為、嘘を言うのは勿論、悪い人だとも思えなかった。その為話を聞いてみる事にする。

 

「ああ、まあ、何度かあげてる報告書に君の事を書いていたのが目に留まったんじゃないかな。実際、戦闘に関していうなら君は大したものだよ。人の上に立つ勉強さえしたら、部隊長になるくらいは簡単なんじゃないか?」

「流石に持ち上げすぎですよ。剣も魔法も、自分にできる事を頑張ってやってるだけですって」

「いやいや、そんなことは無いさ。実際に君の実力を見た後だと、謙遜としか思えないよ」

 

 思わぬところで持ち上げられ、少しばかり返事に窮す。実際のところ、班長さんが言うように自分の用いる剣技は洗練されている。だが、それは僕自身の経験に裏打ちされた力では無かった。僕の使う剣技と言うのは、剣に宿った持ち主たちの記憶を自身の中で再生し、再現しているに過ぎない。言うならば、模倣である。僕の使う剣技と言うのは、そう言うものなのだ。

 だからこそ、あまり人に誇ったりするものでは無いと思う。借りモノの力。借りモノの記憶。それが、自身を支える土台となっている。過去の使い手たちの遺業が無ければ、僕だけではきっと満足に戦えないだろう。自身の力だけで戦えるようになった時、はじめて胸を張れる。

 だから、持ち上げられた事に困ってしまう。何というか、親に手伝ってもらった宿題を先生に絶賛される感覚。決まりが悪いと言うか、ずるをしているようで心中穏やかでは無い。

 

「それでも僕自身は、全然ですよ。もっと強くならないとっていつも思います」

「ふむ、向上心があるのは良い事だが、君はもう少し自信を持つと良いかもしれないね」

「何れは、胸を張れるような人間になりたいですよ」

 

 班長さんに言ったように、今の僕はまだまだ弱い。こと剣に関していえば特別な力を得ているが、それだけなのだと思う。リントさんや目の前の班長さんたちに比べれば、自分自身の経験と言う点で完全に劣っていた。

 ならば、自分はこれから色々な経験をしていけば良いだけだろう。無いならば手にすれば良いだけなんだから。勿論、口で言うほど簡単な事では無いだろうけど、目標があると言うだけでも意識が変わってくる。何よりも、自分の知らない事を知るのは、単純に楽しかった。

 

「っと、話が逸れてしまいましたね。本題に戻りましょうか?」

 

 気付けば脱線してしまっていた為、軌道修正を図る。

 

「そうだった、すまないね。今回の仕事と言うのは、前回協会からの依頼を受けてくれたようだけど、ソレと同じく素材の収集と言う事になる」

「また、レア素材ですか? 一人で他国まで行けとかいう話なら、遠慮したいですが」

 

 いくら少しは慣れてきたとはいえ、流石に一人で他国に行く度胸は無かった。他国と言っても、チキュウで例えて言うならば他県に行くような感じだったが。リントさんと二人で行った時に要領はある程度分かったけど、流石にまだ無理だと思う。ラステイションの中でも結構わからないのに、他所とか行ける訳が無い。

 

「その点に関しては大丈夫だよ。目的のモノは、ラステイション国内にある」

「なら、場所に関しては大丈夫そうですね」

「ただ一つ問題があってね」

「問題?」

「ああ、面倒な相手が落とす素材でね。並の隊員じゃ相手にならないんだ」

「成程」

 

 班長さんの言葉にとりあえずは頷く。少しばかり気になる事があるけど、とりあえずは置いておく。

 

「つまり、僕にそいつを討伐して来いと言う事ですか?」

「ああ。ただ、独りでと言う訳では無いよ。こちらが指定する人と一緒に行って協力して仕事にあたってほしい」

「む、僕としては構いませんが。相手の人は了承してくれているんですか?」

 

 僕の方は協力するのは全然かまわないのだけど、相手さんが嫌がったら目も当てられない。

 

「その点については、大丈夫だよ。君も知っている人が、パートナーだからね」

「知っている人? ……ギルドの天宮さんですか?」

 

 最初に出てきた名前がリントさんだった。ギルドの仕事で一番多く組んだ人で、尊敬できる先輩と言っても良い人だった。

 

「いやいや、違うよ。ギルド所属の人じゃないさ」

「ん? なら誰だろう」

 

 首をかしげる。ギルド関係では無い人と言うと、正直思い当たらない。正確に言うと一人だけいるのだけど、無いだろうと選択肢から除外していた。

 

「言っただろ、ラステイションの協会からの、それも教祖様直々の依頼だって」

「……ああ、そう言う事ですか。正直予想外な相手なモノでして、咄嗟に思いつきませんでしたよ」

 

 班長さんがそこまで言ったところで、誰の事か思い当った。教会の教祖からの依頼。女神不在の中で態々僕なんかを選んだ理由は解らないが、教祖自ら動くほどの仕事。状況から考えるに、女神関連の仕事ではないかと思い浮かんだ。そう考えると、一緒に仕事をする人物の顔も思い当たる。

 

「ラステイションの女神候補生、ですか?」

「ご明察。ユニ様直々の指名でもあるから頑張ってくれよ」

 

 少しばかり意外だったけど、またあの子に会えると思うと少しだけ嬉しく感じた。以前はお世話になりっぱなしだったから、次に会う時は何かしてあげれたらと思っていたところだった。思わぬところで縁とは繋がるものだと実感する。

 

「あの子からの頼みと言うのなら、断る理由がありませんね」

「なら、引き受けてくれるのかい?」

「ええ、お受けいたします」

 

 断る理由はない。だから僕は、今回の依頼を受ける事にした。

 

 

 

 

 

「此処でしばらく待っていてもらえるかな?」

「解りました」

 

 依頼を受けた後、防衛隊の詰所に案内され待合室へと通され、一人になる。備え付けの椅子に腰を下ろし、手にする長釣丸をぼんやりと見つめる。端的に言って、手持無沙汰だった。長刀を腕の中で転がしながら、外の風景を眺める。発展しているラステイションの町並みは、摩天楼と言うに相応しい高層ビルの群れであり、その下を歩く人たちがたくさん見て取れる。自分の過ごしていたチキュウの都市と比べても近未来的で、見知らぬ機械等が見て取れる。

 今頃班長さんはラステイションの教祖に連絡をしているのかな、などと考えながら人の営みに視線を向ける。足早に通り過ぎていく人たちばかりだが、その人たちにもいろいろな人がいる。きっちりとしたスーツを着ている人、おしゃれな服を着崩し仲間たちとだべりながら歩く若者、仲睦まじげに歩く老夫婦に、皮の鎧を着こんだ騎士風の男性など、様々だった。

 

「生きるっていうのは、面白いなぁ」

 

 様々な人がいる。ソレを見ているだけで面白い。一度は目を諦めたからか、余計にそう思う。

 

「アタシからしたら、アンタの発言がおもしろいわよ」

「……手厳しいね。それはそうと、お久しぶりだねユニ君」

 

 思わず聞こえた女の子の声に、少しだけ驚きながら答える。気付けば、黒の妹であり女神候補生のユニ君が此方をじっと見ていた。思っていたよりも遥かにはやい。独り言を聞かれたのが少しだけ恥ずかしかったりするが、それ以上に純粋に嬉しかった。

 

「うん。あれからもう一月ぐらい?」

「そうだね。なんだかんだ言って、それなりに上手くやれてるかな。思い返すと、最初にユニ君に色々お世話になったのが大きいかな。凄く感謝してます。ありがとう」

「ちょ、頭下げないでよ。ベ、別にアンタの為にしたわけじゃないんだから! 前も言ったけど、正当な対価よ、対価!」

 

 感謝の言葉にユニ君は恥ずかしそうに目を反らしながら言う。相変わらず素直じゃないようで、そんな姿が微笑ましい。年相応で可愛らしいなと、温かい気持ちにさせられる。

 

「ふふ、そういえばそうだったね」

「だから、笑うなって!」

 

 頬を上気させ捲し立てるユニ君。しかし、なんでこの子はこんなに照れ屋なんだろう。他人に優しいのは別に恥ずかしがることでは無いと思うのだけど、女の子特有の葛藤でもあるのだろうか。

 

「まあ、ユニ君にまた会えてよかったよ」

「……あ、アタシに会えてそんなに良かったの?」

 

 少し不思議そうに聞くユニ君。

 

「うん。お礼もまともにできてないからね」

「べ、別に、お礼なんていらないわよ」

「まあ、その話はまた今度するよ。今日はお仕事の話を良いかな?」

 

 ユニ君といろいろ話したいのはやまやまだけど、そうするといつまでも話が進みそうにないので軌道を修正する。別に話すのは移動中にでもすればいい。

 

「っと、そうだった。今回アンタに手伝ってもらいたいのは、血晶の入手よ」

「血晶?」

「ええ。セプテントリゾートにいる魔物が持っているものなの。これが資料よ」

「成程」

 

 そう言い、詳細の書かれた資料を渡される。戦う魔物の種類、傾向、注意すべき特徴などが書いてある。テコンキャット。それが今回討伐する相手だった。それ以外にも付近に現れる可能性がある魔物や危険種の情報が書かれている。一通り目を通す。

 

「行ける?」

「大丈夫だけど、聞いていいかな?」

「何?」

 

 資料から目を離し、ユニ君に尋ねる。どうにも、気になったことがあったから。

 

「正直、今回の依頼って僕必要ないんじゃないかな?」

 

 率直に言った。ユニ君の実力は自分の目で見た以外にも、街の人たちや防衛隊の人、ギルドの人たちから聞いていた。彼女の実力から、余程の事が無い限り一人でも問題が無いように思えた。

 

「そう、ね。確かにアタシ一人でもできると思うわ。けど」

「けど?」

「そ、その。……たから。アタシは誰かと組む事なんてなかったから、良い機会かと思ったの」

 

 恥ずかしそうに零すユニ君。声が小さすぎて一部聞き取れない言葉もあったけど、大体理解はできた。

 

「そっか。前言ったこと覚えていてくれたんだね」

 

 そう思うと、嬉しくなる。無理だと思っていたから、尚更だった。

 

「ふ、ふん。嬉しそうな顔しちゃって。アタシと組めること、光栄に思いなさいよ」

「うん、ありがとう」

 

 そんなユニ君の言葉に素直に礼を言う。ユニ君が素直じゃない事は解っていた。ならば、僕が彼女の分まで素直になれば釣り合いが取れると思う。

 

「うう、なんか調子が狂うな」

「ふふ、よろしくお願いします」

 

 笑みと共に告げる。

 

「……うん。よろしく」

 

 そうするとユニ君は、困り半分恥ずかしさ半分と言った感じで頷いた。

 

 

 

 




原作の時間軸で言うと、ネプギアVSユニの直前ぐらいです

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