ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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(*´ω`*)今更ですけどこれ、原作キャラ死亡タグ付けるべきでしょうかね。
いや、あんなんでも一応原作では死ななかったキャラですし……。


第67話 蹂躙

 ヴォルデモートに味方した事が人狼族最大の過ちであった。

 目の前に広がる地獄絵図を眺めながら、一族の長はそう考える。

 そこにあるのは、人狼と吸血鬼とで繰り広げられる殺戮の宴。

 宣戦布告と共に月夜を切り裂いて現れた数百の吸血鬼は微塵の躊躇もなく人狼の集落を襲い、言葉すら交わす事なく蹂躙を開始したのだ。

 悪魔の爪が振るわれる。人狼の男の首が飛ぶ。

 悪魔の牙が突き立てられる。人狼の女がミイラになる。

 この地に押し寄せた600人の吸血鬼は、まさしく忘れられる以前の悪魔そのものであった。

 かつて夜を席巻した恐怖の具現そのものだった。

 恐怖の代名詞はヴォルデモートなどではなく、自分達にこそ有り。

 そう宣言する吸血鬼達の眼には、失われて久しい誇りが戻っていた。全ての生物を恐怖させる王の傲慢さに満ちていた。

 だからこそ、人狼の長は思う。

 まさに今、自らの命を奪おうと振るわれる爪を見ながら、思うのだ。

 

 とんだ化物を敵に回してしまった、と。

 

 その思考を最後に、まるで電源でも切るように長の意識が途切れた。

 もはや命なきその首を持ち上げ、吸血鬼の一人が雄叫びをあげる。

 長く続いた英国人狼族の歴史は今、終焉の時を迎えようとしていた。

 

 

 

 ボーバトン魔法アカデミーは悪夢の真っ只中にあった。

 マグル生まれの魔法使いは後に、まるで出来の悪い3流ホラー映画を見ているようだったと語る。

 歴史と伝統あるボーバトン魔法アカデミーを包囲する、千をも超える亡者とトロール。

 それはまるでスクリーンの中のような光景だ。

 しかも亡者は死すら恐れないのだから始末に負えない。

 魔法で腕を吹き飛ばそうが構わず進み、足を失っても這って前進する。

 それどころかトロールなどは味方のはずの亡者を構わず踏みつけて突撃し、我が物顔で校内へと入り込んだのだ。

 無論、ボーバトンとて無抵抗でやられはしない。

 マダム・マクシーム先導の元果敢に戦い、自分達の母校を守るために奮闘した。

 数多の魔法が飛び、学校を守護する魔法生物が亡者を蹴散す。

 だが数に差がありすぎる。

 守るべき非戦闘要員があまりに多すぎる。

 

 ――このままでは子供達が死ぬ。

 

 そう予感したマダム・マクシームは数人の教師だけを残し、全校生徒を逃がす事を決意した。

 教師とは生徒を守る者だ。

 ならば例えこの身が砕け散ろうと、愛する生徒達を守る。

 こんな無法者達に好きになどさせない。

 その気高い決意を胸に秘め、マクシームと教師達は暴威の群れに突撃を敢行。

 杖から魔法を撃ち、亡者を踏み潰し、半巨人のパワーでトロールすらドミノ倒しに叩き伏せる。

 それはまさに孤軍奮闘であり、大魔法使いマクシームの名に恥じない戦いぶりであった。

 100の亡者を薙ぎ、100のトロールを蹴散らし、自らが砕いた肉片を身に纏いながら鬼の形相でマクシームが進む。

 正面から挑みかかってきたトロールを迎え撃ち、両腕で組み合う。

 直後トロールの腕が肩から外れ、マクシームの拳が顔面を陥没させた。

 次々と亡者がまとわりつき、しかしそれらを引きずって前進する。

 腕が折れ、足が砕け、満身創痍となってもマクシームは止まらない。

 やがて彼女は敵軍を率いる将、クィレルを視界に収め――傷付いた身体で、彼に飛びかかって行った。

 

 

 

 それは、彼等死喰い人が今まで見下してきた物だった。

 たかがマグルの道具と嘲笑ってきたものだった。

 魔法を使えない劣等種の涙ぐましい努力と、蔑んできたものだった。

 だが今やその認識は変わった。

 空中より降り注ぐ無慈悲の爆撃。

 人間など細切れにする銃弾の雨。

 そして姿現しを用いて突然現れるミサイル。

 他のマグルの国からは見えぬように魔法で隠蔽されたそれは、死喰い人が暮らす隠れ家へと突き刺さり大爆発を起こす。

 科学的な道具を無効化する護りは魔法使い達の魔法によって解除され、意味を成さない。

 恐怖にかられ隠れ家から飛び出したならば、魔法使い達の呪文が一斉に出迎え、歩兵達の機銃掃射が地獄へと叩きこむ。

 命乞いなどに意味はない。

 主は『殺せ』と命じた。だから殺す。

 殺す、殺す。唯殺す。

 

 全ては『より大きな善の為に』。

 彼等の中に、躊躇いという感情は一片として残ってはいなかった。

 

 

*

 

 

「ミラベルよ……本当にやる気か?」

「無論だとも。全ては今日のために準備してきたのだ」

 

 魔法省上空。

 そこでグリンデルバルドとミラベルは魔法省を見下ろしていた。

 しかしそこに箒はない。

 ここにいるのは常識の枠に嵌らぬ化物が2匹。今更箒など必要とはしないのだ。

 

「ヴォルデモートはいい働きを見せてくれた。

脚本通り……いや、それ以上だ。

魔法界全体の恐怖を煽り、反発を高め、そして純血主義者を自分の派閥に取り入れた」

 

 魔法界全体の敵となり、純血主義者を取り入れる。

 それこそミラベルがヴォルデモートに望んだ役割であった。

 特にミラベルの望みを果たす上で後者は絶対に外せない。

 純血主義者は粛清の対象だ。この世から抹殺すべき愚物だ。

 だが、ただ殺したのでは民衆からの受けは悪いだろう。

 しかし、それがヴォルデモート派閥ならば話は変わる。

 純血主義者達はここぞとばかりに自分を売り込んだはずだ。

 ヴォルデモートの敵ではない、味方だと。志を同じくする同士だと彼に取り入ったはずだ。

 

 それでいい。恐怖に屈して尻尾を振れ。

 そうしてヴォルデモート陣営に入れ。

 私に貴様等を殺す正当な理由を与えてくれ。

 

「ドローレス・アンブリッジも申し分ない。

嬉々として闇の陣営に協力し、純血以外を不当裁判にかける様はいっそ殺したくなるほどに完璧な悪役だったよ」

 

 ミラベルは手の中で一つの水晶を弄ぶ。

 無論それはただ綺麗なだけの水晶ではない。

 マグルの道具で言う所のカメラのようなものであり、そこにはアンブリッジの行った悪事が余す所なく記録されている。

 あの女は天性の人を苛立たせる才能がある。

 ただそこにいて、立っているだけでも汚らわしい。

 それがニンマリとした笑みを浮かべ、喜びを隠しもしない声で、何の罪もない相手を不法に裁く。

 ただ純血ではないというだけで罪を捏造し、持っている杖を盗品と決めつけ、吸魂鬼の餌食とする。

 それを操られていては出来ない心からの笑顔で実行する姿は、人々の魔法省への信頼を失わせるには十分だろう。

 

 そして、その醜態は既にリータ・スキーターを用いて魔法界全体へと散布している。

 そろそろ爪が真紅に染まりそうだと泣き付いてきたが、この分ならば全てが終わるまでかろうじて生き延びる事が出来るはずだ。

 その甲斐もあって人々の魔法省への反発も十分高まった。

 戦争は、布告前からすでに始まっていたのだ。

 アンブリッジの行いを白日の下に晒す事で魔法省は自ら従っているというイメージを植え付ける。

 全ての報道機関が闇の陣営に有利な事しか書かぬ現状で、それは唯一の真実に見えた事だろう。

 故に――魔法省を後腐れなく完全に消す事が出来る。

 

「まずは私が一発、景気付けの魔法を撃ってやる。

その後は全軍突入、手当たり次第殺して回れ。いいな?」

「……了解だ」

 

 ミラベルの言葉にグリンデルバルドはどこかつまらなそうに答える。

 そんな彼を、ミラベルは可笑しそうに笑った。

 

「そんなにダンブルドアが出て来なかったのが不満か?」

「……まあな。奴め、何をしているのやら……仕掛けるなら今しかないだろうに……」

「それなのだがな、どうやらあの男、漁夫の利を狙うよりも一人でも多く逃がす事を選んだらしい。

おかげで純血主義者を何人か殺り損ねた」

 

 ミラベルが抹殺すべきと掲げているのは言うまでも無く純血主義者達だ。

 だがその中にはホグワーツに通う子供達の親も含まれる。

 それを殺めれば子供達は涙を流し、消えぬ心の傷を負うだろう。

 これこそまさにダンブルドアが以前ミラベルに言った罪無き者の涙であり、彼がミラベルを許容出来ぬ理由であった。

 そしてダンブルドアは……彼は教育者として、彼等を助ける事を選んだのだ。

 ミラベルに仕掛けるべき、この最上の好機を逃してまで己の信念を優先させたのだ。

 

 それは気高き行為だろう。

 教育者の鑑と呼ぶべき行いだろう。

 だが――。

 

「愚かだな」

 

 グリンデルバルドが、吐き捨てるように言う。

 ミラベルはその言葉に同意も否定も示さず、ただ前を見た。

 結局ダンブルドアは最後まで指導者ではなく教育者である事を選んだわけだ。

 その事にミラベルはほんの一瞬、憂いのような表情を見せる。

 

 もしも――もし、彼が教育者ではなく指導者としての道を選んでいたならば……。

 

「……ミラベル?」

「何でも無い。往くぞ」

 

 一瞬脳裏に浮かんだのは、在りし日の友と過ごす己の姿。

 牙が抜け落ち、堕落した……だが幸せだったあの頃。

 在り得たかもしれない、『IF』の光景。

 

 しかしあの頃の自分はもう居ない。

 弱者としての自分は、人としての生と共に総て捨て去った。

 ここにいるのは唯一匹の、慈悲なき悪魔のみ。

 故に――。

 

 さあ、始めよう。

 さあ、殺そう。

 

 魔法省という象徴を壊し、そこに自らの旗を立てよう。

 今こそこの手で英国魔法界を終わらせよう。

 周囲の住民は魔法族、マグル問わず全て避難が完了している。躊躇う理由はもうどこにもない。

 

「フィニート・インカンターテム・マキシマ! 呪文よ終われ!」

 

 ミラベルの手から黄金の光が放たれ、地上へと降り注ぐ。

 すると、今までその姿を隠していた魔法省の姿が露となった。

 それどころか、魔法省を護っていたあらゆる護りの呪文が露と消え、無防備を曝け出す。

 そこにミラベルは開戦を知らせる魔法を叩き込んだ。

 

「ヴォルタージュイレイド・マキシマ!」

 

 天より降り注ぐ幾筋もの雷撃!

 それが伝統ある魔法省を砕き、焼き、蹂躙する。

 正義はこちらにあり。そう兵士達に思わせるほどの、神の裁きを思わせる一撃だ。

 そうして問答無用の先制攻撃を叩きこんでから、悪鬼は兵士達に命じる。

 

「全軍、突撃!」

 

 数百のゴーレムと60のドラゴン、500を超える屋敷妖精に10のバジリスクを始めとする多種多様な魔法生物。

 銃器を携えたマグルの歩兵に、その後に続く戦車。

 杖を持つ闇祓い達に現地で調達した反ヴォルデモートのレジスタンス達。

 その総てが一斉に魔法省へ雪崩れ込み、血相を変えて出てきた職員達を血祭りにあげた。

 ミラベルの雷撃が止む事なく降り注ぎ、グリンデルバルドの死の魔法が命を刈り取る。

 ドラゴンの炎が建物を焼き、戦車砲が轟音を響かせる。

 バジリスクの眼が死者を量産し、魔法生物達が肉を食い荒らす。

 マグルの機銃が呪文を唱える間も与えず魔法使いを肉片に変え、屋敷妖精達が屍の上を前進する。

 人攫いに妻を奪われた男が憎悪の形相で魔法を放ち、家族をディメンターの餌にされた男が返り血で我が身を染める。

 

「恐れ慄け! 貴様らの時代は今日で終わりだ!」

 

 ヴォルデモートに洗脳されているかなど、どうでもいい。

 ここにいるならば全員が敵だ。

 建物を半壊させたところでミラベル自らが突入し、地面を滑るように低空飛行で突き進む。

 杖を持った職員を刺し貫き、逃げようとする魔法使いを背後から撃ち殺す。

 何か叫んでいた女を踏み潰し、隠れていた役員の首を掴んで脊髄ごと引っこ抜いた。

 ランコーンを、トラバースを。

 ヤックスリーを、マファルダを。

 狂笑をあげながら次々と惨殺し、魔法省を真紅で染めていく。

 その道中、一際目立つピンクの魔女を視界に入れ、ミラベルは残酷な悪魔の笑みを浮かべた。

 

「ドローレス・アンブリッジか」

「ひいっ!? やめて、殺さないで! お願い、お願い!」

 

 一瞬で距離を詰めて髪を鷲づかみにすると、恐怖に怯えた声で泣き叫ぶ。

 ミラベルはそんな彼女を見下しながら、慈愛すら感じられる優しい声で問う。

 

「そうか……そんなに死にたくないか」

「はっ、はい! はい! 死にたくありません!」

「なら、カエルの真似をしてみせろ」

 

 ミラベルから言われた言葉に、アンブリッジがビクリと震える。

 

「ほら、カエルの真似だよ。そんなカエルみたいな顔をしてるんだからお似合いだろう?」

「は、は、はい! そ、それをすれば助けてくれるのですか!?」

 

 歯をガチガチと鳴らしながらアンブリッジが問うも、ミラベルは答えない。

 代わりに足を彼女の頭に乗せ、床に押し付けた。

 

「誰が質問を許可した?」

「す、すみません! やります、やります! 私はカエルです!

げ、ゲコ! ゲコゲコ! ゲコゲコゲコ! ゲコ、ゲコゲコ……!」

 

 もはや人間扱いすらせず、カエルの真似をさせる。

 それはまさしく侮辱であり、この上なくプライドを傷付けるものだ。

 しかしアンブリッジは死にたくない一心で惨めに鳴き真似をし、ミラベルは愉快そうに嘲笑をあげた。

 

「ハハハハハ! 面白いなァ、貴様は。そうか、貴様は人間ではなくカエルか」

「は、はい! 私はカエルです、下等生物です! ですから……」

 

 よかった、お気に召してもらえた……。

 そんな安堵がアンブリッジの顔に浮かび、縋るようにミラベルを見上げる。

 そんな彼女にミラベルは静かな笑みを浮かべ――瞬間、それが悪魔の笑みに豹変した。

 

「下等生物は死ね!」

「――え?」

 

 ぐしゃり。

 そんな呆気ない音と共に悪魔の足がアンブリッジの頭を踏み潰した。

 比喩ではない。

 人外の怪力で本当に彼女の頭を潰し、頭蓋を砕き、脳漿を潰し、首から上を血と肉の残骸へと変えたのだ。

 そんな惨めな死体を一瞥し、ミラベルは手の中に捕らえた彼女の魂を握り潰す。

 

「馬鹿が。私の作る新世界に要らんよ、貴様など」

 

 ローブを翻し、もう興味はないとばかりに先へ進む。

 後に残された死体は繰り広げられる戦いの余波で吹き飛び、踏みつけられ、やがて誰もそれがアンブリッジで“あったもの”とは認識出来なくなる程に破壊し尽されたが、ミラベルにとってはもうどうでもいい事だ。

 そうして一人の命を終わらせた悪鬼は再び進撃を再開し、とうとう大臣が立て篭もっている部屋へ突入した。

 警護していた魔法使い達もいたが、所詮は雑兵。爪の一振りで肉塊へと変え、大臣へと向き直る。

 パイアス・シックネス――元魔法執行部部長でヴォルデモートが支配するようになってからは大臣職を務めている男だ。

 そして服従の呪文でいいように操られてる傀儡大臣である。

 

「ひっ、やめろ……来るな……!」

 

 残虐な笑みを浮べながら歩くミラベルに、パイアスが恐怖の叫びをあげる。

 杖を滅茶苦茶に振り回し、武装解除や失神、果ては死の呪文すら放つもミラベルには通じない。

 その全てを避ける事もせずに、真正面から受けながら悪魔は歩く。

 そして伸ばした爪を一閃。

 首を失った胴体が倒れ、遅れて首が床を転がる。

 恐怖で目を見開いたその首を踏み潰し、ミラベルはその幼い美貌を勝ち誇ったものへと歪めた。

 

「全軍に告ぐ! 早急にここから撤退せよ!」

 

 後は綺麗さっぱり消してしまうだけだ。

 兵士達に退却指示を出し、巻き込まれないように姿くらましをさせる。

 そうしてからミラベルは空高く浮き、虚空に手を掲げた。

 今から使うのは、ある程度のレベルの魔法使いならば誰もが使える魔法だ。

 ハリーやハーマイオニーでも使える、基礎中の基礎。

 ただそれを、ミラベルの圧倒的な魔法力で、全力で行うだけだ。

 

「――アクシオ」

 

 杖は、複数持つ事で同時に魔法を発動する事が出来る。

 そして杖とは、魔法生物の身体の一部を使う事で作られる。

 ならば真祖の吸血鬼であるミラベルの身体とは、即ちそれ自体が強力な杖の材料になり得るのだ。

 故にミラベルはイメージする。

 己を形作る215本の骨が。

 己の内を駆け巡る血液の全てが。

 己を構成する肉と臓腑が。髪の毛の一本一本、総てが杖であると。

 それと同時に退却を済ませた配下の魔法使い達も一斉に杖を掲げ、その呪文をサポートする。

 ミラベルに不安という言葉はない。

 出来ると思ったら出来る。

 やれると思ったらやれる。

 今までずっと、そうしてきた。そして、これからも。

 故に、出来ないかもしれない、などとは考えない。

 

「来たれ神の鉄槌! 星々の怒りよッ!」

 

 空の果てで、ミラベルの声に応えるものがいた。

 声もなく、意思もなく、遥か遠く離れた虚空の果てで確かに黄金の呼び声は届いた。

 『ソレ』はそれまで巡っていた軌道上から外れ、地球の大気圏を突き抜けて降下する。

 己の身を燃やしながら、燃え盛る幾筋の煌きとなって地上に住む愚者を滅ぼすべく舞い降りる。

 その現象を見て人は時に願いを託し、時に恐れ、そして時に神を視る。

 

 ――その現象の名は、隕石。

 

 舞い降りる流星群の存在感を感じたミラベルはギリギリでアクシオを解除し、隕石が堕ちるのに任せた。

 己自身を目印としここまで誘導したのだ。

 ならばこの先はもう、導は必要ない。

 巻き添えを食わぬように姿現しで更に高く上空へと飛び、その後をグリンデルバルドが続く。

 

 そして。

 

 神の怒りが何もかもを砕き、潰し。

 その猛威は巨大なクレーターを生み出し。

 周囲数キロに渡り、大破壊を撒き散らした。

 

 ゾワリ、とミラベルの全身を歓喜が駆け抜ける。

 そうだ、この瞬間を待っていた。

 この光景を作りたかった。

 この景色を、彼女に見せたかった……。

 

 

 ――なあ、見ているかレティス……やっと、君の無念を晴らす事が出来た……。

 

 

「あはは……アッハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!

おい見ろグリンデルバルド! まるで魔法省がゴミのようだ!

プチッとあっけなく潰れてしまったぞ! アハハハハハハハハ!!」

 

 まるで玩具に満足した子供のように、ゲラゲラとミラベルが笑う。

 その姿を見ながらグリンデルバルドは冷や汗を止める事が出来なかった。

 アクシオは確かに物質を呼び寄せる魔法だ。『理論上』そこに例外はない。

 だが……だが、しかし!

 アクシオで宇宙から流星を呼び寄せるなど!

 

 馬鹿げているッ! あまりにも常軌を逸しているッ!!

 

 だがそれを現実に起こしてしまえるのがこの女だった。ミラベル・ベレスフォードという怪物であった。

 ここまで来ては最早認めるしかない。

 この女に底は存在しない。

 こいつは無限に成長し続ける悪魔だと。

 この少女には底がなく、果てが無く、時間を与えれば与えるほどに手がつけられなくなっていく。

 常人が苦労する道を、道と気付かずに踏み越える。

 恐らくは有史以来最大の――そして二度と現れないだろう天蓋の天才。才能の化物。

 そして、それを正しい方向へと使えない異端の怪物。

 

 ――まるで世界を壊す為だけに生まれたような女だ。

 そんな馬鹿げた考えを胸の内に押し込み、グリンデルバルドは自嘲気味な笑みを浮かべた。

 

 

 

 その後、彼女はアズカバンを襲撃して不当に捕らえられていた者達を助け出す事になるが――その時、すでに人々の心と世論は完全に彼女へと傾いていた。

 ダンブルドアが恐れた、最悪の筋書きが完成してしまったのだ。

 

 




マダム・マクシーム「ムッムッホァイ!ムッムッホァイ!ムッムッホァイ!」
クィレル「ぎゃああああ! 何だこいつ!? 滅茶苦茶強いぞ!?」
闇払い「人間の動きじゃねえ!?」

その動き、まごうことなき変態。

トレバー「カエルが下等生物……言ってくれるじゃないか(ガタッ」
ネビル「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!?」
トレバー「すまないネビル……俺は動物もどきだ。今まで黙っていて悪かった」
ネビル「ファッ!?」
トレバー「だが今こそ俺は勇者の使命を果たさねばならん……見ていてくれサイラス、そして我が友クロノ。この聖剣グランドリオンにかけて俺は今こそ魔王を討つ!」
ネビル「え? ちょ、その設定どこから……」
トレバー「さらばネビル! 達者でな!」
ネビル「ちょ、トレバー! トレバァァァ!?」

勇者トレバー、立つ――。

(*´ω`*)皆様こんばんわ。やってしまった感全開の67話でお送りしました。
ちなみに作中では爽快感重視であまり書いてませんが、ミラベル側も無傷ではありません。
結構消耗しています。
さて、完全に崖っぷちに立たされたわけですが、ここからどう立ち向かうのか……。
そして歴代ゴジラが歴代全怪獣と一緒に戻ってきた日本はどうなるのか……。
また明日、お会いしましょう。

セフィロス「隕石とかないわー」
異魔神「世界観考えろよな」
水銀の蛇「学園物で隕石とかマジないわー」

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