ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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┌(┌^o^)┐ 皆様こんばんわ。
実は最近の遊戯王がよくわかっていないウルトラ長男です。
次にSSを書くとしても遊戯王だけは無理そうです。


第58話 接触

 執務室に一人、くたびれた男が座っていた。

 髪は乱れ、不精髭が生え、頬は痩せこけている。

 彼は鏡を見て、イギリスのトップに立つ首相ともあろうものが何て姿だ、と自嘲した。

 自分がこんなにやつれている理由は分かっている。

 ……魔法使い。

 この首相の座に就くまで夢物語とばかり思っていた、超常の力を振るう人間達。

 しかしそれは実在し、歴代の首相のみがその存在を知らされていたという。

 

 そして何とも忌まわしい事に、魔法使いのとある一派……確か死喰い人とかいう連中がこちらの世界にまで被害を齎しているのだ。

 造ってからまだ10年と経っていない橋が真っ二つに折れ、十数台の車が河に沈んだ。

 残酷な殺人事件が2件も発生し、西部地域には異常気象のハリケーンが起こって人的、物的に多大な被害を齎してくれた。

 天候までも落ち込み、イギリスは今や全域が妙な霧に覆われている。

 これらが全て魔法使いとやらによって発生した事件だというのだ。

 

 馬鹿げている……全く馬鹿げた事だ。

 別に敵対しているわけでもないというのに、何故自分達がそんな攻撃を受けねばならない?

 ただ見下されているというだけの理由で、死喰い人とかいう連中はこちらに害を為しているという。

 おかげでこちらは連日連夜批判の嵐だ。今も受付窓口は電話が休む事なく鳴り響いている。

 

「くそっ……!」

 

 この首相の座に就くまで、言葉では言い表せない苦労があった。

 受けた学校に落ち、何年も浪人人生を送った。

 学校でもひたすらに勉強の日々を過ごし、卒業してからも楽な日などなかった。

 嫌な奴に頭を下げ、なじられ、胃薬を日常的に服用し、それでも諦めずに仕事に打ち込めたのは首相の座について国を変えたいという志があったからだ。

 なのに、魔法使いなどというよくわからない連中のせいで、もう立場が危うくなり、引きずり降ろされそうになっている。

 気に入らない……ああ、気に入らない。

 許されるならば今すぐ奴等の世界にミサイルを落としてやりたい。

 

 しかし……どこにいるかもわからず、どんな力を持つかも分からない連中と戦う事など出来るはずもない。

 その存在さえ証明出来れば全力で探し出して軍隊を派遣する事も出来ようが、今のままでは自分の頭がおかしくなったと思われるだけだ。

 何故だ、と思う。

 自分達は魔法使いの存在にさえ気付いていなかった。

 敵対も当然していない。

 なのに何故こんな理不尽を受けねばならない。

 自分達が一体何をしたというのだ?

 

 潰してやりたい。

 そう思うと、首相の心をドス黒い何かが埋め尽くして行く。

 面白半分に自分達を殺す死喰い人とかいう連中も、それをどうにか出来ない魔法省とかいう奴等も。

 この平穏を脅かす奴等を、誰でもいいから叩き潰して欲しい。

 ――それが例え、悪魔に魂を売る行為であろうとも。

 

 

「その望み、叶えてやろうか?」

 

 

 そんな心の隙間に入り込むように、柔らかい声が聞こえてきた。

 首相は突然の声に驚き、振り返る。

 果たしてそこにいたのは天使か、それとも悪魔か。

 どちらにせよ、人間とは思えない美しい少女が机の上に腰をかけていた。

 首相とて今までスターと呼ばれる者や、トップモデルなどを見てきた事もある。

 美人と呼ばれる人間も多く目にしてきたはずだ。

 しかし、今ここにいる少女と比べればその全てが霞んでしまうほどに鮮烈で、ただ美しかった。

 

「き、君は……?」

「魔法界の未来を憂う者……そして貴方達との融和を望む者」

 

 少女はその幼さを残す外見に合わぬ妖艶な笑みを浮かべ、机から降りる。

 そんな動作一つすらが視界を釘付けにした。

 首相は今ほど魔法というものを信じた事はない。

 たとえ実際に魔法を使わずとも、今ならば信じよう。

 こんな現実離れした生き物が、普通に存在するはずがないのだから。

 

「首相……貴方の憤りは正しい。貴方は魔法使いに怒りをぶつける権利がある」

 

 無防備に目の前まで歩み寄り、少女は語る。

 

「そして貴方がそれを望むならば、私は力を貸す事が出来るだろう」

 

 首相はゴクリ、と唾を飲み少女を見る。

 こんな少女に何が出来る、とは不思議と思わなかった。

 むしろこの少女にどこまでの事が出来るのか知りたいと考えている自分に気付いた。

 

「何が、出来る?」

「何をして欲しい?」

 

 質問に対する質問での返答。

 しかしそれは、望むならば何でも出来るという返答をしたのと同義だ。

 首相は冷や汗を流し、意を決して言う。

 

「……不当に私達の生活を脅かす者を排除したい、と言えば協力してくれるのかね?」

 

 首相の言葉に少女は妖しく笑う。

 まるでその言葉こそが聞きたかったとでも言いたげな、満足そうな笑みだ。

 

「望むならば、死喰い人全員の首を貴方の前に並べてみせよう」

 

 ハッタリ……ではないのだろう。

 恐らく自分が望めばこの少女は本当にそれをやってのける。

 そう思わせる不思議な凄味があった。

 首相は恐れを隠すようにニヤリと笑い、言う。

 

「いや、部屋が汚れるので遠慮被るよ。死体はそちらで処理してくれ」

 

 

 どうやら、捨てる神があるなら拾う神もあるらしい。

 首相は自分に運が回ってきた事を悟り、まずは自分の権力でどこまで出来るのかを考える事にした。

 

 

*

 

 

 ニコラス・フラメルはその日、久方ぶりになる珍しい来訪者を迎えていた。

 既に寿命も残り僅かで、もはやベッドから起きる事すら叶わぬ身ではあるが、友人の来訪は嬉しいものだ。

 せめてものもてなしをしようと杖を取ったところで、その手をやんわりを下げられた。

 

「このままで構わぬよ、ニコラス」

「う、うむ、そうか……」

 

 来訪者……アルバス・ダンブルドア。

 かつて共に錬金術の研究をした事もある、ニコラスが尊敬する数少ない魔法使いだ。

 せっかく彼が訪ねて来てくれたというのに、このように身動きが取れないのは少しばかり申し分けない気持ちになった。

 

「それでアルバス、一体何をしに来たのか聞いてもいいかね?

見ての通り、ここには何もないが」

 

 ニコラスはまさに寿命が尽きる寸前の死にかけの老人だ。

 身辺整理も終わっており、身の回りにはほとんど何もない。

 しかしそれでもダンブルドアが来たという事は、ここに何かがあるという事だ。

 普段ならば理由なく来てもいいかもしれない。

 しかし今、魔法界は未曾有の危機を迎えている。

 そんな時に用もなく動くなど、そんな無駄をする男ではないだろうとニコラスは思っていた。

 

「ふむ、実はのうニコラス。君の記憶が欲しいんじゃ」

「記憶? 何が知りたいのだ? 何でも話すぞ」

 

 今更ダンブルドアに隠すような事など何もない。

 彼がそれを必要としているならば、それはきっと今後の魔法界の為だ。

 いくらでも話して聞かせよう。

 そう思うニコラスに、しかしダンブルドアは静かに首を振る。

 

「いやいやニコラス。わしが思うに君はその事を知らぬのじゃ」

「知らぬ? わしの記憶なのにか」

「うむ。もう少し正確に言うならば、覚えておらぬじゃろうという事じゃ」

 

 朗らかに言うダンブルドアに、ニコラスは少しばかり気分を害したような顔になる。

 確かにこの身は死ぬ前の老人であるが、そこまでボケた覚えもない。

 第一同じ爺であるダンブルドアにそう言われるのは心外だ。

 そんな不機嫌を察したのだろう。ダンブルドアは微笑みを崩さぬまま弁解を入れる。

 

「ああニコラス、気を悪くせんでくれ。これは君の記憶力に問題があるわけではなく、恐らくは忘却呪文をかけられているが故のものじゃ」

 

 ダンブルドアからサラリと告げられた言葉にニコラスが目を見開く。

 なるほど、忘却呪文。

 それならば覚えていないのも道理だ。

 正直そんなものをかけられるほど耄碌した気はないが、今の床に臥せっている状態ならば誰でも自分に忘却呪文を当てる事が出来るだろう。

 

「なるほど。ではまず、その記憶がいつ頃か探さねばならんわけだ」

 

 忘却呪文と言えど完璧ではない。

 いかに修正をかけられた記憶であろうと、記憶そのものを取り出す憂いの篩ならば真実の記憶を見る事が可能だ。

 ダンブルドアは以前にもホキーという名前の、記憶を捏造された屋敷妖精から真実の記憶を取り戻す事に成功している。

 それを考えれば、ニコラスから真実の記憶を取り出す事は決して難しい事ではない。

 

「わしの推量になるが……恐らくは3年前か4年前のクリスマス頃じゃと思っておる」

 

 ミラベルは去年、神秘部の戦いで凄まじい不死性を見せ付けた。

 死の呪文を弾き、切断された腕すら瞬時に復元してしまった。

 それを見てダンブルドアは、彼女が分霊箱を使っていると確信したのだ。

 外見の変化がなかった事から、恐らく数は一つ。

 魂を分けるという恐ろしい所業は、2回以上行うと外見に影響を及ぼしてしまう。

 だからこそヴォルデモートは若き日のハンサムの面影を失い、あんな姿に成り果てているのだ。

 

 そしてもう一つ、気になったのがあの再生力だ。

 失った肉体を一瞬で復元するあの生物離れした再生力は、魔法の力を使ったとしても尋常ではない。

 治療の達人であるマダム・ポンフリーですら骨一本を再生させるのに一晩は必要とするのにミラベルは腕一本を一瞬で治してみせた。

 明らかに普通ではない。

 そこでダンブルドアが思い出したのが、かつてミラベルが狙った賢者の石の存在であった。

 

 賢者の石は砕いた。だがもしミラベルがまだ諦めていなかったとすれば、あの少女の事だから自分で作ろうとするかもしれない。

 だが賢者の石は錬金術の深遠、いわば到達点とも言うべき存在……いかにあの少女でも簡単には作れない。

 だがそれを作り出した賢者の記憶があれば話は別だろう。

 そう考えたダンブルドアは、ここまで足を運んでいたのだ。

 

「そういう事ならば持って行くといい」

 

 ニコラスは己の額に杖を当て、靄のようなものを出す。

 それを近くにあった瓶に入れると、ダンブルドアへと委ねた。

 

「うむ、感謝するぞニコラス」

 

 随分簡単に入手出来たが、これは相手がニコラスだからだ。

 記憶を探す道はこれ以外は困難を極め、推量を元に手探りで探していかなければいけない。

 特に次はきっと簡単にはいかないだろう。

 ミラベルの過去を探る上では避けては通れない道であり、そして一筋縄ではいかない相手から記憶を貰わねばならないのだ。

 だが、考えるだけで今から嫌になる。

 果たしてあの女が……娘を溺愛するあのメーヴィス・ベレスフォードが娘の不利になるような事などするだろうか?

 

「やれやれ、なかなか難しいもんじゃのう」

 

 ミラベルとヴォルデモートの不死の秘密を明かさねば勝機はない。

 だがどちらも簡単な道ではないだろう。

 ヴォルデモートは分霊箱を使っているだろう事までは分かるが、複数に分けすぎて探すのが骨だし、ミラベルは分霊箱に加えて賢者の石と、恐らくはもう一つ何かを併用してしまっている。

 片や分散、片や集中。

 方向性は違えど、どちらも等しく脅威だ。

 

 だが絶対に無敵の存在などこの世にはいない。

 ヴォルデモートとミラベルも例外ではなく、どちらもいくつかのミスを犯している。

 まずヴォルデモートだが、ハリーを予言に記された選ばれた子にしてしまったのを皮切りに、まるで運命に踊らされるように彼らしからぬ間違いを多発している。

 

 そしてミラベルもまた、やけに生き急いでいるように見える。

 彼女はもう少し機を待てばよかった。

 学校を卒業して、十分な準備期間を経て、それから動いても決して遅くはなかったはずだ。

 そうすれば止める事は困難を極めただろう。

 ……いや、グリンデルバルドが来なければきっと自分は死の呪いを受けただろう事を考えれば、自分やヴォルデモートという障害がない状態で動く事も出来たかもしれない。

 なのに彼女がやったのはあまりにも早すぎる本性の露呈であった。

 

 過去を探れば、何か分かるかもしれない。

 彼女を急がさせている何かが……その野望の根底にある物が見えて来るかもしれない。

 

 

 ニコラス邸を後にしたダンブルドアは、暴走した二つの才能を思い、憂うように目を閉じる。

 そして、すぐにその顔を賢者の物に戻し、ベレスフォード邸へと姿くらましした。

 

 




┌(┌^o^)┐ というわけで今回は小休止な58話でした。
ダンブルドアはあちこち回って記憶を集めております。
しかし原作においてダンブルドア、6年度開始前に蘇りの石を見付け出して砕いてるんですよね。
何でハリーにスラグホーンの記憶取らせたんでしょう。
やっぱ、この記憶自体に意味はなく、ハリーに強く印象付けるのが目的だったんでしょうかね。

・日本どうなった?
無事セブンさんがゴジラ×10を海に誘導してくれたようです。
ありがとうウルトラセブン、これで日本は救われた!
そして残りHP1のセブンさんはようやく休養を取れるという所で他のウルトラ戦士のウルトラサインが来てしまい、今から助けに向かうようです。
もういい……休め……休め、セブン……っ!

しかし本当、何でセブンさんばっかあんなに働いてるんでしょうね。

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