ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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┌(┌^o^)┐ 皆様こんばんわ。
まだ完結させてないのに次のSSに浮気しそうなウルトラ長男です。
このSS、よく見返してみたら女キャラばっかりになっていたので次は野郎だらけのSSを書きたいですね。
ユリアとマミヤ、リンを退場させた男純度100%北斗の拳とか書いてみたいかもしれません。
でもそれやると物語に致命的な歪みが生まれるという……。


第57話 フェリックス・フェリシス

 6年度より始まる、N・E・W・Tレベルの授業は、昨年のO・W・L試験で合格点を取った生徒のみが受ける事が出来る。

 この授業は例年の物と異なりクラス別に受けるという事はない。

 つまりそれは不倶戴天の間柄にあるグリフィンドールとスリザリンも毎日のように顔を合わせる必要がある事を意味していた。

 

 その日、最初に受けた授業は『闇の魔術に対する防衛術』であった。

 担当教官はまさかのスネイプだ。

 これにスリザリン生は喜び、グリフィンドール生は嫌そうな顔をしたが今更教師は変わらない。

 念願の防衛術を教える事になったスネイプは上機嫌で生徒達へと語る。

 

「闇の魔術は多種多様、千遍万化、流動的にして永遠なる物だ。

それと戦うという事は多くの頭を持つ怪物と戦うに等しい。

首を切り落としても別の首が、しかも前より獰猛で賢い首が生えてくる。

諸君の戦いの相手は固定できず変化し、破壊不能なものだ」

 

 それはまるで、闇の魔術を侮るなという注意にも聞こえたが、恋焦がれる男が読みあげた恋文のようにも聞こえた。

 スネイプは闇の魔術に傾倒しているのではないか、と疑ってしまいそうな口調だ。

 しかし言っている事自体は決して間違いではない。

 ハリーとイーディスの脳裏に浮かぶのは、ヴォルデモートとミラベルという2匹の怪物。

 どちらも、一筋縄ではいかない化物だ。

 

 その後『無言呪文』について学び、彼の最初の授業は終わった。

 結局成功させたのはハーマイオニーとイーディスだけであったが、スネイプは大方が予想したようにハーマイオニーに点数を入れずにイーディスにだけ20点を加算した。

 相も変らぬスリザリン贔屓である。

 こんな事ばかりしているから、いざという時ダンブルドアがグリフィンドールを贔屓しても誰も文句を言えないのだ。

 

 次に彼等が受けたのはスラグホーンによる『魔法薬学』であった。

 まるで太ったセイウチを思わせる顔は上機嫌に綻んでおり、生徒達を……特にハリーなどの一部の生徒を熱烈に迎え入れた。

 

「さて、さて、さーて。皆、秤を出して。それに魔法薬キットもだよ。

それに上級魔法薬の……」

「あの先生? 僕とロンは本も秤も何も持っていません。僕達、N・E・W・Tが取れるとは思わなかったものですから……」

「ああ、そうそう。マクゴナガル先生が確かにそうおっしゃっていた。心配には及ばんよハリー、全く心配ない」

 

 どうやらハリーとロンは何も用意していなかったらしいが、これは仕方ないだろう。

 何せ前年度までの担当はスネイプで、彼は『優』以外の生徒は取らないと明言していたのだから。

 スラグホーンもそこらの事情は察しているようで、文句の一つも言わずハリーとロンに教科書と道具を貸し出した。

 

「さーてと、皆に見せようと思っていくつか魔法薬を煎じておいた。N・E・W・Tが終わった頃にはこういうのを煎じる事が出来るようになっているはずだ。 これが何だか分かる者はいるかね?」

 

 このスラグホーンの質問にはいつもの如くハーマイオニーが解答した。

 飲んだ者に事実を話す事を強要する真実薬、他人に化けるポリジュース薬、そして愛の妙薬であるアモルテンシア。

 その特徴と効能をスラスラと答えた事でスラグホーンも彼女の才能に気付いたようだ。

 声を上げて絶賛し、グリフィンドールに20点を加えた。

 しかしまだ一つだけ説明されていない薬がある。

 それは小さな黒い鍋に入れられた金色に輝く魔法薬だ。

 まるで金魚が跳ねるようにピチャピチャと水面が跳ねており、しかし一滴として鍋の外に零れることはない。

 

「実習を始めよう」

「先生、これが何かをまだ説明されていません」

「ほっほう」

 

 アーニー・マクミランからの質問に満足そうな声をあげたのを見て、イーディスは悟った。

 劇的な効果を得るために始めから生徒に質問させる気だったのだろう、と。

 そしてそれだけの演出を挟むからには、彼自身その薬には相当の自信があるという事だろう。

 

「そう、これね。さてこれこそは紳士淑女諸君、最も興味深い一癖ある魔法薬で名をフェリックス・フェリシスという。

きっと君はこれが何かを知っているね? ミス・グレンジャー」

 

 フェリックス・フェリシスの名を聞いただけでアッと声をあげたハーマイオニーにスラグホーンが問いかける。

 それに対しハーマイオニーは興奮気味に答えた。

 

「幸運の液体です! 人に幸運をもたらします!」

 

 その言葉にクラス中がざわめき、一斉に背筋を正す。

 先ほどまでやる気なさそうに座っていたマルフォイとて例外ではない。

 それほどに『幸運』の2文字には抗い難い魅惑があった。

 

「その通り、グリフィンドールにもう10点あげよう。

そう、この魔法薬は面白い。調合が恐ろしく面倒で間違えると酷い事になる。

しかし成功すれば全ての企てが成功に傾いていくのが分かるだろう」

「先生、それならどうして皆しょっちゅう飲まないんですか?」

「それは飲み過ぎると有頂天になったり無謀になったり危険な自己過信に陥るからだ」

 

 イーディスはその言葉でミラベルを連想した。

 全ての企てが成功に傾き、有頂天で無謀で自己過信に陥る……全てがあの少女に当て嵌まってしまう。

 これのせいでイーディスの中ではフェリックス・フェリシス=ミラベル化する薬、という割ととんでもない図式が出来てしまっていた。

 イーディスはスラグホーンの説明を聞きながら、有頂天になった自分を連想してみるも残念ながら上手く思い浮かばない。

 むしろ調子に乗りすぎて失敗する姿ばかり思い浮かんでしまう。

 

「そしてこれを今日の授業の褒美として提供する。

フェリックス・フェリシスの小瓶一本。12時間分の幸運に十分な量だ。

明け方から夕方まで何をやってもラッキーになる」

 

 流石に過去教えていただけあって生徒達を惹き付けるのが上手い。

 このフェリックス・フェリシスというご褒美は初日の試みとしては大成功と言えた。

 全ての生徒が彼の話に夢中になっており、あのマルフォイでさえ無駄話一つせずに小瓶を凝視している。

 

「注意しておくがフェリックス・フェリシスは組織的な競技や競争事に使う事は禁止されている。

これを獲得した生徒は通常の日だけ使用する事。そして通常の日がどんなに素晴らしくなるかを知るだろう」

 

 当たり前の事だが、これは一種のドーピングに近いので、競技では禁止されている。

 何せ禁止しなければ全員がフェリックス・フェリシスを服用するという事もあり得るからだ。

 つまりクィディッチなどに使う事も当然反則に含まれるわけだ。

 

「さて、この素晴らしい賞をどうやって獲得するか?

さあ『上級魔法薬』の10ページを開いて頂こう。

後1時間と少し残っているが、その時間内に『生ける屍の水薬』に取り組んで頂く。

そして最もよく出来た者にこの愛すべきフェリックスを与える。さあ始め!」

 

 餌で釣る。

 単純だが効果的なやり方だ。

 生徒達は一斉に鍋に向かい、一心不乱に薬の製薬に取りかかった。

 一日が幸運になる薬、フェリックス・フェリシス……是非とも欲しい一品だ。

 イーディスも例外ではなく全力で取り組んだが、しかし心のどこかで『どうせハーマイオニーがいるし』という諦めがあった。

 その予想は正しく、イーディスはフェリックスを獲得する事は出来ず授業は終了した。

 しかし薬を獲得したのはイーディスの予想と違い、何故かハリー・ポッターであったが。

 

「紛れも無い勝利者だ!」

 

 スラグホーンの喜ぶ声を聞きながら、イーディスは腑に落ちないものを感じていた。

 確かにハリーは魔法薬学が苦手というわけではない。

 頻繁に0点を取っていたが、あんなのはスネイプの採点がおかしいだけだ。

 むしろそんな不公平な授業を受けながらもN・E・W・Tの授業に来ている時点で実力は保証されている。

 しかし、だからといってハーマイオニーを差し置いてトップに躍り出て、あまつさえ初見の薬を完璧に調合するほど得意というわけでもないのだ。

 ハリーは「どうやったんだ?」というロンの質問に「ラッキーだったんだろう」と答えている。

 ラッキー……それは間違いないだろう。実力ではハーマイオニーが勝るのだからそれ以外有り得ない。

 しかし、一体いかなる幸運が起これば初見の薬を完璧に調合出来るというのか。

 

(なーんか、また変な事が起こってないといいんだけど)

 

 いつだって、トラブルと珍事はハリー・ポッターから始まるのだ。

 イーディスは喜びながら歩くハリーを見ながら、新しいトラブルがすでに始まっているような予感を感じていた。

 

*

 

 洞窟の中で、規則正しい足音が響く。

 金色の髪を揺らしながら歩くのはミラベル・ベレスフォードとその弟であるシドニー・ベレスフォードであった。

 ミラベルはポケットに手を入れたまま洞窟内をウロウロし、やがて一つの壁の前に着くと吸血鬼のパワーで思い切り蹴り抜く。

 しかし一瞬岩が砕けるもすぐに復元し、その道を阻んだ。

 

「ふむ……ここで間違いなさそうだ」

 

 無表情でそう呟き、ミラベルは岩壁を眺める。

 1分程そうした後、おもむろにシドニーを指で招き、短刀を渡す。

 自らの腕を傷付けろ、という無言の指示だ。

 それに対しシドニーは迷う事無く腕を切りつけ、血を岩壁に付着させた。

 するとどうだろう、岩壁は最初から無かったかのように消失し、暗い道だけが彼女達の前に姿を現したではないか。

 

「いくぞ。着いて来い」

 

 ミラベルは相も変わらぬ余裕の表情で洞窟の中を進む。

 光源など不要だ。吸血鬼の眼は暗闇こそを最も見通す。

 やがて彼女が出たのは黒い湖の畔だ。

 向こう岸が見えず、天井の高さも分からない。

 湖の中央には緑に光る何かがあり、湖に反射していた。

 湖の中には死体が漂っており、目を見開いている。

 

「これは……」

「亡者だな。恐らく近付く者を攻撃するのだろう。どれ……下がっていろ、シドニー」

 

 ミラベルは何ら臆する事なく空を飛び、湖の上へと躍り出る。

 その瞬間、湖の中から一斉に死体が飛び出し、ミラベルを包囲した。

 恐らくは正しい手順を踏まない限り問答無用で攻撃してくるのだろう。

 逆を言えば、この罠を仕掛けた魔法使い――ヴォルデモート自身が攻撃されないようにする為のギミックもあるはずだ。

 しかしミラベルはそんなものを気にしない。

 行く手を阻む者がいるならば道理を蹴り、強引にこじ開ける。

 邪魔をするならば、死、あるのみ!

 

「ふん……亡者如きがこのミラベルの道を阻めるか」

 

 手を頭上に掲げ、バチバチという甲高い音と共に黄金の雷を生み出す。

 だがその輝きと威圧はメアリーやイーディスの比ではない。

 洞窟全てを照らすように眩く、鋭く。敵対する者をその光のみで焼き尽くしかねない程の鮮烈さを以て、真なる黄金の猛威が牙を剥く。

 

「ヴォルタージュイレイド・マキシマ! 死に絶えろ、屑共ッ!」

 

 ミラベルの身体を中心とし、全包囲に雷が巻き散らされる。

 囲んでいた亡者を焼き滅ぼし、湖を蒸発させ、中に潜んでいた亡者を纏めて消し飛ばす。

 岩盤を砕き、湖ですらなくなった空洞を焦がし、すでに命なき亡者をただの黒ずんだ炭へと変えて行く。

 数秒経ってようやくその猛威が終わった時、すでにミラベル以外の動く者はシドニーしか存在していなかった。

 

「はっ、他愛ない。まあヴォルデモートが仕掛けた罠ならこんなものだろうな」

 

 ミラベルは侮蔑とも嘲笑とも取れる言葉を吐き捨て、そのまま水の無くなった湖を越えて中央の小島へと着地した。

 その後をシドニーが続き、同じく小島に降り立つ。

 小島の中央には石の台座があり、その上に水盆が置かれている。

 その中には燐光を発するエメラルド色の液体に満たされていた。

 ミラベルがそこに手を突っ込もうとするも、まるで見えない障壁に阻まれているかのようにビクともしない。

 試しに力任せに全力で拳を振り下ろすと、その衝撃は水を貫通して今足場となっている小島に皹を入れてしまった。

 まるで地震でも起きたかのような衝撃にシドニーが飛び上がり、洞窟全体が揺れる。

 だが、手は依然として水を通過してはいなかった。

 

「ふむ……どうやらこの液体を飲む事で突破するようになっているようだな」

 

 子供騙しだな、とミラベルは呆れたように呟く。

 仮にもここまで来れる魔法使いがこの程度の罠にかかる道理が一体どこにあるというのか。

 確かにこの水に消失呪文などは通用しないだろう。

 捨ててもすぐに戻ってくるだろう。

 だが、だからといって大人しく飲む理由はない。

 それこそ、飲むくらいなら水盆ごと持ち帰ってしまった方がマシというものだ。

 そんな事を考えていたが、シドニーが不意に前に歩み出て何の躊躇もなく盆を持ち上げたかと思うとあっという間に飲み干してしまった。

 何とも忠誠心に溢れた行動だが少々迂闊とも言えるだろう。

 顔色を悪くし、その場に樽ってしまったシドニーに労いの言葉をかけ、ロケットを拾いあげる。

 だが、すぐにその顔は失望へと変化した。

 

「ちっ……すでに偽物と擦りかえられた後か……」

 

 そのロケットはミラベルの目的の物ではなかった。

 中を開けると、そこには羊皮紙の切れ端が1枚入っていた。

 

『闇の帝王へ。

あなたがこれを読むころには、私はとうに死んでいるでしょう。

しかし、私があなたの秘密を発見したことを知ってほしいのです。

本当の分霊箱は私が盗みました。

出来るだけ早く破壊するつもりです。

死に直面する私が望むのは、あなたが手ごわい相手に見えたそのときに、もう一度死ぬべき存在となることです。――R.A.B』

 

 『R.A.B』……それが本物のロケットを手に入れた者の名前のようだ。

 この文面が正しければすでに本物は破壊されている可能性が高い。

 分霊箱の破壊の仕方を知っているのなら、という前提はつくが。

 

「R.A.Bか……まずは、こいつが誰なのか知る所から始めねばな。

とりあえず、その辺の死喰い人を捕まえて聞き出すとしようか」

 

 

 ミラベルは用の無くなった偽物のロケットを投げ捨て、洞窟を後にする。

 後に残されたのは無残に破壊された洞窟と、無造作に転がる黒焦げの死体のみであった。

 

 




ミラベル「ただヴォルデモートが魔法省を掌握するのを待つのも暇なので分霊箱壊して暇潰しするぞ」
ヴォルデモート「やめろ!」

┌(┌^o^)┐今回は原作どおりに進むハリー達と、分霊箱探しに乗り出したミラベルでお送りしました。
ぶっちゃけここから先はハリーやダンブルドアが何もしなくても勝手にミラベルが分霊箱を壊して回ります。
現在の分霊箱は以下の通り。
トム・リドルの日記=ミラベルによって破壊済み。
ゴーントの指輪=ダンブルドアによって破壊済み。
レイブンクローの髪飾り=ミラベルによって破壊済み。
スリザリンのロケット=ミラベル捜索中。ロケット逃げて!
ハッフルパフのカップ=健在。
ナギニ=健在。
ハリーポッター=健在。

日本=セブンが頑張ってゴジラ×10を海に誘導中。
セブン残りHP 102/8500

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