ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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(「‐|‐) 皆様こんばんわ。イギリス魔法界人口問題を見直していたウルトラ長男です。
感想版での意見によると「少子化起きてると思われるから大人はもっといるんじゃね?」、「学校に通ってない子供もいるはず」という言葉があり、なるほどと思わされました。
案外1万人くらいはいるのかもしれませんね、イギリス魔法界。

……ちなみに日本の都道府県で一番人口が少ない鳥取県でも人口は59万人です。


第55話 失われた物

 神秘部での戦いが終わってから、イーディスはずっと魂が抜けたようであった。

 ハリーやハーマイオニーが何を言っても反応せず、ただ呆然とし続けるだけであり、視線は定まっていない。

 学年末パーティに出る気すら起きず、そしてダンブルドアもそんな彼女を今はそっとしておくよう皆に命じた。

 フラつく足取りで寮の部屋に戻り、座りこむ。

 

 全部、夢だと思いたかった。

 

 そうだ、これは悪い夢なんだ。

 目を覚ませば、またミラベルが学校にいて、『彼女』も側で笑ってくれて……。

 何事もなかったように、また平和な日々が続いて行くんだ。

 そうだ……そうに違いない……。

 ほら、きっと後もう少しで目を覚ます事が出来る。

 自分はまだベッドで寝ていて、それで遅刻寸前になって起きて……。

 

「……ぁ」

 

 ベッドの近くに、プレゼント箱があった。

 ミラベルから――いや、影武者の『彼女』から贈られたプレゼント。

 学年末に初めて見る事が可能になる、友達からの贈り物。

 イーディスは緩慢な動作でそれを持ち上げ、抱き抱える。

 ……保護呪文は、消えていた。

 今なら、開ける事が出来る。

 

 ゆっくりと、箱を傷付けてしまわぬように開く。

 普段ならば中身を包む箱など適当に扱って、捨てて終わりだ。

 だが今や、こんな箱一つすらが換えの効かない大事な宝物であった。

 

 出てきたのは、恐らくは手造りと思われる可愛らしいニーズルのぬいぐるみ。

 そして一枚の手紙であった。

 

 イーディスは急かされるように、しかし慎重に手紙を開く。

 そこには僅かな期待感があった。

 そうだ、彼女はわざわざ学年末に見る為のものとしてこれを用意した。

 ならばこの事態を見越していたという事ではないか?

 もしそうならば……もしかしたら……。

 もしかしたら……生きていて、死んだ振りをしただけじゃないのか?

 そうだ、そうに決まっている。

 きっとミラベルと打ち合わせをしていて、始めからそうするつもりだったに違いない。

 そしてこの手紙には、その事が記されているはずなのだ。

 

 ……普段のイーディスならば、それが在り得ない。都合のいい妄想だとすぐに分かっただろう。

 いや、そもそもこんな妄想自体を行わないだろう。

 しかし今、彼女は正常ではなかった。

 唐突に牙を剥いた現実に打ちのめされ、焦燥し、混乱し切っているのだ。

 

 震える手で手紙を開ける。

 果たしてそこに書かれていた文章は――彼女の望むものではなかった。

 

 

『イーディスへ。

この手紙を読んでいる今、貴女は私をどう思っているでしょうか?

悲しんでいるのか、それとも怒っているのか……それを知るのが、とても怖く思います。

もう知っているでしょうが、私は貴女をずっと騙していました。

私の本当の名前はメアリー・オーウェル。ミラベル様に仕える従者に過ぎません。

あの方が外国で活動する間、ダンブルドアやヴォルデモートの目を誤魔化す為に、私は影武者として学校に通っていました。

貴女が知る私はあの方の紛い物でしかなく、全てが偽りでしかない。

 

けれど、私はいつしか貴女の事を本当の友達だと思うようになっていました。

笑うでしょうか? それとも怒るでしょうか?

身勝手な事であるのは承知しています。

私は『ミラベル・ベレスフォード』を演じる為に貴女を利用しました。

けれど、それでももし許されるならば……もう一度、最初からやり直したい。

あの方の影武者ではなく、今度こそ偽りのない私自身として。メアリー・オーウェルとして貴女と会いたい。

 

次に貴女と再会する時、私は貴女の知る私ではないでしょう。

その時が少しだけ怖くもあります。

まだ貴女が怒っていたらどうしようと、実はこの手紙を書いている今も、その事ばかり考えています。

けど、それでも私は――』

 

 

 ……それ以上読み進める事は、出来なかった。

 涙で視界が歪み、何が書いてあるか、もう分からないのだ。

 

 手紙に書かれていたのは、未来に思いを馳せる一人の少女の本心であった。

 もし次に会えたならば、ちゃんと謝りたい。

 もしまた友達になれるのなら、今度こそ本心で接したい。

 また二人で、ホグズミードに行きたい。

 そんな、失われてしまった『未来』の展望が書かれていた。

 

 イーディスも今、それをこの上なく強く望んでいた。

 また、会いたい。

 本当の彼女と会って、ちゃんと話したい。

 本当の彼女と、また友達になりたい。

 

 だが、無理なのだ。それはもう二度と叶わぬ願いになってしまったのだ。

 もう彼女はいない。

 もう、彼女と笑い合う事も、冗談を言い合う事も出来ない。

 その未来は永久に、失われてしまったのだ。

 

「……っ、ぅ……うぐ……っ」

 

 涙が手紙の上に落ちる。

 一年間の思い出が蘇り、楽しかった日々が鮮明に脳裏を駆ける。

 

 意地悪に笑う彼女。

 微笑む彼女。

 楽しそうに笑う彼女。

 だが、その日々はもう帰って来ない。

 

「う、あ……あっ……ああ゙あ゙あ゙あああ゙あ゙……ッ!!」

 

 

 手紙を抱き締めて、少女は泣き崩れた。

 

 

*

 

 

 ミラベルにとって、メアリーは唯一己の過去を知る近しい人間であった。

 融通が効かず、頑固で、そして自分を恐れずにズケズケと物を言ってくる苦手な相手だった。

 鬱陶しいと思った事は何度もあるし、煙突飛行に突っ込んでやろうかと思った事もある。

 だが、そんな鬱陶しさも無くなれば妙な虚しさがあるものだ。

 彼女がいる事が、当たり前と思いすぎていたのかもしれない。

 

「……メアリー……それが貴様の出した答えか」

 

 ミラベルは眼下で倒れている己の姿をした遺体を見下ろす。

 一年間の間ダンブルドアの眼を誤魔化すと言う命令を与え、そして見事遂行してみせた忠実だった臣下、メアリーの遺体だ。

 死くらい何て事はないと思っていた。

 自分ならばいくらでも蘇生出来ると、そう楽観視していた。

 だがメアリーは帰って来ない。

 その魂は既に『向こう』に行ってしまい、蘇生出来ない状態にあったのだ。

 

 メアリーはこの世に留まる事が出来るはずだった。

 死んだ者が『向こう』に行くか、それともゴーストになるかは本人が決める事が出来る。

 だから万一死亡した時はゴーストとして待機し、ミラベルが蘇生するまで待つという事も出来たはずなのだ。

 だがメアリーはそれをしなかった。

 恐らくは……イーディスとの友情の為に。

 

 主であるミラベルを裏切る事も出来ず。

 かといってイーディスと敵対する道も選べず。

 結局メアリーが選んだのは、そのまま死ぬ事だった。

 そう考えれば、この状況にも納得がいった。

 

「愚か者め……死ぬくらいならばいっそ、ライナグル側について私に歯向ってしまえばよかったものを」

 

 思わずそう洩らし、ミラベルは少しばかり己の発言に驚いた。

 そして苦笑する。

 メアリーがいなくなった事を、思った以上に惜しんでいる自分に気付いたのだ。

 

「最期まで融通の効かん奴め」

 

 この身体に魂はない。

 そもそも自分が作った偽りの身体だ。

 だが……最後くらい、丁寧に埋葬してやるのも悪くないだろう。

 そう思うくらいには、メアリーという従者を買っていた事に今更ながら気付かされる。

 

「……今までよくぞ私に仕えてくれた、メアリー・オーウェル。

ご苦労だった……安らかに、眠れ」

 

 己と同じ姿をした遺体を賢者の石の力で作り変え、彼女本来の姿へと戻す。

 そして埋葬するべく抱き上げ……そこでようやく、気が付いた。

 

 

 ――ああ、そうか……。

 ――そういえばこいつは、レティス亡き後も私が名前で呼んでいた唯一の相手だったな……。

 

 

*

 

 

 『名前を呼んではいけないあの人復活』。

 魔法省が発表したこのニュースは瞬く間にイギリス魔法界全土を震撼させた。

 この発表以降、ハリーとダンブルドアは英雄扱いだ。

 過酷な誹謗中傷に耐え、孤独に真実を叫び続けた悲劇のヒーロー、というわけだ。

 今まで散々ダンブルドアとハリーを異常者扱いしておきながら酷い掌返しもあったものだ。

 しかしハリー達を何よりも失望させたのは、どの新聞もヴォルデモートの恐怖ばかりに囚われ、それ以上の恐怖に目を向けていない事だった。

 

 ミラベル・ベレスフォードとゲラート・グリンデルバルド。

 

 魔法界を支配するどころか完全に破壊し尽す事を目的とする、危険極まりない二人組。

 だが魔法省はダンブルドアから聞いたこの二人の脅威をあまり信じなかった。

 だがそれも無理のない事だろう。

 ヴォルデモートだけでも手一杯だというのに、そこに更なる脅威が加わったなど信じたくはない事だ。

 一応は前任の失敗から嘘と切り捨てるような真似こそしていないが、残念ながらそこまで強く警戒はしてくれないだろう。

 ミラベルは今の所、ただの行方不明扱いだ。

 

 一方で魔法省はハリーに擦り寄るようになり、彼を持ち上げて希望の象徴とするよう提案してきた。

 しかしダンブルドアはその全てを拒否し、ハリーに近付く事すら禁止した。

 この強固な態度に困り果てた魔法省は次策としてシリウス・ブラックの無罪を宣言し、指名手配を解除するもダンブルドアはこれを『当然の行動』と切り捨て、一切取りあわなかった。

 これはハリーにこれ以上の重荷を背負わせまいとするダンブルドアの愛であったが、結果としてこの行動がダンブルドアと魔法省に再び浅くない溝を作り出してしまい、連携を妨げる事となる。

 コーネリウス・ファッジの死後新たに魔法省大臣となったルーファス・スクリムジョールとダンブルドアは表面上は協力関係にありながらも、前任者の残した軋轢を解消する事は出来ず、互いに睨みを利かせている不安定な状態に陥ったのだ。

 

 また、同時期に聖マンゴ病院でヒースコート・ベレスフォード及びサイモン・ベレスフォードの死亡が確認され、末弟のシドニー・ベレスフォードは忽然と姿を消した。

 愛する夫と娘、息子を同時に失ったメーヴィス・ベレスフォードは心労によって寝込み、ダームストラング専門学校教頭職を辞任。後任にはセレヴスと名乗る不気味な仮面男が就任したらしい。

 またイゴール・カルカロフ失踪によって空席となった校長の座には金髪巻き毛の美青年が就任したという話だが、詳細はハッキリしていない。

 一方、フランスのボーバトン魔法アカデミーは引き続きオリンペ・マクシームが校長を務めているが、彼女曰く『フランス全体をよくない空気が包んでいる』らしい。

 その為、日々生徒達に警戒を呼びかけているそうだ。

 

 

 

 学年末パーティーを終え、例年通り生徒達を家に帰したホグワーツは静寂に包まれていた。

 だがそんな時でも教職員は学校にいるらしい。

 ダンブルドアは校長室で椅子に座り、机の上にある物体を眺めている。

 

「…………」

 

 酷く、そそられる。

 ダンブルドアはそれを愚かな考えと自覚しながらも、目を離せないでいた。

 そこにあるのは、一つの指輪だ。

 老人の手には杖が握られ、今から魔法で砕こうとしているのが分かる。

 しかし彼はその杖を振り下ろす事がどうしても出来ないでいた。

 

「……蘇りの、石か」

 

 そこにあるのは『蘇りの石』と呼ばれた、死の秘宝の一つだ。

 ゴーント家に代々伝えられた家宝であり、そして今はそれ以上の意味を持つ。

 ――『分霊箱』。

 魂を分割し封じる事で限りなく不死に近付く禁断の闇魔法。ダンブルドアはヴォルデモートの不死の秘密を探るうちに、それに辿り着いた。

 推測が正しければヴォルデモートは6の分霊箱を作り、そして本人すら気付かぬうちに7つ目の箱も作っているはずだ。

 そして、それら全てを破壊しない限り決してヴォルデモートは死なない。

 そのうちの一つはすでに砕けている。3年前に現れたトム・リドルの日記がそうだ。

 そしてこの指輪もまた、ヴォルデモートの分霊箱と確信している。

 

 だがヴォルデモートは気付かなかったようだが、これはただの指輪ではない。

 いや、正確には指輪にはめ込まれた石が普通ではない。

 これは『蘇りの石』といい、死者と会話する事が可能になる伝説の秘宝なのだ。

 ダンブルドアは、すでに諦めていたはずの自分の中の願いが再燃しているのを感じていた。

 やってはならない。理を曲げてはならない。

 そう理解しているはずなのに……生徒達にそう教えてきたはずなのに、自分を抑えられない。

 

「会えるのか……? 父に……母に……。アリアナ……お前に会って、謝る事が出来るのか?」

 

 震える手を、伸ばす。

 若き日の過ちを、ずっと悔いていた。

 かつて自分が犯した罪を、一日とて忘れた事はない。

 普段は知的な輝きに満ちたブルーの瞳は熱に浮かされたように揺れ動き、指輪を注視している。

 これが……これさえあれば、自分は失ってしまった家族に会える。

 あの日の過ちを、詫びる事が出来る。

 それは何よりも耐え難い、甘い誘惑であった。

 

 ――アルバス・ダンブルドアはかつて、野望に燃えていた。

 己の才能に酔い、それを用いて能力のない者を支配するのが当然だと考えていた。

 そしてその過ちの果てに大切な妹を気にも留めなくなり、死に至らしめてしまったのだ。

 

 『人間は自らにとって最悪のものを欲しがる癖がある』。

 これはダンブルドアの持論であり、かつてミラベルとハリーに語った教訓であり、そして他でもない彼自身の過去を示す言葉であった。

 否、過去だけではない……それはまさに今、ここにあるのだ。

 目の前にある『蘇りの石』を、ダンブルドアは心より渇望しているのだ。

 

 ――ほおら、やっぱり抗えない。どんな綺麗事をほざこうが、それが貴様の本性だ。

 

 頭の中で、勝ち誇ったような少女の声が響く。

 かつての自分を思い起こさせる少女にして、ブレーキを壊した恐ろしい悪魔。

 もしかしたら自分がそうなったかもしれない、悪意の体現者。

 その、欲望に抗う事をしない優美な声は無論ダンブルドアの自責の念が生み出した幻だ。

 しかし今のダンブルドアにとって、それはまさしく己自身の声であった。

 ゆっくりと、まるで魅入られるようにダンブルドアは手を伸ばす。

 後3cm……2cm……1cm……。

 触れてはならない、と自分の中の冷静な賢者が言う。

 しかし家族に会いたいと叫ぶ、若きダンブルドアがそれを排除してしまった。

 そしてとうとう、指が触れ――。

 

「――そこまでだ、アルバス。そいつには呪いがかかっている……迂闊に嵌めれば死ぬぞ」

「ッ!」

 

 入り口から聞こえてきた声に、弾かれたように顔をあげる。

 そこに立っていた姿は見間違えるはずもない。

 金色の巻き毛に端正に整った顔立ち。

 若き日の親友、ゲラート・グリンデルバルドだ。

 自分と同い年であるはずの彼は、しかし若き日そのままの姿で、腕を組んで壁に寄りかかっていた。

 

「ゲラート……何故、ここに……?」

「愚問だなアルバス、私を誰だと思っているのだ?

この学校のセキュリティなど、私にしてみればザルと変わらぬさ」

「……入り口には、石像があったはずじゃが……」

「ああ、あれか。お前の好きそうなお菓子の名前を適当に並べたらあっさり通してくれたぞ?

……相変わらず、マグル界の甘い物が好きなのだな」

 

 ふ、と笑うグリンデルバルドに、ダンブルドアも朗らかに微笑む。

 いきなりの登場に慌ててしまったが、感情をあまり表に出すのはまずい。

 あくまで冷静に、余裕を見せて対峙しなくては。

 

「そうじゃな。マグルのお菓子は何せ外れがないからのう。魔法界のとは違う」

「ああ、百味ビーンズか。お前はあれが大嫌いだったな。いつも外ればかり引いていた」

「そうじゃのう。そしていっつも、お主が当たりを持っていくんじゃ。そのせいでわしは百味ビーンズが嫌いになってしもうた」

「ああ、そんな事もあったな」

 

 くっく、と意地が悪そうに含み笑いをするグリンデルバルドを前に、ダンブルドアはまるで昔に戻ったような錯覚を感じていた。

 何の悩みもなかった、友と笑い合っていたあの日を思い出す。

 だが自分達の道は分かたれてしまった。

 もう交わる事は決して無い、今こうして笑い合っていても、それは変わらないのだ。

 

「ゲラートよ……何をしに来た? まさか昔話をしに来たわけではあるまい?」

「それも悪くないが、少し違う。お前に預けている物を取りに来たのだ」

 

 髪をかきあげ、その口元は優雅に弧を描く。

 キザな動作だが、彼のような美形がやれば絵になるのだからハンサムは得だ。

 

「ニワトコの杖……まだ、持っているだろう?」

 

 やはりそう来たか、とダンブルドアは表情を険しくする。

 ニワトコの杖――手にした者に必勝を約束するという魔法界最強の武器だ。

 実の所必ず勝てるわけではなく、要するにそう言われる程強力というだけなのだが、それでも悪しき者に渡せば大変な事になるのは違いない。

 

「はて、何の事かのう。生憎とわしは自分の杖で満足しておる。

それ以外の杖など持っとりゃせんよ」

「嘘が下手だな、アルバス」

 

 かつてその杖の所有者はグリンデルバルドであった。

 それを打ち倒し新たな杖の所有者となったのがダンブルドアである。

 そしてこのような危険な杖をダンブルドアが世に放つわけはなく、未だ所有者であり続けているのは自明の理であった。

 

「持っている事は分かっている……渡してもらうぞ。

お前はもう、所有者ではないのだから」

「その通りじゃゲラート。しかし君もまた所有者ではない」

「然り。だが私はその所有者に届ける事が出来る」

「じゃろうな。だからこそ、渡すわけにはいかん」

 

 ダンブルドアがニワトコの杖の所有者だったのは、先日の神秘部での戦いまでの事だ。

 あの戦いでダンブルドアはミラベルによって生涯初の敗北を迎えた。

 杖を奪われ、足を切られ、そしてグリンデルバルドが来なければあのまま負けていたかもしれない。

 故に、ダンブルドアはもうニワトコの杖を使いこなせない。

 何故なら杖には『忠誠心』があり、そしてそれは常に強者に向けられるからだ。

 この『忠誠』を得ていない場合、杖は十全の力を発揮出来ない。

 

「あの恐ろしい少女にニワトコの杖を委ねるわけにはいかんのだ」

「ならばどうする? 私と戦うか? その忠誠の失われたニワトコの杖で」

 

 ニワトコの杖に限った話ではないが、杖は強い者を選ぶ。

 忠誠は不変ではなく、勝ち取る事で移動してしまうのだ。

 その方法は決闘、武装解除、あるいは殺害など、相手を打ち負かす事が絶対条件だ。

 特にニワトコの杖はその特徴が顕著であり、例え決闘で使っていた杖がニワトコの杖でなかったとしてもあっさり勝者に乗り換える。

 そして通常の杖と異なり、前の持ち主への忠誠を完全に失ってしまうのだ(通常の杖は少しくらいは前の持ち主への忠誠も残る)。

 この特徴のせいでニワトコの杖は絶えず争いの火種となり、歴代の持ち主全てに死の結末を齎してきた。

 

「ここで戦えばすぐに他の先生方もやってくるじゃろう。不利なのはゲラート、君の方じゃよ」

「雑兵共に私を止める力があるとでも?」

「勿論、わしはそう思っておるよ。ここの先生方は皆優秀じゃ」

 

 グリンデルバルドとダンブルドアは互いに涼しい顔をして向き合いながら、いつでも杖を抜けるよう構えていた。

 何らかの切欠さえあれば、すぐにでもこの場は戦場となるだろう。

 しかしその切欠は訪れず、グリンデルバルドは杖を仕舞う。

 

「仕方あるまい……ここは退かせてもらおう」

「戦わんのかね?」

「いずれ決着は着けねばなるまい。しかしここは我等には狭すぎる……相応しい舞台が必要だ」

 

 グリンデルバルドは窓枠に飛び乗り、ローブを翻す。

 

「最後に忠告しておくが、その指輪を決して嵌めない事だ。

お前は私が倒すのだ……下らん呪いなどで死んでくれるなよ」

「その忠告、心に留めよう」

 

 グリンデルバルドはその返事に満足したように頷き、窓から飛んで行ってしまった。

 彼が来たのは完全に予想外であったが、おかげで助かったというのも事実だろう。

 もしあれがなければダンブルドアは指輪を嵌め、今頃は呪いで衰弱していたはずだ。

 その場合、死を逃れたとしても腕は使い物にならなくなり、余命もわずかとなった事だろう。

 それを考えればまさに絶好のタイミングで声をかけてくれたとも取れる。

 

(……その為に来てくれた、と思うのは……わしの期待しすぎじゃろうな)

 

 敵同士とはいえ、かつての親友との邂逅はダンブルドアの心に少しばかりのゆとりを取り戻した。

 そして杖を握ると、そこから炎を出す。

 ――かつて野望に燃えていた若き日に身に付けた、呪われし火炎……悪霊の火。

 偉大な魔法使いの名は伊達ではない。

 普段はあえて封じているこれら闇の魔法だが、ダンブルドアはその気になればいつでも使う事が出来るのだ。

 だが、それを悪しき過ちと考え自ら封じているに過ぎない。

 

 

 家族に会いたくないといえば嘘になる。今でも未練はある。

 だが、それは使命を全うし向こうに逝ってからでも遅くはない。今はただ、若き未来を守る杖として戦おう。

 そう、ダンブルドアは静かに決意を固めた。

 

 




ミラベル「そうだ、グリンデルバルド。貴様に一つ教えておく事がある」
グリンデルバルド「?」
ミラベル「あいつ(ダンブルドア)、ホモだぞ」
グリンデルバルド「ファッ!?」
ミラベル「ついでに初恋の相手は貴様だ。よかったな!Σd(゜Д゜)」
グリンデルバルド「え、ちょっ、まっ……えっ!? おい、冗談だろうベレスフォード!
嘘だよな!? 頼む、嘘だと言ってくれ! 嘘だと言ってよバーニィ!」
ミラベル「ところがどっこい……っ、嘘じゃありません……っ! これが公式……っ!」
グリンデルバルド「」(ぐにゃあ~)
通りすがりのピッコロさん「れ、恋愛というやつらしいな……わからん」

┌(┌^o^)┐ホモォ...
今回はイーディス大泣きイベントとダンブルドアの石イベント回避回でした。
手紙での追い打ちは基本。
そしてこれから最終戦に向けて盛り上がるのに事故ってダン爺弱体化&寿命1年とかちょっと……という事でこうなりました。
このSSでは最後までダン爺はフルパワーMAX状態を持続します。
当然1年の時間制限がないので原作での死亡イベントも起こしません。

とりあえず書く事もないのでゲーム版オリジナル魔法でもここに乗せておきましょう。

カーペ・レトラクタム
物を引っ張ったり、あるいは自分を引っ張ったりする魔法。
ロックマン8のサンダークローみたいなもの。
ヒソカのバンジーガムでも可。

フリペンド
攻撃魔法。マルフォイに連発するのは誰もが通る道。

ハービヴィカス
植物を成長させる魔法。
これさえあれば環境問題解決。

アクア・エルクト
水を出す魔法。アグメンティとの違いが分からない。

スポンジファイ
床をバネにしたりする魔法。物を衰えさせる魔法の割にそれ以外使い道がない。

グレイシアス
冷気を発する魔法。何故かハーマイオニー専用。

デパルソ
アクシオの対極呪文。物を遠くに追いやる。

プレイヤー操作
ハリーを鬼畜外道にする最強の魔法。
生徒へのフリペンド連発は当たり前。
マルフォイを逆さ釣りにし、倒れてる相手にステューピファイを連発し、ゴイルに化けて監督生に見付かりまくってスリザリン大量減点を招き、ベンチを飛ばして生徒にぶつけるなど、やりたい放題。
ブラック「喜べジェームズ……ハリーは間違いなくお前の子だ……」

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