ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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コーホー(「‐|‐)皆様こんばんわ。
「ハリーポッターと死の秘宝」を検索しようとして「ハリーポッターと」まで入力したところで検索候補に「野望の少女」が出て吹いたウルトラ長男です。
今回は水面下でアンブリッジへの反抗を決意するハー子達の活躍となります。


第47話 水面下の行動

「あんなのはもう、闇の防衛術じゃないわ!」

 

 談話室で、堪忍袋の尾が切れたようにハーマイオニーが叫ぶ。

 元々勉強好きな彼女にとってアンブリッジの授業ほど怒りを煽るものはないのだろう。

 しかも今年はヴォルデモートが復活した事で、皆で備えなくてはならない時なのだ。

 このままではいざ闇の陣営が動いた時、自分達は身を守る事すら出来やしない。

 

「あの人は酷い女よ。とんでもなく酷い人だわ。

私達、あの人に対して何かしなくちゃいけないわ」

「毒を盛ろう」

「ロン黙ってて!」

 

 何かをする、とは言っても別に殺したいわけではない。

 というか、それは普通に犯罪である。アズカバン直行だ。

 

「そうじゃなくて、つまりアンブリッジが教師として最低だって事。

あの先生からは私達、防衛術なんて何も学べやしないわ」

「けど、何をすればいいんだい?」

「自分達で学ぶのよ!」

 

 ハーマイオニーは、これこそ最高のアイデアだ、と言わんばかりに自信を持って言い切った。

 しかし自習など、これまでにもやってきた事だ。

 本を読んで学ぶ段階など、とうに過ぎてしまっている。

 

「しかしハーマイオニー、僕達だけじゃ大した事は出来ない」

「そうね、私達に必要なのは先生よ。ちゃんとした事を教えてくれて、間違ったら正してくれる先生」

 

 ハーマイオニーがハリーを見ながら、何かを期待するように言う。

 しかしハリーにはその視線の意味がわからなかった。

 

「ルーピンの事を言っているのかい? けど彼は……」

「違うわハリー。ルーピンが忙しい事くらい私もわかってるもの。

そうじゃなくて貴方の事を言っているのよ、私」

 

 ハーマイオニーの口から出た爆弾発言に、ハリーは今度こそぎょっとした。

 何だって?

 あろうことか、この僕が先生だって?

 ハリーはハーマイオニーがとうとう血迷ったのかと思ったが、その顔は真剣そのものだ。

 

「ぼ、僕が? 無理だよ。

僕がやるくらいなら、まだ君がやった方がいい」

「いいえハリー。貴方、闇の魔術の防衛術の成績は私より上なのよ?

それに私達の中で一番、場数を潜っているわ」

 

 闇の魔法と戦う上で必要なのは、瞬時の判断力や実際の経験だ。

 そう言う意味で言えばハリーほどの適役はいない。

 彼は実際にそういう修羅場を何度も潜っているし、命の危機にも晒されてきた。

 何より、『例のあの人』ともう3回も遭遇して全て生還している。

 彼は他の誰よりも生き残ってきたという実績があるのだ。

 

「そうだな、俺も賛成だ。

少なくとも俺が先生をやるよりも余程いい」

 

 その案にロンもニヤリと笑い、賛同を示す。

 しかしそんな彼に、ハーマイオニーは呆れたように額を抑えた。

 

「ロン……貴方はもう少し魔法を使う事を覚えてね?」

 

 ロンは一年間聖マンゴに入院していた事があるが、戻ってきてからというもの、どうも力技と自らの恵まれた体格に頼る傾向があった。

 いや、まあ1年分知識が遅れているのだから仕方ないのかもしれないが。

 

「でも僕は……」

「勿論貴方だけじゃなくて私も協力するわ。

それに、同じ考えを持つ生徒はきっと他にもいる。セドリックとかイーディスとかね」

 

 まずやるべき事。

 それは仲間を集める事だ。

 こんな時だからこそ自分達は一致団結し、アンブリッジに立ち向かわなければならない。

 ハーマイオニーはハリーの『忍びの地図』を掻っ攫い、仲間に為り得る生徒が今どこにいるかを探す。

 

 セドリック……ハッフルパフの談話室にチョウ・チャンと一緒にいる。

 

 ウィーズリー兄弟……図書館だ。一体何をしているのやら。

 

 ルーナ・ラブグッド……トイレだ。

 

 アンジェリーナ・ジョンソン……グリフィンドールの女子寮にいるらしい。

 

 イーディス・ライナグル……スリザリン談話室にいるようだ。

 近くにいるダフネやメアリー、ライナーといった名前には覚えが無いが、恐らくスリザリンの友達か何かだろう。

 

 他にも味方になってくれそうな生徒は沢山いる。

 抑圧されるだけの日々はもう終わりだ。

 これからは、こちらから反撃に出るのだ。

 

 そんなハーマイオニーの姿を見ながら、ハリーは新たなる厄介事の気配に一人溜息をついた。

 

*

 

「イーディス、ちょっといい?」

 

 休み時間、廊下を歩いていたイーディスにハーマイオニーが小走りに駆け寄ってきた。

 ハーマイオニーがこうして声をかけてくるのは珍しい事ではない。

 グリフィンドールとスリザリンという、本来ならば敵対関係にある寮生でありながら、この二人は今や掛け替えのない友人同士となっていた。

 

「ん? どうしたのハーマイオニー」

「あのね、今度ホグズミードに行くでしょ?」

「うん」

「そこで私達、ホグズミードにあるパブに集まって『防衛術』の自習について話し合いをする事にしたの。

ほら、あの……アンブリッジ先生の授業じゃあ、本当の防衛術を学べないじゃない?」

 

 ハーマイオニーの言葉にイーディスは頷く。

 それは以前からイーディスも思っていた事だ。

 いや、イーディスに限らず誰もが考えている事だろう。

 あの女は教師になど向いていない、と。

 

「本当の防衛術を学ぶ為にも、私達は自分達で自主的にやる必要があるわ」

 

 以前ミラベルが予見した通りだ。

 その事を顔に出さず、イーディスは頷く。

 自習はおおいに結構、是非やるべきだ。

 だが問題はアンブリッジにバレる危険性だろうか。

 

「それでね、私、ハリーが先生に相応しいって思うの」

「……えー」

 

 ハリー? 何故? Why?

 彼はまあ、確かに防衛術の成績はトップクラスだ。

 しかし同じ生徒であり、加えてミラベルのような英才教育を受けたわけでもないから自分達の知らない呪文を知っているわけでもない。

 それ以前にそもそも性格が教育者に向いていない。

 ハーマイオニーが先生、というならまだ百歩譲って分からないでもなかったが、ハリーはない。

 ないわー、という顔をするイーディスの前で慌てたようにハーマイオニーが説明する。

 

「だってほら、彼が一番そういう経験を積んでるし、ヴォルデモートと実際対峙したのも彼だけだわ」

「まあ、確かにそうかもしれないけど……」

 

 実戦経験、という点を言えば確かにハリーは学園全体でもトップクラスだろう。

 何せ毎年のように厄介事に巻き込まれ、色々な物と戦っている。

 1年の時はトロールやフラッフィー、クィレル。2年の時はトム・リドル。

 3年度では吸魂鬼を退け、4年の時は3校対抗試合に勝利し実際にヴォルデモートとすら戦った。

 そう考えると彼は意外と嵌り役なのだろうか?

 

「それで、イーディスも一緒にどうかなと思って」

「……ねえハーマイオニー、それって結構参加するんだよね?」

「そうね。まあ数人くらいかしら? ハリーとロン、私は当然としてネビル、ディーンにラベンダー。

セドリック先輩とパーバティとパドマにケイティ、アリシア、アンジェリーナ。それから……」

「あ、もういいもういい」

 

 ハーマイオニーの口からペラペラ出て来る名前にイーディスが慌ててストップをかける。

 これは酷い、数人とかいうレベルを超えている。

 そして同時にイーディスの中で答えが決定した。

 

「ごめん、私行けない」

「ど、どうして!?」

「私はスリザリン生だよ? 行った所でアンブリッジのスパイとしか思われないって。

せっかくの集会を私のせいで台無しにしたくはないし、今回は辞退しておくよ」

 

 これは本音だった。

 スリザリンはほとんどの生徒がアンブリッジ派だ。

 マルフォイなどは特に積極的にアンブリッジに取り入り、他の寮の粗を探している。

 無論イーディスは違うが、それでもせっかくの集会にスリザリン生などが混ざっては場の空気を悪くしてしまうだろうし、それだけで離れていく生徒もいるだろう。

 せっかくハーマイオニー達が自習し、闇の勢力に対抗出来る力を付けようとしているのだから、その数は多い方がいい。

 ならば自分はそこに居るべきではない、とイーディスは考えたのだ。

 

「でも、闇の勢力に対抗出来るようにならないと、貴女も危ないのよ!?」

 

 ハーマイオニーが心配するように声を荒らげる。

 彼女が不安に思っているのはイーディスが狙われる可能性だ。

 何せイーディスは2年生の時、実際バジリスクに襲われた過去がある。

 だがそれに、イーディスは首を横に振った。

 

「大丈夫。私もミラベルと一緒に自習してるから」

「ベレスフォードと?」

「うん。まあ一緒にというより教わってるという方が正しいんだけど」

 

 残念ながらイーディスとミラベルではその技量が違う。

 この二人が肩を並べて自習するというのは不可能に近いだろう。

 だから現状はイーディスが一方的に教わっている立場だ。

 だがその二人だけの勉強会は確実に実を結んでおり、イーディスの技量は確かな成長を見せていた。

 

「だから私は大丈夫。ハーマイオニーも私の事は心配しないで」

「……うん、わかった」

 

 ハーマイオニーはまだ納得いかないような顔をしていたが、それでも各寮を取り巻く因縁の深さを前に渋々イーディスを誘う事を諦めた。

 酷く残念そうな顔を見せるハーマイオニーに、流石に悪い気がしたイーディスは無理に笑顔を作って声をかける。

 

「頑張ってね、ハーマイオニー。私は参加出来ないけど、危ない時はいつでも駆けつけるから」

「うん、ありがとうイーディス」

 

 固い握手を交わし、それからハーマイオニーは走り去って行った。

 その背を見送り、イーディスも次の授業を受けるべく廊下を歩く。

 ハーマイオニー達の集会が上手く行く事を祈りながら……。

 

 

 

 それから数週間が経過した。

 ハリー達の集会は危うい橋を渡りながらも、上手く行っていた。

 そういう集会を行っている事自体はすでにアンブリッジにバレているようだが証拠を握られていない。

 また、『必要の部屋』を見付けた事で誰にもバレずに練習が出来るようになったのも大きかった。

 一方のイーディスもミラベル指導の元、メキメキ腕を伸ばし、今では(決闘に限定すれば)7年生すら凌ぐ実力だった。

 

 しかし問題が何もなかったわけではない。

 クィディッチのグリフィンドール対スリザリンの試合ではいつも通りにグリフィンドールが勝利し、マルフォイはいつも通りの屈辱に戦慄いた。そこまでは別によかった。

 (ミラベルは元々マーカスに頼まれただけのピンチヒッターなので今年は参加していない)。

 その後彼は、負け犬の遠吠えも度を超せば耳障りでは済まないという事を身を持って証明し、ハリーとウィーズリーの双子に袋叩きにされてしまったのだ。

 これはハリー達が短気だったという事もあるが、それよりここはマルフォイの方を褒めるべきだろう。

 彼は相変わらずクィディッチ選手としては二流だが、人を苛立たせる事に関してだけは一流であった。

 結果的にハリー達は弱みを与えた事でアンブリッジに選手資格を剥奪され、以降の試合に出れなくなってしまったのだから、スリザリン側としては大成功だ。

 ……尤も、誇りも何もあったものではないやり口に、更に他寮からの嫌悪が増したのは言うまでもない。

 

 だが、それすらどうでもよくなるような大事件が学校の外では起こっていた。

 

「アズカバンからの集団脱獄、か」

 

 朝食の場である大広間にて、ミラベルが朝食のパンを齧りながら、どこか馬鹿にしたように言う。

 その侮蔑は恐らく魔法省に向けたものだろう。

 何の情報もない状態から脱獄されたのなら、無能には変わりないがまだ納得は出来た。

 しかし警告を受けていたにもかかわらずの失態とくれば、擁護の言葉すら浮かばない。

 

「ここまで来たらダンブルドアの言葉が嘘じゃないって分かるはずなんだけど……」

「コーネリウス・ファッジはもう魔法界にとって害でしかないな。さっさと辞職すればいいものを」

 

 コーンスープを飲み、新聞を握り潰す。

 ミラベルはサラリと無情な事を言っているが、それは一つの正しい答えであった。

 残念ながらコーネリウス・ファッジは魔法界にとって害でしかない。

 何の対策も取らず味方の足を引っ張り、そして権力に執着し続ける。

 これでは居ない方がマシというものである。残酷な話だが、いっそ死喰い人にでも殺されてくれた方がまだプラスに働いただろう。

 そして、魔法省が味方の足を引っ張っている間も闇の勢力は着々と準備を進めているわけだ。

 

「私もそう思う……この人達、いくら何でも馬鹿すぎるよ……。

こんなんじゃあ魔法省に誰かが侵入しても気付けないんじゃない?」

「だろうな。あるいは、もう奥深くまで入り込んでいるかもしれん」

 

 ミラベルは飲み終えたスープを置き、食後の余韻に浸る。

 しかし、魔法省の醜態を見せ付けられた後ではどうしても落ち着かない。

 無能である事は分かっていた。足を引っ張る事も予測していた。

 だがまさか、ここまでどうしようもない愚者とは……。

 

「こんな状態で、どうやってハリー達は身を守るっていうのよ……」

「おいおい、問題はそこじゃないだろうライナグル」

 

 この期に及んでまだハリー達の心配をしているイーディスに、ミラベルが呆れたように苦笑する。

 

「魔法省陥落時にはお前も狙われる対象に入るのだぞ? まずは自分の心配をするべきだろう」

「私は大丈夫よ」

「? 何故だ」

 

 イーディスは実の所ハーマイオニーと同じくらい危険な位置にいる。

 本人もそれは自覚しているだろうに、それでも『大丈夫』と言いきったイーディスにミラベルは怪訝な視線を向けた。

 するとイーディスは悪戯っ子のように笑い、ミラベルを見る。

 

「だって私の知る限り一番の魔法使いが守ってくれるんだもん。だから私は大丈夫」

「……」

 

 イーディスの言葉にミラベルはビックリ箱でも開けたかのような顔をする。

 だが言葉の意味を理解し、すぐにその顔は困ったような笑みへと変わった。

 

「全く、能天気な奴め」

 

 信頼されている、と取るべきか、それとも警戒心が無いと思うべきか。

 そんな事を考えているミラベルだったが、イーディスが自分の顔をじっと見ている事に気付く。

 

「……どうした? 私の顔に何か付いてるか?」

「そういうわけじゃないんだけど……ミラベル、最近よく笑うようになったよね」

「は?」

「いや、前も結構笑ってたんだけど、それは何と言うか……人を見下したり、馬鹿にするような……あまりいい笑顔じゃなかったというか。

でも今は、凄い自然に笑えてるし、顔つきも何だか前と比べて優しくなった」

 

 何だか物凄い失敬な事を言われた気がする。

 ミラベルは少しばかり不機嫌そうになり、口をへの字に結んだ。

 だが本気で怒っているわけではなく、どちらかといえば拗ねているようにも見えた。

 

「それは気を付けなければな……」

「いや、気を付けなくていいって! むしろ私、今のミラベルの笑い方の方が好きだよ!」

「…………」

 

 慌てて言うイーディスだが、ミラベルはどこか複雑そうな顔になる。

 しかしすぐに口元を緩め、イーディスの髪をそっと撫でた。

 突然の不意打ちに顔を赤くするイーディスに、ミラベルは笑顔で告げる。

 

「私も、お前の事が好きだよ。ライナグル」

「――!!」

 

 ミラベルにしては珍しい……というより、彼女の口から出たとは信じられない発言にイーディスは目を回す。

 え? なにこれ? この子こんなキャラだったっけ?

 これもしかしてポリジュース薬を飲んだ偽者で、実はドッキリなんじゃない?

 いやでも、この前の魔法薬学で魔法薬の効果を解除する薬を作って飲んでいたがミラベルはミラベルのままだったし、第一ポリジュースならとっくに効果が切れている。

 マッドアイのように一定時間ごとに何かを飲んでいる様子も無いし、第一フォイフォイがアバダケタブラでマーリンの髭! あ、駄目だ、思考が滅茶苦茶になってきた。

 くぁwせdrftgyふじこlp;@:あばばばばばばばばば。

 そんな思考がグルグルと渦巻き、もう自分でも何を考えているか分からないイーディスだったが、ふとミラベルを見るとニヤニヤと嫌らしい笑みを浮べているのが見えた。

 ――やられた。イーディスは瞬時にそう悟り、また顔が赤くなる。

 

「クックック……随分初心な反応をするじゃないか。

何だ? もしかしてそっちの趣味でもあったのか?」

「な、ななななな……そんなわけないでしょう!?」

「おお、こわいこわい」

 

 前言撤回、やっぱこいつミラベルだ。

 荒く息をつき、水を一気に飲み干す。

 そして荒々しくコップを置き、ジト目でミラベルを睨んだ。

 

「やっぱ貴女、性格悪いわ……」

「ふふ、何を今更」

 

 ミラベルはそう言い、面白そうに口の端を吊り上げた。

 綺麗な笑顔だ、とイーディスは思った。

 元々ミラベルは常識外れた美貌の持ち主だが、今の笑顔はそういった物とはまるで違う。

 仮に彼女の顔が人並みであったとしてもきっと綺麗だと思っただろう、そういう自然で美しい笑みだったのだ。

 それに釣られてイーディスもまた笑顔を浮かべる。

 

 

 そこには確かに、年相応の……決して偽りではない『友達』同士の姿があった。

 

 

*

 

 

 魔法3大国家の一つに数えられる国、フランス。

 その魔法界における秩序の象徴こそがフランス魔法省だ。

 そこは多くの職員が勤め、日々魔法界の治安維持の為に働いている。

 一見すると、それは普段と何ら変わらない光景に見えるだろう。

 だがよく見ればきっと異常がわかるはずだ。

 勤める職員の悉くが虚ろな眼をし、まるで機械のように仕事をする様を。

 肉体の疲労すら気にせず、互いに会話すらせずに働くその様を。きっと異常だと思うはずだ。

 しかしそう思う『人間』はもう何処にもいない。彼等は全て自我なき操り人形へと変えられてしまっているのだから。

 だがこの建物にいる全ての生き物がそうなっているわけではない。

 まるで全員が機械となってしまったかのような魔法省の中で二人、しっかりとした自我を保っている『化物』が歩いていた。

 

「これでフランス魔法省は全員が我が統制下に置かれたわけだ。まあ平和ボケした組織などこんなものだろう」

「全く恐ろしい化物だよ、お前は。それで……1国を手にした今、次はどうする気だ?」

 

 上機嫌に話すのは真紅のフードに全身を隠した魔法使い、ノスフェラトゥ。

 その話し相手を務めるのはかつての恐怖の象徴、グリンデルバルドだ。

 単騎でも魔法界全体を震撼させ得る化物が二匹、人間の物のはずの清潔な建物を我が物顔で歩く。

 

「そうだな……まあコツコツやるとしよう。私はこう見えて地道な努力を好む慎重派なんだ」

「その口でよく言う。慎重な奴が国の乗っ取りなど計画するものか」

「いいや慎重だよ。一つ一つ、丁寧に積み重ねないと気が済まない性質でね……特に、本命の英国を狙う前に準備は万全に固めておきたい」

 

 ノスフェラトゥはローブの下で口を三日月のように歪める。

 それはまるで口が耳まで裂けているかのような、おぞましく邪悪な笑い方だ。

 いくら外見が美しかろうとそれを帳消しにするような、内面の怪物性を前面に押し出したような顔だった。

 その開いた口からは牙が覗き、獲物を求めるように鈍く輝いている。

 

「貴様はこの後、アイルランドに行ってもらおう」

「アイルランド? ……ああ、なるほど……イギリスを囲むつもりか」

「ああ。既に配下の者を潜り込ませているが、少し手こずっているようでな……貴様の力を貸してやれ」

 

 フランスは落とした。

 そして次に狙うべき2国はすでに決まっている。

 ヴォルデモートがイギリスを狙うというなら、狙わせてやろう。

 ダンブルドアがイギリスの守りを固めるなら、そうさせてやろう。

 その間にこちらは、外から埋めるだけの話だ。

 

「私はその間にドイツ魔法省を潰す。イギリスを攻めるのはそれからだ」

 

 

 怪物は水面下で静かに、しかし大胆に動く。それを止める者はいない。

 悪魔を止める天使は、この世界には存在しないのだ。

 

 




~没ネタ~
マルフォイ「休暇をよくあの家で過ごしたりするんだろう?
よく豚小屋に我慢出来るねえ」
ハリー「(イライライライラ」
マルフォイ「それともポッター。君の母親の匂いを……」
ロマンドー「……」ガシッ
マルフォイ「フォイ?」
ロマンドー「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!(物理)」ポイッ
マルフォイ「フォォォォォォイ!!?」
ハリー「ああっ!? マルフォイが数十メートル上空へ投げ飛ばされた!?」
ハー子「ロン、それそういう魔法じゃないわ!?」

(「‐|‐)というわけで、それぞれの水面下でお送りしました。
イーディスはDA軍団に入りませんでしたが、その理由は「スリザリンだから」です。
イーディス個人の善性とかは関係なしに、スリザリン生がメンバーにいるだけで軋轢を生むのです。
何せこの年のスリザリンときたらアンブリッジ派閥ばかりですからね。
こういう所でイーディスは割を喰います。

ちなみにロンの「毒を盛ろうぜ」発言は原作で本当に言っている事です。

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