ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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∩(・ω・)∩<テンヲミヨ
皆様こんばんわ。
GジェネDSでようやく満足いくまで味方部隊を鍛えたウルトラ長男です。
専用機っぽいのがないニュータイプは全員νガンダムorサザビーor量産型F91に乗せ、オールドタイプは全員Ex-Sガンダム。
これならきっと最後まで行ける!


第35話 第一の課題

 3校対抗試合、その第一試合の競技場は、始まる前から熱気に包まれていた。

 競技内容はドラゴンの守る金の卵を奪う事。

 これは言うまでも無い事だが命がけで、極めて危険な事だ。

 ドラゴンはこれが競技である事など理解していないし、本物の卵の中に紛れ込んだ金の卵を己の卵だと勘違いしている。

 ならばそれを奪いに来る代表選手は敵であり、殺すべき相手だ。

 その爪は人体など容易く引き裂き、尾の一撃は人間が受ければ骨を砕かれ、内臓を口から吐き出すだろう。

 一度その牙に囚われれば助かる術はなく、吐き出す炎は人など炭に変える。

 そんなものをどうやって出し抜くのか。

 はたまた、出し抜けずに無惨な姿を晒してしまうのか。

 興味と期待と、そしてほんの少しの怖いもの見たさ。

 それが競技場のボルテージを最大まで引き上げていた。

 そんな会場に向かってルード・バグマンが拡声魔法を使い、隅々まで響く声で呼びかける。

 

『さあさあさあ、諸君! 3校の諸君! よくぞ集まってくれました!

数世紀もの間沈黙を守り続けた3校対抗試合。その輝かしい再スタートが間もなく切られようとしています。

第一の課題として選手達に牙を剥くのは世にも恐ろしいドラゴン!

古来より、ドラゴンを退治し、また彼等が守る宝を手に入れる事は勇者達の必須条件と言っても過言ではない。

そして今日、勇敢にもドラゴンに挑むのは4人の勇者!

ホグワーツ、ダームストラング、そしてボーバトン。

4人の勇者は果たしてどんな方法でドラゴンを出し抜くのか! 皆さんのその目で歴史を見届けて頂きたい!』

 

 流石に魔法スポーツ部長だけあり、こういう演説はお手の物なのだろう。

 はきはきとした声で喋り、観客達の興奮を更に高めていく。

 

『それでは、勇者達が挑む恐るべき怪物を紹介しましょう!

まずはこいつだ! ウェールズ・グリーン普通種! 全長16、5m! 体重2、6t!

高山の営巣に生息するこのドラゴンは人を避けようとするので、扱い易いドラゴンとして知られています。

しかし油断してはいけない! 1932年、マグル達が日光浴していた浜辺を、凶暴化したこのドラゴンが襲撃したイルフラクーム事件はあまりにも有名!

穏やかなドラゴンだからこそ一度怒ると恐ろしい! こいつを抜けるのは至難の業だ!』

 

 バグマンの紹介に合わせるように囲いの中にいるドラゴンへと視線が集中する。

 緑色の鱗に覆われたその身体は見るからに頑強で、大人しさの中に圧倒的な力強さが感じられた。

 

『次にスウェーデン・ショート・スナウト種! 全長15m! 体重2、4t!

少し小柄なこのドラゴンの特徴は、なんといってもその強固な皮膚です!

軽く強靭なその鱗は盾や保護手袋として使われるほどの逸材であり、防御力はピカイチ!

また、独特の鮮やかな青い炎を吐く事でも知られています!

こいつをどう捌くのか! 代表選手の技量が試される相手です!』

 

 また別の囲いの中にはシルバーブルーの身体を輝かせるドラゴンが座っており、静かに周囲を見渡していた。

 見ているだけで身体が震えそうな、そんな威容を誇っている。

 

『アジアよりやってきたのは、チャイニーズ・ファイヤボール種! 全長17、3m! 体重3t!

今回連れてこられたドラゴンの中では最も気性が激しく、ほとんどの哺乳類を餌にしてしまう!

人間の肉が大好物の危険な奴です!

こいつとは戦うだけでも勇気が必要でしょう!』

 

 紹介されたそれは、真紅の鱗を持つ、眼が飛び出したドラゴンであった。

 顔の周りには黄金の棘のような房毛があり、それがより一層恐ろしさを引き立たせていた。

 

『そして何と言ってもこいつです! ハンガリー・ホーンテール種!

全長20m! 体重4t! 吐き出す炎は15mにも達する凄い奴!

強靭な角に固い鱗、そして尾から生えた棘!

一体どうやってこのドラゴンを出し抜くのか! 目が離せません!』

 

 最後に紹介されたのは、ブロンズ色の角が生えた漆黒のドラゴンであった。

 尾からは鋭い棘が生え、他のドラゴンよりも武器が多い。

 加えて見るからに獰猛そうであり、正面切って戦うなど考えたくもない相手だ。

 

『以上4体! いずれも一筋縄ではいかないドラゴン達!

勇者達は彼等に立ち向かい、卵を奪わねばなりません!

さあ、まずは最初に挑む勇者をご紹介しましょう!

トップバッターはホグワーツ、ハッフルパフ寮の若き勇士!

クィディッチチームのキャプテンでもある彼がどう立ち向かうのか!

さあ、皆さん、ありったけの声で出迎えて下さい!

セドリック……ディゴリィィィィィ!!』

 

 その声と同時にハッフルパフの生徒が一斉に立ち上がり、割れんばかりの大歓声をあげる。

 その音量といったら、離れた場所にあるスリザリンの席にいて尚鼓膜を奮わせるほどだ。

 イーディスは耳を塞ぎ、ミラベルも五月蝿そうに顔をしかめている。

 

「まずはディゴリー先輩かあ……どうやってドラゴンから卵を奪うのかな」

「案外奪えず焼け死ぬかもな」

「ちょっと、ミラベル! 縁起でもない事言わないで!」

 

 セドリック・ディゴリーはこの第一競技のトップバッターだ。

 そしてそれは同時に、久しく始まった対抗試合のトップバッターである事を意味する。

 その最初の一人がいきなり焼け死ぬ、などという凄惨な事態が起こればまた対抗試合が中止されてしまうかもしれない。

 そういう事情もあるからこそ、彼には是非とも無事にこの難題をクリアして欲しかった。

 歓声に迎えられながらディゴリーが柵の切れ目から中に入り、スウェーデン・ショート・スナウト種と向き合う。

 何とも堂々とした姿だが、やはり緊張は隠せないようで顔が強張っていた。

 

『競技、開始ィィィィ!!』

 

 バグマンの言葉と共にホイッスルが鳴り響く。

 ここに開始の合図は鳴らされた。もう後には引けない。

 観衆が見守る中セドリックは杖を取り出し、近くの岩に魔法をかける。

 すると岩がラブラドール・レトリバーに変身し、ドラゴンの周囲を駆け回り始めた。

 見るからに卵を奪いに来た外敵に、ドラゴンが鬱陶しそうに顔をあげる。

 

「い、犬?」

「なるほど、囮作戦に出たか……だがそう上手くいくかな?」

 

 セドリックが選択したのは囮を用いた作戦だ。

 それは今の所上手く行っているようで、ドラゴンの視線は犬に釘付けになっていた。

 スウェーデン・ショート・スナウト種の死角に回りこむようにセドリックが移動し、ゆっくりと卵へと近付いていく。

 だが少しばかり気が早すぎる。まだドラゴンは卵の近くを離れてすらいないのだ。

 少し近付いた所で、たまたまドラゴンが振った尾がセドリックへ襲いかかり、慌てて後ろに下がる。

 

『おぉぉう、危なかった、危機一髪!』

 

 会場中が息を飲み、セドリックの無事に安堵する。

 危なかった……今のが当たっていれば挽肉が一つ完成していたところだ。

 セドリックは再び距離を取り、ドラゴンの隙を伺うも、なかなかドラゴンは動こうとしない。

 

「う、動かないね?」

「囮作戦は悪くない。だが、犬ではドラゴンに警戒心を抱かせる事は出来ても脅威とは判断されん。

ドラゴンにしてみれば自分が卵の側にいればまず取られる心配などないのだから、動く理由がないのさ」

 

 イーディスの疑問にミラベルが解説を入れる。

 囮作戦はいい。だがドラゴンの気をいくら引こうと、あれでは卵から離れてくれないだろう。

 さあ、セドリックはどう動くか……?

 そう思うミラベル達の前でセドリックは犬を増やし、今までと違った動きをさせた。

 今までのようなドラゴンの周囲を走るだけではない。実際に卵を奪う素振りを始めさせたのだ。

 するとドラゴンの眼に怒りが宿り、ゆっくりと身体を持ち上げる。

 その隙を狙い、セドリックが一気に駆け出した!

 

『これは危険な賭けに出ました! これは!』

 

 卵さえ取れば勝利だ。

 そう判断したらしいセドリックが、勇敢とも無謀とも取れる突撃を行う。

 上手く行けば、確かに卵を奪えるだろう。

 だがドラゴンとて、ここに犬以外の生物が入っているのは理解しているのだ。

 まるで気が変わったかのように標的を犬からセドリックに変え、その顔をセドリックへ向けた。

 吐き出される青い炎! 咄嗟に避けるセドリック!

 

『うまい動きです!』

 

 地面を転がり、セドリックは卵へ手を伸ばす!

 だが後僅かに及ばず、振り下ろされた爪から逃れる為にその場で姿現しをし、ドラゴンの射程内から逃れた。

 

『残念……駄目か!』

 

 会場が落胆に包まれ、溜息があちこちから漏れる。

 イーディスも今まで呼吸を忘れていたかのようにようやく息をつき、呼吸を整えた。

 

「惜しかったなあ……もう少しだったのに!」

「少しタイミングが速かったな……だが今のでコツは掴んだはず。

次で成功させるな、あれは」

 

 イーディスとミラベルがそれぞれの感想を述べ、競技を見守る。

 ミラベルが言ったようにセドリックは再び犬達を差し向け、自分はひたすら死角へと潜み続けた。

 ドラゴンが腰をあげても今度は動かず、ただ時を待つ。

 そして――10分もしただろうか? 遂にドラゴンが飛び、犬達へ向かった所で再びダッシュ!

 ドラゴンが気付くも、もう遅い。セドリックは卵を奪い、その場から駆け出した。

 

 途端、歓声が会場を埋め尽くし、ハッフルパフ生の足踏みが地震のように響く。

 取った! セドリックが卵を取った!

 

 当然のようにドラゴンがセドリックに標的を変更して襲いかかるも、卵を奪った時点で競技は終わっている。

 すぐに待機していた魔法使いが飛び出し、数人がかりでドラゴンを抑え込んでしまった。

 いまだ暴れようとするドラゴンを檻の中に押し込めるのを見届け、バグマンが声を発する。

 

『お見事! セドリック・ディゴリー! 本当によくやりました!

さて、審査員の点数です!』

 

 バグマンが手を向けた先には、審査員席があり、ダンブルドア、バーテミウス・クラウチ、マダムマクシーム、そしてイゴール・カルカロフが座っている。

 勿論ここで喋っているバグマンも審査員の一人だ。

 それぞれが点数を掲げ、一斉に皆が注目した。

 声に出さないのは、後続の選手に余計なプレッシャーを与えない為だろう。

 

 マクシーム――8点。

 クラウチ――8点。

 ダンブルドア――8点。

 バグマン――8点。

 カルカロフ――6点。

 

「38点、かあ……高いのか低いのかわかんないね」

「まあ、最初ならこんなものだろう」

 

 合計点数38。

 50点満点と考えれば、高いのか低いのかは微妙なラインだ。

 イーディスとミラベルも特に突っ込みを入れる事は無く、点数を受け入れる。

 何はともあれ、成功しただけでも見事なものだ。

 失敗の恐れがある事を考えれば、成功させるのが何にも増して優先されるのだから。

 

『さあ、セドリック・ディゴリー、全く見事な健闘を見せてくれました!

次の選手は彼の勢いに続けるのか!

さあ、皆さん大声で迎えて下さい!

ボーバトン魔法アカデミーよりやってきた魅惑の妖精! 今大会の紅一点!

フラー……デラクーーールッ!!!』

 

 セドリックと入れ替わるように入ってきたのはフラー・デラクールだ。

 今度はボーバトン生が一斉に声をあげ、一部の男子生徒も一緒になって吼える。

 ヴィーラの血を引いているその美貌は立っているだけで男を虜にし、釘付けにする。

 その容姿だけでも彼女はある意味、この大会で一番有利な位置にいると言っていいだろう。

 そしてそんな彼女と相対するのはウェールズ・グリーン普通種だ。

 

『さあ、彼女がどう魅せてくれるのかに期待しましょう!

競技、開始ィィィ!!』

 

 開始の合図と共に、フラーが動く。

 ゆっくりと、少しずつドラゴンとの距離を詰め、ドラゴンが攻撃を仕掛けてくる間合いを計る。

 どうやら囮作戦とは違い、魔法による攻撃を選んだようだ。

 だが離れた位置から打てば鱗に弾かれ、通用しない。

 ドラゴンに魔法が唯一通じる部位……眼。そこを狙う為にギリギリの射程を計る。

 そして――ドラゴンが前触れもなく火を吐いた!

 フラーは咄嗟に避けるも、服に火が燃え移り、慌てて水を出して消火する。

 だが、服は少しばかり燃えてしまい、その白い肩が露になった。

 

『おー、これはどうもよくない!』

 

 少しばかり興奮したような陽気なバグマンの声が響き、男達がざわめく。

 声ではよくない、といいつつも何か別の事を期待しているように見えるのは気のせいだろうか。

 女性陣からは白い目を向けられながら、バグマンはフラーを凝視する。

 しかしフラーは男の視線に慣れたもので、まるで動じていない。

 それどころか今の攻撃でわかった、ギリギリの位置から魔法を放つ。

 それは見事ドラゴンの目に当たり、ドラゴンをトロンとさせた。

 どうやら魅惑の呪文で勝負に出たらしい。

 ドラゴンが眠る寸前に吐いた炎を避け、それからフラーは慎重に歩を進める。

 

『おー、危うく! さあ慎重に……』

 

 だが、ドラゴンの前を通り過ぎようとしたところでドラゴンが寝ぼけ、炎を吐いた。

 それがフラーのスカートに着火し、男衆が盛り上がる。

 しかし残念な事にすぐ消火されてしまい、溜息が会場を支配した。

 

『ああ、なんと、今度こそやられてしまったのかと思ったのですが!』

 

 明らかに残念そうにバグマンが言い、イーディスが思いきり白い目をバグマンへと向けた。

 イーディスだけでなく、今や会場中の女性がバグマンの敵だ。

 

「……サイッテー……」

「…………」

 

 ミラベルは感想こそ発しないが、まあ同意見なのだろう。

 呆れたような目をバグマンへ向けており、彼女の中でバグマンの評価が下がった事は明らかだ。

 バグマンも流石に気付いたのか、冷や汗を流しながら誤魔化すように声を上げる。

 

『さあ、審査員の採点は!』

 

 マクシーム――9点

 クラウチ――7点

 ダンブルドア――8点。

 バグマン――9点

 カルカロフ――6点

 

「39……ディゴリー先輩、抜かれちゃったね」

「まあ妥当だな」

 

 抜かれたといっても僅差だ。これならばまだ十分逆転も出来る。

 観客が沸き、次のホイッスルが鳴り響く。

 ダームストラングの生徒ばかりではなく、クィディッチを愛する全ての選手が立ち上がり、彼の勇姿を目に焼き付けようとした。

 

『そして、いよいよ登場! ミスター・クラァァァァム!!』

 

 クィディッチを知るならば誰もが知るスーパースター!

 猫背気味の男がO脚でノッシノッシと歩きながら入場すると、それだけで拍手が鳴り響いた。

 流石に今大会で最も大舞台慣れしているだけあり、緊張がまるで見られない。

 競技が始まると同時にクラムは恐れる事なく飛び出し、ドラゴンへ杖を向ける!

 

『なんと大胆な!』

 

 一気に距離を詰めたクラムは杖から呪文を連発し、ドラゴンの目を狙う。

 ドラゴンが爪を振り下ろすも、余裕をもって避けるのは流石クィディッチプロといったところか。

 それどころか攻撃の隙を狙い、呪文をその眼に叩きこんでしまった。

 瞬間、ドラゴンが悲鳴をあげ、のたうち回る。

 『結膜炎の呪い』……最もドラゴンに効果的とされる呪いの一つだ。

 しかし、ここで不運がクラムを襲った。

 痛みに暴れるドラゴンが本物の卵のうち、半数を踏み潰してしまったのだ。

 クラムは青い顔をし、慌てて金の卵を回収する。

 

「あっちゃー……卵、潰れちゃったね」

「途中まではよかったが、運がなかったな。あれは確実に点数に響くぞ」

 

 途中までのクラムはまさに完璧であった。

 ドラゴンを恐れず正面から挑み、魔法を叩き込んだ。

 だが、本物の卵を潰してしまった以上減点は免れない。

 ダームストラングから拍手喝采が響くものの、残念そうな空気もまた伝わってきた。

 

「まあ、3人共悪くはない方法だったよ。満点は取れんが、十分に優秀と言える」

「んー……ミラベルはそうは言うけど、じゃあどうすれば満点って取れるのかな?」

「ふむ……貴様ならどうする? ライナグル」

「アクシオで卵を取り寄せる」

「何の面白味もないな」

 

 イーディスの挙げた方法にミラベルは酷評を下す。

 確かに確実性はあるが、全く面白くない。

 こういう競技は要するにいかに魅せるかにかかっている。

 イーディスの述べた方法では減点はされないが、大きな加点もされない。

 クリアだけを見れば確かではあるが、優勝は狙えない方法だろう。

 

『さあ、審査員の点数は!』

 

 マクシーム――7点。

 クラウチ――7点。

 ダンブルドア――8点。

 バグマン――8点。

 カルカロフ――10点。

 

 やはり卵を潰してしまったのは大きな減点対象となったらしい。

 カルカロフのあからさまな贔屓があって尚40点にしか達していない。

 クィディッチプロとしての期待が大きかっただけに、落胆もひとしおだ。

 それでもトップはトップ。ダームストラングのテンションは今まで以上に上昇している。

 

『それでは、最後の勇者を紹介しましょう!

ハンガリー・ホーンテール種に挑むのは皆様ご存知生き残った男の子!

今大会最年少にして、ありえざる4人目!

ハリィィィィ、ポッタァァァァァ!!』

 

 これまでの選手と比べて頭一つ小さな少年の入場に、グリフィンドールから歓声があがる。

 しかし、それ以外の寮からはまばらな拍手が響くばかりで、ボーバトンとダームストラングに至っては完全に沈黙を保っていた。

 気持ちはわからないでもない。

 4人目の、それも年齢に達していない生徒の参加など認められておらず、それだけでホグワーツが有利になってしまうからだ。

 だが、その仕打ちは14歳の少年に対してはいささか過酷すぎる。

 そもそも、彼とて望んで出場したわけではないのだ。

 

『競技、開始ィ!』

 

 年齢は確かに最年少だ。

 だが、それで彼を侮っていいかといえば否である。

 潜った修羅場の数。戦いの経験が違う。

 命をかけた戦いなど、これが始めての事ではない。

 ハリーは虚空に手を掲げ、そして呪文を唱える。

 

「アクシオ! ファイアボルト!」

 

 その声に応えて箒が飛来し、彼の手に掴まれる。

 ここまではミラベルも知る通りだ。

 だが、ここからが知識とは違った。

 

「エクスペクト・パトローナム!」

 

 ハリーの杖から銀色の輝く牡鹿が現れ、ドラゴンへと駆け出す。

 セドリックがとった方法とは違うが、守護霊の魔法を用いた囮作戦だ。

 しかも、守護霊の魔法は高位呪文に数えられ、それだけで点数が上がるのが期待出来る。

 ドラゴンが目を奪われた隙を狙い、飛翔! ハリーが空中へと飛び立った。

 その姿が豆粒程のサイズになるまで飛び……急降下!

 そして降下しながら杖を向ける!

 

「エクスペリアームス!」

 

 一発! 二発! 三発四発!

 赤い閃光が迸り、ドラゴンの鱗に叩きこまれていく。

 勿論ダメージはない。しかし、明らかな攻撃にドラゴンの警戒が一気に上がり、ハリーを睨み付ける。

 そして口を開けて炎を吐き出そうとし――ハリーが、消えた。

 

「!?」

 

 突然消えたハリーにドラゴンが止まり、会場も騒然とする。

 だがミラベルだけは面白そうに口を吊り上げ、カラクリを見破っていた。

 

「透明マントか……空中に上がった時に取り寄せていたな」

 

 とはいえ、ハリーの透明マントは特別製だ。一体どういう原理なのか魔法の効果を受け付けないし、いくら使っても効果が失われない。

 となれば、あれは恐らく校内にあった別の誰かの物だろう、とミラベルは考える。

 あるいは事前に目くらましの魔法をかけたマントを用意していたのかもしれない。

 そのような事を考えていると再び、ハリーがその姿を現す。

 その手の中にはドラゴンの卵があり、会場が一斉に沸いた。

 だが、少し待て。あれは金の卵ではない! 普通の卵だ!

 あんなものを取ってどうする!?

 その疑問と同時に、また別の生徒が声をあげた。

 

「お、おい! ドラゴンの巣が消えてるぞ!?」

 

 そう、ドラゴンの巣がいつの間にか消えている!

 代わりにハリーの手には卵があり、それがドラゴンを怒らせた。

 あいつか? あいつが巣を消したのか? 卵を奪ったのか!?

 怒りに燃える瞳を輝かせ、咆哮をあげる。

 そして翼を羽ばたかせ、大空高く飛翔した。

 

『ホーンテールが飛んだああああ! そしてハリー・ポッター!

なんと、これを迎え撃つ!!』

 

 ホーンテールを前にハリーは怯まず、魔法で蛇を出す。

 その蛇は卵ごと巻き込むようにハリーの腕に巻き付き、卵を固定した。

 そして突撃!

 視線を一度だけ観客席に……そこにいるミラベルに落とし、心の中で告げる。

 去年の敗北は忘れていない。あの屈辱の敗戦は今も悪夢として心に残っている。

 だが、感謝しよう。

 あれがあったから、自分は強くなろうと思えた。

 これまで以上に貪欲に練習に励めた。

 

 ――見ていろ、ベレスフォード……これが僕の答えだ!!

 

 ――いいだろう、魅せてみろ……貴様の力をな。

 

 視線が一瞬交差し、すぐにドラゴンへ戻す。

 そして魔法を連打! 赤い閃光を幾度も鱗に叩き込み、ドラゴンの怒りを煽る。

 逆に吐き出された炎は空中で回転しながら回避し、下を潜るようにドラゴンとすれ違い、旋回。

 怒り狂うドラゴンを誘うように高度を上げ、空中デッドヒートを繰り広げる。

 速度をほとんど落とす事なく、時に突撃し、時に回転し、時に旋回し、ドラゴンを翻弄するその勇姿にいつしか会場のブーイングも止み、代わりに声援が送られた。

 

 そして地上から大分離れただろうか。

 ハリーはおもむろに、蛇を緩め、卵を放り投げた。

 当然ドラゴンが慌てて卵に寄るも、次の瞬間卵は煙をあげ、別の姿へと変化……否、今まで卵に変化させていたものが元に戻る!

 

 『汚いぞポッター』

 

 それは、マルフォイが作って配布していた『汚いぞポッター』バッジであった。

 突然の事に一瞬動きを止めたドラゴンの顔の前に飛翔し、杖を向ける。

 そして放たれる、結膜炎の呪い!

 閃光が走り、ドラゴンの眼を貫き、錯乱させた。

 すると意表を突かれたドラゴンは翼の制御も出来なくなり、落下。

 高度数百メートルの高さから地面に降下し、更にそこに畳みかけるようにハリーが魔法連射!

 ドラゴンの後を追うように急降下しながら放つのはディセンド(落ちろ)の魔法。

 それがドラゴンの落下速度を一発ごとに加速させ、弾丸へと変える!

 

「落ちろ!」

 

 呪文を撃つ! ドラゴンが加速する!

 

「落ちろ!!」

 

 閃光が迸る。ドラゴンが悲鳴をあげる。

 

「落ちろォォォ!!」

 

 落下!!

 轟音を響かせ、地面を砕き、会場全体をまるで地震のように揺らしてドラゴンの巨体が競技場の角に叩き落とされた。

 恐らくは位置まで計算していたのだろう。その落下地点は卵の位置から大分離れている。

 そしてドラゴンをノックアウトさせたハリーは杖を振り、唱える。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

 するとどうだろう。

 いままで何も無かった場所から突然卵が浮かび上がったではないか。

 混乱するイーディスだったが、ミラベルは面白そうに笑みを浮かべるのみだ。

 

「え? あれ、どういうこと?」

「透明マントだよ。あれでポッターは卵を隠していたんだ」

 

 そう、巣は消えてなどいなかった。

 透明マントを被せる事で消えたように見せかけ、ドラゴンをおびき寄せたのだ。

 最後に浮かび上がった卵を、まるでクィディッチのシーカーがスニッチを取るように空中でキャッチ!

 卵を持った手を掲げる少年に、会場が沈黙で包まれた。

 

 だが、すぐにその沈黙は歓声に変わり、爆発したかと思うほどの拍手が鳴り響く。

 

『やった! やりました! 最年少の代表選手が見事卵を取りました!

それもドラゴンをノックアウトしての完封勝利! 見事、見事です!』

 

 歓声が響く中、ミラベルはくつくつと笑う。

 なるほど、確かに魅せてもらった。これがハリー・ポッターの答えか。

 確かにヒントを与えたのは自分だが、まさかそのほとんどを複合するとは思わなかった。

 イーディスも感動で涙ぐんでおり、惜しむ事なく拍手を送っている。

 

 

 興奮冷めやらぬ競技場の中――ハリー・ポッターの点数、42点が発表された。

 

 




マルフォイ「やあ、ウィーズリー。帰ってきてたんだねえ。
てっきり、恥ずかしくて学校をやめっちゃたのかと思ったよ」
ロマンドー「とんでもねえ。待ってたんだ」\デェェェェェェェェェェン/
マルフォイ(……あれ? 誰だこいつ?)
ロマンドー「俺の顔を見て黙るフォイとは面白い奴だ、気に入った。お前は最後にフォイしてやる」
マルフォイ「(((;゜д゜)))フォイ……」

∩(・ω・)∩<ミエルハズダ……アノマルフォイガ
今回は第一の課題でお送りしました。
今回のミラベルとイーディスは完全にただの解説役で主役はハリーです。
ハリーのドラゴン撃退法は、実は私が「ハリーと同じくらいの力量のオリ主」を放り込んだらこうやってクリアさせよう、と妄想していたものだったりします。
ちなみに点数42点ですが、配点はこんな感じだったり。

マクシーム――9点。
クラウチ――9点。
ダンブルドア――10点。
バグマン――10点。
カルカロフ――4点。

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