ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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∩(・ω・)∩<ムダナコトヲ……
皆様こんばんわ。ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターに行きたいウルトラ長男です。
2014年に日本上陸……胸が熱くなります。
俺はマグルをやめるぞーJOJO-!


第33話 炎のゴブレット

「こんばんわ、紳士淑女、そしてゴーストの皆さん。

そしてまた、今夜は特に……客人の皆さん。

ホグワーツへのおいでを心から歓迎いたしますぞ。本校での滞在が快適で楽しいものになる事をわしは希望し、また確信しておる。

さあ、それでは大いに飲み、食い、かつ寛いでくだされ!」

 

 3校対抗試合の為にやってきた外国からの客人達。

 それを出迎える歓迎パーティーの挨拶を手短に済ませ、ダンブルドアが杖を一振りする。

 すると各寮のテーブルに置かれた金色の皿が料理で満たされ、その中には普段とは違う見慣れない物が多く混じっていた。

 これはボーバトン、ダームストラング生の為に用意された海外料理の数々だ。

 

「ね、ね、ミラベル! クラムがスリザリンのテーブルに座ってるんだけど、どうしよう!?

話しかけるべきかな?!」

「どうでもいい。私は今忙しいのだ」

 

 ダームストラングよりやって来たクィディッチ・スター、ビクトール・クラムを見ながらイーディスが興奮したように言うが、ミラベルは蚊程の興味も示さずに答える。

 彼女にとって今重要なのはクラムなどという冴えない男ではなく、目の前にある数々の外国料理を堪能する事だ。

 クラムへのおべっかなどマルフォイにでもやらせておけばいいのである。

 見ればすでにマルフォイはクラムの向かい側に陣取っており、何とか気を引こうと身振り手振りを加えて話しかけていた。

 

「へえ! それじゃ、あの試合はもう勝てないと思ったからスニッチを取ったんだ?」

「はい。僕は、せめて自分の手で、終わらせたいと思いました。それに、大きな点差をつけられると、総合成績にも、影響します。

負けると判断した時には、点差をなるべく広げず、早く終わらせます。

我々シーカーには、そういう、“負け方”を選ばなくてはならない時があります」

「うん、全くその通りだ! うん!」

 

 英語には不慣れなのだろう。クラムの言葉は独特の訛りがあり、また少し聞き取り辛い。

 『僕』は『ヴぉく』と言っているようにも聞こえるし、『我々』も『ヴぁれヴぁれ』になってしまっている。

 恐らくは特定の母音が発音しにくいのだろうが、外国という事を考えればこれでもよく喋れている方だろう。

 校長のカルカロフや教頭のメーヴィスなどは流暢に話すがこの二人は元々イギリス側の人間だ。話せて当たり前である。

 

「ところでミラベル……それ、美味しいの?」

「ああ。貴様もどれか一つ食してみるといい」

 

 言いながら、ミラベルは手元にある料理にフォークを伸ばす。

 脂のたっぷり乗ったサーモンにバターをたっぷり塗ってローストしたもので、ハーブが彩りを加えていた。

 バターとハーブの香りが食欲を刺激するのが堪らない。

 

「じゃあ……」

 

 ふむ、と頷きイーディスは近くにあったグラタンを引き寄せた。

 フランス料理として世界的に有名なものの一つで、これならば外れはないだろうと踏んだらしい。

 フォークでマカロニを刺し、トロリとしたホワイトソースが絡んだそれを口に運ぶ。

 

「うん、美味しい」

「うむ。しかしこうしてフランス料理と並ぶと我が国の料理のレパートリーの少なさに絶望すらするよ。

それどころかイギリスの料理すら他の国の人間が作った方が美味いからな」

「え゙?」

「以前私はジャパニーズが作ったフィッシュ&チップスを食した事があるが、まるで別物だった。

我々は自国の料理すら満足に味を引き出せていないのだ」

 

 『イギリス料理は不味い』というのは世界共通認識であり、それどころかイギリス人自身すらもが認める事だ。

 味付けはおろか火加減すら雑であり、例えば野菜は本来の食感がわからなくなるほど茹でるし、油で食材が黒くなるまで揚げるなど当たり前の事だ。

 イギリスでよく行われる、食材本来の味を残さないほど加熱する調理法が他国人には好まれないというのが原因とされるが、だからといってこれがイギリス人の味覚に合っているかといえば別にそうでもない。

 普通に日本やイタリア、フランス人が作った料理の方が美味いと感じるまともな味覚はあるのである。

 だからこそ余計、自虐に走るほど酷さが浮き彫りになるのだ。

 

 無論イギリス料理と言えど美味い物は美味いし、誇れる物もあるにはある。

 それにホグワーツの屋敷妖精は全員が一流で、少なくともそこいらの店などよりは美味く仕上げてくれる。

 だが下地が圧倒的に他の国に負けているというだけなのだ。

 

 

 

 歓迎会の料理が全て消え、デザートも終わった頃になってダンブルドアが再び立ち上がった。

 いよいよ本題に入るのだろう。全ての生徒が身を乗り出して、ホールを心地いい緊張感が満たす。

 ダンブルドアはそんな全ての視線に向かって穏やかに笑いかけ、そしてよく通る声で言った。

 

「時は来た。3大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。

『箱』を持ってこさせる前に2言、3言説明しておこうかの」

 

 ダンブルドアの説明は、対抗試合の進行についての簡単な捕捉のようなものであった。

 一つ、審査員はダンブルドアにカルカロフ、マダム・マクシームの3校長に加えて国際魔法協力部部長のバーテミウス・クラウチと魔法ゲーム部部長のルード・バグマンの5人が担当する事。

 

 二つ、代表選手は各校からそれぞれ選ばれた3人である事。

 

 三つ、課題は3つあり代表選手は1年に渡りあらゆる角度から試される事。魔力の卓越性、果敢な勇気、論理・推理力、危険に対処する能力。その総合力が最も優れていると判断された一人が晴れて1000ガリオンの栄光を手にするのだ。

 

 四つ、代表選手を選ぶのは公正なる選者、『炎のゴブレット』である事。

 立候補する志があるならばこれから24時間以内にその名をゴブレットに提出しなければならない。

 

 そして五つ、決して軽々しく名乗りを挙げない事。

 一度ゴブレットに名を呼ばれたなら魔法契約によって拘束され、1年間戦う義務が生じてしまう。

 途中で気が変わるという事は決して許されないのだ。

 心底競技する意思のある者のみが参加しなくてはならない。

 

 それらの説明を終えて歓迎会は終了となった。

 ダームストラングはどこに泊まるかをイーディスが気にしていたが、どうやら普通に船に戻るらしい。

 カルカロフが生徒達を急かしながら、まるで父親のようにクラムに笑顔を向けている。

 なるほど、どうやらこの校長はクラムがお気に入りらしい。

 ダンブルドアがハリーを贔屓するのと同じように、彼はクラムを贔屓しているのだ。

 スリザリンの一団と共にその横を通り過ぎようとしたミラベルであったが、その時偶々、カルカロフの隣にいたメーヴィスの視界に入ってしまった。

 

「ああ、ミラベル! 私のミラベル!」

 

 案の定メーヴィスがミラベルの方にまで走り寄り、盛大な抱擁を受ける羽目となった。

 無駄に存在感を主張するたわわな果実を顔に押し付けられ、ミラベルの額に青筋が浮かぶ。

 母親がこれなのに何故自分は胸が小さいのだ、とか思ったわけではない。断じてない。

 しかし何となく、こうして自分が劣っている部分を一つでも見せ付けられると嫌な気分になるのは仕方の無い事だろう。

 

「久しぶりだね、ミス・ミラベル。いや、母君に似てますます美しくなった」

 

 カルカロフが貼り付けたような笑みを浮かべて世辞を言い、手を差し出す。

 ミラベルはその手を握り返す事をせず、気付かない振りをしながら母を振り解いた。

 

「カルカロフ校長も変わりないようで」

 

 元・死喰い人であり、かつての仲間達を裏切って今の地位を築いたこの男をミラベルはあまり好いてはいない。

 世渡り上手である事は認めるし、死喰い人と縁を切ったのは評価にも値する。

 だが所詮は強い方に靡くだけの俗物だ。

 一定以下の評価に落ちる事はないが一定以上の評価に上がる事もない。

 ミラベルにとってイゴール・カルカロフとはそんなどうでもいい相手なのである。

 

「正直言って安心しているよ。もし君が17歳で、参加資格があったら危なかった」

「まあ、私の優勝でしょうね」

「あ、相変わらず自信に溢れているようで安心したよ。しかも本当にそうなりかねないから怖い」

 

 いっそ清々しい程に己を過信するミラベルに、カルカロフは顔を引き攣らせながらも笑顔を取り繕った。

 彼は昔からミラベルに対して強く出る事はせず、機嫌を取ろうとばかりしてくる。

 強い者に巻かれて世を渡ってきただけに、彼は恐らく本能的に理解しているのだ。自分より強い者の存在というものを。ミラベルの底知れなさというものを。

 だから擦り寄り、媚びを売る。

 今はまだただの小娘に過ぎないが、いずれこの少女は魔法界を揺るがす大物になると心のどこかで確信している。

 だから今の内に味方に引き込みたい、という所だろう。

 

「ところで、どうかね? 今でもダームストラングに来る気は……」

「その質問に対し私は同じ返答を7回したはずですが?」

「う……い、いや、しかしだね。君としても我が校に来た方が闇の魔術に専念出来るのではないか?

わざわざ資料を取り寄せたりしなくても、君ならいくらでも図書館で読む事を許そうじゃないか。

閲覧禁止などという縛りも我が校にはない」

「…………」

 

 ミラベルを何とか自陣営に取り込もうとするカルカロフを、軽く一睨みする。

 すると彼はそれ以上何も言えなくなり、スゴスゴと引き下がってしまった。

 それを横目で呆れたように見ながら、メーヴィスが残念そうに言う。

 

「ああ、それにしても本当に残念ですわ。わたくしのミラベルが出れないなんて」

「まあ、縁がなかったと思って諦めましょう」

 

 諦めるも何も元々出る気などない。

 こういうイベントはハリー・ポッターにでもやらせておけばいいのだ。

 それよりも自分はやるべき事が山ほどある。

 

「それでは、私はこれで。

母上もそろそろ船に戻った方がよろしいかと」

 

 完全においてけぼりにされていたイーディスを連れてその場を離れ、スリザリン寮へと向かう。

 とりあえず対抗試合は不参加。これは確定事項だ。

 目立つのは嫌いではないが、今回に限っては影のように動く必要がある。

 出来ればダンブルドアの目が完全にハリーに向いてくれるのが望ましい。

 それを考えれば対抗試合に出るなど言語道断であった。

 

「今のがミラベルのお母さんかあ……遠目で見た時から思ってたけど、凄い綺麗な人だね。

ミラベルも綺麗なんだけど、なんかそれとはまた違うというか、大人の色気というか……」

「具体的には?」

「胸」

「よし、そこになおれ」

 

 慌てて逃げようとするイーディスをひっ捕まえて頬をぐにぐにと伸ばす。

 「いひゃい、いひゃい」などと言っているが自分には何も聞こえない。

 言葉は正しく正確に発音しなくてはならないのだ。よってノーカウント、イーディスの悲鳴を黙殺した。

 

「ご、ごめ! あひゃまるからゆるひてー!」

 

 あーあー聞こえなーい。

 

*

 

 『公正なる選者』。

 ダンブルドアは炎のゴブレットを指し、そう呼んだ。

 では公正とは何だろうか? 何を持って公正と呼ぶのだろう。

 あらゆる条件を正確に吟味出来る事だろうか?

 一切の私情を挟まない事だろうか?

 誰一人贔屓もせず、貶めもしない事だろうか?

 きっと、そのどれも正しい。

 そして、それを成すために最も必要とされる条件は“意思無き”事だ。

 意思さえなければブレは生じず、私情の入る余地もない。

 ただただ無情に正確に、最も条件に相応しい者を選び出すだろう。

 

 だが、意思がないという事は疑問も感じないという事である。

 何かの細工が成され、与えられた情報そのものが間違えていたとしても、それに気付かないという事である。

 それゆえに『公正な』ゴブレットは選び出した。

 本来ならば3校一人ずつ、計3人までしか参加出来ないはずの試合に出る、『4人目』を。

 何の疑いもなく、疑問もなく、吐き出してしまったのだ。

 

 ボーバトン魔法アカデミー代表、フラー・デラクール。

 ダームストラング専門学校代表、ビクトール・クラム。

 ホグワーツ魔法魔術学校代表、セドリック・ディゴリー。

 

 そして在り得ざる4人目の代表……ハリー・ポッター。

 

 

 

 シン、と。すっかり静まり返った大広間をハリーが青褪めた顔で、信じられないという表情をしながら歩いて行く。

 普通代表選手というものは歓声を持って送られる物だが、その背に声援をかける者は一人もいない。

 ただ困惑したような視線と侮蔑したような怒りが突き刺さるのみだ。

 違う、僕じゃない。僕は入れてない。

 そう思うも、自己弁護する気力すら沸かず、まるで名を読み上げられた罪人のようにハリーは壇上へと登って行った。

 

「ど、どういう事? 何でハリーが?」

 

 ハリーが教職員テーブルの後ろの扉に入って行くのを見ながら、イーディスが震える声で言う。

 何故、と思わずにはいられない。

 ハリーはまだ自分達と同じ4年生、14歳だ。ゴブレットに名を入れる事など出来ないはずである。

 ミラベルの方を見れば彼女は楽しそうな顔でワイングラスの中の液体を揺らしていた。

 

「つくづくトラブルに愛された男だな。見ていて飽きん」

「ちょっとミラベル、これはトラブルとかそういう問題じゃないでしょう」

 

 クイ、と食後酒であるアイスワインを口に運び、一息をつく。

 そして非難するような目で自分を見るイーディスに苦笑した。

 

「わかっているさ。ただのトラブルでこんな事が起こるはずが無い」

「じゃあ、何で?」

「誰かが細工したのだ。それしか考えられん」

 

 ゴブレットからハリーの名が吐き出された現状、考えられる可能性は大きく分けて3つだ。

 一つ、ハリーが自ら入れた可能性。

 だがハリー自身のあの青褪めた顔がそれを否定するし、彼は実の所そこまで目立ちたがり屋でもない。

 確かに英雄願望はある。他者の視線を気にする傾向にはある。

 だがそれはあの年代の男ならば大なり小なり持つ、ごく自然な感性だ。

 ハリーは虐げられてきた幼年期の経験から、ほんの少しだけその傾向が強いだけの、本当にそれだけの少年に過ぎないのだ。

 

 二つ、他の人物による勝手な推薦。

 年齢線は17歳未満は通さない。逆に言えばそれは17歳以上は通す事を意味する。

 ならばハリーこそを代表選手に、と考える誰かが勝手に入れたと考える事はなるほど、確かに出来る。

 だがダンブルドアとてその程度の弱点は熟知している。ならば年齢線以外にも本人以外は投票出来ない、何かしらの防御策があると見るのが自然だろう。

 故にこれも有り得ない。万一これが可能な人物がいるとしたら、それはダンブルドア一人だけなのだから。

 

 そして三つ、ゴブレットそのものに対する細工。

 上記二つの条件をクリアしハリーを強引に代表にしてしまうのがこれだ。

 ハリー本人の意思など関係なく、ゴブレットの防御策も突破して意図的にゴブレットを誤認させる。

 しかしこれは同時に、犯人が一気に絞られる方法でもあった。

 これを行うには深い闇の知識とゴブレットそのものの知識、そして極めて選定側に近い位置にいなくてはならない。

 

「細工? 何の為に?」

「さて、な」

 

 イーディスの疑問に答える事なく惚け、視線を教職員テーブルへと向ける。

 視線の先にいるのは今年から防衛術の教師となった元闇祓い、マッド・アイ・ムーディ……いや、彼に成りすました死喰い人だ。

 いかに信頼厚き元闇祓いに成りすましているとはいえ、ダンブルドアの目の前でよくやるものだ、と感心させられる。

 

 まあ、今回ばかりは特に妨害も排除もせず静観していてやるとしよう。

 いや、それどころか必要ならば手助けもしてやろう。

 ミラベルとしてもハリーには優勝してもらわなければ困るのだから。

 




∩(・ω・)∩<イマラクニシテヤル!
ミラベルは対抗試合に出るかどうか考えましたが不参加で行きます。
一応ヴォルデモートと敵対していますから殺害目的で偽ムーディが名を入れる、という流れにも出来たのですが偽ムーディの目的(ハリー優勝)的に考えて、ハリー優勝の確立を一気に下げるミラベル参戦はむしろ全力で防ぐだろう、と考えました。
ぶっちゃけミラベル本人が細工して名前を放り込んでもこっそり取り除くレベルです。

ミラベルが参加した場合、どれだけ妨害しようとハリーを置き去りにし、単独優勝してしまう恐れがあります。
その場合ミラベルだけが墓場に出現してしまいますが、当然ワームテールではミラベルを倒せません。
そうなると、赤ん坊状態のヴォルデモートとミラベルが対面という最悪の構図が完成してしまうわけです。
1年度の悪夢再来です。また悪霊の火で焼かれます。
そんな理由もあり、偽マッドアイはミラベルの名前など放り込みませんでした。

よって今回ミラベルはハリーのサポートに回します。
嫌なサポートキャラもいたものだ。

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