ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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∩(・ω・)∩<ケンシロウ……オオキクナッタナ
ユリア「!?」

皆様こんばんわ。MUGEN動画を見てGルガールも大した事ないな、と思い久しぶりにカプエス2をやったところ、Gルガールに手も足も出なかったウルトラ長男です。
ゴッドレーンからの瞬獄殺鬼畜すぎワロタ。


第31話 静かな日々

 毎年お馴染みの組み分けが終了し、新入生歓迎パーティーが始まった。

 ミラベルがこの学園で最も価値があると考えているのは無論、図書館にある膨大な著書の数々であるが、それと同じくらい重視しているのが食事だ。

 毎回毎回、本当にここの屋敷妖精達はいい仕事をしてくれる。

 一流のシェフにも劣らぬ錬度で作られた料理の数々に、生徒を飽きさせぬよう毎回変えられている味付け。

 以前ミラベルが要望を出して以来、目立たぬ程度にスリザリンのテーブルに配置されるようになった海外の料理。

 どれも文句なしの完璧な仕事ぶりだ。一匹家に連れ帰りたいくらいである。

 

「ふむ……やはりここの屋敷妖精達はいい仕事をする。一つとして手抜きがない」

「本当だよね。店でお金払ってこれ食べようと思ったらいくらかかる事か」

 

 ミディアムレアのステーキを切り分け、口に入れる。

 どの焼き加減でも美味しく頂けるミラベルではあるが、あえて一つ最も好きな焼き加減を言うならばやはりそれはミディアムレアと答えるだろう。

 彼女個人の好みではあるが、肉は少しくらい生焼けなのが一番美味いとミラベルは考えている。

 肉本来の味を楽しむ為には、焼きすぎては駄目なのだ。

 かといってレアでは生に近すぎるし、ウェルダンは先述の通り肉本来の旨みを損ねてしまう。

 ならばレアよりも更に少しだけ火を通したミディアムレアこそが至高であるとミラベルは考えるのである。

 無論、だからといって他の焼き方を否定する気はさらさらない。

 血の滴るようなブルーレアや、中までしっかり焼いたヴェリー・ウェルダンにもそれぞれ違った楽しみ方があるし、どれも美味い。

 結局、どれを食べるかなどその日の気分や個人の好みに左右されるというだけの事なのだ。

 

『貴様達は運がいい。今年はご馳走が危うく出ないところであった』

 

 料理を味わっていると、横から『血みどろ男爵』が話しかけてきた。

 正直彼の容姿は食事中に見るには適さないので来ないで欲しかったのだが、しかしその不穏な発言にミラベルは眼を細めた。

 

「どういう事だ、男爵」

『ピーブズの奴が厨房で暴れたのだ。祝宴に参加したいと駄々をこねてな。

当然、そんなのが認められるわけもない。礼儀作法も知らず、皿を見ればひっくり返さずにはいられないような奴だからな。

だが奴め、それを根に持ったらしく、祝宴を台無しにしようと厨房で暴れおった』 

 

 話を聞きながらイーディスは、これはピーブズも終わったかな、と考えていた。

 理由は言うまでもなく隣に座っている友人だ。

 彼女が食事の邪魔をされる事を嫌う、というのは最早有名な話ではあるが、ピーブズは危うくその食事そのものを台無しにする所であった。

 まず間違いなく、ミラベルの逆鱗に触れている事だろう。

 

『何もかもひっくり返しての大暴れだ。鍋はひっくり返し、釜は投げ、厨房はスープの海。

哀れにも屋敷妖精達は怯えて部屋の隅で震えてしまっていた。

しかもそれだけに飽きたらず、新入生達に向かって水風船などを投げつけていたらしい』

「…………なるほど」

 

 話を聞き終えたミラベルは額に青筋を浮かせ、手に持っていたグラスを握り潰した。

 新入生達に水風船を投げたなど、そんな事はどうでもいい。

 だがピーブズがやったのは余りにも明確な料理への冒涜行為だ。

 神が許してもこのミラベルが許すわけにはいかない。

 

「よく教えてくれた、男爵」

『う、うむ……そうか?』

 

 ミラベルから放たれる殺気に気付いたのだろう。

 男爵が元々青白い顔を更に青くし、そそくさとその場を離れてしまった。

 こうなるともう、何を言ってもミラベルの怒りが収まる事はないだろう、とイーディスは考えた。

 後は精々、過剰なまでの『お仕置き』で済むか、それを通り越して消滅させられるかのどちらかだ。

 この他者を省みない友人であればポルターガイストの一匹くらい何の躊躇もなく消し去るだろう事が簡単に予想出来てしまう。

 

 料理を平らげた後に出てきたのはデザートの数々だ。

 糖蜜パイに蒸しプティング、様々なケーキに揚げマーズバー。

 どれも食欲を刺激し、食事の後だというのにいくらでも食べれるような気分にさせてくれる。

 ミラベルとイーディスもそれぞれ好みのデザートを皿によそい、舌鼓を打つ。

 そうして腹を満たした後に料理が全て取り払われ、ダンブルドアの挨拶が始まった。

 

「さて、皆よく食べ、よく飲んだ事じゃろう! いくつか知らせる事がある。もう一度耳を傾けてもらおうか!」

 

 それから語られたのは例年と大して代わり映えのない内容であった。

 持ち込み禁止の品に新たな悪戯グッズが追加され(もっともこれを守る者はほとんどいない)、校庭内にある森には立ち入り禁止である事、3年になるまでホグズミードには行けない事を話した。

 だがその次の内容だけが例年と大きく違う。普段ならばここは『1年生はクィディッチチームに参加出来ない』という事を伝えるべき場面のはずだし、ほとんどの生徒がそれを予想していた事だろう。

 それだけに、その発言は大きな衝撃を齎した。

 

「寮対抗クィディッチ試合は今年は取り止めじゃ。これを伝えるのはわしの辛い役目でもある」

 

 あちこちから「えーっ!?」と驚くような声が響き、クィディッチ選手達は揃って絶句している。

 ハリーなども今年はミラベルへの雪辱に燃えていたので、その雪辱の機会そのものが失われるのは困る、とばかりに絶叫していた。

 イーディスもまたクィディッチを好む一人なので、ミラベルの隣で絶句している。

 だがその代わりに、今年はクィディッチに匹敵する催し物がある、と発表された。

 その名を『三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)』といい、ホグワーツ、ダームストラング、そしてボーバトンの3大魔法学校が国境を越えて競い合う親善試合だ。

 その歴史は古く、700年前より行われていたもので、そして数世紀前に突如として中止されてしまったらしい。

 その理由は競技そのものの危険度の高さにある。

 3校の代表が腕を競い合う大会なだけあって、その種目のレベルは極めて高い。

 その為に命の危険すら伴い、夥しい数の死者が出るに至ったというのだ。

 

 しかし今年になって、遂にその封印が解かれた。

 『国際魔法協力部』と『魔法ゲーム・スポーツ部』、そして3大魔法学校が協力し合い、遂にこの競技を復活させたのだ。

 そしてその記念すべき復活第一回目はこのホグワーツで行われる。

 10月にはボーバトン、ダームストラングの代表最終候補生達がこのホグワーツに来校し、そしてハロウィーンの日に代表選手3人の選考が開始されるというのだ。

 そして選ばれた3人が競い合い、優勝した一人のみが優勝杯と学校の栄誉、そして賞金の1000ガリオンを獲得する事が出来るという。

 

「1000ガリオン!」

 

 イーディスがその賞金の額に目を丸くし、両手で指折り数え始める。

 1000ガリオン、というのは学生の身分から見れば想像も出来ない高額だ。

 マグルの金に換算するならば約6700ポンド(日本円換算、87万円)に相当する。

 これだけ聞くとまるで大した事ない額に思えるかもしれないが、しかしここに魔法界の物資の安さを入れると話は変わる。

 魔法界の物資は総じてマグル界よりも安い。これは魔法というアドバンテージがある分、マグル達と比べて魔法界の物資は元手がかからない為だ。

 例えばマグル界では精々ジュース一本程度しか買えない額、1ポンド(130円)をガリオンに換金して魔法界に行ったとしよう。

 その場合、少なくとも10本以上のジュースを購入する事が可能となるだろう。

 魔法界とマグル界では金の価値に10倍以上の開きがあるのだ。

 

 先進国と後進国で例えればわかりやすいかもしれない。

 例えばほとんど発達していない後進国などでは大人一人の給料が精々日本円にして数千円にしか満たない場合がある。

 しかし彼らがそれでも十分に生活出来るのは金の価値そのものが違うからだ。

 彼らにとっての数千円というのは日本で言う所の数万円分の価値がある。

 それと同じ事が魔法界とマグル界の間でも起こっているという、それだけの事なのだ。

 すなわち、この場合の1000ガリオンとは額面通りに「賞金たったの87万円」と捉えてはいけない。

 少なく見積もっても魔法界の住民にとっては1000万円以上の価値がある金額なのだ。

 

 ……余談だが、これを利用した荒稼ぎ法がある事をミラベルは知っている。

 

 マグルの金を魔法界に持ち込むとかなりの価値を持つのは先述の通りだが、実はその逆もまた然りなのだ。

 何故なら魔法界の硬貨であるガリオンは『金貨』である。

 それも金メッキを張っただけというチャチな代物ではなく、純然たる『金』である。

 これは魔法界において『錬金術』というものが存在する故の事であるが、マグル界から見ればとんでもない話だ。

 重さ20グラム以上の純金が820円などとあまりにも馬鹿げている。

 これをもしマグル界に持ち込めば(無論そのままは使えない。溶かすなりする必要がある)、相場にもよるが10万円近い額に早代わりするだろう。

 そしてその10万円を魔法界に持ち込み換金すれば、120ガリオンになってしまう。

 

 更に魔法界には『純金の鍋』などというふざけた代物が存在するので、それを溶かして売るだけでも一気に元手が増える。

 とはいえ、勿論の事ながら魔法界の硬貨や物資をマグル界に流出させるのは犯罪なので、バレれば即座に逮捕されてしまうわけだが。

 

「1000ガリオンだって。そんなにあれば贅沢し放題じゃない」

「眼の色が変わったな。立候補でもしてみるか?」

 

 目を輝かせながら言うイーディスに、ミラベルがからかうように言う。

 途端にイーディスが意気消沈したように溜息を吐き、テーブルに肘をついた。

 一気に夢から現実へと引き戻された、といった表情だ。

 

「するわけないでしょう。1000ガリオンは欲しいけど、命の方が大事だもん。ミラベルは?」

「興味がないわけではないが……私も無理そうだ」

 

 そう言い、ダンブルドアの方を視線で示す。

 すると丁度、彼が新たな発表をした所であり、「17歳未満は参加禁止」と表明した所であった。

 これでは今年14歳に届いたばかりのミラベル達が参加出来るわけがない。

 

「あちゃー、17歳以上かあ。当然っちゃ当然だけど」

「ダンブルドア自ら目を光らせるとあっては出し抜くのも難しいだろうな」

 

 ミラベルならば闇の魔法を駆使すれば年齢線(16歳以下を防ぐ境界線だ)やその他の防御魔法を突破する事は出来る。

 だがダンブルドアの眼を誤魔化すのは難しい。

 それに何より、ミラベル自身も参加する気など無いに等しかった。

 

「さてと、夜も更けた。

明日からの授業に備えてゆっくり休み、はっきりとした頭で臨む事が大切じゃ。

それでは、就寝!」

 

 全生徒が椅子から立ち、ザワザワと話しながらそれぞれの寮へと戻って行く。

 話題は勿論、今しがた話された3校対抗試合の事だ。

 誰が選ばれるのか、どんな生徒がやってくるのか。早くも今から盛り上がってしまうのは無理もない事だろう。

 ミラベルとイーディスもまた、人の流れに合わせて移動し、寮へと戻って行った。

 

 また、騒がしい1年が幕を開ける。

 

*

 

 ホグワーツ生活4年目の最初の授業は選択学科だった。

 ミラベルとイーディスが取ったのはマグル学で、それを教えるのはチャリティ・バーベッジという40代を過ぎた女性教師だ。

 やや尖った出っ歯をしており、肩幅が女性にしては広い。

 

「さて、まずは昨年のおさらいです。我々魔法使いとマグルとの違いは何か。

わかりますか? セオドール・ノット」

「はい。我々は魔法を使う事ができ、また空を飛ぶ事が出来ます」

「その通りです。他にも魔法薬を作り、錬金術を行使し、魔法植物を扱う事が出来ます。

しかし、これらの事は果たして本当に違いと呼べるものでしょうか?」

 

 彼女が教壇の上で教鞭を振りながら話すのは魔法使いとマグルの差だ。

 そしてその差は、魔法使い達が思うほど多いものではない、と言うのである。

 

「いいえ、呼べません。何故ならこれは違いではないからです。

人間には得手不得手があり、出来る事と出来ない事があります。

我々は要するに、マグルよりほんのちょっとだけ多くの事が出来るというだけなのです」

 

 チャリティ・バーベッジは親マグル派として校内では有名だ。

 ミラベルは別にそこまでマグル寄りではないが、しかし彼女の純血を否定する在り方だけは気に入っていた。

 

「純血思想は未だ根深く残っています。しかし我々魔法使いはマグル生まれを受け入れなければなりません。

そもそもマグルを受け入れていなければ我ら魔法使いはとっくに絶滅しているのです。

我らは生き残る為にもマグル生まれが我らの知識を盗んでいくのを歓迎すべきなのです。

我々はマグルと仲間にならなければいけません。

では、教科書を開いてください。今日は『いつ頃マグルと魔法使いは交わったのか』、それを魔法使いの家系図を追って調べていきたいと思います」

 

 その授業が終われば次は『魔法生物飼育学』だ。

 ハグリッドの小屋に行けば、そこでは準備万端といった様子でハグリッドが立っていた。

 その足元に置かれた木箱からはガラガラという奇怪な音と、時折何かが爆発するような炸裂音が響いている。

 それだけでもう、ロクな生物ではあるまい、と予想出来てしまうのは如何な物だろう。

 

「尻尾爆発スクリュートだ! 今孵ったばっかしだぞ!

だからお前達が自分達で育てられるっちゅうわけだ!

それをプロジェクトにしようと思っちょる!」

 

 死ぬほど嬉しくないプロジェクトであった。

 この『尻尾爆発スクリュート』というのはとにかく、気持ちの悪い生物だ。

 殻を剥かれた奇形の伊勢海老のような姿をしており、頭部はない。

 青白くヌメヌメした胴体からは勝手気ままな場所から足が生えており、ワサワサと動いている。

 それだけでも生理的嫌悪を催すというのに、そんなのが狭い木箱一杯にウジャウジャと入れられており、加えて尻尾が時折爆発したかのように火花を飛ばすのである。

 マルフォイがいつものように皮肉を飛ばしていたが、珍しくそれは正論であると言えた。

 

「さあ、色んな餌をやってみろよ。俺はこいつらを飼った事がねえんで何を食うかもよくわからん。

蟻の卵、蛙の肝、それと毒のねえヤマカガシをちいーと用意してある。

全部ちーっとずつ試してみろや」

 

 その説明を聞いてイーディスが心底嫌そうな顔をする。

 よりにもよって『飼った事がない』ときたか。

 それはつまり、この生き物を飼う上での注意事項や、起こるかもしれない危険な事も何も知らないという事だ。

 仮に……仮にだ。この生物が育った後に人肉を求めるような習性があったとしても、それをハグリッドは知らないと言う事になる。

 何でダンブルドアはこれを教師にしてしまったのだろう、と本気で思わざるを得なかった。

 

「ミラベル……私、この授業やめたい……」

「…………」

 

 涙声のイーディスにミラベルは何も返さない。

 しかしその無言は何よりも雄弁な肯定であった。

 

「ぎゃー! こいつ針があるわよ!?」

「腹の吸盤で吸いついてきた!」

「こいつ襲うぞ!?」

「尻尾が爆発した!」

「ええい、ハグリッドの授業で出てくる魔法生物は化物か!?」

 

 授業が進むに連れてこのスクリュートは人間を襲う事や雄には針がある事、雌には吸盤がある事が判明し、また尻尾の爆発に気を付けなければ火傷させられる事もわかった。

 どれもハグリッドは事前説明を一切行っていない。

 本当に何故この男は教師に任命されたのだろう。

 ハリー達ですら、嫌々授業を受けているというのが表情でわかってしまう。

 これがハグリッドでなく他の教師だったならばきっと、彼らですら付き合いはしなかっただろう。それほどに酷い。

 

「これ……1年も世話するの?」

「……だろうな」

 

 最早手で触れるのも嫌だ、と言いたそうに木の枝でスクリュートを突きながら言うイーディスに、疲れたようにミラベルが返す。

 全く酷い授業が始まったものである。しかも将来何の役に立つかわからない。

 はっきり言ってこの生物に他者を害する以外の利用価値があるとは思えないのだ。

 結局この日の授業は、この奇怪な生物に餌を与えるだけで終了し解散となった。

 恐らくこれから1年、同じような授業が続くのだろうと思うと気が滅入る。

 

 だが『平和な学生』でいる事が出来るのは今年が最後だ。

 ならば精々、楽しむ事にしよう……このどうしようもない日常を。

 ミラベルは、そう考えて小さく笑った。

 




∩(・ω・)∩<ソレニシテモアナタハクラウチジュニアニヨクニテイル
マッドアイ「!?」

今回もひたすらほのぼの回でした。
平和って素晴らしい。
でもこうまったりしてるだけだと盛り上がりがないのでダレないか心配です。
あ、昨日書き忘れてましたが、以前不評だった7話をこっそり修正しておきました。

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