皆様こんばんわ。休日だというのに相変わらずゲームをしているウルトラ長男です。
これが終わったらガンダムのSSを本当に書くのもいいかもと最近思い始めました。
Zガンダムのオリ主で、機体はガンダムステイメンとか妄想してます。
ほら、デンドロビウムのオーキスは大破したけどステイメンは無傷だったので、反ティターンズ派の軍人がステイメンを隠し持ってて、で、それにオリ主が乗ってエゥーゴ参加とか。
ステイメンってデンドロにならなくてもグリプス戦役に通じるスペックらしいですし。
でも宇宙世紀は外伝が多すぎるのが……絶対どこかで外伝と矛盾するのが目に見えているという。
ホグズミードから帰った後、ホグワーツで行われたハロウィーンパーティーは素晴らしいものであった。
くりぬかれたジャック・オー・ランタンが大広間に飾られ、何百もの蝙蝠が天井を飛び回る。
荒れ模様を模した天井の下をオレンジ色の吹流しが通りぬけ、ハロウィーンならではのカボチャ料理の数々が食卓を彩るのは壮観だ。
あちこちで仮装した生徒達によるトリックオアトリート合唱が始まり、お菓子の譲渡が行われる。
何せ今日はホグズミードに行って来たばかりで、全員が何かしらのお菓子を所持している。
まさにハロウィーンをやるのにこれ以上ない、絶好の好機なのだ。
そして数日後。学校中が待ちに待った、第1回目のクィディッチ当日を迎えた。
天候は、余計な表現を一切省いて述べるならば『最悪』の一言であった。
風はまるで獣の叫びのように唸りを上げ、雨は散弾のように降り注ぎ、耳をつんざく雷鳴はまるで誰かが大砲を近くで発射したかのようだ。
全ての木が『暴れ柳』のように揺れ、差した傘は1秒と持たず裏返る。
そんな中、グリフィンドールVSスリザリンの注目の一戦が開始されようとしていた。
「試合前に貴様等に一つの魔法をかけさせてもらう」
唐突に、試合前にそう言ったのはスリザリンチームのピンチヒッター、ミラベルだ。
ポジションはクィディッチの華形であるシーカーであり、これはマーカスたっての希望によるものだ。
本来のシーカーであるマルフォイはといえば、「ああ、腕がもう少しなんとかなったらなあ!」とか言っていたのでベンチに放り込んでおいた。よって今回は欠番だ。何もおかしい事はない。
未練がましそうに己の腕に付いたギプスを見下ろしながら、一人寂しくベンチに座る姿は不思議な哀愁で満ちていた。
……まあ、実際のところ彼の怪我がとうに完治している事などここにいる全員が知っている事なのだが、どのみち必勝を期すためにミラベルは彼を追い出しただろう。
何と言うか、あの男には負け癖のようなものが付いている気がするのだ。
チームに入れているだけで負ける確率が上がるような……ゲームで言う所の『フラグ』が成立してしまうような、そんな縁起の悪さを感じる。
「魔法? でも身体能力を上げたりするのは禁止されてるぞ」
「そんな大層なものは使わん。ただ私の思考を貴様等に送るだけの簡単なものだ」
言いながら、指を鳴らす。
するとスリザリンチーム全員の頭に電流が流れたかのような痺れが走り、続いて思考がクリアになる。
例えるならばそれは、今まで認識すらしていなかった壁が突然取り除かれたかのような、そんな解放感だ。
そして、その取り除かれた場所に図々しく割り込むのは当然、術者であるミラベルの声である。
『どうだ? ちゃんと聞こえるか?』
「わっ!?」
「うお!?」
突然頭の中に響いた声に選手であるモンタギューとエイドリアンが跳ね上がった。
この魔法、『ディスプタティオ・センス(感覚の会話)』は本来6年になってから学ぶ魔法だがミラベルにそんなものは関係ない。
一方的にテレパシーを送るだけの魔法で、相手の心を傍受出来るわけでもない、微妙に不便な魔法だがミラベルはそれなりにこれを気に入っていた。
一瞬で相手に指示を送れる、というのが何とも素晴らしい。
「よし、聞こえているな。
この試合中、私は念話で貴様等全員に指示を送る。
今回に限り司令塔はフリントではなく私だと思え」
「……マーカスは、それでいいのか?」
ミラベルの口から放たれた、実質上のキャプテン交代宣言。
それに多少の不満を感じたエイドリアンがマーカスへと視線を向けるが、マーカスの顔に迷いはない。
勝利の為、すでに下らないプライドは捨てている。彼はミラベルに全てを賭けたのだ。
「構わない。彼女の言葉は俺の言葉だと思ってくれ」
「わかった……お前がそう言うのなら……」
マーカスの覚悟を受け、エイドリアンを始めとするチームメイト達はそれ以上の追及を止めた。
確かにあのホグワーツ始まって以来最高のチームとも言えるグリフィンドールに対抗するには、こちらもミラベルという鬼札に委ねる他ない。
そして彼女というジョーカーを引き寄せたのはマーカスだ。ならば彼の苦労に報いる為にも、ここでゴネるわけにはいかなかった。
そんな彼らを満足そうに見渡し、ミラベルが言葉を続ける。
「作戦だとか戦術だとかは試合中に随時伝えてやるが、その前に一つだけ守ってもらう事がある。
今回の試合に限り、『卑怯』と取られかねないラフプレーは全面的に封印してもらうぞ」
「!」
ミラベルの言葉にスリザリンチーム全員が息を呑む。
スリザリンの特徴の一つとして挙げられるものに、反則スレスレのラフプレーがある。
それは他寮から激しく非難されるものではあるが、それでもこのチームを勝利に押し上げてきた戦法でもある。
例え何を言われようが、どれだけ軽蔑されようが『勝利』の二文字を手に入れる。その執念が生み出したプレイスタイル。スリザリンチームたる所以。
ミラベルはその封印を宣言した。
「何を馬鹿な事を! どんな卑怯だろうと勝てばいいんだ、勝てば!
あんただって、その点においては俺達と同じのはずだろう!」
「結局あんたもグリフィンドールの連中みたいに騎士道を重んじるお綺麗なスポーツマンってわけか!?」
当然の如く沸きあがる不満。
だがそれを前にしてミラベルの表情は揺らがない。
彼女は不敵に笑うと、豪雨の中にもかかわらず不思議とよく通る声で言う。
「私はな、勝つならば徹底的に勝つ主義だ」
「は?」
「自信をへし折り、鼻柱を砕き、自尊心を踏み躙り、二度と立てなくなるくらいに打ちのめす。それこそ勝利だと私は考える。
ゆえに言い訳を与えたくないのだ。『卑劣なプレイをされたから負けた』、『正々堂々やれば負けなかった』、『実力なら勝っていた』、『もう一度やれば勝てる』……私と戦う以上、そんな逃げ場は用意してやらん」
美しく、しかし残忍性を滲ませた笑みで少女は告げる。
完全な勝利とは何かを。真の敗北とは何なのかを。
「一片の言い訳の余地もなく、欠片の希望も与えず、一粒の慈悲もなく、叩き潰し蹂躙し尽くす。
それこそが勝利だ。貴様等全員が望む本当の勝ち方だ。……そうだろう?」
謳うように、透き通る声で語る少女の言葉に選手達が息を飲む。
そうだ、確かにその通りだ。正攻法で完全に勝利しグリフィンドールを叩き潰せたのなら、それはどれだけの達成感と優越感を齎すのだろう。
「ならば付き合ってやろうではないか。騎士道を重んじるというグリフィンドールに相応しいやり方で、奴らの大好きなスポーツマンシップに則り、反論しようの無いフェアプレイに徹しよう。
奴らの土俵で、奴らのやり方で、この上ない敗北を刻み込もう。そうしてこそ勝利の美酒も味わい深くなるというものだ」
ゴクリ、と誰かが唾を飲んだ。
そして視線で訴える。おい誰だ、これを『お綺麗なスポーツマン』などと言った奴は!?
また別の選手が引きつった笑みを浮かべつつ、視線で答える。御免、それ俺だ、と。
綺麗なスポーツマン? 騎士道? どこがだ!
この少女にそんな精神は微塵も存在しない。相手を尊重する事など欠片も考えない。
唯、相手の心をへし折る事だけを考えている残酷な精神だけがそこにあった。
「何か反論はあるか?」
「いえっ、ありません!」
ミラベルの問いにマーカスを除く5名の選手が同時に言い、直立の姿勢を取る。
今、ハッキリと理解した! これは逆らってはいけない手合いだ! 敵に回してはならない存在だ!
「よろしい。では往こうか」
そう言い、ミラベルは愛用の箒であるシルバーアローを手にする。
それに合わせてスリザリンチームの選手達もニンバス2001を取り出し、跨った。
そして飛翔! 豪雨の中を飛び上がり、それぞれが決められたポジションへと就いていく。
グリフィンドールもそれぞれの配置に就き、空中でミラベルとハリーが対峙した。
「やあポッター。眼鏡が濡れて辛そうだな?」
「ベレスフォード……!」
豪雨の中にあって尚余裕を失わない黄金の少女を前に、ハリーはくぐもった声を出す。
遂にこの時が来た。来てしまった。
入学した時から、常に心のどこかで恐れていた。いつか戦う事になった時、果たして勝てるのだろうかと考えてきた。
その相手が今、目の前にいる。スリザリンの暴帝が敵として眼前に浮いている。
萎えそうになる心を叱咤し、ミラベルを睨む。大丈夫、ここは空中でクィディッチ試合場だ。自分のフィールドだ。
確かに魔法でも成績でも勝ち目などないが、空の上での戦いならば誰が相手でも負けるものか。
「いい眼だ。自分の腕と才能を信じ、何が相手だろうと決して負けないと考えている、優れた者のみに許される顔だ。そして貴様にはその自信に足る素晴らしい才能がある。
信じられんかもしれんがな、ポッター。私は貴様のような優れた人間は大好きだよ」
試合の始まりを告げるホイッスルが鳴り響き、選手達が一斉に動く。
だがそんなのは関係ない、とばかりにミラベルは話す。
「だが私に勝てると思っているのだけはいただけん。
頂点は常にただ一人、このミラベルだけだ。
貴様はホグワーツ1ではなく私の次に優れた乗り手であるという事を理解せねばならん」
雨のせいでハリーには見えていないが、試合は早くもスリザリンの先制点を許していた。
まるでこの豪雨がないかのように鋭く速く。一匹の巨大な生き物であるかのように的確に、正確に。
いつものスリザリンとはまるで異なる、完全に統制の取れた動きで以てグリフィンドールを追い込んでいた。
その動きはまるで、見えない何かの意思によって纏められているかのようだ。
「だがそれを恥に思う事はない。例え私に勝てずとも、貴様が素晴らしい乗り手であるのは疑いようの無い事実なのだ。
ま、今回は相手が悪すぎたというだけの話……貴様の才能は他の誰よりもこの私が認めてやるよ」
「ッ、まるでもう勝ったような口ぶりだな!」
「そうだ、“もう勝っている”のだよ、ポッター。私がここにいる時点で勝敗は決している」
下で繰り広げられているグリフィンドールの苦境を気にする余裕もなく、ハリーはミラベルを睨む。
本気だ、この女は本気で、大真面目でこの馬鹿げた台詞を吐いている。
自分がここにいる以上、必ず勝てると。何が起ころうと負けるわけがないと、そう確信しきっている。
まるでコーラを飲んだらゲップが出るように、マクゴナガルの前で規律違反をしたら減点されるように、“見え透いた結果”として己の勝利を疑いすらしない。
何と言う自尊心! 何という自惚れ! 何という傲慢ッ!!
「まあ、今のままでは勝負以前の問題だがな」
「どういう事だ!」
「眼鏡が濡れて何も見えんだろう? 私の背後を飛んでいるスニッチにも気付けんだろう?」
ミラベルの言葉にハリーはハッと息を飲む。
言われて見てみれば確かに一瞬、ミラベルの後ろに金色の影が見えた……気がした。
そして同時に背筋が冷えた。
今の言葉が事実なら、ミラベルにはスニッチが見えていたと言う事だ。見えていてあえて無視したという事だ。
「何で見逃したんだ?」
「無論、貴様が私より下だと教えてやる為だ。万全の貴様を叩き潰してこそ意味がある」
ふ、とミラベルは優しくすらある笑みを浮かべる。
彼女は傲慢で身勝手だが、己が認めた人間に対してはある程度寛大で、優しさを見せる事すらある。
そしてハリーは紛れも無くその対象の一人であった。
しかしそれは、このスポーツという場において決して相手を喜ばせるものではない。
「まずはその眼鏡をどうにかするといい。グレンジャーに頼めば何とかしてくれるはずだ」
「…………ッ!!」
屈辱、だった!
ミラベルはいつでも勝てるのに、あえてそれをしない!
ハリーが全力を出すまで、スニッチを取ろうとすらしない!
「舐めるな」と全力で叫びたい衝動に襲われ、しかしハリーは歯を噛み締めるだけに止めた。
悔しいが、彼女の言う事が正しいからだ。
「タイムアウトを要求した! 戻って来い、ハリー!」
キャプテンのオリバー・ウッドに呼ばれ、ハリーはミラベルを一瞥すると即座に降りて行った。
彼女の言う通り、今のままでは勝ち目などない。
ならばまずは、勝てる状況を作らない事には話にもならない。
(ふ……怒りに顔を真っ赤にしているくせに、勝つための最善手は迷わず取る、か。
やはりいいな、あいつは……『主人公』という事を抜きにしても評価に値する)
ミラベルは涼しい笑みを浮かべ、コートへと降りていく。
そこではすでにマーカスを始めとするチームメイトが集結しており、ミラベルを見ると顔を綻ばせた。
「80対0か。なかなか差が広がってきたな」
「ああ! 勝てる、勝てるぞ、この試合!」
試合は、最早一方的になりつつあった。
豪雨の中ロクに連携も取れないグリフィンドールチームと、ミラベルの念話で一つに纏められたスリザリンチーム。
その差がこれ以上なく反映され、二つのチームの間には未だかつて無い差が生まれてしまっていた。
こうなれば最早、グリフィンドールに残された逆転の一手はシーカーであるハリーがスニッチを取る以外にない。
「だがミラベル、本当に大丈夫なのか? ポッターが万全になるのを待たずスニッチを取った方がよかったんじゃ……」
「そう興醒めな事を言ってくれるな、フリント。私はこれでも奴との戦いを楽しみにしているのだ。
眼鏡の曇ったポッターに勝った所でウィーズリーの鼠程の価値もない」
ミラベルがハリーに対して下した評価は、一切の嘘偽りの無い本心からのものだ。
だからこそ彼女は楽しみにしていた、ハリーと戦えるこの一戦を。
クィディッチ選手として見た場合に限るが、ある意味ミラベルはハリーのファンでもあるのだ。
……まあ、普通のファンならば対象選手を叩き潰そうなどと、間違えても考えない訳だが。
「貴様等は何の心配もせず私の指示に従っていればいい。それが勝つ為の最善手だ」
「ああ……信じる、信じるよ。お前の言葉は絶対だ。そうだろう、ミラベル」
『驕れる者久しからず』、という諺が遠く離れたアジアの島国にある。あるいは、『足元を掬われる』という比喩がある。
どちらも、自惚れや油断、慢心を戒める為の物だ。
ならば自惚れを極めたようなこの少女は負けねばならないだろう。道理を説くならば彼女はその油断ゆえに負けて然るべきだろう。
しかしミラベルの進む先に暗雲は立ち込めない。ただ勝利の為の輝かしいロードがあるだけだ。
故にミラベルの側に在る者は妄信してしまう。彼女こそが絶対であると。
「試合再開だ! いくぞ!」
ホイッスルが鳴り響き、再び選手達が各々のポジションへと戻る。
ミラベルもまた空中に飛翔し、再びハリーと対峙した。
「どうやら今度の眼鏡はちゃんと見えるようだな、ポッター?」
「ああ。ハーマイオニーのおかげだ」
ハリーの眼鏡は先ほどまでと違い、水を弾いていた。
ハーマイオニーが防水の呪文をかけたゆえの視界の良好さだ。
これでグリフィンドールのシーカーが復活してしまったわけだが、しかしミラベルの表情は変わらない。
何せ彼女はこの時をこそ待っていたのだから。
しかしまだだ。まだ排除すべき虫ケラが残っている。
ハリーとの戦いはその後でなければ楽しめない。
雷が鳴り、ハリーの眼が観客席の一番上に釘付けになる。
何に眼を取られているかは、考えるまでも無い。
そこにいる黒い犬……シリウス・ブラックに気を取られてしまったのだろう。
それを見ながらミラベルは、「そろそろか」と呟く。
「ポッター」
「……何だ?」
「5秒でいい。気をしっかり持っていろ」
「え?」
それは一体、と聞こうとしてハリーは言葉を失った。
突如周囲の音が全く聞こえなくなり、辺りが暗くなったからだ。
一体何が、と思って下を見て見ればそこにあったのは、コートに入り込んできた百を越えるディメンターのおぞましい姿と、彼らに向かって急降下するミラベルの姿だ。
ディメンターの、フードに隠された顔を見ていると意識が遠のいて行き、頭の奥から声が聞こえてくる。
それは、ヴォルデモートを相手に必死に赤ん坊の……ハリーの命乞いをし、泣き叫ぶ母親の声であった。
急降下をしながら、ミラベルは魔力を練り上げる。
ハリーがおかしくなった原因。それは無作法にもコートまで入り込んできた吸魂鬼達のせいだ。
ダンブルドアによって生徒を襲う事を禁じられ、欲求不満に陥っていた彼等には、このクィディッチの熱気はまさに御馳走に見えたのだ。
そして、この場で最もその影響を受け易いのがハリーである。
ディメンターが現れてからハリーが気絶するまでの時間はミラベルの目算で5秒といったところだ。
それまでにディメンターを全て排除しなければハリーは気絶してしまい、自動的にスリザリンの勝ちが確定する。
だがそんな勝利をミラベルは求めない。己の勝利に泥を付けられる事を彼女は決して認めない。
「フン! やはり来たか、薄汚い乞食共が!」
5秒……あまりにも短い時間だ。
例えスニッチを取らずともハリーが気絶すればしばらくは起きないし、ニンバス2000も落下で粉々になるだろう。
ならばそれをさせない為に、5秒以上の『時間』が必要だ。
そしてミラベルはその『時間』を持っていた。
「犬の糞ほどの価値もない汚らわしい虫ケラ共が……貴様等如きがこのミラベルの勝利に泥を塗ろうなどと――」
それは、1年前。
あの無能教師ロックハートを利用し、閲覧禁止の棚から本を持ち出した時の事だ。
彼女が手にしたのは、『タイムターナー』という時間を巻き戻す時計について、詳しく記された禁書であった。
ミラベルはそれを見て、ただ無条件に『出来る』と確信した。
何故ならばタイムターナーは実在する。ならばそれを造った者は少なくとも時間魔法の神秘の領域に到達していた事を意味する。
ならば出来る、出来ないはずはない。他人に出来た事がこのミラベルに出来ないはずがない。
その圧倒的な自尊心を柱とし、そして彼女は完成させた。
『時』を……否、『世界』をも支配する無敵の魔法を。
「――分を弁えないにも、程があるッ!」
「
瞬間、全てが『静止』した。
気絶しかけたハリーも、慌てたようにコートに飛び込んできたダンブルドアも、選手達も。
ディメンターも、観客も、雨や風ですら動いてはいなかった。
これぞミラベルがタイムターナーを研究し、編み出した魔法。時間を操作するという究極の禁忌。
今、この『世界』はミラベルだけのものだ! 彼女だけが動く事を許される、彼女だけの『世界』ッ!
そしてその止まった時の中、ミラベルは対ディメンター用に編み出していた呪文を解き放つ。
「インヴァデレント・パトローナム!!」
守護霊を進化させた『攻性守護霊』!
それはミラベルの背後から現れ、そして汽車の中では見せなかった全容を露にする。
背まで伸びた白銀の髪に、温和そうな顔立ち。
細く、しなやかな手足。
……それは紛れも無く、『人間』であった。
守護霊は本人の気質、記憶、想いによってその姿を変え、様々な動物の姿を取る。
そんな中にあってミラベルの呼び出したその守護霊の姿は人間の……幼い、少女の姿であった。
「存分に喰らい尽くせ、『レティス』ッ!」
自我を持たぬ守護霊の名を呼び、ディメンター達の中心へと向かわせる。
そして一撃!
白銀の少女の、あまりにも細い腕がディメンターの腹を貫いた。
「邪魔だ……邪魔なんだよ、貴様等は……。
その出で立ち、動く姿、生き方、性質、存在、外見、全てが勘に触る。
このミラベルの道を阻むゴミにも劣る害虫どもが……!」
守護霊の攻撃は終わらない。
華奢な身体を、まるで踊るように動かし次々とディメンターを切り裂いていく。
時の止まった世界の中で抵抗すら出来ない忌まわしい生物は、ただ引き裂かれるのみだ。
「邪魔、邪魔、邪魔、邪魔、邪魔、邪魔……」
果たしてこの光景を他の誰かに見せた時、その者は素直にそれを信じられるだろうか?
わずか10歳程度の幼い白銀の少女が舞うように、踊るようにディメンターを蹂躙しているなどと。
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔」
白銀の少女が舞う。
ディメンターの身体が砕け、引き裂かれ、崩壊する。
黄金の少女が謳う。
地上で最も忌まわしいと言われた生き物が為す術もなく蹂躙される。
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ッ!!
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァァァッ!!!」
ミラベルの声が激しくなるごとに少女の舞いも激しく、熱狂的なものとなっていく。
百を越えるディメンターの間を縫うように走り、次々とその魔手にかけていく。
そうして全てのディメンターに攻撃を加えた事を確認するとミラベルは守護霊を戻し、そして静止時間8秒の時点で宣言した。
「――そして時は動き出す」
その瞬間、何が起こったか理解出来る者は皆無であっただろう。
ミラベルにとっての8秒は他の者にとっての刹那の出来事。
ほんの刹那の一瞬で、全てのディメンターが車に撥ねられたかのように、コートの外側へと叩き出されたのだ。
ダンブルドア「あ…ありのまま今起こった事を話すぞい!
『わしは守護霊を出そうと思ったがすでにディメンターが吹っ飛んでいた』。
な…何を言ってるのかわからないと思うがわしも何をされたのかわからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…」
通りすがりの花京院さん「初めて出会う魔法のタイプだ!
実際見てはいないが今まで出会ったどの魔法をも越えている凄味を感じたッ!
エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと認識できるようにわかった!」
┌┤´д`├┐<キンベンサガタリン!
今回はクィディッチ試合でお送りしました。
ミラベルはこう見えて結構ハリーを評価しており、気にいっています。
一方で吸魂鬼への評価は最悪中の最悪です。存在そのものを嫌悪してます。
ぶっちゃけ吸魂鬼が何も悪い事してなくても理由を作ってボコす勢いです。
そして今回初披露の新魔法と完全版守護霊。
……うん、やっちゃった感全開ですね。
時を止めてのラッシュは男のロマン。欲望を抑えられませんでした。
DIO様マジリスペクト。
ちなみにマルフォイですが、ハリーを怖がらせようとディメンターの変装をして一緒に殴り飛ばされています。フォーイ。
以下、今回出たオリジナル魔法の説明です。
『ディスプタティオ・センス(感覚の会話)』
元々この世界に存在するという設定のオリ魔法。ミラベル創作ではない。
対象を選び、一方通行の念話を送る魔法で逆は不可能。よって相手の心を読んだりとかは出来ない。
また一方通行なので両者が同時に魔法を発動して脳内会話するとかも無理。
本来は6年になってから習う魔法だがミラベルには関係なかった。
『Time Stay』
DIO様リスペクトのミラベル創作魔法。
タイムターナーを研究し、何の根拠もなく出来ると確信したら出来たという謎の経由を持つ。
何故「時を戻す」時計の研究をして「時を止める」になったのかは、ぶっちゃけ研究の際の副次効果。
時を戻す魔法を得ようとするとその副次として時間停止が出来るのはほむほむさんが証明してくれています。
停止時間は最大で8秒。長いのか短いのかよくわからない。
名前の由来はタイムターナー(時間のとんぼ返り)に倣ってタイムステイ(時間の停滞)としました。
これだけ英語で書かれているのも7部のTHE WORLD(俺だけの時間だぜ)の影響。
『インヴァデレント・パトローナム(攻性守護霊)』
ミラベルの創作魔法で、相手を攻撃する「攻性守護霊」を生み出す。
本来の守護霊と違い積極的に相手を攻撃し、物理的破壊力も伴う。
今の所ディメンターを『殺せる』唯一の魔法で、実はミラベルが一番最初に作った創作魔法がこれ。
守護霊の姿は10歳ほどの幼い、白銀の少女。
超攻撃的なミラベル本人の気質を考えるならば獰猛な怪物が出るはずだが何故こんな姿になってしまったのかは謎。
本体と守護霊がまるで一致していない稀有な例と言える。