ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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┌┤´д`├┐<ヨクボウガタリン!
感想1000突破イヤッホォォォウ!
みなさまこんばんわ。
ようやくGジェネでZガンダム編に入ったウルトラ長男です。
索敵→敵機捕獲処分→ジムⅢ購入分解→ついでにマルフォイも分解→改造でハンマハンマ作成、などを繰り返しているせいで一向に先に進みません。


第23話 吸魂鬼

 例え豪雨であろうとホグワーツ特急が止まる事はない。

 新学期が始まり、多くの生徒を期待や不安と共にホグワーツへと向かう汽車の中。ガタゴトと振動に揺られながら、ミラベルはコンパートメントの中で大鍋ケーキを齧っていた。

 窓の外は雨が降り続けており、景色を楽しもうにも暗すぎてよく見えない。

 その向かい側にはスリザリンの同級生であるイーディスがおり、かぼちゃパイを頬張っていた。

 コンパートメント内にいるのはこの二人だけだ。ミラベルが中にいるせいで、他の生徒達は恐れて近寄ろうともしない。

 いい加減食べ飽きた甘味を嚥下し、ミラベルは不満そうに言う。

 

「いつ乗ってもこの汽車のメニューは変わらんな……悪くはないが、菓子類だけというのは飽きてくる」

「まあ、そもそもほとんど使われない列車だしね」

 

 決して味は悪くない。むしろそこいらのケーキ専門店などに匹敵する味と言っていいだろう。

 だが人間は甘味のみで生きるに在らず。甘味とは所詮デザートであって主食ではないのだ。

 その主となる物がこの列車には足りていないのだからミラベルが苛立つのも致し方なし、といったところだろう。

 

「ところで、今年の『闇の魔術に対する防衛術』の担任って誰になるのか、ミラベルは知らない?」

「……リーマス・ルーピンという名の男らしい。前の車両に乗っているようだ」

「今年はちゃんと1年持つかなあ」

 

 心配そうなイーディスの言葉は、彼女のみならずほぼ全ての生徒が抱いている懸念だろう。

 何せこの防衛術という学科はイーディス達が入学してから今まで、1年以上教師が持続した事がないのだ。

 1年の時はクィレル、2年の時はロックハート。どちらも1年でいなくなってしまい、そのせいで今や防衛術は「呪われた学科」とまで言われてしまっている。

 

「さあな」

 

 ケーキを食べ終えたミラベルがペットボトルのキャップを開けながら、どうでもよさそうに答える。

 そして中に入っていた紅茶を飲み、喉を潤した。

 この列車で出てくる飲み物はかぼちゃジュース一択、という事に不満を抱いた彼女はこうしてペットボトルを持参する事にしたらしい。

 

「ま、ロックハート以下という事はなかろう」

 

 『遺産』の知識を信じるならば、ルーピンはかなり優秀な教師だ。

 ハリーはこの年で、上位魔法の一つに数えられる『守護霊』の魔法を会得する事になるわけだが、それもルーピンの指導による所が大きい。

 そういったところを考えれば今までの教師よりも余程期待出来る存在だ。

 

「なんか、あまり興味なさそうだねえ……」

「興味がないわけではないが今、私の関心が向いているのはホグズミードだ」

「……それ、食べ物目当てでしょ?」

「それ以外何がある」

 

 ホグズミードは3年生以上のみが行く事を許される小さな村だ。

 恐らくは世界で唯一の、完全にマグルの存在しない魔法使いの為だけの場所。

 そこにはマグル界でよく見るお菓子から魔法界特有の御菓子、魔法用具、悪戯専門道具など様々なものが取り揃えられており、ミラベルとしても一度は訪れてみたいと思っていた場所だ。

 車内販売が御菓子のみである事に不満を漏らしていた彼女だが、別に御菓子自体が嫌いなわけではなく、むしろ結構な甘党なのである。

 そんな事を話しているとだんだんと汽車が速度を落とし始めた。

 どうやらそろそろ降りる頃のようだ、とイーディスは窓の外を見る。

 

「そろそろ着く頃かな」

「……いや、まだ1時間はあるはずだ」

 

 ホグワーツに到着するのは、少なく見積もっても後1時間は後のはずだ。

 無論、今日に限って特別列車が速く動いていた、などという事はないし、むしろ雨天のせいで遅くすらあった。

 つまり、どう考えてもまだ到着するはずがない。その事に気付いたのだろう、イーディスが真剣な顔をして辺りを見渡す。

 見ればあちこちのコンパートメントからも同じように生徒達が顔を出しており、不思議そうに辺りを伺っていた。

 やがて列車は完全に停止してしまい、列車内の灯りすらが消えていく。

 

「何が起こってるのかな? 学校側が仕組んだ何かのイベント、とか……?」

「いや、イベントでこんな事はすまい」

 

 言いながらルーモスの呪文で杖先に明かりを灯し、コンパートメントから出る。

 すると、丁度隣のコンパートメントから出てきたハーマイオニーやジニー、ネビル、ハリーと遭遇した。

 どうやら彼らも同じ車両に乗っていたらしい。

 ハーマイオニーはミラベルの姿を認めると、困惑した様子で話しかけてくる。

 

「ベレスフォード、貴女ならこの状況、どうなってるのかわかる?!」

「さあな」

 

 無論ミラベルは知識として、この現象の原因を知っている。

 だがそれを彼らに教えてやる義理などないし、彼女はそんな親切な少女でもない。

 それに、教えるまでもなくその答えがもうじき姿を現すのだ。ならば余計な説明の手間など省いてしまいたい。

 いや、訂正しよう。“現れる”ではなく、“もう現れている”!

 

「あいつに聞けばわかるかもな?」

「え?」

 

 ミラベルが親指で車両の入り口を指す。

 するとそこには、マントに覆われた、天井まで届きそうな黒い影が立っていた。

 顔は頭巾に覆われ、マントから唯一出ている腕は冷たい灰白色。

 汚らわしい瘡蓋に覆われたその腕はまるで、水中で腐ったかのようだ。

 

「ミラベル……な、なんなのアレ……」

 

 怯えたようにミラベルのローブの端を掴みながら、イーディスが震える声で尋ねる。

 その姿を見ながらミラベルは、自分の友人ならこの程度で怯えないで欲しいなどと考えていたが、まあ今回は初見だ。大目に見るとしよう。

 

「吸魂鬼(ディメンター)だ。魂を喰らう、地上で最も穢らわしい生物だよ。アズカバンの看守と言った方がわかりやすいか?」

「あ、あれが……」

 

 そうして話していると吸魂鬼はガラガラと音を立て、ゆっくりと息を吸い込んだ。

 瞬間、背筋が凍ったかと思えるような寒気がミラベル達全員を襲い、凄まじい不快感を与えてくれた。

 まるでもう二度と幸せになれないのではないか、と思えるほどの、圧倒的なおぞましさだ。

 ジニーはガタガタと震え、ネビルは悲鳴をあげ、ハーマイオニーは硬直し、そしてイーディスは口元を押さえて膝をついた。

 特に酷いのがハリーで、彼は椅子から転げ落ち、その場で痙攣し始めてしまった。

 

(なるほど、これが吸魂鬼、最も忌み嫌われた生物か。……気に食わんな)

 

 流れ出る冷や汗を拭い、ミラベルは不愉快さを全面に押し出した形相で吸魂鬼を睨む。

 他の者がどうなろうが知った事ではない。だが、とにかく不快だ。

 この生物は、ここにいる全員を餌として見ている。それはすなわち、このミラベルすらも餌と認識しているという事だ。

 それが何よりも気に食わない。許しがたい!

 常に上に立つのはこのミラベルだ。見下すことはあっても見下されることは許せない。

 私が上! 貴様等が下だッ! どちらが餌か、この場で教育してくれる!

 

「ライナグル、手を離せ」

 

 ローブに掴まっていたイーディスを払いのけ、ミラベルは吸魂鬼へと向かって一歩踏み出した。

 その顔に恐れはない。恐れる必要もない。

 愚かにもこのミラベルの前に姿を現した害虫を駆除するだけの行為に、恐れを抱く必要などない。

 そう、狩人は常にこのミラベルなのだ!

 

「薄汚い下等生物が……貴様誰の許可を得てこのミラベルの前にその醜い姿を晒しているのだ?」

 

 まさに傲岸不遜そのものの態度でミラベルが話すが、吸魂鬼は動じない。

 それどころか小さな呻き声をあげると、ミラベルへと近付こうとしたではないか。

 だがその無礼をミラベルが許すはずも無い。

 話しかけて“やっている”のにそれを無視するという不敬、認めるわけがない。

 

「フン! どうやら教育する必要がありそうだな!

インヴァデレント・パトローナム! 守護霊よ襲え!」

 

 素早く杖を抜き、横に薙ぐ。

 すると一瞬、銀色の腕が姿を現し、吸魂鬼の両腕を千切り取った。

 吸魂鬼に唯一通じると言われる呪文、『守護霊』。それをミラベルが独自に改良、進化させた『攻性守護霊』だ。

 本来ならば相手を追い払うだけの守護霊だが、そこにミラベルは攻撃性を持たせた。

 そうすることによって、例え吸魂鬼であろうと殺し得る殺戮の刃へと姿を変えたのだ。

 3年目で吸魂鬼が現れることはわかっていた。ならば対策など用意して当然!

 これは、吸魂鬼を殺す為に作り出したミラベルだけの呪文!

 故に吸魂鬼に対しては無敵! 絶対!!

 

「~~~~ッ!!? !?!」

「ほう、下等生物でも痛みは感じるのだな? これはいい事を知った」

 

 腕を失い身悶える吸魂鬼の姿に多少溜飲を下げ、ミラベルが加虐的な笑みを浮かべる。

 そうだ、これこそがあるべき形だ。あるべき姿だ。

 このミラベルを餌などと見る者がいてはならない。常に支配者は唯一人、このミラベルではなくてはならないのだ。

 恐怖を与えるのは常に私! 踏み躙る権利も、食い殺す権利も私だけが有している!

 何が相手であろうと! 誰が前にいようと! 例外はないッ!

 

「さあ次はどこを千切り取って欲しい? 胸か? 腹か? それとも一思いに首か?」

「!!?」

「ククク、本能のままに動く生き物かと思えば……なんだ、ちゃんとあるじゃあないか。『恐怖』が。

いいぞ、もっと怯えろ、恐れろ。その方が私好みだ」

 

 完全に己の優位を確信したミラベルは一歩二歩と距離を詰め、獲物を嬲る捕食者のように舌を出して唇を舐める。

 その姿を見て、ハーマイオニーは昨年の悪夢を思い出していた。

 あのバジリスクを嬲っていた時と同様の、危険な空気を今のミラベルは纏っている。

 普段の冷静な姿など本性を隠す仮面に過ぎない。他者を甚振っている時にこそ、この黄金の少女は本性を発揮する! 危険極まりない素顔を覗かせる!

 理性という鎖から解き放たれた『スリザリンの怪物』が杖を振り上げ、より一層笑みを深くする。

 黄金の瞳が爛々と輝き、その頬は薄赤色に紅潮している。

 もはや彼女を止める者は誰もいない。吸魂鬼を助ける者は一人もいない。

 そうして歯止めの効かなくなった少女が杖を振り下ろし……。

 

 その手を、横から伸びてきた大きな手が掴んだ。

 

「やめるんだ。アズカバンの看守を殺してしまっては問題になる」

 

 腕の主は、継ぎ接ぎだらけのみすぼらしいローブを羽織った男だった。

 ライトブラウンの髪は白髪が交じっており、その顔はまるで病気にでもかかっているかのように青白い。

 しかしミラベルの手を掴むその腕は力強く、咎めるような瞳も確かな強さが宿っていた。

 この男こそ、今年の防衛術を担当する事になったリーマス・ルーピンその人だ。

 ミラベルは数秒、その男の顔を観察してたが、やがて面倒臭そうに溜息を吐くと素直に腕を引いた。

 

「正当防衛だと判断しますがね」

「そうだね、腕を飛ばすくらいならまだ正当だろう。けど殺してしまっては過剰防衛だ」

 

 ここからが楽しいところだったのに、すっかり興が削がれてしまった。

 ミラベルはつまらなそうに杖を仕舞うと、床にへたり込んでいるイーディスを助け起こす。

 吸魂鬼に関してはあのみすぼらしい男……ルーピンに丸投げだ。あそこまで言うからには責任をもってどうにかしてもらおう。

 ルーピンは吸魂鬼に対して「シリウス・ブラックをマントの下に隠している者はいない。去れ」と言い放つが吸魂鬼が動く様子はない。どうやら腕を切り飛ばされたことにご立腹のようだ。

 だが彼はそれを「自業自得だ」と切り捨て、守護霊の呪文で強引に吸魂鬼を追い出した。

 なるほど、言うだけあってかなりの使い手だ。

 

「ライナグル、これを喰え」

「……蛙チョコレート?」

「少しは楽になる」

 

 イーディスに蛙チョコを押し付け、ミラベル自身もチョコを齧る。

 すると手足の先まで暖かさが広がり、身体が普段の調子を取り戻した。

 それに倣ってイーディスもチョコを齧り、顔色が大分復調した。効果てきめんという奴だ。

 ハリー達を見れば、彼らもみすぼらしい男から板チョコを受け取っているところで、大分顔色がよくなっている。

 

「驚いたな。君は吸魂鬼の対処法を知っているのか」

「ええ、それなりには」

 

 言われるまでもなくバリボリとチョコを齧っているミラベルへ男が驚いたように話すが、ミラベルとしてはこんな事は基礎知識に過ぎない。

 父であるヒースコート・ベレスフォードは以前述べたように対闇の魔法使いのスペシャリスト、闇祓いだ。

 そして母もまた普通ではない。

 母……メーヴィス・ベレスフォードはダームストラングで闇の魔術を教える教頭職に就いており、その為ミラベルは幼い頃から闇の魔法をも教え込まれていたのだ。

 ならばその程度の知識、虐待同然の英才教育を施されたミラベルが持っていないはずがない。

 

 その後、何とか汽車も動き出し、何事もなくホグワーツへと到着した。

 例年通りに新入生のクラス分けが行われ、新任の教師が発表される。

 まず闇の魔術に対する防衛術の担当だが、やはりこれは件のリーマス・ルーピンであった。

 もう一つ、魔法生物飼育学に関しては森番のハグリッドの担当となったが、ミラベルに言わせればこれは明らかな人選ミスだ。

 確かにハグリッドは動物に好かれるし、動物を飼いならす才能もある。善人でもあるだろう。

 だが正直この男が物を教えるという事に向いているとはまるで思えない。

 まずはお手並み拝見といったところだが、期待するだけ無駄だろう、とミラベルは考えていた。

 

 何はともあれ、また騒がしい1年が始まるわけだ。

 それをほんの少しだけ楽しみにしている自分がいる事に気付き、ミラベルは思わず苦笑した。

 

*

 

 翌朝、朝食を取りに大広間に行くとスリザリンのテーブルが嫌に沸いていた。

 輪の中心を見ればマルフォイが気絶するフリをし、笑いを誘っているようだ。

 誰の真似か、などと考えるまでもない。吸魂鬼を前にして意識を失ったハリー・ポッターの真似だろう。

 流石に2年連続でグリフィンドールに優勝杯を齎しただけあってハリーはスリザリン生達にとにかく嫌われている。その彼の醜態となれば喜んで然り、というわけだ。

 

「……自分だって漏らすくらい吸魂鬼に怯えてたくせに」

 

 イーディスが不愉快そうに呟き、椅子に座る。

 その様子を見てミラベルはほう、と口角を釣り上げた。

 

「なんだ、随分ご機嫌斜めだなライナグル。ポッターに情でも移ったか?」

「別に……そんなんじゃないよ」

「そうかな? 去年は随分奴等と仲良くしたらしいじゃないか」

 

 朝食のコーンフレークにミルクをかけながら、ミラベルが楽しげに言う。

 実際、彼女の言う通り去年の一時期……クリスマスから学期末にかけてイーディスはハリーやハーマイオニーと親しくしていた時期がある。

 それはスリザリンの怪物の正体を掴むため、という一種の共闘であったが、その中でほんのわずかな絆も芽生えなかった、とは言えないだろう。

 

「まあ不愉快だと言うなら黙らせてやるぞ?」

「いや、いい……ミラベルは容赦がないし」

 

 ミラベルとしても正直マルフォイは鬱陶しいだけの存在なので、強引に黙らせる事もやぶさかではない。

 しかしミラベルの容赦のなさを知っているイーディスがそれを止め、近くのベーコンエッグを引き寄せた。

 半熟の黄身をフォークで刺すと、トロリとした中身が溢れ出し、白身を黄色く染める。

 それをナイフで切って一口食せば、まろやかな卵の味が口一杯に広がった。

 

「でも実際、何でハリーだけ気絶したんだろうね。彼って別にそこまで心が弱いわけじゃなかったと思うんだけど」

「弱いどころかむしろ強い部類だよ、アレは。少なくとも私を除けば、あの場にいた誰よりもタフな精神構造をしている」

「じゃあ何で?」

「吸魂鬼というのは幸福感や歓喜といった感情を吸い取る生き物だ。つまり心の中には最悪の経験しか残らない。ハリー・ポッターのように悲惨な過去を持っていれば、気絶して当然だ」

 

 しゃくしゃくとコーンフレークを食べながら、ミラベルが解説をする。

 吸魂鬼を前にして心の強さだとか、そういうものは余り意味を成さない。

 不幸な経験が多いか否か、それが気絶する境となるのだ。

 そういう点で見れば幼い頃より甘やかされ、我侭放題で生きてきたマルフォイなどまだ影響の少ない方だろう。

 逆を言えば、もし彼がハリー並の経験をしていたなら気絶を通り越して発狂していてもおかしくなかった、とミラベルは考えている。

 

「どうやれば気絶を防げるの?」

「一番手っ取り早いのは守護霊の魔法を使う事だが、これはかなり高度な魔法に分類される。そこいらの奴では扱えんよ」

「守護霊の魔法? それってミラベルが汽車の中で使ったあれ?」

 

 ミラベルはイーディスの質問に対して不敵に笑うと、バターを塗ったパンを噛み千切る。

 そして紅茶で喉を潤してから言った。

 

「アレは私が改良した『攻性守護霊』だ。元来の魔法ではない」

「……今、高位の魔法って言わなかった? 何で改良まで進んでるのよ」

「私に出来ない事はないからだ」

 

 ドヤ顔でそこまで言い、ミラベルはナプキンで口元を拭う。

 どうやら食事も終了のようだ。今日はそこまで食べないらしい。

 イーディスはというと、呆れつつも、もう慣れたという顔をしていた。

 

「私にもそれ、出来るかな」

「難しいな。まずは普通の守護霊の魔法を使えなければ話にならん」

 

 デザートのカスタード・プティングをスプーンで掬い、イーディスが使う際の難しさを説明する。

 ミラベルが使ったあれは、ただでさえ高位呪文に数えられる守護霊を更に進化改良させたもので、ミラベル以外が習得したり使いこなしたりする事を前提にしたものではない。

 ある意味、ミラベルの規格外のセンスがあって初めて扱える、他人の事を全く配慮していない、まさにミラベルの為だけのオリジナルスペルなのだ。

 

「じゃあ、私にもその守護霊の魔法っていうの教えて」

「ふむ。貴様が望むなら教えてやるのもやぶさかではないが……果たして時間的な猶予が取れるかどうか」

「ん? 何かあるの?」

 

 デザートのプティングを食べ終わり、ナプキンで口元を拭う。

 そうして一息ついてから紅茶で喉を潤し、ミラベルは言った。

 それは、近年負け続きであるスリザリンにとっての福音であり、そしてグリフィンドールにとっては悪夢の引き金となる、一言の宣言。

 

「実は去年、どうしてもグリフィンドールに勝ちたい、とマーカス・フリントの奴に泣き付かれてな。

あまり気は進まんが、私の所属する寮が負けっ放しというのも面白くない……故に、今年一年だけ力を貸してやる事にしたのだ」

 

 

 

 ――グリフィンドールに完全な敗北を与えてやろう。

 そう言い放ち、ミラベルは勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

 

 




イーディス「クィディッチには参加しないって去年言ってたような……」
ミラベル「気が変わった、負けっ放しは性に合わん。グリフィンドールには屈辱を10倍にして返してくれる」
イーディス「身勝手すぎワロタ」

┌┤´д`├┐<ジョウネツモタリン!
今回は汽車内での遭遇と朝食タイムでお送りしました。
ミラベルが今回使ったインヴァデレント・パトローナムは勝手に作ったオリ呪文です。
従来の守護霊との違いは、従来のが追い払うだけなのに対し、これは実際に吸魂鬼をブン殴ったり引き裂いたりします。
というか吸魂鬼に限らず、敵対する魔法的物質全てを攻撃するので守護霊というか過剰防衛霊です。むしろ悪霊です。
そしてミラベルがクィディッチ参戦決定。
どうやってハリーが彼女という壁に挑むかをお楽しみ下さい。

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