ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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(*M*)<ドコヘモニゲラレンゾォー
皆様こんばんわ。今更Zガンダムを見直してるウルトラ長男です。
でも時々登場人物の発言が電波すぎて何言ってるのかサッパリわかりません。
これがオールドタイプということか……。


第18話 共闘

 校則違反まで犯してスリザリンに入り込んだハリー達であったが、結局のところ彼らが得た物は無いに等しかった。

 手に入れる事が出来たのは「マルフォイは継承者ではない」という一つの情報のみだ。

 彼を継承者だと決めてかかっていた彼らにとってこれは朗報に成り得ない。

 何せ彼が違うとすれば、他に誰が疑わしいのかわからないからだ。

 あえて言うならばミラベル・ベレスフォードだが同じ選民思想でも彼女のそれは純血とは真逆だ。

 仮に彼女がスリザリンの怪物を操っているのだとすれば真っ先に狙われるのはギルデロイ・ロックハートやドラコ・マルフォイでなければならない。

 

「とりあえず、まったく時間の無駄ってならなかっただけでも良しとしましょう」

 

 『嘆きのマートル』のいる女子トイレで薬の効果が切れるのを待ちながら、ミラベル……否、彼女の姿をしたハーマイオニーが言う。

 大分時間が余ってしまったが、それもハーマイオニーの入念な事前調査のおかげだ。

 もし彼女がいなければきっと、スリザリン寮を探してひたすらウロウロ徘徊し、無駄に時間を浪費していた事だろう。

 結局のところ、今回の調査はハーマイオニー一人いれば事足りた、というわけだ。

 しかし、だからといって彼女が全てを完璧にこなしていたわけではない。

 ハーマイオニーは致命的なミスを二つ、犯してしまったのだ。

 そして、そのミスに誘われてきた者の足音が響いて来た。

 足音の方向を見れば、そこには先ほどスリザリン寮前ですれ違った少女……イーディス・ライナグルが立っていた。

 

「ミラベル、ちょっと話があるんだけどいいかな?」

「な、何だ?」

 

 このトイレに寄り付く者などほとんどいない。

 にも関わらずイーディスがここに来たのは、彼女がミラベルの友人だからだろう。

 これこそがハーマイオニーの一つ目のミス。化ける相手をミラベルにしてしまった事だ。

 ミラベル・ベレスフォードはとにかく目立つ。その飛び抜けた、ヴィーラ(美しい女性に化ける魔法生物だ)が嫉妬の余り暴れる程の容姿もそうだが、とにかく存在感が半端ではないのだ。

 しかも我が強く、その性格も個性的に過ぎる。

 周囲に正体を悟られず調査する、という今回の目的から見れば全くそぐわない、明らかな人選ミスであったのだ。

 その彼女がコソコソと『嘆きのマートル』のトイレに入って行けば、それはもう目立つなどというレベルではない。

 

「何か様子がおかしいと思ってさ。それに何でその二人といるかも気になるし」

「……そ、それは……」

 

 ハーマイオニーは賢い少女だが、予期していなかった事態にはあまり強くない。

 少なくとも並以上の機転はあるし、ロンと比べれば状況適応力も十分と言える。

 だがハリーのような天性のひらめきと行動力はまだ備えていないのだ。

 故に、こういう事態に陥ってしまうと言葉に詰まるという弱みがあった。

 それでも何とか、ミラベルが言いそうな台詞を考えて口に出す。

 

「お、お前には関係のない事だイーディス。私が何をしようと私の勝手だろう」

 

 これは我ながら上手い、とハーマイオニーは内心でガッツポーズを決めた。

 ミラベルならば言いそうな台詞であるし、何より余計な詮索を避ける事が出来る。

 しつこく質問されても「くどい!」で済ませてしまえば恐らく何とかなるだろう。

 ミラベルの身勝手さはこういう時強みだ。

 しかし彼女は気付いていない。ここで“またしても”致命的なミスを犯してしまった、という事に。

 そのミスは、すぐに結果となってイーディスの口から放たれた。

 

「……やっぱり……」

「な、何がやっぱりなのだ?」

「貴女はミラベルじゃない」

 

 いきなりの看破にハーマイオニーは思わず息を呑み、慌てて鏡を見る。

 そこに映った姿は先ほどまでと変わらず金色の髪をなびかせる美しい少女のままだ。

 つまりまだ変身が解けたわけではない。

 しかしこの行動もまた致命的なミスであった。何せこのタイミングで自分の姿を確認するという事は、暗に相手の言葉を肯定しているようなものだからだ。

 

「な、何を言うのだ? 私のどこが違うと……」

「芝居はもういいわ。正直、寮の前で話した時に薄々気付いてたから」

 

 確証を持ったのは今だ。だが寮で話した時すでにイーディスは彼女を疑っていた。

 その理由となったのがもう一つの致命的ミスだ。

 それがあったからこそイーディスはここまで来てしまったのだ。

 彼女はハーマイオニーを睨みながら、静かに言う。

 

「ミラベルはね……私の事を名前では呼ばないの。

『ライナグル』と。セカンドネームで呼ぶのよ、彼女は」

「!!」

 

 言われて、ハーマイオニーは己の失敗を悟った。

 そうだ、言われてみれば確かにミラベルは人の名を呼ばない。

 常に家名で呼んでいた。

 これはもはや挽回不可能なミスだろう。出来る事と言えば、せめて正体を悟られないようにする事だけだ。

 偽ミラベル、という事はバレてしまったが、まだ自分達が誰なのかはわかっていないはず。

 ならばここは逃げるしかない。何せ他人に変身するのは言い訳しようのない校則違反だ。

 スネイプやマクゴナガルに話されてしまえば100点以上の減点は間違いないし、最悪退学も有得るのだから。

 だがここで空気を読まずロンが怒声を発した。

 

「どうするんだハーマイオニー! 君のせいでばれたじゃないか!」

「ばっ、馬鹿……!」

 

 あっさりと名前を明かしてくれた事にハーマイオニーが焦るが、もう遅い。

 イーディスは驚いたように目を丸くし、続いて納得したかのように3人を見た。

 

「なるほど……ハーマイオニー・グレンジャーか。まあ冷静に考えれば他人に化けるなんて芸当が出来るのは2年生じゃミラベルと貴女くらいしかいないわよね。

てことは、後ろにいる二人のうち一人はハリー・ポッターかな?」

「う、うう……」

 

 万事休すだ。こうなってしまってはもはや逃げても意味がない。

 もはや打てる手はただ一つ。口止めだけだ。

 と、なるとあまりイーディスの機嫌を損ねるのは得策ではないだろう。

 こうなった以上、自分達の命運は完全に彼女に握られてしまったも同然なのだ。

 減点、あるいは退学を避けるためには彼女の温情に縋るしかない。

 

「ご、ごめんなさい。でも聞いて。私達は悪戯とかで化けてたわけじゃないのよ」

「じゃあ、何の為に?」

「スリザリンの継承者を突き止めて、これ以上の犠牲者が出る前に止める為よ」

 

 ハーマイオニーの言葉にイーディスは怪訝な顔をする。

 このクリスマス休暇で人の少ない時期を狙ったという事は継承者に目星がついていた、という事だろう。

 でなければあまりに非効率的だ。何せ今はミラベルを含む大半のスリザリン生が帰ってしまっている。

 仮に継承者などという者がいたとしても、その帰ってる生徒に紛れてる可能性の方が遥かに大きいのだ。

 

「うん……私達はマルフォイがそうなんじゃないか、と思ってたんだけど……」

「……マルフォイが? ……ないない」

 

 継承者=マルフォイ、というハーマイオニーの意見を、イーディスは手を振って否定する。

 あれは確かに純血主義者だが、実の所そこまで過激な人物でもないのだ。

 いや、正確には自分の手を汚す度胸がない、というべきか。

 要は口先だけの男なのである。

 

「本当に人を殺すような度胸なんてマルフォイにはないよ。普段偉ぶってるけど、彼は基本的にチキンだし」

「う……でも、マルフォイの家系は代々スリザリンで、彼もそれを自慢しているわ。それにミセス・ノリスが犠牲になったとき真っ先にそれを喜んだのも彼よ」

「でも違ったんでしょ?」

「うっ……」

 

 イーディスの的確な反論にハーマイオニーは黙り込んでしまった。

 確かにどんな事を言おうがマルフォイは白だった、という事実がある以上間違いを認めざるを得ない。

 呆れたように肩をすくめるイーディスへ、ハーマイオニーは縋るように言う。

 

「で、でも今回は外れちゃったけどスリザリンの継承者は見つけ出さなきゃいけないのよ。

お願い、この事は先生達には黙ってて!」

「そう言われても……」

 

 普通の校則違反……例えば夜中にうろついていた、などであればイーディスは気にもしなかっただろう。

 だがこれは違う。スリザリン生に化けて寮まで入ってくるなどとても見逃せるものではない。

 ここで見逃してまた同じ事をされては困るしスリザリン生同士の信頼に皹を入れるかもしれない。

 それに化けられた人物にしてみれば迷惑以外の何者でもないだろう。

 こんな事を二度とさせない為にはさっさと教師に報告してしまうのが一番いいのだ。

 

「規則は大事だしさ……貴女もそれはわかってるでしょ?」

 

 イーディスは呆れたように言い、トイレから出ようとする。

 だがその背に慌ててハーマイオニーが抱き付き、足を止めさせた。

 ここで彼女を行かせては本当に自分達は退学になりかねない。

 何としても引き止めなくてはならないのだ。

 

「ま、待って!」

「嫌よ。メリットがないもの」

「あ、貴女の友人に化けた事は謝るから! だから待って!」

 

 イーディスは面倒くさそうに振り向き、ハーマイオニーを見る。

 正直な所、イーディスはこの少女があまり好きではなかった。

 マグル生まれでありながら高い実力を有し、教師達にすら好かれているのがハーマイオニーだ。

 あのミラベルですら彼女だけは別格と認め、評価している。

 決闘クラブでの戦いの時も、ミラベルは終始楽しんでいるように見えた。

 きっと自分ではあの友人をあそこまで楽しませる事が出来ないだろう。そう思うと暗い嫉妬心が沸きあがるのを止められない。

 

(……今なら、退学に出来る)

 

 彼女達の命運は今や自分の手の中にある。学校から追い出そうと思えば容易く実行出来る。

 だがそれでいいのか?

 それは自分が本当に望む事か?

 確かにハーマイオニーは好きではないが、それは要するに羨ましさから来る嫉妬心に過ぎない。

 そんな事で退学に追い込んで自分は喜べるか?

 気に入らないから追い出す……それは、マルフォイと何が違うと言うのだ?

 相手を陥れてその不幸を喜んで、悦に浸る。それはあの男とどこが違う?

 ……何も違わない!

 それはミラベルが最も軽蔑する弱者の思考だ。臆病者の在り方だ!

 

(私は……私は弱者なんかじゃない)

 

 ギリ、と歯を噛み締めてハーマイオニーと向き合う。

 いいだろう、この少女はあのミラベルすら認める存在だ。

 ならば見極めてやる、その強さの本質を。

 そしてミラベルにわからせてやる。自分だって追い付けるのだと言う事を。

 

「わかった……貴方達の事は先生に話さない」

「え? ほ、本当!?」

「ただし条件があるわ。……私にも、そのスリザリンの継承者を探すのを手伝わせて」

 

 イーディスの申し出にハーマイオニーが驚いたように目を丸くする。

 何故、と言いたそうな顔だ。

 それもそのはずでイーディスはスリザリン生であり、そしてライナグル家は3代続く純血の家系だ。

 その彼女がわざわざ捜索に加わる理由がわからないのだ。

 

「な、何で?」

「……無関係じゃないからよ」

「え?」

「スリザリン生だって全員が純血ってわけじゃない。むしろ全体の3割くらいは純血と嘯いてる混血かマグル生まれよ。つまりその怪物を放置してると私達スリザリンからも犠牲者が出るかもしれない」

 

 むしろスリザリン“だからこそ”不純物として排除されるかもしれない。

 そう主張するイーディスにハーマイオニーはなるほどと頷き、ハリーを見る。

 ハリーもそれに対し静かに頷き、同意した。

 ここは下手に突っぱねるよりも手を取り合うべきだと考えたのだ。

 

「わかったわライナグル。一緒にスリザリンの怪物を探しましょう」

「今更呼び方を直さなくてもいいわよグレンジャー。これからよろしくね」

「なら、私の呼び方もハーマイオニーでいいわ」

 

 イーディスとハーマイオニーが手を取り合い、停戦を受け入れた。

 グリフィンドール生とスリザリン生の利害の一致だ。

 そこにハリーも歩み寄り、手を差し出す。

 

「その……君みたいな子もいるんだね。スリザリン生は全員がマルフォイみたいな奴だって誤解してた」

「まあ過激な奴が多いってのは事実だけどね。ミラベルとかいるし」

 

 差し出された手を取り、互いに敵意を取り払う。

 犬猿の仲であるスリザリンとグリフィンドールだが今はそんな事を気にする必要はない。

 誰が犠牲になるかわからない現状ではむしろ同じ学校に通う仲間なのだ。

 そこに普段の対立関係を持ち出して協力を拒む者がいるならば、その者は単に状況が見えていないだけか、あるいは純血主義者かのどちらかだ。

 

 この日、いがみ合ってばかりだったスリザリンとグリフィンドールの生徒同士が、人知れずその手を取り合った。

 全てはこの学校全体の為。自分達の学び舎を守るその為にだ。

 

*

 

 クリスマス休暇が終わり、幾度かの月が巡った。

 不思議な事にジャスティンが石になって以降、犠牲になる者はパッタリと止み、いつも通りの平和な日々が戻ってきたように見えた。

 その事に何人かの生徒は安堵し、何人かの生徒は今でも怯え、そしてまた何人かの生徒は今でもハリーを疑っていた。

 ロックハートに至っては被害が収まったのは自分のおかげだと何の根拠もなく信じているようだ。

 そうして何の手掛かりも得られず時間だけが過ぎて行ったある日、偶然にもハリーは一つの日記を手に入れる事に成功した。

 それは『トム・リドル』という人物の日記で、そして文字を描き込む事で彼とコンタクトを取れると言う不思議な日記だったのだ。

 そして更に驚くべき事に、そのトム・リドルこそは50年前に起こった怪物事件を終結に導いた男であり、怪物を解放した犯人を学校から追放した生徒だったのだ。

 ハリーは日記を通してその事を知った。そして誰が50年前に怪物を解放したのかも理解してしまった。

 そして何とも不幸な事に、その人物とは彼もよく知る、一人の男だったのだ。

 

「ハグリッドだったんだ……」

 

 図書館に集った仲間3人の前でハリーは語る。自分の見た過去の出来事、その一部始終を。

 13歳のハグリッドが毛むくじゃらの巨大な生き物を学校で飼っていた事。それを咎めたトム・リドルに襲いかかった事。

 そしてその怪物が逃げ遂せてしまった事も。

 

「リドルは犯人を間違えていたのかもしれないわ。皆を襲ったのは別の怪物だったのかもしれない」

 

 ハーマイオニーがハグリッドを庇うように言う。

 しかしこう言っている彼女すらもハグリッドが怪物を校内で飼っていた、という事には疑問を挟まないようだ。

 何せハグリッドが怪物のような生き物を好み飼いたがるというのは彼女もよく知る事実。

 去年など法を犯してドラゴンを飼い、挙句その尻拭いでハリーやハーマイオニーは減点されてしまったのだから。

 

「ホグワーツに一体何匹怪物がいれば気が済むんだい?」

 

 ロンがハーマイオニーの意見を封殺するように言う。

 彼もハグリッドが誰かを殺そうとしたなどと思いはしない。

 しかしハグリッドならば怪物可愛さにやってしまうだろう、とも考えていた。

 だから彼は追放されたのだ。

 しかしそこにイーディスが口を挟む。

 

「ハリー、確認するけどその怪物は毛むくじゃらで足が何本もあったの?」

「う、うん。毛むくじゃらででかくて、気持ち悪い足が蠢いてた」

 

 ハリーから怪物の容貌を聞き、イーディスは考えるように目を伏せる。

 確かにそれは紛れも無く怪物だ。人を襲う事もあるかもしれない。

 しかし、イーディスはその怪物に違和感を感じずにはいられなかった。

 

「……それ、スリザリンの怪物じゃないかもしれない」

「……イーディス、どういう事?」

 

 イーディスの意見を聞いたハーマイオニーが緊張したような面持ちで尋ねる。

 彼女としてはハグリッドが犯人だなどと思いたくも無いのだろう。

 縋るような彼女へと、イーディスは静かに頷き、自らの考えを説明する。

 

「ハリーってさ、確か蛇語が話せるからスリザリンの継承者と思われてるんだよね?」

「うん……そうだけど……」

「そしてスリザリンのシンボルは蛇……つまり蛇語を話せる事が継承者の証、となっている。ここまではいい?」

 

 ハリーとしてはこの話題は面白くないのだろう。嫌そうな顔をしつつ頷く。

 だが重要なのはここからだ。彼には少し嫌な気持ちをさせているだろうが、ちゃんと聞いてもらわなくてはならない。

 

「そしてハリーはハロウィーンの日に誰も聞こえない声を聞いた……そうね?」

「それがどうしたっていうんだ! 僕はやっていないぞ!」

「わかってる。重要なのは、“貴方だけに聞こえた”っていう一点なの。

その声は『殺してやる』って言ってたのよね? そしてその直後犯行が行われた。

なら、それは『怪物』の声であった可能性が極めて高い」

 

 ここまでの説明でイーディスの言いたい事に辿り着いたのはハーマイオニーだけだ。

 彼女はまさか、という顔で口元を押さえており、イーディスの顔を見ている。

 一方ハリーはあまりいい思い出のない話題なので顔をしかめ、ロンに至っては懐の杖に手を伸ばしている。

 もしイーディスがハリーを犯人扱いしようものならすぐにでも呪文を撃つ気だろう。

 

「蛇語を使うハリーにしか聞こえない声……なら、『怪物』は蛇である可能性が高い、と私は思うの。

ここでさっきの話に戻るけど、ハグリッドが飼っていた怪物は蛇だったかしら?」

「い、いや……よくは見えなかったけど蛇じゃない。あれには足があった」

「そう。当然それが『怪物』だった場合ハリーだけに声が聞こえるなんて現象は起こらない。

つまり結論から言うと、ハグリッドの育てていたそれと『怪物』は別物よ」

 

 そこまで聞いてハリーも理解したようだ。

 そうだ、どうしてもっと早くそれに気付かなかったのか。

 蛇語を話せる自分にしか聞こえなかった声! そこから逆算すれば簡単に答えは出ただろうに!

 しかしロンだけは未だイライラしたように目を吊り上げており、それどころか鼻息を荒くして椅子から立ち上がってしまった。

 

「そうかいそうかい! やっぱり君はハリーを犯人にしたいわけだ! 所詮スリザリン生だな!」

「ロン、違う! 彼女は怪物の正体を予測しただけでハリーを犯人にしたいわけじゃ……」

「ハーマイオニー! 君はこいつに騙されているんだ!」

 

 ロンの中で基本的にスリザリン生とは絶対に相容れない相手であった。

 マルフォイがグリフィンドールというだけで敵対するのと同じようにロンはスリザリンというだけで無条件に敵意を持つのだ。

 彼は迷う事なく杖を取り出し、その杖先をイーディスへと付き付ける。

 本当に撃ったりはしないだろうが、しかし彼の杖は不良品だ。新学期初日に暴れ柳に壊されており、今やテープで補強しているだけのガラクタ以下の代物。

 その暴発しかねない危険物を向けられた事でイーディスは息を呑み、身構える。

 しかしその直後、白い腕が横から乱入してロンの杖を鷲づかみにした。

 

「フン……玩具以下の杖だな、ウィーズリー。貴様の家ではこんな壊れた杖を与えられるのか?」

 

 自分に向けられた杖を掴む白い腕。

 その腕の先を見れば、あの一件以来疎遠に……というより、自分が一方的に避けるようになってしまった友人の姿。

 ミラベル・ベレスフォードがいつもと同じように、何の気負いも感じさせない顔で佇んでいた。

 

「こんな不良品を振り回すな」

 

 そう言うと彼女は杖を取り上げ、そして握り潰す

 すると杖だった物の破片は虚しく床に落ちてしまった。

 こんなものは最早杖でも何でも無い。

 

「学校の杖でも借りるんだな」

 

 折れた杖を前にして沈むロンを無視し、ミラベルはそのまま立ち去ってしまった。

 立ち去る一瞬ミラベルの顔を見たが、相変わらずその金色の眼から彼女の真意を読み取るのは難しい。

 だが気のせいか、いつもよりもほんの少し……自分しかわからないくらいのわずかな差で、その瞳には怒りに近い感情が見て取れた。

 そうして彼女が立ち去って数十秒後に、ふと、気付く。

 

(……あれ? もしかして今……私が杖を向けられた事に怒ってくれてた?)

 

 慌ててミラベルが立ち去った方向を見るも、もう遅い。そこに彼女の姿はすでになく、真意を伺う機会を逃してしまっていた。

 

 

 

 追いかけるのは容易い。しかし、もしそれで『違う』などと言われたら?

 その恐怖から、結局イーディスはミラベルを追いかける事も出来ず、一人悩む事になってしまった。

 

 

 




・追いかける(ミラベル好感度+1)
・追いかけない(変化無し)

(*M*)<タ,タスケテクレェー
皆さんこんばんわ。今回はイーディスメイン回でした。
主人公のミラベルは最後にちょっと出てきてデレを見せただけです。
ここでイーディスが追いかける事が出来れば溝も埋まり、多少ミラベルの好感度も上がったのですが残念ながらタイミングを逃してしまったようです。
ちなみにミラベルの好感度を100以上にすることで綺麗なミラベルルートが解放される気がします。
その為には全ての選択肢でミラベルの好感度を上げる選択をしなければならず、一つでも逃すと暗黒面直行です。

ま、要するにミラベルの改心は無理って事なんですけどね。

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