ケンシロウ<イイカゲンキヅケ……ジャギ
皆様こんばんわ。
好きなSSほどエタる傾向にあるウルトラ長男です。
1年以上経っても未練がましく更新確認する事の何と虚しい事か。
どうせ更新しててもそんなハイパースローペースで完結など出来るはずない、とわかっていてもついつい確認してしまいます。
諦めつつも、「実は更新停止中に書き溜めしてて、ある日突然一気に放出される」という希望を捨て切れない。
私がこんな悶々としているのも全てゴルゴムのせいに違いない。
おのれゴルゴム! ゆ゙る゙ざん゙!!
あの一件以降、ミラベルとイーディスの仲は疎遠となっていた。
前まではほぼ毎日のように行動を共にしていたというのにそれがパタリと止み、まるで話そうとしなくなったのだ。
クィディッチの試合も、それでスリザリンが敗れた事も、そしてまた新たに『継承者』の犠牲が出た事も、二人の心を揺らす事はなかった。
別に大喧嘩したわけでも、口論したわけでもない。ただイーディスがミラベルに話しかけなくなったという、それだけの事なのだ。
たったそれだけの事で、二人の間にあった偽りの友情は儚く消え去った。
廊下ですれ違っても言葉を交わす事はなく、イーディスが時折視線を送ってくるのに気付いていながらミラベルは何も反応を返さない。
イーディスは歩み寄る勇気が持てず、ミラベルは歩み寄る気そのものがない。
そんなぎこちない関係が2ヶ月程続き、クリスマスも目前となったある日の事だ。
ミラベルが廊下を歩いていると反対側から銀色の髪をなびかせて少女かと見紛う線の細い少年が歩み寄って来た。
ハッフルパフの1年生でありミラベルの弟でもあるシドニー・ベレスフォードだ。
彼はミラベルの前で止まると、少し固さを感じる口調でゆっくりと話す。
「姉上」
「シドニーか。どうした?」
「今夜開かれる『決闘クラブ』の事はご存知でしょうか?」
「ああ」
決闘クラブの事は勿論知っている。
だがミラベルは然程興味を抱いてはいなかった。
というのも、その決闘クラブの開催者がギルデロイ・ロックハートであり決闘も途中で中断されるとわかっているからだ。
だがシドニーはその事を知らず、そしてかなり乗り気になっているらしい。
「貴様は出るのか?」
「はい。姉上は?」
「気が乗らん……が、貴様が出ると言うのならどの程度腕を上げたか見るのも一興か」
「有り難きお言葉……必ずや、ご期待に応えて見せます」
正直出る気は全くなかったのだが、これで出ないわけにはいかなくなった。
まあ弟の成長具合を知りたいと言うのは本当だ。
何せ彼は忠実な駒の一人だ。どのくらい使えるのか、というのは大事な事である。
決闘クラブに出る事を約束してからシドニーと別れ、授業へと向かった。
「皆さん集まって! さあ、私の声が聞こえますか? 私の姿が見えますか? 結構結構!
ダンブルドア先生から私がこの決闘クラブを開くお許しを頂けました。私自身が数え切れない程経験してきたように、自らの身を守る必要がある万一の場合に備えて皆さんをしっかり鍛え上げる為です!」
大広間で生徒達を見渡しながら演説しているのはロックハートだ。
彼は金色の舞台の上に立ち、いちいち大げさな挙動を加えながら、まるで芝居のように話す。
「では助手のスネイプ先生をご紹介しましょう。彼がおっしゃるには決闘についてごくわずかにご存知らしい。
訓練を始めるにあたり短い模範演技をするのに勇敢にも手伝って下さるというご了承を頂きました。
しかし若い皆さんにご心配をおかけしたくないので先に言いますが、私が彼と手合わせした後でも皆さんの魔法薬の先生はちゃんと存在します。ご心配めされるな!」
ロックハートは案外、他人の神経を逆撫でする事に関して天性の才能を持っているのかもしれない。
コケにされたスネイプの形相は鬼のように歪み、教師という立場がなければ今すぐにでもロックハートに呪いをかけてしまいそうだ。
まあそれもそのはずで、こんな「無能」を具現化したような男にここまで馬鹿にされているのだから仕方なしと言えるだろう。
その後の模範演技の結果は言うまでもない。スネイプの武装解除呪文によってロックハートが一蹴されての開幕KOだ。
ロックハートはそれでも懲りずに負け惜しみを言っていたが流石に格の違いは理解したのか、スネイプに睨まれるとそれ以上の言い訳を重ねる事はなかった。
「模範演技はこれで十分! これから皆さんの所へ降りて行って二人ずつ組んでもらいます。
スネイプ先生、お手伝い願えますか?」
ロックハートとスネイプの二人は生徒達の群に入り、二人ずつ組ませていく。
どうやら生徒の方で好きな生徒を選ぶ事は出来ないらしく、組もうとしていたハリーとロンは離されてしまった。
「どうやら名コンビもお別れの時が来たようだな。ウィーズリー、君はフィネガンと組みたまえ。
ポッターはマルフォイだ。かの有名なポッターを君がどう捌くのか拝見しよう」
ハリーを因縁深いマルフォイと組ませ、続いてハーマイオニーを見る。
彼女はグリフィンドールの中で最も優秀で、学年全体で見ても太刀打ち出来る生徒は少ない。
かといって上級生と組ませては露骨すぎるし、しかし勝てる相手と組ませていい気になられるのもスネイプとしては楽しくない。
ならば組ませる相手はただ一人。
「ミス・グレンジャー。君はミス・ベレスフォードと組みたまえ」
グリフィンドール最優にぶつけるならばスリザリン最優であるミラベルこそが望ましい。
スネイプの口から出た悪夢のような決闘パートナーの名にハーマイオニーが青い顔をし、それとは対象的にミラベルが楽しげに笑う。
同学年でミラベルの相手になり得る生徒など存在しないが、唯一の例外がハーマイオニーだ。
彼女だけは別格……それなりに楽しめるかもしれない可能性を秘めている。
「ほう……願ってもない形になったな。
他の雑魚共など暇潰しにもならんが貴様だけは別だ、グレンジャー。
一度やりあってみたいと思っていた」
「そ、そう……それは光栄ね」
ハーマイオニーとミラベル。これは事実上の2年生最強決定戦だ。
そして互いに学年のレベルを大きく逸脱している生徒同士でもある。
いきなりの好カードに周囲の視線が集まり、それと比例するように期待も高まっていく。
「相手と向き合って! そして礼!」
決闘前の一礼。これは守らねばならぬ格式ある伝統だ。
闇の帝王であろうと頑なに守ろうとする、と言えばどれだけのものか分かるだろう。
ハーマイオニーはゆっくりとお辞儀をし、ミラベルもそれに合わせて、優雅に一礼を返す。
こう見えても由緒正しき名家の生まれだ。作法くらいは学んでいる。
無論、礼をするに値しない相手……例えばこれがマルフォイやウィーズリーだったならプライドの高い彼女はまず頭など下げなかっただろう。
ミラベルが一礼をするというのはその時点で相手を認め、高く評価している事を意味するのだ。
そしてハーマイオニーにはそれだけの価値と実力があるとミラベルは認めていた。
「私が3つ数えたら相手の武器を取り上げる術をかけなさい! 武器を取り上げるだけですよ?
皆さんが事故を起こすのは嫌ですからね。1……2……3!」
ロックハートの秒読みが終わると同時にミラベルとハーマイオニーが杖を抜く。
杖の大きさは圧倒的にハーマイオニーが有利だ。
わずか25cm前後の彼女の杖は抜きやすく、初動が速い。
一方ミラベルの杖は規格外の72cmであり、どうしても初動が鈍ってしまう。
だがそのハンデを補って余りある超人的な手の早さで杖を抜き、ハーマイオニーと同時に呪文を唱えた。
「「エクスペリアームス!」」
二つの赤い閃光が中央で衝突し、相殺し合う。
無論、ミラベルが本気で呪文を撃てば相殺などせず一方的に打ち勝つ事は可能だ。
だがそれでは面白くない。
せっかくの機会なのだから、もう少し楽しまねば損というものだ。
チラリ、と1学年の方を一瞥してみればシドニーがウィーズリーの末妹から杖を奪う所であり、見るまでもなく終わっていた。
面白味のない相手と当たってしまったな、と弟の不運に溜息をつきつつ、今を楽しむために正面に向き直る。
「アビフォース! 鳥になれ!」
「ヴェーディミリアス! 浮遊する床よ!」
ハーマイオニーの杖を鳥に変えてしまおうと放たれた呪文を、突如宙に浮かんだ床がブロックする。
結果、鳥になったのは浮かび上がった床だ。杖は全くの無傷である。
ほう、と楽しげに笑うミラベルに対し、今度はハーマイオニーが仕掛けた。
「オパグノ! 襲え!」
「オーキデウス! 花よ!」
床から変化した鳥を操り、ミラベルの杖を奪わせようとする。
だがミラベルが足元から呼び出した花が一瞬で伸び、蔓で鳥を縛り上げてしまった。
そこから更に数本の蔓が伸びてハーマイオニーの杖へと襲いかかる。
「ラカーナム・インフラマーレイ! 火炎よ!」
襲い来る蔓に対し、炎を出して焼却する事で対処する。
それを見てミラベルが笑みを深くした。
やはりこの少女はなかなか楽しめる相手だ。遊びにしてもこういう優れた相手でなければ暇潰しにもならない。
「フハハハ! いいぞグレンジャー、よく対処した!」
「当たり前よ! いっぱい勉強したんだから!」
「大したものだ。だが戦い方が少しお利口すぎるな!」
言うや否や、ミラベルは一足でハーマイオニーとの距離を詰めて杖を薙ぐ。
するとハーマイオニーの杖が右手と一緒に跳ね上げられ、無防備を晒してしまった。
ミラベルはそこに追撃を入れる事なく、杖を彼女の胸に突き付けてニヤリと笑って見せる。
「ほら、これで1回死亡だ。今魔法を撃てば終わっていたぞ?」
「ず、ずるい! 直接殴りかかってくるなんて!」
「フ……ロックハート教諭が言っていたのは“相手の杖を取り上げる事”だけ。ならばこれも立派な戦略だよ、グレンジャー」
むー、と頬を膨らませて不満を露にするハーマイオニーに意地悪な笑みを返してやる。
するとその余裕ぶりに腹を立てたのか、ハーマイオニーはミラベルの杖目掛けて飛びかかった。
しかしミラベルは素早く彼女の襟を掴んで足を払いのけ、ハーマイオニーを床に転がした。
「言われた事を即座にやり返す柔軟性は買うが、いかんせん動きが素直すぎるな」
「こ、このお!」
再度ハーマイオニーが飛び掛るが、ミラベルは余裕のままだ。
ハーマイオニーの腕を掴んで軽く捻ると、まるで重力を無視するように彼女の身体が浮き、地面に落とされた。
魔法ではない。相手の力を利用して投げ飛ばすだけの体術だ。
「それと私は素手でも十分強いという自負がある。格闘では貴様の勝ちはないぞ」
「あうう……」
盛大に尻餅をついたせいで涙目になり、尻をさするハーマイオニー。
その彼女へまたしてもミラベルは追撃をかけない。
ただ面白そうに口の端を歪めたまま、ハーマイオニーの次の手を待っている。
やはり思った通りこの少女は原石だ。
今はまだ典型的な頭でっかちに過ぎないが、教えればすぐにそれを我が物とする柔軟性がこの少女には備わっている。
何よりこの状況でもまだ諦めない芯の強さもある。
たとえ未熟でもこういう相手と戦うのは楽しいものだ。なかなかに心躍る。
だが、そのせっかくのお楽しみタイムもロックハートの声で中断されてしまった。
「やめなさい! ストップ!」
どうやらハリー・ポッターとマルフォイがルールを無視した戦いを繰り広げたらしい。
せっかく面白くなってきた所で邪魔されたミラベルは不満そうだが、それとは逆にハーマイオニーはほっとした顔をしている。
事実上負けていたようなものだが、それでも何とか杖を奪われる事態だけは避ける事が出来た。
その事に安堵しているのだ。
そのハーマイオニーの肩を軽く叩き、ミラベルは彼女だけに聞こえる声で言う。
「いい所で邪魔が入ったが……今度は時間制限無しでやりたいものだな、グレンジャー」
「は、はは……」
その後は特にミラベルの気を引く事も起きず、ほぼ知識通りに進んだ。
マルフォイが蛇を呼び出し、ハリーがそれを蛇語で追い払ったせいでパーセルマウスとバレてしまい、ハリー・ポッター=スリザリンの継承者、という疑いがかかってしまったのだ。
無論そんな混乱し切った状況で決闘クラブなど続くはずもなく、その場でお開きとなってしまった。
*
決闘クラブが終わった後は、ほとんどの生徒がハリーをスリザリンの後継者と思うようになった。
ハリーはこれを否定したが、何せパーセルマウスという特異すぎる才能が彼にはある。
蛇語を操る者……パーセルマウス。それはスリザリンも持っていた能力とされ、彼の血を引く者のみに与えられる才能と考えられていた。
そしてこの学校で蛇語を話せるのはハリーただ一人なのだ。これは疑うなという方が無理な相談である。
しかも更にその疑いを加速させるように、ハリーと言い争いになったジャスティン・フレッチリーが被害に遭い、しかもハリーはその第一発見者となってしまった。
まるで誰かが仕組んだかのような間の悪さ。それらの出来事のせいで今ハリーは学校中から避けられ、除け者にされてしまっていたのだ。
しかしそんな中でもハリーが「継承者」ではないと信じてくれる友達が二人いる。
そして今、ハリーはその友人二人の力を借りて本当の「継承者」を探す為の行動を始めていたのだ。
その策とは、「ポリジュース薬」を使ってスリザリン生に変身し、マルフォイから情報を聞き出す事だ。
彼らはマルフォイこそが「スリザリンの継承者」だと踏んでいるのである。
「これから変身する相手の一部……まあ、髪の毛でいいわ……それが必要よ。当然貴方達はゴイルとクラッブから取るのが一番だわ。
マルフォイの腰巾着だからあの二人だったら何でも話すでしょうしね」
ハーマイオニーの説明にハリーとロンは顔を歪めて嫌そうな空気を前面に押し出す。
いくら必要な事とはいえ、ゴイルとクラッブの髪の毛など飲みたくもない。
しかし問題はハーマイオニーが誰に化けるかだ。ハリーは不思議そうに彼女へと尋ねた。
「でも君のは? 誰の毛を引っこ抜くの?」
「私のはもうあるわ」
ハリーの質問に、ハーマイオニーは高らかに宣言して懐から小瓶を取り出す。
その中には美しい、一本の金糸のような髪の毛が入っていた。
「それ、誰の毛?」
「ミラベル・ベレスフォード」
「! よりにもよって……! そんな物どうやって手にいれたんだい?!」
ハーマイオニーの口から出た恐ろしい名前に二人が青褪め、その入手経路を尋ねる。
彼女から髪の毛を抜くなど、それこそフラッフィーの毛を抜く事くらいに難しく恐ろしい事だ。
その質問を待ってましたというようにハーマイオニーが誇らしげに語る。
「覚えてる? 私が彼女と取っ組み合った……というか一方的に投げ飛ばされた時の事。
その時に偶然だけど、私のローブに毛がくっついたみたいなの。
彼女はクリスマス休暇中は実家に戻ってるみたいだし、仮に誰かに疑われてもちょっと脅せば誰も詮索しないはずよ。何せ皆彼女を恐れてるから」
「け、けど大丈夫なの? ベレスフォードとマルフォイは仲が悪いみたいだし……」
「大丈夫よ。だってマルフォイはベレスフォードの事を怖がってるんだもの。ちょっと睨んでやればきっとベラベラ喋るわ」
何か腑に落ちないものを感じつつもとりあえず納得し、ハリー達はクラッブとゴイルの髪の毛を採取しに向かった。
方法は馬鹿馬鹿しい程簡単なものだ。
眠り薬を仕込んだチョコレートケーキを彼らの見える位置に置いて食べさせたのだ。
階段の手すりという、明らかに違和感しかない場所に置いたにも関わらず彼らはまるで疑う事をせずガツガツと食べて眠りこけてしまった。
その阿呆そのものの二人から髪の毛を引っこ抜いて物影に投げ込み、ハーマイオニーの待つトイレへと駆け足で帰還した。
「よし、取ってきたわね。それじゃグラスの中に髪の毛を入れて」
用意した3つのグラスに、それぞれ髪の毛を落とす。
するとグラスの中の薬が泡立ち、色が変わっていく。
ハリーが化けるゴイルの液体は鼻糞のようなカーキ色。
ロンが化けるクラッブの液体は排泄物のような暗褐色。
そしてハーマイオニーが化けるミラベルの液体は無駄に眩い黄金となった。
液体のくせに輝いており、自己主張があまりにも激しい。まさにミラベルの性格を現したような色だ。
「……これを飲むのか……」
「僕のこれ、見た目どころか匂いまで……」
「グダグダ言わない! さっさと飲むわよ」
あまりにも酷く汚い色になってしまった液体を前にハリーとロンが尻込みをする。
それとは対照的にハーマイオニーに気負いはなく、二人をせかす程だ。
彼女のそれも飲み物とは言いがたい色だが、少なくとも汚いというイメージは沸かない。だからこその余裕だろう。
「ずるいよハーマイオニーは。一人だけ当たり引いて」
「全くだ。ベレスフォードは見た目は凄い良いからな……見た目は」
愚痴をこぼしながら二人はそれぞれ別の個室に入り、鼻をつまんで薬を飲み干した。
味は……まあ、言わない方がいいだろう。
変身を終えた後はサイズの合わなくなった服を脱ぎ、あらかじめハーマイオニーが用意してくれていた服に着替える。そうしてすっかりゴイルとなったハリーが個室から出ると、すでにそこではミラベル……いや、彼女に化けたハーマイオニーが立っていた。
「どうやら成功したようね。本当にゴイルみたいだわ」
「ハーマイオニーこそ。でもなんか、フレンドリーなベレスフォードって新鮮だな」
「そうよね。私も鏡を見てそう思ったわ」
そうして話していると最後にクラッブに化けたロンが現れ、低い声で言った。
「おっどろいたなあ。本当に化けてるや」
ロンはクラッブの潰れた鼻を弄りながら鏡を見て、色々な表情を作っている。
それに合わせてハリーとハーマイオニーもしっかり演技する為に様々な表情を作り、なるべく本物に似せるよう練習をした。
「ねえ、私ちゃんとベレスフォードになれてるかしら?」
クルリとターンをし、二人に確認を取るハーマイオニーに男二人は微妙な顔で唸る。
こうして見るとミラベルは本当に可愛いのだとわかるし、女の子しているミラベルの姿は新鮮そのものだ。
だがこれは何か違う。女の子としてはこれが正しいのだが、『ミラベル』としては致命的にズレている。
「うーん、ベレスフォードはもっと人を見下した感じだよ。それに口調も真似しないと」
「ええと……ふ、ふん! ならばどこが可笑しいか言ってみるといい! ……こんな感じだろうかハリー?」
「表情ももっと尊大な感じで」
「ふ、ふはははは! 俗物め! ……こうかな?」
ハリーとロンは首をかしげ、唸る。
違う。何か違う。コレジャナイ感が滲み出すぎて半端ない。
何というか、本物に備わっている威圧感や呪い染みた魅力がこの偽ミラベルには全く感じられないのだ。
いや、勿論見た目は超が付く美少女であるし、それだけでも十分男を魅了出来そうなものだが、それとは別次元で決定的に何かが欠けていた。
「いくら考えても仕方ないわ! 行くわよ二人とも!」
だがいくら考えても答えは出そうにない。
とりあえずマルフォイさえ騙せればそれでいいのだから考えるのは後にするべきだ。
何より時間も限られている以上一秒でも無駄には出来ない。
意を決して3人はトイレから飛び出し、スリザリン寮へと向かった。
場所はハーマイオニーが覚えているらしく、その足取りも軽い。問題は部屋前の合言葉だけだが、これもすでにクリアしていた。
どうやったかは知らないが、合い言葉が「純血」である事をハーマイオニーはすでに突き止めていたのだ。
地下室へ続く階段を降り、曲がり角を曲がる。そこまでは順調だった。
だがそこで、3人は一人の女子生徒と運悪く遭遇してしまった。
「……ミラベル?」
それは茶色のショートカットが特徴的な、スリザリンの2年生だ。
ハーマイオニー達は彼女の顔に見覚えがあった。
それは数多くいる生徒の中で唯一ミラベルを恐れず、ただ一人あの黄金の少女と友達付き合いをしている、恐らくはホグワーツで最もミラベルの事を知る生徒。
――イーディス・ライナグル。
「あ、ああ……イーディスか。どうした、こんな所で」
「どうしたって、ここスリザリン寮の前だけど……貴女こそ、クリスマス中は帰ってたはずじゃ……」
「その、急用を思い出してな。それでちょっと学校に戻ってきたのだよ」
疑わしいものを見るような眼のイーディスだが、それ以上の追求をする気はないらしい。
その視線から逃れるようにハーマイオニーは素早く彼女の横をすり抜け、寮へと早足で向かって行った。
ゴイル、クラッブに化けた二人がその後を続き、ますますイーディスの眼が険しくなる。
恐らくはこの普段見られない組み合わせに違和感を感じているのだろう。
その居心地の悪い視線を後に3人は寮の前に付き、「純血」と合い言葉を唱えて中へと入っていった。
後に残されたのは3人の去った方向を見続けるイーディスのみだ。
彼女は3人の去った方向をいつまでも、ただ微動だにせず睨み続けていた。
そして、呟く。最大の違和感を与えてくれたあのミラベルの一言を。
「…………“イーディス”……ですって?」
ミラベル(ハー子)「なんだマルフォイ、貴様私に逆らう気か?」
マルフォイ「フォイ……(((;゜д゜)))」
ミラベル(ハー子)「そら、知っている事を洗いざらい吐け。踏むぞ下郎」
マルフォイ「ぼ、僕は本当に何も知らないんだ……(((;゜д゜)))」
ミラベル(ハー子)「なぁにぃ~? 聞こえんなあ~?」 ゲシゲシ
マルフォイ「フォーイ!」
ミラベル(ハー子)「(やばい、これ凄く楽しい……)」
┌┤´д`├┐<ナニィ?キコエンナァー!
今回は決闘クラブ、ハー子VSミラベル、ハー子ミラベルになる、の3本でお送りしました。
原作と違いハー子はミラベルと戦った為、化ける相手もミラベルに変更され、変身も無事上手く行きました。
マルフォイへの尋問はまあ、↑の通りです。ビビリのマルフォイをミラベル(ハー子)が散々脅しまくり、情報を搾れるだけ搾りましたが結局は収穫なしです。
ちなみに本物のミラベルは今頃実家でまた悪巧みをしている事でしょう。