皆様こんばんわ。
今回でいよいよ賢者の石編は終了となります。
ところで現在ハリポタSSを読み漁ってますが、意外とグリフィンドール主人公て少ないですね。
大体スリザリン所属です。
やったねヴォルデモート! 味方が増えるよ!
「いや全く酷い目にあったわい。城門は封鎖されておるし、あちこちにトリモチが仕掛けられてて靴の底にひっついてしもうた。
ピーブズもあちこちで邪魔をするし、扉は固定されとる。
しかもフラッフィーは音楽を聞こうともせん。オマケに鳥につつかれて眼鏡に皹が入ってしもうた」
飄々と、まるでちょっと道で躓いた事を話すようにダンブルドアが言う。
だがその内容は笑い事では済まない。
仮にも防衛術の教師だったクィレルすら3頭犬の突破法がわからないうちは足踏みしていたというのに、この老魔法使いは容易くそれを突破してきたのだ。
「ミラベルや……その石をどうする気だったのか、聞いてもよいかね?」
「これは随分なお言葉で。『例のあの人』の手に石が渡るのを防いだだけですよ」
嘘ではない。
ヴォルデモートの手に石が渡らぬようにしたのは紛れもない事実だ。
ただ、その後自らの懐へ入れようとしただけである。
そのふてぶてしい返答に、ダンブルドアは表情を崩さず、静かに答える。
「ああ、ミラベルや……猫は被らんでもよい。
お前さんがヴォルデモートを恐れておらぬ事など、とうに知っておる」
「……なるほど。では、ヴォルデモートと呼びましょう」
記憶にある限り一度として彼や教師の前でヴォルデモートを呼び捨てにした事はないのだが、どうやらバレていたらしい。
まあ、特に隠したい事でもなかったので問題はない。
言葉を交わしながら今ミラベルが考えるのは、どうやってここを切り抜けるかだ。
姿現しで転移するか? それとも不意打ちで死の呪文でも撃ち込んでみるか?
だがこの老人は、どちらもすぐに対処されそうな底の知れなさがある。
「さて……石をヴォルデモートから護ったと……。
それは素晴らしい……素晴らしい心がけじゃ。
では、あの通路の罠などは、どういう意図で用意したのか聞いてもよいかね?」
「死喰い人がクィレル教諭一人とは限らない。援軍から挟み撃ちされる危険もあった。
ならば対策くらいして当然とは思いませんか?」
「尤もじゃ。うむ、実に賢い。
城門を封鎖したのも、同じ理由かね?」
「校長はしばらく帰って来ないと聞いたものでね」
ダンブルドアは今日は帰って来ない。少なくともハリー達はそう思っていたはずだ。
これ自体がクィレルを踊らせる為の罠なのだが、ミラベルはそこを逆手に取った。
自分もダンブルドアが帰ってくるとは思わなかった。だから遠慮なく城門を封鎖したのだ、と。
ダンブルドアのブルーの瞳がミラベルの内を見透かすように向けられるも、ミラベルには心を読まれぬという絶対の自信がある。
こちらの真意などは決して読ませない。ならばまだチャンスはある。
「そして、最後はこっそりと自分の懐に、かね?」
「……ふ、魔が差さなかったと言えば嘘になるでしょう」
ここは下手に嘘を付くべきではない。そうミラベルは考えた。
賢者の石が一つあれば死とは無縁になれる。
誰もが求める永遠を手にする事が出来る。それだけで狙う理由としては十分だ。
むしろここで、誘惑されない方が不自然。
だがダンブルドアはそう思わないらしく、小さくかぶりを振って目元を抑えた。
「愚かな……実に愚かな事じゃよ。『石』とは君が思うほど素晴らしいものではないのじゃ。
若い君にはわからぬかもしれぬが、ただ永く生きるだけの命などにどれほどの価値があろうか……」
「……永遠がくだらない、と?」
「そうじゃ。しかし大方の人間がそれを望んでしまう。困った事に、人間は自らにとって最悪のものを欲しがるくせがあるようじゃ」
ダンブルドアの言葉に違和感を感じ、ミラベルはピクリと眉を上げる。
何か妙だ。
人間にとっての“最悪”とは、その個人によって変わるものだ。その人物にとっての最高が他の人物とは異なるように。
例えばミラベルにとっての最高はハリー・ポッターにしてみれば最高とは程遠いものだろうし、その逆も然り。
なのにダンブルドアは永遠の命を最悪と言い切ってしまった。
その彼らしからぬ短慮な思考にミラベルが疑問を感じるのも仕方なしと言えるだろう。
「なるほど、貴方は永遠を最悪の物と考えているのか」
「そうじゃ」
「では貴方もそれを求めたという事だな?」
ミラベルの言葉にダンブルドアの目がわずかに見開かれる。
それを見てミラベルは確信した。
やはりそうだ。この男は何かしら、『命』に関するものを求めた過去がある。
だから誰もが求める永遠の命を『最悪』と言い切れたのだ。
人間は自らにとって最悪のものを求めるクセがある……彼は確かにそう言った。
ならば彼もまた、何かしらの形で最悪を求め、そして後悔したのだろう。
それを証明するかのようにダンブルドアは疲れた顔をして言う。
「ああ、愚かな事じゃよ。愚者への誘いじゃ」
「否定せぬのだな?」
「さあ、どうじゃろうな?」
ミラベルがダンブルドアを警戒するように、ダンブルドアもまたミラベルを警戒していた。
恐ろしい娘だ。そうダンブルドアは思った。
どんなに心を偽り、仮面を被って飄々と話してもまるで関係ないとばかりに心の奥底に土足で踏み込んでくる。
ガードを強引にこじ開け、アルバス・ダンブルドアという人間の本質に切り込んでくる。
あるいはそれは、二人の本質が非常に似通っているのが原因なのだろうか。
だからこうまで見抜かれる。
「ミラベルよ、命の摂理に反する事を考えてはならん。それは必ずや君を不幸にしてしまう」
「…………」
「君はまだ若い。統率力に優れ、そして溢れんばかりの才能に恵まれておる。
その力を正しき方向に使えばきっと、誰よりも偉大な魔女になれるはずじゃ」
ミラベルが不気味なほどダンブルドアを理解する一方で、ダンブルドアもまたミラベルの内心を手に取るように把握していた。
彼女は一年にしてすでに閉心術を極めているようだが、そんなものは関係ない。
心が読めずとも、その思想が読めてしまう。
何故なら彼女は若き日の自分そのものだからだ。グリンデルバルドと共にマグルの支配を考えていたあの愚かな自分に最も近いからだ。
優れた自分達魔法使いがマグル達を支配してこそ世界は変わると、そう信じていたあの頃の自分を否応なしに思い起こさせる。
「さあ、石を渡しなさい。それは君を不幸にする事はあっても、決して幸福にはしてくれない」
「……フン」
こうなってしまった以上、素直に石を渡す以外の選択肢は残されていないだろう。
今戦ったところで恐らく勝ち目はないし、こちらの手の内もまだ見せたくない。
認めよう、引き際を誤った事を。そして相手の力量を読み違え、踏み込むべきでない場所まで踏み込んでしまった事を。
故に、これ以上の失敗の上塗りはしない。
ミラベルが石を放り投げると、ダンブルドアは杖先を石へと向ける。
そして躊躇なく魔法を解き放った。
「ボンバーダ・マキシマ! 完全粉砕せよ!」
賢者の石に閃光が直撃し、粉々に打ち砕く。
無数の破片に分かれた石が床を散らばり、近くにいた鼠が慌てて逃げ出した。
そしてダンブルドアは風を起こし、破片を一つ残らず手元に収める。
「さ、行きなさい。ハリーはわしが運んでおくよ」
「ええ。ではお先に」
今回の事は残念だったが、ダンブルドアの実力と己の認識不足を知る事が出来た。
ならばそれを次に活かすだけの事。
ここで退学などの罰が与えられないのは温情か、それとも舐められているのか……。
ミラベルはローブを翻して歩き出し、ダンブルドアの横を素通りして階段を登った。
「ミラベル……野望の果てに未来はない。その事をどうか忘れないで欲しい」
「……覚えておきましょう」
すれ違う一瞬、ダンブルドアの脳裏を過ぎったのは迷いであった。
――ここで潰すべきか否か。
ミラベルがやった事は結果論から言えば潰すにも、退学にするにも値しない。
在学中のヴォルデモートのように殺人を犯したわけでもなく、ハグリッドのように禁止指定された生物を飼ったわけでもない。
勿論窃盗は罪に違いないが、長い学校の歴史の中でつい魔が差して学校の備品や他人の物に手を出した生徒など10人20人では足りないし、その都度彼等を叱り、あるいは罰則を与えて更正させるのが教師の役目でもあった。
第一この程度で退学などにしていてはジェームズ・ポッターなど10回は退学している。
だがそんな事とは無関係に、ミラベルは危険だ。
罪の大きさ云々ではない。今はよくとも、将来巨悪と化す可能性を秘めている。
ミラベルは一応耳を傾けてくれたが、その野心は全く衰えていない事をダンブルドアは理解していた。
故にこそ迷うのだ。
この悪の芽を今の内に摘んでしまうべきではないのか、と?
(何を馬鹿な……お前は教師じゃろう、アルバス・ダンブルドア)
しかしミラベルはまだ1年生の少女に過ぎない。
ダンブルドアはどんな悪人にもやり直しの機会が与えられて然るべきだと考えているし、常にそう主張している。
教師としての責任、そして情け。それがダンブルドアを踏み止まらせていた。
罰則には値する。しかし潰すほどの物ではないだろう、と。
そう、考えてしまうのは彼女があまりに若き日の自分達に似ているからかもしれない。
その才能故に慢心し、愚かな夢を抱いたあの日の己自身に……。
「……わしは……生徒を正しい道へと導けぬのか……?」
気絶しているハリーと己以外の誰もいない部屋で、ダンブルドアは小さく呟く。
先の事など分からない。
何が正しかったかなど、終わってみなければ答えは出ない。
トム・リドルの時もそうだった。
彼が悪に堕ちるのを止められず、結果として史上最悪の魔法使いが誕生してしまった。
幾人もの犠牲者が出て、ジェームズやリリーすら命を落とした。
その度に思うのだ。こんな何も救えない男の、どこが偉大な魔法使いなのだ、と。
そしてまた、一人の少女が闇への道を踏み出しているのを止められずにいる。
何と……何と己は無力なのか……。
「……諦めんぞ。ここでわしが見捨ててしまっては、誰があの娘を光に戻してやれるというのじゃ」
まだだ。まだ時間はある。
今度こそ自分は生徒を正しい方向へと導いてみせる。ヴォルデモートの悲劇を繰り返しはしない。
諦めない事……それだけが、かつて野心に溺れて妹を死なせてしまったこの愚かな男に出来るただ一つの償いなのだ。
生徒達に自分の二の舞を踏ませない為に、自分だけは何があっても見捨てるわけにはいかないのだ。
そうする事で初めて、自分は妹に顔向けできる。そう信じている。
「……そうじゃろう? ……アリアナ……」
ダンブルドアの、苦渋に満ちた声。
それを果たして亡き妹が聞いているのかどうか。
それは、きっと誰にも分からぬ事だ。
*
賢者の石を巡る戦いから3日が過ぎ、学年末パーティーの日がやってきた。
広間の椅子にはすでに大勢の生徒が座っており、ガヤガヤと騒いでいる。
寮杯は今のところスリザリンの物だ。広間もそれに合わせてスリザリンカラーの緑と銀で飾られ、テーブルの後ろにはスリザリンのシンボルでもある蛇を描いた巨大な横断幕が垂れ下がっている。
だが果たしてこのパーティーが終わった時寮杯はスリザリンの手元に残っているのかどうか。
『遺産』によりこの先の出来事を知っているだけにミラベルは騒ぐ気にはなれなかった。
「どうしたのミラベル? せっかく寮杯を獲得したんだからもっと喜ぼうよ。
ミラベルは特に点数を稼いで貢献したんだからさ」
「勝ち誇るのはまだ早いぞライナグル。あの噂を聞いていないのか?」
「噂? もしかしてハリー・ポッターが学校に隠されてた賢者の石を守ったってやつ?」
ハリーが賢者の石を守って戦った事はすでに校内に広まっている。
無論ダンブルドアはすぐに規制をかけてその内容を秘密としたが、秘密という事はつまり皆が知っているという事だ。
恐らく噂の出所はハリーの親友やハーマイオニーだろうが、どちらにせよそれを疑うものは驚くほど少なかった。
何せハリーの負傷やクィレルの失踪といった信じざるを得ない出来事が重なっているのだ。
そのおかげでハリーは一躍ヒーローへと返り咲き、再び学校の皆に受け入れられた。
今の彼はもう学校中の嫌われ者ではない。賢者の石を守りきった勇敢なヒーローなのだ。
「それだけの出来事が評価されないはずもあるまい。
恐らく、最後の最後に駆け込みの点数があるぞ」
「……マジ?」
「ああ。あのサプライズ好きの爺なら嬉々としてやるだろう。
その点数次第ではグリフィンドールのトップも有り得る」
今日までにミラベルは126点もの点数を稼ぎ、本来よりも大きくグリフィンドールを引き離した。
だが油断は出来ない。あの狸爺ならばそこを曲げて強引にグリフィンドールを勝たせる事だって不可能ではないのだから。
まあ、何はともあれダンブルドアの采配を待つとしよう。そう思ったところでタイミングよくダンブルドアが声をあげた。
「また1年が過ぎた! 一同、ご馳走にかぶりつく前に老いぼれの戯言をお聞き願おう。
一年が過ぎ、君達の頭も以前に比べて何かが詰まっていればいいのじゃが……新学年を迎える前に君達の頭が綺麗さっぱり空っぽになる夏休みがやってくる。
その前にここで寮対抗の表彰を行うとしよう。点数は次の通りじゃ。
4位グリフィンドール、308点。3位ハッフルパフ、352点。
2位レイブンクロー、426点。そして一位スリザリン、598点」
発表と共にスリザリン生達がテーブルから総立ちになり、嵐のような歓声と共に床を踏み鳴らす。
7年間連続の寮杯獲得! それも例年にない圧倒的大差をつけてのぶっちぎり優勝だ。
新入生は最初の一年でいきなり寮杯を獲得出来た事に喜び、7年生は在校中の7年全て寮杯を取れた事に感涙していた。最高の卒業式だ! もう望む物は何もない。
だがそんな中にあってミラベルだけは相変わらず着席しており、腕を組んで次の台詞を待っていた。
「よし、よし、スリザリン、よくやった。しかしつい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」
勝利に浮かれるスリザリン生に冷水をぶっかけるような言葉に、広間がシン、と静まり返る。
オホン、と咳払いを一つし、ダンブルドアが静かに言う。
「駆け込みの点数をいくつか与える。えーと、そうそう……まず最初はロナルド・ウィーズリー君。
この何年間かホグワーツで見る事の出来なかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれた事を称え、グリフィンドールに60点を与える」
その台詞が出た途端、グリフィンドールから天上を吹き飛ばしかねない歓声が上がった。
まあここは知っている通りだ。
しかし配点がミラベルの知るものよりも10点多い。
これはもしや、とミラベルは眉をひそめる。
「次にハーマイオニー・グレンジャー嬢。
火に囲まれながら冷静な論理を用いて対処した事を称え、グリフィンドールに60点を与える」
グリフィンドールのテーブルから歓声があがり、生徒達の足音が響く。
最下位だと思っていたのにここにきて一気に大逆転、2位に浮上だ。
しかしまだだ。まだ、スリザリンには170点届いていない。
そんな彼らの心境を読んだかのようにダンブルドアが笑顔で次の点数を発表した。
「3番目はハリー・ポッター君……その完璧な精神力と並外れた勇気を称え、グリフィンドールに120点を与える」
後50点!
耳をつんざく大歓声が場を支配し、室内が地震のように揺れる。
その喧騒を止めるようにダンブルドアが手をあげ、そして静かに語った。
「勇気にもいろいろある。敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。
しかし味方の友人に向かっていくのも同じくらい勇気が必要じゃ。
そこでわしはネビル・ロングボトム君に50点を与えたい」
まるで爆発が起こったようだった。
それほどの歓声……否、もはや声なのかどうかすらわからない熱気が大広間を揺らし、全校生徒が立ち上がった。
結局スリザリンをトップから引き摺り下ろす事は出来なかったが、しかし同点だ。
今年はスリザリンに寮杯を独占されないで済む!
その事にスリザリン以外の全ての生徒が歓喜し、祝福しているのだ。
(やってくれるな、あの爺……同点にするとは。
私に配慮でもしたつもりか……)
一方でスリザリン生達は悔しさに顔を歪め、ミラベルもまた内心では腸が煮えくり返っていた。
正直な話、ダンブルドアはグリフィンドールを勝たせると思っていたし、それでいいとミラベルは考えていた。
自分は賢者の石を狙ったのだから、その事を糾弾して減点なりしてしまえばよかったのだ。
しかしダンブルドアはそうしなかった。ミラベルに情けをかけたのだ。
いや、減点は実際の所されたのだろう。
知識よりも多いハリー達の点数はそのままミラベルからの減点に等しい。
ダンブルドアはあえて全校生徒の前でミラベルの悪事を暴露する事を避け、ハリー達の点数を上げる事でミラベルだけに分かる罰則を与えたのだ。
(喰えない狸爺め……)
壇上でほがらかに笑うダンブルドアを睨みながら、ミラベルは彼への評価を上方修正する。
やはりあの男だけは侮れない相手だ。閉心術で心を読まれないようにしているはずなのに、まるでこちらの手の内を読んだかのような採点をされてしまった。
テーブルに並んだ料理を平らげながら、ミラベルは怒りを胸の奥に押し込める。
この怒りと屈辱は己の弱さと甘さが齎したものだ。
ならば甘んじて受け入れよう。それさえも糧としよう。
幸い……屈辱的な事に、首の皮は繋がった。奴によって生かされた。
ならばこの怒りを飲み干し、次からの教訓とすればいい。
ここで仕留めなかった事が最大の過ちであったと、気付かせてやる!
――この屈辱、いつか必ず返すぞ……アルバス・ダンブルドア!
*
その後試験の結果が発表され、ミラベルはハーマイオニーを抑えて学年トップの成績を獲得した。
また一人で稼いだ点数も126点と飛びぬけており、今年度の最優秀生徒として寮生達の羨望を集める事となった。
グリフィンドールのヒーローがハリー・ポッターならスリザリンのアンチヒーローがミラベルだ。
一部ではこの二人を勝手にライバル認定して盛り上がる生徒までいたらしいが、ミラベルにはどうでもいい事だ。
いよいよ帰る時間が訪れ、旅行鞄に荷物を詰め込む。
洋服に杖、教科書に鍋……そして、小さな小瓶。
その小瓶を見てミラベルはチッ、と小さな舌打ちをした。
小瓶の中……そこには、小さな赤い欠片がいくつも入っていた。
――これは、賢者の石の破片だ。
ダンブルドアが砕いたあの時、床に待機させておいたネズミ(ハリー達を尾行していた奴だ)に破片を回収させておいたのだ。
ミラベルはその小さな戦利品を鞄の中に入れながら、内心の屈辱を抑えていた。
結局この程度しか手に入れる事が出来なかった……。
だが、今はこの屈辱を受け入れるしかない。
いつの日か勝利する為に、この怒りもまた糧とする。その為に今は、退く。
これは……敗北ではない!
(*M*)<ドウダ!?クヤシイカァー!?
これにて賢者の石編終了です。
ミラベルは石の欠片をゲットする事に成功しました。
ダンブルドアが原作以上の無茶な採点をしていますが、これはミラベルのせいです。
ここでスリザリンを勝たせてしまうと賢者の石を奪おうとしたミラベルをトップにしてしまいますし、かといって負けさせればミラベルがそれを利用してスリザリン生を煽るのが見えます。
そこで同点という手を取ったわけです。
この原作以上の不公平採点は実はミラベルからの減点です。
120点原作より多く入れてますので、つまりミラベルからー120したという事です。
しかしそれを全校生徒の前で晒す事を避け、結果傍目ではとんでもない不公平採点に。
それがなければスリザリンを勝たせても問題なかったのでスリザリン単独優勝も出来たはずです。
つまりこのドローはミラベルのせいであり、ダンブルドアの苦肉の策だったのです。