真・女神転生 クロス   作:ダークボーイ

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PART50 COUNTDOWN OF THE END(前編)

 

「どうやら、始まったようだね」

「ああ、最後の局面が近付いてきてる」

「なんとか、間に合いましたかな」

「どうだろうか、彼らの疲弊も激しい」

「歪みは極点に達しようとしている。彼らに期待するしかない」

「まだ少しだけ時間は有る。それに、気付く者は気付き始めているようだ」

「だが、それに対抗出来るだろうか?」

「信じましょう、幾多の困難に立ち向かっている彼らを………」

 

 

 

「「ヤイル・カメ~ン!」」

「何それ?」

 

 奇妙なお面を付けて市街地から帰ってきた女性陣の奇妙な挨拶に、悠が返答に困る。

 

「これ今この街で流行ってるんだって」

「色んな人が付けてたんで」

「いや、正確には元カルトらしいんですけど………」

 

 千枝と雪子が喜々として言うのを、直斗が困った顔で説明する。

 

「カルトって………」

「色々あって、今じゃカルト兼自警団だそうです。リーダーの人もペルソナ使いで、勧誘されてきました」

「この街ってペルソナ使いだけでも結構いるよね?」

 

 りせもアナライズにかなりの数のペルソナ使いの反応が有るのに気付いていたが、流石にカルト教団は予想外なのか首を傾げる。

 

「来た時で分かるでしょうけど、下は悪魔が跋扈するとんでもない所ですからね。悪魔と戦える人材は幾らいても困らないって言われてきました」

「つくづくとんでもない所に来ちゃったな………」

「ただいま~」

「お土産クマ~」

 

 そこに今度は男性陣が戻ってきて、大量の武器を広げ始める。

 

「いや~、業魔殿の武器庫って所すげえよ。まるでRPGみたいだった」

「足んないのはレッドスプライト号のラボに頼めば作ってくれるそうっす」

「これなんかすごいクマ」

 

 陽介や完二が刀剣類や防具を広げる中、クマにいたってはマシンガンまで見せてくる。

 

「さすがにそれは素人が使ったらまずいんじゃ………」

「バズーカはさすがにヤバイと思って持ってこなかったぜ」

「最近カチコミが続いて大分減ったって聞いたっす」

「こんなのもあるクマ!」

 

 物騒な物や話のオンパレードに悠の顔が更に困るが、そこでクマが手榴弾を箱ごと見せようとして、手を滑らせてぶち撒ける。

 

「おわっ!」

「ちょっと!」

「ごめんクマ、手が滑ったクマ」

「爆発しないよね?」

「ピンが刺さって安全レバーがそのままなら問題ありません」

 

 直斗の説明に、恐る恐るぶちまけた手榴弾を皆が拾い始める。

 

「あれ?」

「どうした?」

「ピンってこれ?」

 

 千枝が床に落ちていたピンを拾い上げ、皆の顔色が変わる。

 

「ヤベ!?」

「どれだ!?」

「有ったっす!」

 

 慌てて皆が探す中、完二がピンの外れたのを見つけるが、拾い上げた拍子に安全レバーも外れる。

 

「あ………」

「外に向かって投げて! あと伏せ…」

 

 直斗が叫び、完二が慌てて投げ捨てるが、数瞬後、それは爆発する。

 なお、運良くスタングレネードだったので耳鳴りと目がくらんだ事、それと厳重注意だけで済んだ。

 

 

 

「閃光手榴弾の暴発か。まあそれで済んだというべきだろうか?」

「だろうな。まあペルソナ使いならマジ物食らっても、ペルソナの守護で致命傷にはならなかったろうが」

 

 先程の騒動の報告を受けた克哉と、現状報告のついでに知らせてくれたキョウジがどこか呆れていた。

 

「こちらから言わせてもらえば、銃器ならまだしも、爆発物まで扱えるのが公的機関以外にいるのが問題だがな」

「そういうのは八雲に言え。あいつほど仕込んでるサマナーはいないしな」

「前から言ってるが、聞く耳は持つ気すらないからな。それで、彼の様態は?」

「治療が上手くいってるらしい。明後日までにはなんとかなりそうだ。不破の奴も順調らしい」

「だとしたら、問題はやはりセラ君か………」

「喰奴をまとめて諌められるのは彼女の歌しかない。今の所はマグネタイトの供給でなんとかしちゃいるが、こっちも前の出入りでマグネタイトが不足気味だ。キュヴィエ症候群の事を考えると、下に収拾にもいけねえしな」

「八方塞がりだな。負傷者の回復まで不用意に出撃する事も不可能か………」

「ロボ娘達も何でか要修理のが二人増えてるしな。ヴィクトルがレッドスプライト号のラボと協力して直してるが、そっちも何日かかるか」

「タルタロスの探索をするにも、周囲は未だ各勢力の小競り合いが続いている。戦力が整うまで待つべきか?」

「あれに突っ込んだら全面戦争の開幕になるだろうしな。まあそれは時間の問題だったろうが………」

 

 状況が悪化しつつある状態に、二人は頭を抱える。

 

「ま、小競り合いが続いてるならむしろそのまま続けてもらった方が好都合だろ。その間に態勢を整えるしかねえ」

「あの状況でタルタロスを探索するにも、かなりの戦力がいるしな………」

 

 傍観を決め込むしかないような状況を二人が認識した所で、デスクの電話が鳴り響く。

 

「緊急直通? はい周防」

『周防署長! こちらレッドスプライト号通信班! 緊急事態です!』

「今度は何が!?」

『タルタロス内に、人がいる模様です!』

「何だと!?」

 

 予想外の報告に、克哉は思わず立ち上がった。

 

 

 

 届いたばかりの緊急報告を聞いた者達が、レッドスプライト号のブリッジに集結していた。

 

「それで、状況は?」

 

 集まった者達を代表するかのようにゲイルが口を開く。

 

「これを御覧ください。つい先程無人機からの映像です」

 

 通信班のスタッフが機器を操作し、ブリッジの大型ディスプレイにタルタロス周辺の様子が映し出される。

 

「まだ小競り合いの最中か………」

「ええ、散発的ですが、絶え間なくどこかの勢力同士が戦闘行動をしている模様です」

 

 尚也が呟いたのを、通信班スタッフが思わず説明する。

 

「問題はここです」

 

 そこで映像がタルタロスのエントラス付近にアップされる。

 タルタロスのエントランスから、人影のような物が出てきたかと思うと、何かを上空へと発射した。

 

「今のは!」

「信号弾だな、どう見ても」

 

 尚弥が思わず画面ににじり寄り、キョウジが険しい顔をして画面を見つめる。

 

「戦闘に巻き込まれるのを警戒して、かなり距離を取って観察していた時、撮れた物です」

「時刻は?」

「30分前。これ以上の事はまだ不明で………」

 

 美鶴が詳細を聞き、通信班スタッフの説明に誰もが表情が険しくなる。

 

「信じられん………が、小岩氏の前例もある」

「タルタロス内に、誰かが転移してるって事か」

「そして、この状況で籠城せざるをえなくなった」

「運が良いのか悪いのか………」

 

 美鶴が唸るように呟くのを、尚也、ゲイル、キョウジがそれぞれ解釈する。

 

「運はいいのかもしれん。外に出れば、キュヴィエ症候群に侵されていた」

「偶発的な籠城が功を奏している」

 

 ゴウトとライドウがそれぞれ意見を述べるが、美鶴の表情は険しいままだった。

 

「だが、中はシャドウの巣だ。籠城といっても相当厳しい物になる」

「集団で来ている、とも考えられる。この内部に立てこもれる程の勢力が存在している可能性が高い」

「問題はそこじゃないけどな」

 

 美鶴の意見に、ゲイルがある仮説を立てるが、キョウジは別の問題を定義していた。

 

「………どうする?」

 

 その場にいる誰もが、尚也のその一言に全ての問題を集約させていた。

 

「信号を送ったという事は、中にいる者達は救援を求めている」

「だが、周りは悪魔達の小競り合いがぶっ通しだ」

「しかもキュヴィエ症候群の事もある」

「しかし、放置する訳にも…」

 

 誰もが喧々諤々の意見を出すが、そう簡単に結論は出ない。

 

『ミッションの必要条件を提示します。1,急性のキュヴィエ症候群に耐性を持っている事。2、各勢力の乱戦状態のタルタロス周辺を突破できる能力を持っている事』

 

 アーサーが提示してきた条件に、皆が顔を見合わせる。

 

「キュヴィエ症候群に耐性を持ち…」

「あの乱戦を突破出来る…」

「該当するのは」

 

 ゲイルとライドウが思わず復唱し、尚也がまとめた所で全員同じ人物が頭に浮かんでいた。

 

 

 

「………どうしてこうなった?」

 

 思いっきりよどんだ目で、修二は着々と準備が進んでいく様を見ていた。

 

「エンジン系はこんな物か」

「こんだけ出力があるならなんとか」

「だが、下手したら使い捨てになるぞ?」

「別にいいさ」

 

 レッドスプライト号のラボで、一台のバイクにありったけの技術が突っ込まれ、改造が進んでいくのをその持ち主であるダンテが楽しそうに見ている。

 

「サイドカーの兵装は? 機銃、ランチャー、色々あるが」

「おい、どっちがいい人修羅」

「………オレが使うのか?」

「他にいねえだろ、なあ相棒」

 

 冗談めかしてダンテが聞くのを、修二はただ虚ろな目で見つめ返す。

 

「………使うの簡単な方」

「う~ん、何かあったかな」

「そうぜよ、確か倉庫に試作の小型メーザー有ったはずぜよ」

「主任、あれはまだ試験段階では?」

「実地試験にちょうどいいぜよ」

 

 修二の脳内に人体実験とか人身御供とかいう単語が思い浮かびつつ、バイクの改造は進んでいく。

 

「準備はどうだ?」

「あと数時間以内になんとか」

 

 様子を見に来たキョウジに、改造にあたっていた資材班スタッフが応える。

 

「なんとか、タルタロス到着まで持ってくれればいいが」

「あの、搭乗者の方は?」

 

 キョウジが改造中のバイクを覗き込む中、修二が小さく手を上げて問う。

 

「無理しない程度に頑張ってくれ。今、タルタロスに潜入出来るのは、キュヴィエ症候群に耐性を持つ、お前とダンテしかいないんでな」

「ダンテ一人の方がいいんじゃ…」

「あれに話し合いが出来ると思うか?」

 

 何故かダンテと二人でタルタロス突入班になってしまった修二がそこはかとなく問うが、キョウジの返答にうなずかざるを得なかった。

 

「とりあえず、なんとかしてタルタロスに突入し、内部にいる者達と接触してくれ。最悪、通信機だけでも渡してきて欲しい」

「追い返されたら?」

「何とか回収する。出来たらな」

「鉄砲玉か、特攻隊か………」

 

 修二は悪魔になった事を今まで一番後悔しつつ、重い溜息を吐き出す。

 

「オレ達が来るまで、一人で戦ってたんだろ? 何を今更びびってる」

「ここまでの乱戦じゃなかったんで」

「はは、面白そうじゃねえか」

 

 幾ら他に人選が無かったとはいえ、あまりに危険な任務に、ダンテはむしろ嬉々としていた。

 

「事は一刻を争う。内部にいる者達が無事ならいいんだが………」

「今までの状況から考えれば、中にいるのも悪魔と戦える連中、かな?」

「でなければ、タルタロス内では生き残れまい」

 

 そこに、美鶴がタルタロス用に調整された通信機を持って訪れる。

 

「かつて、タルタロスの出現する影時間に対応出来る孤児を使って、タルタロス内部の調査をした事があったそうだ。結果は、言うまでもないかもしれんが………」

「中にいるのが、そんなのじゃなきゃいいんだがな」

「………とりあえず、頑張ってきます」

 

 覚悟、というか色々諦めた修二が大人しく通信機を受け取り、それを資材班に手渡す。

 

「生身でないアイギスだったら一緒に行けたかもしれんが、まだ修理中なのでな」

「この間から思ってんだけど、あのロボっ娘、ロボの割に無茶し過ぎじゃ………」

「何故か、こちらに来て以来、無茶ばかりするようになってしまった。妙な事を覚えてしまったのかもな」

「人間味が増したのかもな。もっともこっちの面子で一番最初に接触したのが八雲だったのがまずかったかもしれねえが」

 

 三人はそんな事を話す中、準備は着々と進んでいった。

 

 

 

『すいません、内部に入れたらナビ出来るんですが………』

「いらねえさ、そんなの」

「オレはちょっと欲しいかも………」

 

 通信越しに風花が謝る中、ダンテと修二はカスタムされまくったバイクごと、無人偵察機から吊るされていた。

 

『これ以上の偵察機の損失は避けたいので、目的地からは少し、というかかなり離れた所でパージします』

「ど真ん中どころか、端から突っ切れって事か………」

「面白そうだろ?」

 

 レッドスプライト号の通信班からの指示を聞きつつ、修二は思わずため息をもらし、ダンテは意気揚々としていた。

 

「あ、やべ気付かれた」

「そりゃ、目立つからな」

 

 下から聞こえてくる声に修二が何気に覗くと、どこかの偵察部隊らしき悪魔達が複数の無人機で吊るされているこちらを指差しているのに気付き、ダンテはのんきにバイクのスロットルを回してエンジンを吹かす。

 

『すいません、気付かれた以上、攻撃される前にパージします!』

『頑張ってください!』

「ちょ、心の準備が…」

 

 慌てた通信班と風花の声を合図に、修二が何か言う前にバイクが切り離される。

 

「イヤッ、ハアアアァァ!!」

「ミギャアアア!」

 

 ダンテが奇声を上げ、修二が悲鳴を上げる中、バイクはかなりの高度から落下していき、着陸用のホバーユニットが起動して落下速度を緩めた直後、ダンテはスロットルを全開にする。

 

「さあ楽しいツーリングの始まりだ!」

「絶対違う!」

 

 爆音と共に疾走を始めるバイクにまたがったダンテが、ためらいもなく目的地のタルタロスへとハンドルを向け、サイドカーに乗った修二が怒鳴り返しながら、設置された小型メーザー砲のトリガーを握る。

 

「何だ! 何が起きた!」

「見ろ! スパーダの息子だ!」

「人修羅もいるぞ!」

「あの塔に突入するつもりか!」

「させるかぁ!」

 

 爆走するバイクとそれに乗る二人に気付いた悪魔達が、先程まで繰り広げていた小競り合いなぞ忘れたかがごとく、各勢力入り乱れて一斉に襲い掛かってくる。

 

「みんなで歓迎パーティーしてくれるらしいな!」

「こんな時だけ一致団結すんな!」

 

 ダンテは足でスロットルを固定しつつ、エボニー&アイボリーを抜き、修二は小型メーザー砲の照準を付ける。

 

「じゃあ、始めようぜ!」

 

 言うやいなや、ダンテは迫ってくる悪魔達にエボニー&アイボリーを速射。

 銃声と共にばら撒かれる銃弾が悪魔達を次々と貫いていく。

 

「目的忘れんなよ!」

 

 ときたまこちらに飛んでくる熱い薬莢に顔をしかめつつ、修二も小型メーザー砲を速射して襲ってくる悪魔達を撃ち抜き、牽制する。

 

「盛況だな!」

「盛況過ぎるわ!」

「こいつらのマガツヒは要らぬ!」

「殺せ殺せ!」

「あの塔には行かせぬ!」

 

 空からはヨスガの天使が、地上からはシジマの悪魔が、地面の下からムスビの思念体が続々とバイクに向かって押し寄せる。

 

「狙わなくてもいいな!」

「その通りだけどな!」

 

 エボニー&アイボリーを上下左右に向けながら乱射しまくるダンテに、修二は悪態か悲鳴か分からない絶叫を上げつつ、サイドカーに設置されたスイッチを押し、後方にばら撒かれたマインが追ってきた悪魔達の足元で炸裂する。

 

「くそ、敵が多過ぎる!」

「花火は沢山持たせてくれたからな! 派手に行こうぜ!」

「ハリウッド映画じゃねえんだぞ!」

 

 バイクを疾走させながら絶え間ない銃撃を続けるダンテに、修二は最早呆れそうになりながら別のスイッチを押す。

 上空に発射されたロケット弾が押し寄せてきていた天使達に炸裂、派手な爆風と血肉を撒き散らす。

 

「行かせるなぁ!」

「前を塞げ!」

 

 ダンテの戦闘力と重武装のバイクの火力を不利と見たのか、悪魔達が一斉に進路を塞ぎに集結する。

 

「くそ、お前らさっきまでやりあってた癖に!」

「よっぽど一番乗りされたくないらしいぜ。じゃあ、横入りと行くか!」

「は?」

 

 ダンテの言葉の意味を修二が理解する前に、ダンテはとんでもない行動を取る。

 エボニー&アイボリーを素早くホルスターに仕舞うと、バイクを極端なまでに傾ける。

 

「おい!?」

「しっかり捕まってな!」

 

 修二の乗っているサイドカーを上に、横転寸前まで行きそうになった所で、ダンテがスロットルを限界まで一気に回した。

 

「ヒャッホー! 余興のブレイクダンスと行こうぜ!」

「みぎゃあああぁ!」

 

 不安定な体勢でフルスロットルされたバイクは、凄まじい勢いでスピンを開始、修二の悲鳴と共に各種火器をばら撒いていく。

 

「何だ!?」

「正気かあいつは!」

 

 猛スピンしつつありとあらゆる弾幕を無造作に撃ちながら突っ込んでくるバイクに、悪魔達は仰天。

 

「ハッハー! まだまだ行くぜ!」

「おわああぁぁ!」

 

 絶妙なコントロールでバイクをスピンさせ続けるダンテに、修二は悲鳴を上げながらやけくそで各種火器の発射ボタンを押し続ける。

 

「潰せ!」

「ガオオオォ!」

 

 そこへ、縦方向から押さえ込もうと元マントラ軍のオニや魔獣 オルトロスが一斉にジャンプして襲いかかろうとする。

 

「いいぜ! そうこなくっちゃな!」

 

 ダンテはそこで奥の手のターボチャージャーのスイッチを押し込みつつ、思いっきり地面を蹴り飛ばす。

 バックファイアを起こしたバイクの瞬間的高出力と、非常識過ぎるダンテの脚力でバイクは回転方向を水平から垂直に変化、そのまま襲いかかろうとしていた悪魔達を轢き飛ばす。

 

「おごぼわ~!」

 

 急激的過ぎる回転方向の変化に、最早意味不明の声を上げながら修二はサイドカーにしがみつく事しか出来なかった。

 

「さあツーリングの続きと行こうか!」

「どうやって…」

 

 空中でダンテはスロットルを調整、手近の天使の背に乗った瞬間にスロットルを上げ、そのままジャンプして別の天使の背に乗り上げ、再度ジャンプ。

 

「貴様…!」

「何!?」

 

 天使をジャンプ台にして進んでいくバイクに、下の悪魔達も踏み台にされる天使達も仰天する中、ダンテは平然とその空中ツーリングで一気にタルタロスへと向かっていく。

 

「押し包め!」

「行かせるかぁ!」

「引きずり下ろせぇ!」

 

 何が何でも行く手を阻むべく、天使も悪魔も思念体も一斉にバイクへ向かってくる。

 

「どうすんだ、この状況!」

「無論、通してもらうのさ」

 

 周囲全てを囲まれそうになっていくのを修二が絶叫するが、ダンテは笑みを浮かべる。

 そのまま、空中でいきなりバイクから飛び降りたかと思うと、片手でハンドルを掴み、ついでにスロットルをひねる。

 

「ヒャッ、ハア!」

「へ?」

 

 空中でバックファイアを起こしたバイクが、ダンテの手によって振り回され(サイドカー+人修羅付き)、そのまま取り囲もうとしていた敵達に鈍器として叩きつけられる。

 

「がはっ!」

「ぐぎゃ!」

「おわああぁぁ!」

 

 予想外の凶器に吹き飛ばされた天使や悪魔達の悲鳴(一緒に振り回されている人修羅の含む)が響く中、ダンテは次々と取り囲もうとする敵にバイクを叩きつけていく。

 

「フウ、ハッハァ!」

「うごろごげ………」

 

 立ちふさがる敵を文字通り薙ぎ払っていくダンテと、何か段々悲鳴がか細くなっていく修二だったが、一際大きくバイクを縦にフルスイングして活路を開くと、地面へと着地。

 かなり怪しい異音を立てながら、タルタロスの入り口へと突っ込んでいく。

 

「突破された!」

「なんて奴だ………」

「行かせるな…」

 

 これだけの軍勢を二人だけ(ほぼダンテ一人で)で突破したバイクを追おうとする者達の前に、バイクのあちこちからこぼれ落ちたパーツ、の下に仕込まれた無数の爆弾が転がってくる。

 

「フィナーレと行こうか!」

 

 ダンテはそう言いながら、スイッチを押す。

 バイクの背後で凄まじい爆発と共に高々と爆炎が上がり、それを受けながらバイクはタルタロスのエントランスへと突入した。

 


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