人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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やっと書けました、おくれてすみません。

今回も独自設定のオンパレード、苦手な人はブラウザバックをどうぞ

あと、諸事情でパソコンが暫くの間使えません。
ですので、いつもはパソコンで文章の初めを一先マス開けていたのができなくなります。
申し訳ございません。


そして次話からメインタイトルとあらすじを変えます……………………次話がいつになるのかわかりませんが。


七日目 中編 月下美女

 ゲームを終えた俺たちは、アリスの作ったご飯を卓に並べ椅子に着いていた。なんてことはない、普段の食事風景だ。だが、そこにはいつもとは違った雰囲気、妙な緊迫感が存在している。その緊迫感を醸し出しているのは、他でもない俺とアリスだ。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 俺もアリスも互いに睨みを効かせ、牽制しあっている。

 視線は常に相手の目から逸らさず、視界の端でおろおろしている上海には目もくれない。上半身をやや前に傾け、右の握りこぶしを腰だめに構え、その手を左手で覆っている。

 まるで示し合わせたかのように、俺とアリスは同じポーズを取っていた、どうやらアリスも俺と同じ事を考えているようだ。

 

 なら、やることは一つ。己の欲望を満たさんが為に、目の前に鎮座する物を奪い合おうじゃないか。

 

「「最っ初はグー!じゃんけんポン!!」」

 

 この食卓に着いてから始めてアリスから目線を外す。恐る恐る互いに出した手を見てみると、アリスはグーで俺がチョキだった。

 

「ば……バカな」

 

「私の勝ちね」

 

 アリスが嬉しそうな顔で、と言っても、口角をほんの少し上げただけだが、目の前のボトルを手に取る。

 俺にはその光景を、羨望とともに見つめることしか出来ない。争いに負けた惨めな敗北者は、指を加えて待っているしかないのだ。

 そう、出来たてのトンカツに、ソースがかけられる瞬間を。

 

「残念、やっぱりソースは無くなったわ」

 

 空になったボトルを傾けるアリス。

 分かっていたことだ、ソースが一人分すら無い状態だったことは、その少ないソースを賭けて争ったのだから。

 

 ソースが無いトンカツなんて、俺には耐えられない。

 と、言うわけで。

 

「ちょっとソース作ってくる」

 

「ソースって作れるの?」

 

「まあ、似たような種類のソースがいくつもあるから、だいたいのソースは作れるな」

 

 たこ焼きにお好み焼き、ウスターや串カツ、それとケチャップ。これだけの種類があればトンカツソースは作れる。

 というか、一般家庭に置いてある調味料を駆使すれば、だいたいのものは作ることが可能だ。

 まあ、これだけの種類があるのは、現代の技術があるからで、それが無い幻想郷では…………どうしているんだ?聞いてみよう。

 

「幻想郷じゃあ、食料とか調味料はどうしているんだ?」

 

 目線を少し上に向け、頬に指を当てるアリス。

 

「人里で売っている物を買うか、山菜なんかを自分で摘んだりしているわ。人里には色んな店があるの、大体の店が一つの物を専門的に取り扱っているから、調味料や食べ物はそういった店で買わないと駄目ね」

 

「へー、けど大体の物は手に入るんだな」

 

 となると、人里の規模は思ってたよりも大きいみたいだな。

 

「そうね、ただ幻想郷には海がないから、塩とか海の魚なんかは値段が高いわね」

 

「海がないのにどうやって塩を取ってるんだ?」

 

 たしか、塩は昔から海の水を利用して作っていたはずだ。

 

「私も詳しくは知らないわ。店の人に聞いた話だと、幻想郷には川の水が塩水になる日が定期的にあって、その水を利用して塩を作っているそうよ」

 

「潮汐か」

 

 ということは、幻想郷は川の水が潮汐によって海水に変わり、尚且つ塩作りが盛んな地域の近くにある可能性が出てきた。

 まあ、それだけの情報じゃあ、検索しても数が多すぎて絞り込めないだろうけど、何かの手がかりになるかもしれないので、アリスにも伝えとこう。

 

「そう……一応後で調べてみるわ、ありがとう」

 

 多分アリスの部屋にある、ノートパソコンで調べるのだろう。アリスが毎日家のノートパソコンを使っていたので、アリスの部屋に置いて置くようになった。

 

「そういえば、アリスって毎日パソコンで何をしているんだ?」

 

「この世界の事を調べているわ。特に興味深いのが科学というものね。他にも歴史や法律、常識なんかも調べる事が多いわね」

 

「それ、面白いのか?」

 

 話を聞く限り、面白そうには思えない。まるで学校みたいじゃないか。

 

「ちょうど、貴方が魔法の事を勉強するのと同じね」

 

 うっ、そう言われるとそうだけど。

 

「いや、まあ、科学の事はそうだろうけど、法律なんかは面白いとは思えないんだけど…………。」

 

「そう?面白いわよ。じゃあ、幻想郷にも法律のようなルールがあるは話したわね。その中には幻想郷特有のものもあるわ」

 

 そこからアリスの長い話が始まった。

 

「人里には危害を加えてはいけないと言ったけれど、それは何も直接的な暴力に限った事ではないの。人里は微妙なバランスで均衡が取れ、経済や物流が成り立っているの。それを壊すような事も禁止されているわ」

 

 とか

 

「これは最近できたルールなんだけど、博麗の巫女が提唱したスペルカードルールというものがあるの。まあ、あまり流行ってないようだけど……これは霊力や魔力を弾幕のように展開し、その美しさを競うもので、人間と妖怪との新しい関係の構築のためのものらしいわ」

 

 など

 

 最終的には俺からも話を振り、今日も夜遅くまで話すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 月明かりが照らす夜の道、電灯が壊れており、どことなく不気味な雰囲気を漂わせるため、夜の間は全く人が通らないはずのその場所で、俺は一人の人物と対面していた。

 

 月と同じ色をした輝くような金色の髪に、深海のような深みが、叡智を極めた賢人を思わす双眸、神話の女神が目の前にいると錯覚するような美しい姿。だが、その手に持つ日傘によってできる影が、女性の雰囲気をあやふやなものへと変えていた。

 

「こんばんわ」

 

「…………こんばんわ」

 

 美しい笑み、まるで闇を照らす月のような笑みーーただ、夜空の月に見惚れて居る間に、足下から飲み込まれるような錯覚を覚えるーーに見つめられること数分、いや、数十秒か?時間さえ曖昧になる奇妙な緊張感の中、突然の挨拶に、焦りながらも冷静さを装い、こちらも挨拶を交わした。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 沈黙が流れる。

 美しい女性は妖しい笑みを湛えながら、佇むばかりで言葉を放とうとする気配が無い。時折、いたずらに吹く風が、長い金髪をさらさらと宙に泳がせる。

 対する俺は背中に冷や汗をかき、言葉を放とうとするも、口を糸で縫い付けられたように開くことが出来ない。本当に縫い付けられているわけではない。だが、口を開こうとする俺の意思とは裏腹に身体が、本能が、俺の動きを遮る。

 

 要するに俺は目の前の女性を全力で警戒していた。

 

 

 一本の線を幻視する。俺と女性の間に横たわる線だ。

 きっと、その線は境界線なのだろう。俺が住む世界と、目の前にいる女性の、妖怪の、魔法使いの、そして、アリスが住んでいる世界とのボーダーライン。

 

 それを越えれば、もう戻って来れない。

 アリスのように様々な偶然が重なるなんて、そんな都合のいい事は起きないだろう。 幻想郷に行けば、こちらの世界には二度とは戻って来れないだろう。それはつまり父さんと母さんを置き去りにするという事だ。それは出来ない。妹に続いて、俺までいなくなったらあの二人は立ち直れないだろう。

 

 だけど、それでも俺は幻想郷に行ってみたい。

 この退屈な毎日に見切りをつけて、未知なる世界へと踏み込んでみたい。そんな想いが、抑えても抑えても溢れ出てくる。

 

 そんな葛藤を抑えている俺を尻目に、女性は何かに見切りをつけたように歩き去ろうとしていた。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 目の前に転がっているチャンスを逃したくない、ここで少しでも関わっていれば、またチャンスが訪れるのでは無いか?その考えに至ったときには、俺は警戒心も忘れ、女性に声をかけていた。

 

 俺の声にゆっくりと振り返る女性、その姿を照らしていた月の光が陰りを見せる。頼りなくも闇を照らす月の光は日傘に遮られ、女性の顔に影を落とす。その中でもはっきりと輝く金色の瞳に見つめられ、声が出せなくなった。

 

 というか、勢いだけで声を掛けたので、何を話せばいいのかわからなかった。

 

 刻一刻と過ぎ去る時間。

 俺は焦りながらも、何か話題は無いのかと普段はあまり使わない脳を必死に動かす。だが、普段から他人に縁のない俺には、コミュニケーション能力が足りなかった。

 

 ごめんなさい。こういう時、どんな話しをしたらいいのかわからないの。

 

 思わずネタに走ったそのとき、脳内に浮かぶ女の子を、月明かりが照らしたように、俺の暗雲としたこの状況にも一筋の光が差した。

 

 空を見上げれば、先ほど雲に隠れた満月が顔を出していた。それを数秒ほど見つめてから、女性の顔を真面目な顔を作って見つめる。

 

「……月が…………綺麗ですね」

 

 めちゃくちゃ笑われた。

 いつの間にか持っていた扇子を広げ、口元を隠しているが小刻みに振動する日傘と、抑え切れていない笑い声が、俺の羞恥心をこれでもかという程痛めつける。

 

 もう一度空を見上げ、夜空に輝く月を見る。

 どうしてだろうか、先ほどまで綺麗だった満月が、今では少し滲んで見える。

 

「なんでさ」

 

 俺の小さな呟きは夜空に溶けるように消えていった。




因みに幻想郷に海がない理由は、内陸の山奥にあるためであり、海が近くにないからです。
じゃあなんで海水が流れ込むのかだって?そんな時は魔法の言葉、大体スキマのせい。


ボツネタ

「そういえばアリスは毎日パソコンで何をしているんだ?」

「……………………2chとか」

「マジで!?」

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