人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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通勤の合間にこつこつと書いて二週間とちょっと、このペースを保ちながら少しずつ速度を上げていきたい。
だけど仕事が三交代になるんですよねぇ(絶望)

どちらも頑張りたいと思います。


六日目 昼 ひらがなで三文字

 闇の中を歩く少女が居た。

 

 淡々と一定のペースで歩く少女は決して振り返らない。

 

 俺はそれについて行く。

 

 いや、俺では無いかもしれない。

 

 意識はあるが、体の感覚がなく喋ることも出来ない。

 

 まるで他人の体に乗り移ったかのようだ。

 

 

 

 

 

 少女は歩く。

 

 粛々と前だけを見据えて。

 

 しばらく歩いていると、ふと前方に何かが見えた。

 

 ぼんやりとひかるそれは人の形をしたものが写っている。

 

 それが左右に浮かんでおり、近づくにつれ詳細がはっきりとしてくる。

 

 そこには、前を歩く少女が写っていた。

 

 まるで、一人の少女の日常を場面ごとに切り分けて、それを絵画の展覧会みたいに並べているかのようだ。

 

 なんとなく、この少女の思い出だと感じた。

 

 少女が、少女の出会う人々が、街が、日常の様子が浮かんでいる。

 

 少女が本を開いて何かを覚えようとする姿

 

 少女が銀色の髪をした少し幼い容姿の少女と親しげに話す姿

 

 指の先から糸を出して人形を動かしている姿

 

 巫女服を着た少女と光の球を撃ち合う姿

 

 様々な場面が後ろに流れていく。

 

 俺はそれを一つ一つ眺めるが少女は見ようともしない。

 

 まるで必要の無い物だと切り捨てるように。

 

 それは酷く悲しい事だと思った。

 

 やがて写真の中の少女は一人でいる時間が多くなっていた。

 

 少女の笑顔が写真から失われていく。

 

 それにつれ前を歩く少女の歩くスピードが速くなる。

 

 何かを堪えるように両手を握り締め、ただ前だけを向いて歩く。

 

 しかし、少女の歩みを邪魔するかのように大きな写真が立ちふさがった。

 

 必然的に少女は止まる。

 

 写真を見ると少女と銀色の髪をした少女が喧嘩をしている姿が写っていた。

 

 それを見た少女は突然走り出した。

 

 写真を突き破り闇の中を駆け抜ける。

 

 何かを振り切るように

 

 何かから逃げ出すように

 

 少女は走る

 

 走って、走って、走って、走って、何度か躓きながらも前へ進む。

 

 やがて荒い息を吐きながら少女は座り込んだ。

 

 何も無い空間に少女の呼吸の音だけが響く。

 

 どれくらいそうしていただろうか。

 

 少女の呼吸は落ち着き、ほんのりと上気し赤くなっていた顔色も雪のような白さに戻っている。

 

 ただ、立ち上がらない。

 

 ずっと座り込んだままで顔を俯かせている。

 

 俺は何も出来ない。

 

 そばに行って寄り添う事も。

 

 声をかけて支える事も。

 

 名前を呼ぶ事さえ出来ない。

 

 ポタポタと水滴が地面に落ちる音が響く。

 

 顔を見ることは出来ないが少女は泣いているのだろう。

 

 その光景を見ることしかできない自分に腹が立った。

 

 息を吸う。

 

 吸えているかは分からない。

 

 腹に力を込める。

 

 力が入っているか分からない。

 

 ただ信じる。

 

 絶対に出来ると。

 

 少女を見る。

 

 悲しげな背中が見えた。

 

 腹が立つ。

 

 何も出来ない自分に。

 

 涙を堪えようとする少女に。

 

 助けを求めない少女に。

 

 だから示そう。

 

 俺がここにいると。

 

 声を張り上げて、名前を呼んで、気付かせるんだ。

 

 一人じゃ無いと。

 

 驚かせてもいいかもしれない。

 

 きっとびっくりして涙も引っ込むだろう。

 

 だから声を出せ。

 

 名前を呼ぶんだ。

 

 親しい少女の名前を。

 

 俺は叫ぶ。

 

 腹に力を入れて。

 

 喉を張り上げ。

 

 口を大きく開けて。

 

 名前を呼んだ。

 

「アリス!!!」

 

 光が満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

「いきなりなんなの?」

 

 なんだろう、不思議な夢を見ていた気がする。

 寝起きなのでぼんやりとした思考しか働かないが、酷く悲しい夢だった事を憶えてる。

 内容は………………思い出せない。

 思い出そうとすると頭に靄がかかったかのようになり、記憶の糸がするするとほどけていく。

 ただ、悲しみと遣る瀬無さが胸の内に燻っており、どうしようもない気持ちだった。

 

「はぁ…………くそっ」

 

「ため息と悪態ね、ため息を吐きたいのはこっちのほうだわ」

 

 声が頭上から降ってきたのに驚き、体を動かそうとするが動かない。

 その事に少し焦るが、声の主がアリスだった事と自分の部屋の風景が俺を落ち着かせる。

 現状を把握しようと意識を働かせた。

 まず俺の体制は横向きに寝転んでいる。ベッドが目の前にあるのでベッドより下、床に寝転んでいる事がわかる。

 それと頬の下に、柔らかいものがあるのを感じた。

 

「なあアリス、どんな状況なんだ?」

 

 何故膝枕をされているのか。

 いつもの俺ならもっと慌てて、即座に離れるだろう。

 だが、寝起きだからかぼうっとした頭と、信じられないくらいに怠い身体が、動こうとする意思を浮かぶ端から沈めて行く。

 

「いい、落ち着いて聞きなさいよ」

 

 アリスはそう前置きをして、俺の身に起こった出来事を語り出した。

 

 

 

 

 

「――と言うことよ」

 

 アリスの話しを聞き、俺は唖然とする。

 なんでも、朝上海に叩き起こされ渋々向かった俺の部屋で、俺が血まみれでベッドに横たわっていたらしい。

 慌ててアリスは駆け寄り、どの様な状態か確かめたところ、外傷は裂傷が少しあっただけで対したことはなく、血も出血死を起こすほど、流れてはいなかったようだ。

 ただ、どの様な理由かは解らないが口や鼻、それに目と耳からも血が流れていたらしい。

 アリスが調べてみると、通常ではあり得ない場所に切り傷ができていたらしく、魔法で治療した所、人間ではあり得ない速度で傷が塞がったとの事だった。

 

「何か心当たりはない?」

 

「どうやら俺は寝ている間に改造人間にされたようだ」

 

 現実逃避のための言葉は、アリスにはお気に召さなかったようだ。

 こちらを見やる瞳に鋭さが混じる。

 

「ふざけないで」

 

 鋭く言い放った言葉の中に、俺を心配する色が混じっているのが分かり、激しく後悔した。

 

「ごめん」

 

 元々貧血気味で怠かった身体が落ち込んだ気分によってさらに重く感じる。

 

「心当たりは無いのね?」

 

 再び問い掛けるアリスに対して、弱々しく頷くことしか出来なかった。

 

「あっ……ごめんなさい」

 

 俺の身体の事を思い出したのか、謝るアリスに首を振って気にしなくても良いと伝えた。

 たったそれだけの動作ですら酷く体力を使い、満足に出来ない。

 そんな俺の頭をあやすように、労わるようにアリスが撫でる。

 その気持ち良さに眼を閉じ身を委ねた。

 

「もう寝なさい」

 

 その一言で、俺の意識は魔法にかかったかのように沈んでいった。

 

「おやすみなさい――」

 

 名前を呼ばれた気がした。




東方には可愛い女の子が多すぎる。
今日、pixivを彷徨っていたら布都ちゃんのそれはもう可愛くて愛くるしい絵を見つけたんですよ。
ちっちゃくデフォルメされた絵でしてね、あの姿で我とか言って尊大な喋り方をされたらキュン死しますね。
もちろん私のNo.1はアリスですけどね。
けど本当にかぁいかったんですよ、速攻で保存しました。

今日の出会いに感謝です。

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