シャイニング・ブレイド 涙を忘れた鬼の剣士   作:月光花

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スペル様から感想をいただきました。ありがとうございます。

半年も間空いてしまって本当に申し訳ない。

今回は港の攻略になります。

では、どうぞ。


第51話 逆襲の狼煙

  Side Out

 

 日が沈み、穏やかな波の音だけが静かに響く港の砦。

 

砦の各所に設置された篝火以外の光源は月の光しか無く、交代で見張りを務める兵士は欠伸をしながら眠そうな目で暗い森と月を映し出す海を見ている。

 

明らかにやる気が無い様子だが、それは無理も無かった。

 

何しろこの砦は海からも陸からも攻め難い構造をしているので並大抵の戦力では容易に返り討ちに遭ってしまう。

 

だけど帝国が攻めてきた時は3日しか保たなかったではないか、と言う意見も出るかもしれないが、それはあまりに短絡的な答えである。

 

その事実は逆に考えれば、援軍が全く期待出来ない状況下で戦力も補給線も万全の帝国を相手に3日間持ち堪えたということである。

 

もしアルベリッヒが戦線に加わっていなければ、砦の攻略は更なる日数を必要としていただろう。

 

だが、そんな難攻不落だった砦を今占拠しているのは万全な戦力を配置した帝国。その堅牢さはかつての倍以上と言っても過言ではない。

 

(何処にいるってんだよ、こんな要塞攻めようとするバカなんて。最近じゃ昼も荷物運びばっかりだし、退屈だぜ)

 

欠伸を噛み殺しながら夜空を見上げ、兵士の1人は心中で不満を零した。

 

ソレを口に出す度胸も堂々と見張りをサボる勇気も無い兵士は形だけの仕事を続けるしかない。

 

だがこの時、そんな兵士の眠気が一瞬で吹っ飛ぶような仕掛けの準備が行われていたのだが、当然気付くことは無かった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 場所は変わって軍港の近くの海上に浮かぶ軍艦。

 

船の上でも同じようにやる気の無い兵士が欠伸をしながら松明を片手に形だけの見回りを行っている。

 

他の人間は全員モンスターが守る船室内にいて話し相手もおらず、海にも陸にも特に変わり映えしない見飽きた光景が見えるだけ。

 

「ハァ、退屈過ぎておかしくなりそうだ。これならいっそ敵が攻めて来てくれた方が良いと思えてくるぞ」

 

もはや適当に歩くだけが自分の仕事なのではないかと思えてきた兵士は小さい溜め息と共に砦の兵士と似たような不満を吐き出す。

 

しかし、この男と砦の兵士の最大の違いは……

 

 

「そうですか。では遠慮無く」

 

 

……声に出した不満に声が返って来たことだった。

 

「…………え?」

 

僅かな声が漏れた刹那、男の視界は一瞬の衝撃と共に闇に包まれた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

「……予想以上にザルな警備だな」

 

首を斬り裂いて絶命させた兵士の死体を見ながら呟き、レオは右手に持つ麒麟の血を払って鞘に納める。

 

服装は普段通りの黒いコートだったが髪の毛からつま先までずぶ濡れになっており、流れ落ちる水滴が甲板の上にポタポタと落ちる。

 

「いざやる時まで半信半疑だったけど、陸地から船まで泳いで全く見付からないとは」

 

レオは濡れた前髪を掻き上げて水を払いながら呆れと感心が入り混じったような溜め息を吐く。

 

エレンシア奪還戦において500メートル以上の距離を泳いだレオにとってこの程度は大した苦にもならず、疲労の気配も無い。

 

「砦を落としてから……今まで一度も襲撃が無かったせいだな……弛んでる」

 

背後から聞こえた声に振り返ると、布に覆われた包みを背負ったイサリがレオと同じようにずぶ濡れで立っていた。

 

無秩序に伸びている青色の長髪が海水を吸って肌にべったりと張り付いているが、本人は気にも留めずに兵士が持っていた松明を拾い上げて甲板を見渡している。

 

「……やはり……甲板に他の見張りはいないな……手抜きにも程がある……」

 

「おかげで僕達は楽が出来ましたけどね……でも、キャプテンの方は大丈夫なんですかね」

 

そう言ったレオの視線の先には篝火の光に照らされた砦が聳え立っており、この場にいないもう1人のメンバー……ディランの安否を気に掛けていた。

 

砦の近くまでは一緒に行動していたのだが、砦に着いてすぐに「ちょっと砦に入り込んで準備をしてくる」と言って別行動になってしまった。

 

今船にいるのがレオとイサリの2人だけなのはそういうことである。

 

レオも普段の佇まいや歩き方からディランが相当な実力者だというのは察しているが、もし発見されて砦の兵士全員から袋叩きにされればおしまいだ。

 

「……心配するな……目立つ図体だが……素人というわけじゃない……」

 

「……分かりました」

 

自分よりもディランとの付き合いが遥かに長いイサリにそう言われ、レオはひとまず心中の不安を忘れれることにした。

 

どちらにせよこの状況でディランの為に出来ることは無い。

 

ならば、せめて今自分がやるべきことをしっかりとやり遂げることにしようと気持ちを切り替える。

 

「それじゃあ、僕は打ち合わせ通り船室の方を片付けてきます」

 

「……頼む……こっちも準備を始める……」

 

そう言ってレオは二刀の小太刀を抜き放って船室へと歩き出し、イサリは背負っていた包みと共に船の端へと歩き始めた。

 

互いに背を向け合ったその動きには、一部の迷いも存在しなかった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side レオ

 

 「アレか……」

 

 船に関して素人の僕でも分かるくらいに広い甲板を歩き、灯りの点いた船室へと向かう。

 

近くの物陰に隠れて船室の入り口を覗いてみると、扉の前に大きな影が2つ見えた。

 

一見すると高さ1メートルを超える巨大な亀のように見えるが、4本の足と頭部だけでなく全身の6割を覆う甲羅までもが鋭利な棘を生やしていて非常に近寄り難い外見となっている。

 

見た感じあの甲羅と亀の外皮の硬度は岩以上鋼未満といったところだ。

 

体を甲羅の中に引っ込められたとしても『斬』で斬れる自信は有る。だがそれだと一撃で仕留めるのは難しい。

 

よって、今取るべき最適の戦術は……

 

(相手が反応する前に即死させる……!)

 

……意を決して両手の小太刀を握り締め、物陰から飛び出すと共に意識に撃鉄を下ろす。

 

 

『御神流奥義之歩法・神速』

 

 

視界に映る世界が色を失い、動きを止める。

 

白黒の視界に映る月を一瞥し、未だ僕に気付いていない亀のモンスター……シェルタートルへと真っ直ぐに駆け抜けて距離を詰める。

 

ゆっくりと流れる世界の中で僕は2匹のシェルタートルの間を通過すると同時に両手の小太刀を横薙ぎに一閃。

 

両足でブレーキを掛けると共に『神速』を解き、全身に纏わり付く重い空気が消えて体の感覚が元に戻る。

 

その直後に背後からドサリという音が聞こえ、斬り飛ばしたシェルタートルの首が甲板の上を転がった。

 

「残りは中の兵士だけか……」

 

間違い無く即死したのを確認してから『心』の気配探知で船室内の気配を確認し、僕は両手に小太刀を握ったまま船室の入り口へと歩を進めた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side Out

 

 船室へと向かったレオとは別に、残ったイサリは甲板の端……砦が見える左舷側に辿り着くと背中に背負っていた包みの布を解いて中に入っていた物を取り出した。

 

水を弾く材質にでもなっているのか裏地は一切濡れておらず、布の上に広げられた大小様々な部品を手に取って組み合わさっていく。

 

流れるような手の動きで作業を進めて数分後、ガシャン! という金属音を鳴らしてイサリは完成した己の“武器”を手に持って立ち上がる。

 

ちょうどその時、船室内の兵士を排除してきたレオもその場に到着。イサリが持っている武器を後ろから目にした。

 

「終わったみたいだな……音1つ聞こえなかった……見事だ」

 

「どうも……それにしても、包みの形から見てかなり大きいものだとは思いましたけど……色んな意味で予想以上ですね、ソレ」

 

その武器を一言で表すなら、重火器という言葉が一番しっくり来るだろう。

 

長身のバレルに大型のリボルバー式回転弾倉、まるで拳銃のデザインをそのまま大砲サイズに巨大化したようだった。

 

迫撃砲を携行サイズに改造したようなその武器をイサリは汗1つ流さず細腕で持ち歩く。

 

「趣味は釣りだが……職業は魔獣狩りでな……この位の火力がちょうど良い」

 

「なるほど……それじゃあ後はディランさんを待つだけですかね」

 

「……いや……どうやら終わったらしい……」

 

イサリがそう言うと背後から大きな水音が聞こえ、そこにはレオ達と同じように全身ずぶ濡れになったディランが甲板に立っていた。

 

砦での準備が無事に終わったのか、その顔には普段通りの不敵な笑みが浮かんでいる。

 

「待たせたな……仕掛けはバッチリだぜ。悪かったなレオ、船の制圧殆どお前1人に任せちまって」

 

「いえ、練度が低い上に人数も少なかったので平気です。それで、僕達はこの後どう動くんですか?」

 

「そりゃ決まってんだろ。計画通り、コッチの作戦が成功したって狼煙を上げんのさ。なあ、イサリ!」

 

ディランが声を掛けると、再びガシャン! という金属音を立ててイサリが重火器を持ち上げて立ち上がった。

 

どうやら弾丸……武器のサイズ的には砲弾が近いかもしれない……の装填が終わったらしく、弾倉の中には鈍い金属の光沢が見える。

 

イサリはそのまま重火器を抱えて船の端に足を乗せて重心を固定し、砦の方角に向けられた砲口を上下左右に細かく動かして照準を調整する。

 

狙撃や砲撃は狙う距離が長ければ長いほど風向きや落下速度で着弾点が大きくズレていく。

 

今甲板の上で感じるのは僅かなそよ風くらいだが、距離が開けば弾道に与える影響も大きくなる。

 

だがイサリの重火器には目盛りで照準を調整するスコープも無く、今から放つ砲撃は風向きと落下速度を勘で調整しなければならないのだ

 

レオとディランが何も言わずその背中を見詰めて十数秒後、細かく動いていた砲口がピタリと止まり、イサリが無言でトリガーを引いた。

 

 

バアァン!!

 

 

全身を震わせるような砲撃音が鳴り響き、放たれた砲弾が信号弾のような光を放ちながら放物線を描いて砦へと落ちていく。

 

そして砲弾の光が砦の一角に落ちた次の瞬間……

 

 

ドオオォォォォォン!!!!!!!!

 

 

……凄まじい大爆発が起こり、イサリの砲撃音よりも数倍大きな爆発音が響き渡った。

 

ソレを不意打ちに近い形で体験したレオは思わず肩がビクリと跳ね上がり、無意識に爆発の閃光から左腕で目を庇った。

 

その数秒後に再び砦を見てみると、砦の一角が大きな黒煙を上げて派手に吹き飛んでいる。

 

「これが……狼煙ですか?」

 

「おうよ……今吹っ飛んだのは砦の兵士達の武器庫やモンスターを入れてる檻なんかが有る場所でな。忍び込んで保管されてる火薬を大量に運び出して空き部屋に突っ込んでおいたんだ。そこにイサリの砲撃をぶち込んだ」

 

「これで砦に残っている兵士達は殆ど武器が使えずモンスターがいなくて戦力も激減というわけですか。でも、城門が閉じたままですよ」

 

刃九朗と共に砦の戦力を調べた時にレオは見たが、あの城門を外側から開くのはかなり困難だ。

 

幾ら戦力を大きく削ったとしても、残った兵士達が体勢を整えて守りを固めてしまえば攻め落とすのが難しくなってしまう。

 

だが、そんなレオの不安など気付いてもいないような声でイサリが答えた。

 

「大丈夫だ……今からやる……」

 

そう言うと、イサリは抱えた重火器を床に置いてディランと共に船の端に置かれている大砲の1つを慣れた手つきで操作し、再び照準を砦に向けて微調整する。

 

一度目の射撃で距離の感覚を掴んだのか砲身の発射角調整はすぐに終わり、点火用の火種が付いた棒を持つ。

 

「……耳を塞げ」

 

言われた通りレオとディランはすぐさま両手で耳を塞ぎ、ソレを確認したイサリは軽い手つきで火種を点火させた。

 

 

ボオォン!!!!

 

 

短くも重い音が響き、装填されていた鉄球弾が風切り音を鳴らして飛んでいく。

 

数秒後、着弾と共に何かが派手に砕け散るような音をレオの耳が拾った。

 

「今のは……」

 

「……城門に砲弾を撃ち込んだ……多分、半壊はしてるはずだ……」

 

その言葉を聞いてレオは懐から望遠鏡を取り出し、着弾点を見てみる。

 

すると、イサリの言った通り左右合わせて閉じられていた城門の片方に砲弾が命中して壊れかけていた。

 

確かにあの状態ならば、レイジやエルミナの最大火力を撃ち込んで破壊することが出来るだろう。

 

「本当に壊れてますね……お見事です」

 

「……お互いさまだ」

 

砲撃の腕に感服するレオと口元に微笑を浮かべたイサリがお互いの腕を褒め合うと、傍に立っていたディランが豪快に笑いながら2人の首に腕を回す。

 

「ハハハハ! 何だ、いつの間にか随分と気が合ってるみたいじゃねぇかお前ら! その調子で次の仕事も頼むぜ」

 

「次……?」

 

レオが首を傾げると、ディランがニヤリと笑みを浮かべながら顎で海の方角を指す。

 

その方向に目を向けると、哨戒に出ていたのか別の帝国船がこちらに近付いていた。

 

船の大きさは今レオ達が乗っている軍船よりも明らかに小さいが、『心』によって研ぎ澄まされたレオの感覚は船内に幾つもの気配を捉える。

 

「帝国の奴等には前の船をぶっ壊された恨みも有るからな。まだ暴れ足りねぇと思ってたところだ。なあ、イサリ」

 

豪快な笑みを浮かべながら全身にギラギラとした殺気を纏い、ディランは左右の腰に差していた2本のカトラスを抜き放つ。

 

それに応えるようにイサリも床に置いた重火器を再び抱え、右側面部に有るレバーを引く。

 

弾倉が回転して金属のパーツ同士が噛み合うような音が響き、薬室内に新しい砲弾が装填される。

 

「そうだな……此処までは仕事で……此処からは……個人的な仕返しだ……」

 

多人数相手に殺る気満々の2人に挟まれたレオは小さい溜め息を吐くが、特に文句を言うことも無く二刀小太刀を抜いてディランの隣に立つ。

 

既に敵船は目と鼻の先まで近付いており、感知能力が優れたレオでなくともハッキリ分る程の殺気が船内から漏れ出ている。

 

「細かいことは抜きだ! 仲間を巻き込まなきゃ何でも良い、好きなように暴れろ!」

 

その言葉を合図にディランとレオは走り出し、片方は船首、もう片方は船尾へと飛び移る。

 

数瞬後、既に照準を済ませたイサリの重火器から砲撃が放たれ、着弾を知らせる爆発が敵船の甲板中央で炸裂した。

 

その爆発を合図に、船の中は小さな戦場へと変わり果てた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side レイジ

 

 「ウォォッ!」

 

強烈な殺意と共に振り下ろされた兵士の剣を軽いバックステップで回避し、オレは前へ一歩踏み込んで大太刀を唐竹に振り下ろし、刃を返して跳躍と共に下方から斬り上げを放つ。

 

2度の斬撃が兵士の体を鎧越しに軽々と斬り裂いて傷口から鮮血が飛び散るが、オレはその姿を視界に納めず体を捻って落下と共に今度は大太刀を振り降ろす。

 

同時に、使い手であるオレの思考を理解したユキヒメが大太刀の刀身を展開。ハイブレードモードへと変わった刀身を地面に叩き付ける。

 

瞬間、放たれた衝撃波がドーム状に拡散して前後左右様々な方向から攻撃を仕掛けてきた数人の兵士をゴムボールのように吹っ飛ばした。

 

「……これで外は大体片付いたな」

 

『うむ、後は内部の敵のみ。外の敵の残りも程無く片付くであろう』

 

周辺を見渡して敵の姿が無いことを確認し、ユキヒメも同意の声を返してくれた。

 

レオみたいにはいかないが、気配も感じられないのでひとまずは安全だろう。

 

大太刀を振り回すのに屋内は向いていないという理由で数が多い外の敵を叩く役割を引き受けたが、正直敵の数も強さも思ってたほどじゃなかった。

 

倒した兵士達の殆どが軽装だったし、モンスターも現れない。何より、敵全体が混乱しまくって統率が全く取れていない。

 

「どんだけ数が多くても、バラバラに動くだけじゃこんなもんか」

 

『まさに烏合の衆というやつよ。兵を生かすも殺すも将次第だ』

 

ユキヒメの言う通り、オレ達もサクヤさんやフェンリルさんという指揮官がいるおかげで戦力で負けている帝国とも戦えているんだなと思う。

 

目の前に失敗例が見えているのだから尚更だ。

 

「お疲れ様、レイジ。怪我は無い?」

 

聞こえてきた声に振り向くと、城門近くで部隊全体の指揮を取っていたサクヤさんがケルベロスを傍に連れてこっちに来ていた。

 

「はい、問題無く片付きました。残りの敵は軍港の中だけですか?」

 

「そうみたい。中の方もローナと刃九朗が頑張ってくれてるから、すぐに片付くと思うわ」

 

確かに、別行動する前に少しだけ見たあの2人の戦いぶりはすごかった。

 

通路や壁を縦横無尽に跳ね回って敵を倒す2人の姿はまるで忍者みたいに洗練されていた。

 

勘違いで戦ったレオが危うくやられそうになったというのもアレを見た後なら納得出来る。

 

「……ケルベロス、大丈夫だとは思うけど念のため港の周辺を見て来てくれる? もし敵の姿を見掛けたら報告して」

 

「了解しました」

 

返答してすぐにケルベロスはその場から高く跳躍し、軍港の一角へと姿を消す。

 

その場に残されたオレとサクヤさんは一応周辺を警戒しながら軽く息を吐いて気持ちを落ち着ける。

 

「……何ていうか、思ったよりもアッサリと片付きましたね」

 

「今までの戦いが苦戦するものばかりだったからそう思うのかもね。一番の理由はディラン達が頑張ってくれたおかげでしょうけど」

 

そう言ったサクヤさんの視線を追うと、港から少し離れた海上に浮かぶ2隻の軍艦が有った。

 

ただ、隣接した2隻の小さい方の船からは爆発やら破砕音やら悲鳴やらが鳴り響いており、此処からでも派手な戦闘が起きているのが分かる。

 

下手したらこっちよりも激戦なんじゃないかと思えてくるが、何故かあの3人なら大丈夫と思えて来て不安には思わなかった。

 

「……それにしても、本当に良かったんですかね。オレ達随分と派手に壊しましたけど」

 

海上の船から視線を外してオレは今回の戦闘で破壊された砦を見渡す。

 

侵入を阻む城門は片側の扉そのものが外れて半壊しているし、内部の建物も至る所がボロボロ、ディランさんが成功の合図として吹っ飛ばした建物なんて全壊した上に未だ黒煙が立ち上っている。

 

今回の作戦でこの港を取り返せば、この場所は以前と同じようにベスティアの人達が使うことになる。

 

それなのに港がこれだけ壊れてしまっていては意味が無いんじゃないかと思うのだが、何故かサクヤさんは特に気にした様子も無く笑顔を浮かべた。

 

「それなら大丈夫。詳しくは後で説明するけど、これはベスティアの人達も了承していることだから」

 

「……え?」

 

サクヤさんの言葉が一瞬理解出来ず疑問の声が漏れたが、サクヤさんはウインクを返して砦の中に歩いていった。

 

どういう意味か詳しい話を聞きたいと思って制止の声が出そうになるが、サクヤさんが後で説明すると言っていたので今尋ねるのは辞めておいた。

 

その数時間後、港内外の敵を掃討したオレ達はレオ達が乗る船を迎えると共に勝鬨を上げ、勝利を宣言した。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

重要拠点の攻略ですが、手練れや因縁のキャラがいるわけではないので戦闘描写は今回少々巻きになりました。

ただ、船を奪いにいった海賊連中には派手にやらせました。

某蛇男のように潜入して必要なモノだけを破壊するのではなく砦の一角を丸ごと吹っ飛ばすとかもうエクスペンダブルズの仕事です。

次回は火山島へ出発するまでか到着途中までの流れになると思います。

では、また次回。

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