シャイニング・ブレイド 涙を忘れた鬼の剣士   作:月光花

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スペル様、つっちーのこ様から感想をいただきました。ありがとうございます。

今回はエルフとの話し合いです。

では、どうぞ。



第27話 今を縛る過去

  Side Out

 

 エルフ達に先導され、エドラスに辿り着いたレオ達は真っ先に里の奥に立つ会議場へと案内された。

 

そこで待っていたのは、レオ達を囲むような形で椅子に座したエルフ達。恐らく彼等が長老会議のメンバーなのだろう。

 

エルフは不老の身なので座っているエルフには美男美女しかいないが、そんなエルフの中で長老などと呼ばれているのだ。よっぽどの年齢なのだろう。

 

「困った事をしてくれたな、我が従弟の娘アルティナよ。我等の住むこの森全体が危機にあるというのに」

 

その中で、エルフ達の中心位置に座した1人のエルフが額に手を当てながら声を上げた。恐らく、彼がこの会議の議長を務めているのだろう。

 

そんな彼の言葉の中には、呆れと共に怒りの気配も感じられた。

 

その理由に心当たりが浮かばず、アルティナが前に進み出て問い掛ける。

 

「どういう事です、おじ……いえ、議長。森全体が危機に陥ってるからこそ、私は協力者を連れてフォンティーナに戻ったのです」

 

それを聞いた議長の眉がピクリと動き、額に当てていた手をどけてアルティナに視線を合わせた。

 

「いいかねアルティナ。我々エルフ族は、伝統と秩序を重んじる種族だ。よって問題の解決も、それに基づいて行わなければならぬ。よもや知らぬ訳ではあるまい」

 

「もちろんです。私はずっとそうしてきたつもりですし、これからも……」

 

アルティナがそこまで言いかけたところで、議長が拳を握って椅子の肘掛け部分を強く叩いた。見ると、表情には苛立ちが見える。

 

「では何故彼らをここに連れて来たのだ! 異種族をこの隠れ里に引き入れるなど、エルフ族の秩序ある行動とは到底呼べぬ!」

 

声を荒げた議長に一瞬気圧されるが、アルティナは食い下がるように言葉を続ける。

 

「ですから! その秩序を取り戻すために、協力者である彼等をお招きしたのです! それが伝統に反してる行いとは思えません!」

 

「……反しておらぬ、だと? 我らフォンティーナのエルフ族は、やむを得ず外の者に手を貸すことはあっても、外からの協力者を必要とした事は一度もない! いかなる時も我らの合議と、我らの力のみによって物事を解決する」

 

アルティナの言葉を聞いても議長の態度は揺るがず、むしろさらに強固になっていく。

 

「それがエルフ族の伝統だったはずだが。違うかアルティナ。そして、議員諸君」

 

議長がアルティナに続き、今まで沈黙を貫いていた他の議員にも問いを投げた。

 

そして、問いかけられた議員は当然だと言わんばかりに即答した。

 

「いえ、議長のおっしゃる通りかと思います。実際、アルティナ王女が異種族を迎え入れたことで、里のみなに不安が走っております。これではむしろ、混乱を呼んでいるだけかと」

 

その事実を聞いたアルティナは反論が出来ず、押し黙ってしまう。

 

そして、先程から黙ってエルフ達の話し合いを見ている戦線メンバーの中で、レオは内心「ああ、なるほど」と呟いた。

 

議長は……いや、この里のエルフという種族は自分の家、伊吹の家とは正反対の考えを抱き続けた結果なのだろうなと。第3者のような視点で思った。

 

伊吹の家はレオの身に宿る異能と退魔師の歴史を恐れ、それを積極的に捨て去ろうと新しい道を進んだ。逆にこのエルフ達は過去からの伝統を敬い、変わることを否定した。

 

伊吹とエルフ、面白いくらいに真逆の行き方をしている。

 

妙な関係を知り、レオは1人自嘲的な笑みを浮かべた。

 

「……従弟は優れた指導者であったが、その娘たちはどうしてこのように勝手な事ばかり……帰ってきたラナといい、次々と厄介ごとを……」

 

深く溜め息を吐いた議長の言葉、正確にはラナという名前に反応し、アルティナが俯き気味だった顔を勢い良く上げた。

 

「姉さんが……この里に帰って来てるのですか!? 一体いつ!?」

 

「つい昨日の事だ。何の前触れも無く、笑顔で帰ってきた。まったく、里を出た時はともかくとして、隠れ里に入る時すら連絡1つ入れぬとはな」

 

「では、今はこの里にいるのですか?」

 

「いや、すぐに銀の森へ入っていった。我々が止めたが、地竜ベイルグランに話があるそうだ」

 

議長の返答を聞き、アルティナは考え込むようにぶつぶつと呟き始めた。

 

地竜ベイルグランというのは、恐らくエールブランと同じ古代種のドラゴンのことだろう。

 

だが、ラナという人物は一体何者だろう? 話から察するに、アルティナの姉のようだが。

 

「なんだ、あいつも戻っていたのか」

 

何処か笑うような口調でアイラが話し、レオが「誰です?」と視線で問うと……

 

「もう1人の方、だよ」

 

と返ってきた。

 

その言葉を聞いたレオは数秒考える時間を置き、「ああ、あの人か」と答えとなる人物を思い浮かべてアイラと似たような声を漏らした。

 

そんな中、思考の海に沈んだアルティナの心情を察し、代わりに龍那が議長の前に進み出た。

 

「議長閣下。アルティナ王女は何か大事な考え事がおありの様子。代わりに、私の発言をお許しいただけますか?」

 

議長は龍那の姿と、その手に握られたカドゥケゥスの杖を見てその素性を特定した。

 

「エトワール神殿の巫女殿か……よろしい、発言を許可しましょう」

 

「ありがとうございます。レイジさん、議会の皆様にユキヒメさんを…」

 

「え? ああ、わかった」

 

龍那の声に頷き、レイジは前に進み出て、手に握るユキヒメを天に掲げた。

 

その場にいる全員の目がユキヒメに引き寄せられ、初めて議長の顔に驚きが生まれる。

 

「皆様、ご覧ください。この刀こそ、クラントールに伝わる霊刀・雪姫。そして、雪姫を振るう資格を持つこの者こそ、異世界より召還されし新たなる勇者なのです」

 

「ど、どうも……」

 

龍那の言葉と周囲からの無数の視線に少々気恥ずかしさを感じ、レイジは頬を赤らめながら軽く頭を下げた。

 

「なんと! では、その刀が……」

 

『お初にお目にかかる。我こそはクラントールに伝わる霊刀・雪姫なり』

 

議長が椅子から立ち上がり、目を見開いた。

 

周りに座したエルフ達も驚きを隠せないようで、ざわついた声が聞こえてくる。

 

どうやら、長寿のエルフ達にとってシャイニング・ブレイドの伝説は戦線メンバーよりも身近な話らしい。

 

「……この事をご理解した上で、私達やアルティナさんの処遇を再度検討していただきますしよう、お願い致します……」

 

龍那が深く頭を下げ、座り直した議長はしばらく考えて結論を出した。

 

「いいでしょう……そういう事であれば、無下に追い出すわけにも参りません。あなた達の里への滞在を許可しましょう。ですが、必要の際には里の防衛に協力していただきたい。よろしいですな?」

 

(此処にいるからには働けってことか……別に構わないけど、我らの力のみによって物事を解決する、なんて断言した後にこれとはね)

 

内心でエルフの考えと矛盾点を並べながらレオは表情を動かさない。

 

その条件を聞き、龍那は視線だけをサクヤに向けて確認を取る。それに対してサクヤは合意を示すように頷き、龍那は議長に向き直る。

 

「承知いたしました。よろしくお願い致します」

 

再度頭を下げた龍那に続き、戦線メンバーの全員が頭を下げる。

 

とりあえず、フォンティーナに滞在する許可を得られた。まずは一段落だろう。

 

「では、今回の議会はここで終了と……」

 

「議長閣下」

 

議長が会議を終えようとした時、1つの声が割り込んだ。

 

声の発生源に全員の視線が集中すると、そこには前へと進み出るレオがいた。大勢の前に進み出るその姿勢に戦線メンバー全員は唖然とし、エルフ達は今まで一度も言葉を発さなかった人間の姿に訝しむ。

 

「突然の割り込み、失礼致します。ですが、その失礼を承知した上で、議長閣下に幾つかお尋ねしたいことがございます。どうか、私に発言の許可を頂けませんでしょうか」

 

拳を握った右手と右膝を床に着け、レオは深く頭を下げた。その態度や口調はいつもより礼儀正しく、何処か高貴な雰囲気を感じさせる。

 

その態度が違和感無く様になっているのは、幼少の頃から名家の伊吹家で散々叩き込まれた礼儀作法の賜物だろう。

 

その佇まいから他とは違う礼節さを感じ、議長は一度咳き込んで頷いた。

 

「よろしい、貴殿の発言を許可しよう。何なりと訊かれるがいい」

 

「感謝いたします、議長閣下。さきほど議長は、我らの力のみによって物事を解決する、と仰いました。具体的には、どのような手段で今回の脅威を解決なさるおつもりなのですか?」

 

気付いた矛盾点をとりあえず放置し、レオは体勢をそのままにして議長と目を合わせる。議長はレオの疑問に対してピクリと反応するが、すぐに答える。

 

「それに関しては、エルフ族が過去から行ってきたことと同じだ。けして攻勢に出ず守りを固め、里の周辺に近付いてきた敵を排除していく」

 

「ですが、帝国の監視の目はすでに森全体に広まっており、精霊力の低下によって草木は確実に枯れ始めています。このままでは、帝国より先に森が死を迎えます」

 

「わかっている。悲しいことだが、銀の森は着実に弱っている。だが、それもこの里と銀の森にある霊樹の浄化機能を駆使すれば、すぐに元に戻る」

 

その時の表情に宿る悲しみの色は、レオにも本物だと思えた。

 

だが、今の発言はまるで、霊樹の機能で元に戻るから森はいくら荒らされても平気だと言っているように思える。

 

「では、それよりも先に帝国がこの里、または銀の森の奥にある霊樹を見つけた場合はどうされるおつもりですか」

 

「それはありえない。いかに銀の森が帝国に踏み荒らされようと、闇の力に魅入られた奴等では精霊の加護が強く働く霊樹の元に辿り着けん。それとも、他に何か方法があるのか?」

 

「……1つだけ、存在します」

 

「なに?」

 

「帝国が私達や他の国より圧倒的に勝っているのは、物量です。私が帝国を指揮する立場なら、その物量に物を言わせ、森の木々を1本残らず薙ぎ倒します」

 

「なっ……!」

 

レオの発言に議長は驚き、周囲の議員達もどよめく。

 

未だに戦線メンバーは口を出さない。先程は驚いたが、全員がレオの行動には意味があると信じ、何も言わない。

 

「馬鹿な! いかに状況の進展が無かろうと、そのような外道な行いを……」

 

「お忘れですか、議長閣下。帝国はすでに他の国でも数え切れない程の命を奪っております。奴等の目的は支配ではなく殺戮、その過程に理念は存在しません」

 

その言葉に、誰も否定の声を上げられなかった。

 

レオの言ったことは所詮予測だ。確証は無い。だが、この場にいる全員が知っている、帝国のしてきた殺戮を。

 

体験した事実が心を揺さぶり、何人かのエルフの顔が青ざめていく。議長もついに言葉が出なくなっている。

 

「これは予測です。しかし、過去の歴史に習うだけでなく、可能性の1つとして今後の行動に組み込んでいただければ幸いです……では、これにて失礼します」

 

一礼し、立ち上がったレオは身を翻して出口に向かう。それに続いて戦線メンバーの全員も部屋を後にした。

 

エルフだけが残された室内には、長い沈黙が降り注ぐこととなった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side レオ

 

 「らしくない真似をしたものだな、レオ」

 

「……馬鹿な真似をしたって自覚はありますよ。王女であるアルティナの言葉にすら否定的な態度だったんですから、人間の僕の言葉をマトモに取り合うとは思えませんしね」

 

それに、僕の発言はエルフ達に少なからず動揺を与えただろうし、と僕は心の中で付け足しておく。そう考えながら、溜め息が漏れた。

 

会議場を退出し、日の光に目を細めながらアイラさんに返答する。

 

すでに皆は解散し、僕の近くにいるのはアイラさん、サクヤさん、アルティナの3人だけだ。というか、アルティナは少し顔色が悪い。

 

「馬鹿な真似、か……少なくとも私には、お前の発言の全てが無駄だったと思えないがな。エルフ達に伝えたかったのだろう? このままではダメだ、と」

 

「……正確には、変わってほしい、ですけどね」

 

アルティナから視線を外し、アイラさんに背を向けて僕は空を見上げる。

 

僕の家、伊吹は過去を恐れて変わることを選び、エルフ達は過去を敬って全ての基準をそれに依存させた。

 

そのどちらの選択を悪いとは思わないし、僕個人としては伊吹の選択など、もはやどうでもいい。だが、同じく僕個人としては、エルフ達の歴史に対する信仰心は一種の堕落に思えた。

 

僕の知る限り、人間にとって一番楽な状態とは“停滞”だ。日常に例えるなら、何も大きな変化が起こらず、変わりの無い日々を過ごしていくことだろう。

 

僕にはその“停滞”が、変化の無い楽な時の流れが、エルフ達の生き方とよく似ているように思えて仕方ない。

 

エルフは伝統を重んじ、脅威の排除も、他族との交流もそれに習って行う。だが、そんな過去の行いを繰り返しているだけで、一体そこから何が生まれるのだろう?

 

自分で考え、自分で選ぶ。

 

そんな生きる者として当たり前の行為すら、エルフ達は歴史を重んじるというのを言い訳にして放棄している。

 

だから、僕は少しでも自分達で考えるという行動に興味を示してほしかった。

 

別に今までの歴史を蔑ろにしろと言うんじゃない。だけど、何もかも過去に習って行うというのは、絶対に良いことじゃない。

 

(何も変わらず、やり直すことも出来ない日々なんて、ただの地獄だ)

 

例え辛いことや悲しいことがあっても、新しい出来事が何も無い日々に何の楽しさがあるんだ。そんなの、タダの作業と何が違う。

 

「……エルフの皆と分かり合うには、どうやってもまだ時間がいるわね」

 

溜め息を吐きながら、サクヤさんは腕を組んで空を見上げた。

 

「まあ、まずは里に滞在出来るようになっただけでも上出来だろう。エルフとの火種を抱えたまま帝国と戦う羽目になれば、それこそ最悪だ」

 

「議長の下した決定なら、エルフ達もそう簡単には破らないはずです。首都や帝国のことも気になりますけど、まずはベイルグランに会いましょう」

 

アイラさんの言葉にアルティナが続き、とりあえずの方針が決まった。

 

その後に全員の視線が向けられた先には、暗闇を漂わせた銀の森があった。

 

だがその時、アルティナがひどく思い詰めるような表情で森を見ていたのを、僕の目は見逃さなかった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

  Side Out

 

 それから少し経った後、アルティナは1人で銀の森を進んでいた。

 

森に入ることは誰にも言っていない。里にいるエルフはもちろん、戦線のメンバーにもだ。彼女は、1人でここにやって来た。

 

「皆には悪いけど……やっぱり、姉さんのことは私が何とかしないと……」

 

1人で呟きながら、アルティナは歩を進める。

 

議長の言ったことが確かなら、ベイルグランの元に行けば姉に会えるはずだ。

 

だが、会ってどうするという話になると、アルティナの口からは何も出てこない。怒鳴りたいわけでも、1発殴りたいわけでもないのに。別に、憎しみの感情は無いのだ。

 

「なんなのよ……私はいったい……」

 

何がしたいのだろう。

 

そう思いかけた時、アルティナの後ろから声が聞こえてきた。

 

「お~い、アルティナ~!……ふぅ、やっと追い着いたぜ」

 

「2、3回迷いそうになったけどね。レイジ、前向きな思考は悪いことじゃないけど、僕がいなきゃ間違い無く捜索隊出されてたよ」

 

『まったくだ! 森に入る前にリンリンに知らせておいたとはいえ、無謀にも程がある』

 

「す、すいませんレオさん。此処まで運んでいただいて」

 

振り返った先にいたのは、レイジ、レオ、エルミナの3人だった。レイジが先頭を走り、その後ろにエルミナを肩に担いだレオがジト目でレイジを見ている。

 

ユキヒメとレオの2人から抗議を受け、流石のレイジも申し訳無さそうにしている。

 

「あ、アナタ達……どうやって此処まで……!」

 

銀の森は広大で複雑な森だ。それこそ、人間とは違った空間認識力を持つエルフでなければ、闇雲に走って数分で迷うほどに。

 

故に、アルティナは3人がこの場にいるだけでも充分驚きだった。

 

案の定、森に入るアルティナを見たレイジ達は後に続き、数分でその姿を見失った。だが、レオが『心』を使ってアルティナの気配を追い、鍛えた体に物を言わせて森の中を突っ走ってきたのだ。

 

強行軍という言葉を通り越して、無茶苦茶も良い所のやり方である。

 

「な、何しに来たのよ……」

 

「何しに来たじゃねぇだろ。家族捜しに行くのは良いけどよ、お前の姉さんがベイルグランのとこにいたらどうすんだ。お前1人じゃどうしようもねぇだろ」

 

突っぱねるようなアルティナの言葉に、レイジが呆れるような声で正論を返した。

 

確かに、アルティナが1人でベイルグランに会ったところで、戦って勝てるはずもないし、精霊王の話を1人だけで聞くわけにもいかない。

 

あっけなく論破されたアルティナは言葉に詰まる。

 

「それでも……これは、私と姉さんの問題よ。アナタ達には関係無いわ」

 

「関係なくないです。私たち、ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間です。ですから、私達にも手伝わせてください!」

 

アルティナの拒絶の発言を、エルミナが前に進み出て否定する。

 

珍しい相手から反論をくらい、アルティナは再び言葉を失った。

 

「というか、僕達アルティナの気配を追ってどうにか此処まで来たから、帰れって言われても道がまったく分からないんだよね」

 

「そんなわけで、俺達が森の中で遭難しないために、一緒に連れていくか、里まで送り届けるか、どっちか選んでくれ」

 

そこに加えてレオとレイジがぶっちゃけた発言を重ね、自身の命をアルティナに放り投げた。まさかの生殺与奪の譲渡である。

 

そこでついにアルティナの中でナニかが切れて、感情が爆発した。

 

「あ~もうっ!! 分かったわよ! ついてきたかったら好きにしなさよ! 言っとくけど、後で疲れたから帰りたいなんて言っても知らないからね!!」

 

そう言ってアルティナは身を翻し、怒りの雰囲気を開放したまま歩いていく。

 

それを見たレイジとエルミナは顔を合わせて笑い、レオも苦笑する。

 

「何で怒られたのか今1つ分かんねぇんだけど、素直じゃねぇなぁ……」

 

「アレもアルティナの魅力の1つでしょ。とりあえず僕達も……」

 

「はい。私達も好きにいたしましょう」

 

そう言って3人はアルティナの後ろを歩き始めた。

 

「……けどよ、此処まで来るにも大分走ったけど、お前の姉さん本当にこっちにいるのか?」

 

「ええ、それは間違い無いと思うわ。姉さんは、間違い無くこっちにいる」

 

レイジ達にはまったく分からないが、返答するアルティナの顔には確信の色がある。

 

「いったい、何処にいらっしゃるんでしょう……」

 

エルミナがキョロキョロと森を見渡していると、最後尾を歩くレオが突然歩みを止め、それに気付いたレイジ達も止まる。

 

レオは右から左へゆっくりと森を見渡し、やがて森の一角に視線を固定した。

 

「……どうやら、意外と近くにいるみたいだよ」

 

「え?」

 

「あれま、気付かれちゃったか」

 

レオの発言にアルティナが首を傾げた途端、木々の間から透き通るような女性の声が聞こえてきた。そこにいたのは、女性のエルフ。

 

絹のような金色の長髪に羽根のような形をしたヘアバンドを付け、アルティナと同じ青色の瞳がレオ達を見詰めている。

 

「はぁ~い、久しぶりアルティナ。それに、そっちも久しぶりねレオ」

 

「お久しぶりです、エルウィンさん」

 

「ね、姉さん!?」

 

この女性こそ、アルティナの実姉であり、同じくエルフの王女、エルウィン・ラナ・シルフィスであった。

 




ご覧いただきありがとうございます。

どうにか今回でラナの登場まで持っていけました。しかし……長い。

次回はベイルグランの登場、多分戦闘の途中まで引っ張ると思います。

では、また次回。

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