ゲイムギョウ界に来てしまった!?〔改稿中〕   作:ULTRA-7

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四十一話だよ~!いーすんが主役だよ~!!

はい、始まりました!長いことでこの小説も四十一話!こんなに長く続いたの初めてだよ…今までは二十数話が限界だったのに…これも応援してくれるみなさんのおかげですね!

この話を書いた時自分の母親のことが浮かんだんですよねえ…みなさんも自分の家族は大切に!な感じの話です。

ではどうぞ!


第四十一話 母の温もり(改稿中)

「真司!おはよう!!」

 

「………」

 

 

ネプテューヌの声が聞こえる、でも何か…ぼーっとしてよく聞こえない。心なしか頭も

フラフラする…頭痛もするし…

 

 

「お兄ちゃん、おは…あれ?お兄ちゃん?」

 

「真司?どうしたの?顔も赤いし…」

 

 

ネプギアもいる、…あれ?二人が三人に、三人が五人でそれから~…

 

 

「ふにゃ…」

 

「し、真司!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

俺はその場でぶっ倒れた、ネプテューヌとネプギアの声が聞こえるが…何を言ってるの

かよくわからない。俺はそんな中意識が遠のいて行った――

 

 

 

――――――――

 

 

 

「三十九度九分…酷い高熱です…」

 

 

真司が倒れた後、ネプテューヌはアイエフとコンパを呼び出し真司をベッドまで運んだ。

熱を測ったら案の定、どうやらたちの悪い風邪を引いてしまったらしい…

 

 

「真司!!大丈夫!?」

 

「お兄ちゃん!!しっかり!?」

 

「うう…あだまいだい…」

 

 

ネプテューヌとネプギアは心配してるからなのか慌てた様子で真司に呼びかけて揺り動か

す、でも正直病人にはそのような行為を取るべきではない。コンパは二人を慌てて止めに

入った。

 

 

「だ、ダメですよ!真司さんは病人なんですからそんなことしたら余計に悪くなっちゃう

です!!」

 

「で、でも…」

 

「ここはコンパに任せておきなさい、この子は看護婦でもあるんだから」

 

 

アイエフの言葉に渋々下がるネプテューヌとネプギア、その時だ、部屋のドアをノックす

る音が聞こえた。一体誰なんだろう?そう思ったネプテューヌがドアを開けると…

 

 

「すみません、お邪魔します。真司さんのお身体の具合はどうですか?」

 

「いーすん?」

 

 

イストワールが心配そうな面持ちで部屋に入ってきた、それを見たコンパはイストワール

に丁寧に説明をする。

 

 

「酷い高熱です、今流行りの風邪にかかってしまったみたいなんです…」

 

「そうですか…このところ忙しい日が続いてしまいましたから、真司さんには無理をさせ

てしまったかもしれませんね…」

 

 

イストワールは少し暗い雰囲気になり俯いた、その様子に気がついたのか真司はフラフラ

した身体を起こす。傍にいたコンパは慌てながらも真司の身体を支えた、そして真司はコ

ンパに支えながらイストワールに話しかける。

 

 

「イストワールさん…げほっ!べ、別に無理してたわけじゃないですから…それに風邪も

イストワールさんのせいじゃないんですから…ごほっ!そう気に病まないでください…」

 

「真司さん…すみません…」

 

 

そう言って謝るイストワール、真司はその言葉に大丈夫ですからと口添えをした。

 

 

「それでは真司さん、今日は一日ゆっくりと休んでください。できればコンパさんに看病

の方をお願いしたいのですが…」

 

「すみません、今日これからお仕事があるです…真司さんを看病したいのは山々なんです

が…」

 

 

バツが悪そうに俯くコンパ、そしたらネプテューヌとネプギアが率先して手を上げた。

 

 

「それだったら私たちが看病するよ!まかせて!!」

 

「お兄ちゃんのお世話を成し遂げて見せます!」

 

「それが一番不安に思っているのは私だけかしら…」

 

 

アイエフよ、大丈夫。そう思っているのは君だけではないはずだ…イストワールもジト目

で二人を見つめていた。

 

 

「ネプギアさんはともかく…ネプテューヌさんには勤まると思えないんですが?」

 

「ねぷ!?ひどいよいーすん!!私はやればできる子なんだから!!」

 

「それを仕事の一つにも向けていただければ…」

 

 

そうイストワールが言いかけた時だった、バタンと大きな音を立てて部屋のドアが開いた

のだ。何事と思い振り向くとそこには…ノワールたち女神が勢ぞろいしていた。

 

 

「真司!!酷い風邪を引いたって本当!?」

 

「お兄ちゃん!!大丈夫!?」

 

「真司…大丈夫なの?」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「お兄ちゃん…風邪引いたの?」

 

「真ちゃん!!大丈夫なのですか!?」

 

「…な、何でみんな…げほっ!俺が風邪引いたって知ってるんだよ…」

 

 

身体が怠くてもツッコみを忘れない、だが確かにその通りだった。この場にいないはずの

女神達はどうやって真司の体調が悪いことを知り得たのだろうか?真司はふらふらしなが

らも、冷静に考える。そこに、ネプギアがゆるゆると手を上げて苦笑いしていた。どうや

ら原因は彼女にあるみたいだ。

 

 

 

「お兄ちゃんごめん…お兄ちゃんが倒れた時に私気が動転しててついみんなに電話を…」

 

「あー…そういう事か…」

 

 

納得する真司、だがよくこの短時間で来れたと思う。これが人を愛するパワーが成す技と

いうことなのだろうか?そう思わずにはいられない。

 

 

「すみません、そろそろお仕事に行かなきゃです…」

 

「コンパ…ありがとう、迷惑かけちゃって…」

 

「気にしないでくださいです、真司さんも早くよくなってくださいね?」

 

 

笑いながらそう言ったコンパ、コンパ…マジ天使!

 

 

「それじゃあみなさん、後はお願いしますです」

 

「コンパ、送って行くわ」

 

「ありがとうです、あいちゃん」

 

 

アイエフもコンパとともに部屋を出て行った、この場に残されたのは真司と女神一同とイ

ストワールとなる。そしたらキランッ!と女神達の目の色が変わった、何か嫌な予感がす

る…

 

 

「それじゃあ真司のお世話は私が受け持つよ!真司、楽にしてていいからね♪」

 

「い、いや…別にいいから。そう思ってるんなら少し寝かしてくれ…」

 

 

胸を張って宣言するネプテューヌに、力なく答える真司。正直に言うと、今は静かにそっ

と寝かせてほしい、彼の心の中はその思いでいっぱいだったのだ。だが現実は厳しいもの

である、ネプテューヌの言葉を皮切りに、他のみんなも言葉を畳み掛けてきたのだ。

 

 

「お姉ちゃんずるいよ!お兄ちゃんのお世話をするのは私だもん!」

 

「それは私のセリフよ!真司、私がちゃんと看病してあげるから安心してね?」

 

「それは私の役目よお姉ちゃん!お兄ちゃんのお世話は私がするんだもん!」

 

「貴女たちには任せられないわ…私が真司の看病をするのよ…」

 

「それなら私も~!」

 

「私も…♪」

 

「い、いやあの…」

 

 

口々にみんなが言い争う。今の真司にはとても耐えられない様なマシンガントークが勃発

していたのだ。言葉が頭に響いて、真司は辛そうは顔をしている。すると、真司の隣から

何やら柔らかな感触が伝わってくるのを感じた。そしてふわっと甘い香りも、その正体は

ベールだった。しかも妖艶な表情を真司に向け、寄り添ってくる。

 

 

「ふふ♪真ちゃん、今温めてさしあげますわね♪」

 

「「「「「「「何やってるの!?」」」」」」」

 

 

それを見た女神一同は憤慨した。いきなりこの人は何をやっているんだ、全員の心の中は

そんな思いでいっぱいになる。そんなみんなの表情を見たベールは、怪しげな笑みを浮か

べてきっぱりと言い切る。そう、これは治療の一環だと。

 

 

「何って添い寝ですわ、風邪を治すなら誰かに移すに限りますもの。真ちゃん、どうか私

に風邪を移してくださいまし♪」

 

「それはいいから…普通に寝かせてくれると…」

 

 

辛そうな表情をしながらもツッコみを忘れない。ただ今の真司は、それを言うだけで精一

杯だった。寄り添って、腕を絡めてくるベールには何の抵抗も出来ない、しかもそれを見

た女神達は騒ぎ立てる始末。今この場でするべき事ではない。

 

 

「ずるい!!それなら私も!!」

 

「「「「「「「「ギャ~ギャ~!!ワ~ワ~!!!!!!!」」」」」」」」

 

 

真司を巡っての女神の戦いがヒートアップ!その間にも真司は辛そうにフラフラとしてい

た、たぶん身体の方も限界だろう。だがその女神達の言い争いに終止符を打つ者がいた。

 

 

「いい加減んに…しなさああああああああああああああああい!!!!!!!!」

 

「「「「「「「「――――――っ!?!?!?!?」」」」」」」」

 

 

イストワールが怒鳴り女神のみんなの動きを止めた、そしてすごい剣幕でみんなを怒り始

める。

 

 

「真司さんは今酷い高熱で身体が限界なのですよ!そんな時に貴女たちが騒いでどうする

んですか!!少しは真司さんの体調のことも考えなさい!!」

 

「ね、ねぷ…いーすん…」

 

「真司さんの看病をするのはいいですがまずは自分たちの仕事を片付けるのが先です!そ

れまで真司さんの看病は私が受け持ちます!」

 

 

きっぱりと言い切るイストワール。今この場で全員が言い争い、真司の体調が悪化する事

を防ぐためには妥当な手段だった。だがそれを聞いた女神達は納得するかと言えばそうで

はない、中には膨れっ面をして不満を漏らす者もいた。

 

 

「えー…いーすんが…」

 

「返事は!!」

 

「「「「「「「「は、はいいいいいいいいいいいいい!?!?」」」」」」」」

 

 

イストワールの怒号に女神一同は回れ右となり部屋を出ていく、そしてその場に残された

のはぐったりとなっている真司とイストワールのみとなった。真司はフラフラとしながら

ベッドに倒れこむ、イストワールはそんな真司に申し訳なさそうに謝った。

 

 

「真司さんすみません…みなさんには後で私がきつく言っておきますから…」

 

「いえ…気にしないでくださいよ、みんなだって俺のこと思ってやってくれた事なんです

から…げほっ!げほっ!!」

 

「真司さん…」

 

 

苦しみながらも女神達やイストワールを気遣う真司。その優しさは嬉しいが、今のイスト

ワールにとっては心苦しいものとなる。そんな真司は、苦しみながらもイストワールに笑

顔を向ける。

 

 

「だから…あまりきつくしないであげてください…ごほっ!」

 

「…真司さんはとても優しいです」

 

 

真司の言葉にほんの少し笑いながら、イストワールは真司に布団を被せてポンポンと叩い

た。するとイストワールは、飛び立ちながら真司に話しかける。

 

 

「今は休んでください、少ししたらまた様子を見に来ますから。後で軽い食べ物を持って

きますね」

 

「すみません、イストワールさん…」

 

「いいんですよ、真司さんには私もお世話になっているんですから。それではまた後程」

 

 

部屋を出ていくイストワール、真司はベッドに潜り込み寝ころんだ。まだ頭はクラクラし

ており咳もままならない、苦しい気分の中どうにか真司は眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ◇

 

 

 

 

 

 

 

ああ――

 

こんな気持ちはいつくらいだろうか、風邪で熱が出て外に出れない時は結構寂しい思いを

したっけ?今がまさにそんな感じだ、だけどあの時は…

 

母さんがいた、笑いながら俺の頭に手を当てて熱を測ってくれて…寝付けなかったらずっ

と傍にいてくれて…生姜を利かせた卵粥も作ってくれた、あのおかげで身体が温まってす

ぐに風邪が治ったんだよなあ…

 

今その母さんがいない、俺は異世界に…ゲイムギョウ界にいるのだから。ああ…もし叶う

ならもう一度会いたいなぁ…

 

 

「母…さん…」

 

「真司さん、真司さん…大丈夫ですか?」

 

「…イスト…ワールさん?」

 

 

うつらうつらとしながら目を開けるとそこには、心配そうな表情で俺を揺り動かすイスト

ワールさんの姿があった。俺はゆっくりと身体を起こし座りなおす、何だか知らないけど

ほのかにいい匂いがした。

 

 

「魘されたいた様ですが…何か怖い夢でも見ていたんですか?」

 

「げほっ…いえ、ちょっと俺の世界の家族の事が出てきただけですよ…心配かけてすい

ません…」

 

「真司さん…」

 

 

するとイストワールさんは俺のおでこに手を当て熱を測る、あ…この感じ…懐かしいな。

母さんそっくりだ…

 

 

「熱はまだ下がっていないみたいですね、お粥を作ってきたんですが食べれますか?」

 

「イストワールさんが作ってくれたんですか?」

 

 

思わず目を見開いてしまう。まさかイストワールさんが食事を作ってくれるなんて、あ

の身体のサイズで厨房に立てるものなのだろうか?そんな疑問が頭に浮かんだ。そんな

俺の思いを読み取ったのか、イストワールさんは微笑みながら答える。

 

 

「これでも料理は作れますよ?でもまあ…自分の身体のサイズだけに毎日とはいきません

が」

 

「いえいえ、すごくありがたいですよ。丁度お腹減ってたところだったんで…」

 

「そうですか、それじゃあちょっと待っててくださいね。小鉢に分けますので…」

 

 

そう言ってイストワールさんは持ってきたらしき小さめの土鍋の蓋を開け中のお粥を小鉢

に分ける、丁度いい感じに盛り終わったころ俺にスプーンと一緒に手渡してくれた。温か

い…

 

 

「食べれなかったら残してもいいですからね、ゆっりと召し上がってください」

 

「ありがとうございま…っ!?」

 

「真司さん?どうかしましたか?」

 

「このお粥…これは…」

 

 

生姜をたっぷりといれた卵粥、俺が幼いころに母さんに作ってもらったものだ…徐に俺は

お粥を掬い口に運ぶ。生姜の少し辛みが効いた味と卵の優しい味が口いっぱいに広がる…

あの時の味…母さんの味…

 

 

「ぐっ…う…んぐ…」

 

 

気がつけば泣いていた、もう二度とこの味を味わえないと思ったから…その味を味わうこ

とができたから…今はこの味をめいいっぱい噛みしめる。

 

 

「真司さん…」

 

 

スッと…イストワールさんが俺の頭を撫でてくれた、その表情は優しいながらも少し辛そ

うな感じだ。俺はそんなイストワールさんにゆっくりと話し始めた。

 

 

「このお粥…母さんの味そのまんまだったんです、もう味わえないと思っていたものが眼

の前にでてきて…そしたら母さんのこと思い出してしまって…」

 

「ごめんなさい…真司さんを元の世界に戻さないといけないのに、知り得たのはCD-ROM

の出所のことくらいで…」

 

「イストワールさんのせいじゃないです…この世界に来れてよかったのは本当のことです

から…ただ…」

 

 

まただ、また涙がでてくる…弱さを見せたくなかった、というのが正直なところだ。だけ

ど何故だろう?目の前にいるこの人には…イストワールさんを目の前にしていると弱さを

さらけ出したいと言う感情になってしまう、母さんと同じ様な事をしてくれたからなのだ

ろうか…?

 

 

「一目だけでも…家族に会えたらいいなあって…そう思っちゃって…だ、ダメですね…!

こんな弱気じゃ…俺何言ってるんだろう…」

 

「………」

 

「イスト…ワールさん…?」

 

 

顔を優しく、イストワールさんが包み込むように抱きしめた。小さい体で精一杯…でもす

ごく温かい、まるで…母さんに抱きしめられている様だ…

 

 

「弱気になってもいいんですよ?辛かったら…泣いたっていいんです」

 

「イストワールさん…?」

 

「真司さんはこの世界に来て本当に頑張りました、右も左もわからずに文字も読めずに…

心細かったはずなのに一生懸命頑張ったんです」

 

 

ダメだ、その言葉だけでもう限界に近づいて来てる。それでも泣かないと、歯を食いしば

り必死に耐えた。だけど、そんな思いも優しく溶かす様にイストワールさんは俺の頭を撫

でながら優しい言葉を投げかけてくれる。

 

 

「お、俺は…」

 

「辛い思いを…悲しい思いをさせてごめんなさい、今の私はこれ位の事しか出来ませんが

…貴方の思いを受け止めさせてください、よく頑張りました…」

 

「――――――――っ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

涙腺が崩壊した、俺は全てを吐き出すように泣く。それをイストワールさんは優しく抱き

しめながら受け止めてくれた…ああ…この人は本当に――

 

 

 

――――――――

 

 

 

「ずみまぜん…お見苦じい所をみぜまじた…」

 

「いいんですよ、こんなことで真司さんの気が少しでも晴れるなら」

 

 

ティッシュで鼻をかみイストワールさんを見つめた、何だか申し訳ない事をしたな…で

もすごく気が楽になった、イストワールさんには感謝してもしきれない。

 

 

「またいつでも言ってください、相談でも何でもお話を聞きますよ。こんな事しか出来ま

せんが…」

 

「そんなこと…けほっ…ないですよ…もしまたそんなことがあれば…お願いします」

 

「はい♪」

 

 

そういうと笑顔を向けてくれるイストワールさん、やっぱりこの人は…

 

 

「母さん…みたいだな…」

 

「え?母さん?」

 

「あ…すいません…今のなしで…」

 

 

俺ってば何言ってるんだ、イストワールさんが母さんみたいだって…そんな事を思う

のは失礼だろうが…そう思っていたのだが、何故だろう?イストワールさんはクスク

スと笑っていた。

 

 

「真司さんのお母さんですか、真司さんみたいな方が私の息子なら手間がかからなく

ていいんですけどね」

 

「あ…その…すいません…」

 

「いいですよ、お母さんでも。真司さんが息子なら私も嬉しいです」

 

 

そう言って笑うイストワールさんの表情は本当に素敵だった、その笑顔は人を安心さ

せる様な温かさを感じる。母性が強いと言うべきなのだろうか?でもやはりこの人に

お母さんと言うのは気恥ずかしい…

 

 

「た、たまに…呼んでもいいですか…?」

 

「クスッ、ええ。いつでもいいですよ、真司さん」

 

 

イストワールさんは微笑みながら俺の頭を撫でてくれた、すごく安心する…そのせい

か俺は眠くなってきた。お腹も少し膨れたからというのもあるかもしれない、俺は欠

伸を一つ…

 

 

「このままゆっくりお休みになってください、眠たい時に眠るのが一番ですよ?」

 

「そう…します、…ごめんなさい…一つだけ我儘言っていいですか…?」

 

「何でしょう?」

 

「俺が眠るまで…こほっ…傍にいて欲しいんです…」

 

 

こんなこと言ったら子供っぽいと思う、でも今だけはイストワールさんにいてもらい

たかった。ダメかなと思ったけどイストワールさんは笑いながらそれに了承してくれ

た、何だか嬉しい…

 

 

「ええ、真司さんが眠るまで傍についていてあげます。どうか安心してください」

 

「あり…がとう…母さん…」

 

 

先ほどより心地よい微睡の中、俺はイストワールさんの手を握り眠りに落ちた――

 

 

 

―――――――――

 

 

 

私の手を握りながら眠りに落ちる真司さん、そんな彼を私は我が子のように見つめな

がら優しく撫でた。

 

真司さんがこの世界に来て半年は経過している、彼がこの世界に来た経緯はどうにか

知り得る事は出来た。まさかマジェコンヌという人物が関わっていたなんて…それに

そのCD-ROMの素材はこの世界ではもう採掘できないものと聞いた、私の検索術を持

ってしても探し出せない代物となると…お手上げです。

 

それでも私は探し続けた、でも一向に見つからずとうとうこんなに日が経ってしまっ

た…真司さんには本当に申し訳ないと思っている、彼にだって帰るべき場所があるの

だから。

 

でも真司さんは毎日笑いながら大丈夫、しょうがないですよと言ってくれた。とても

強い人だと感じた、だけど今日彼の心を垣間見た…

 

私の行動、そして私が作ったお粥で真司さんは自分の母親の事を思い出したのだ。お

粥を食べていた真司さんは涙を零していた、私の作ったお粥の味が母親のものと同じ

だと…家族に会えたらなと…

 

私は思わず真司さんを抱きしめていた、彼を強いと思っていた私はバカだと思う…真

司さんだって人の子だ、寂しい時だってあるし辛くて悲しい時だってある。私はそれ

に気づいてあげる事が出来なかった…

 

真司さんは泣いた、今まで泣き顔を見せたことないが真司さんが今目の前で…私はそ

れを必死で受け止めた、これで真司さんの気持ちが少しでも晴れるのならと。

 

そして泣き止んだ真司さん、そしたら徐に私の事を母さんみたいと…少しくすぐった

かったです。でも母親ですか…真司さんが息子で私が母親…想像しただけですごく楽

しいですね、だから私は言いました。お母さんでもいいですよと、そしたら真司さん

は少し戸惑って…

 

 

「た、たまに…呼んでもいいですか…?」

 

 

クスッ、真司さん可愛いです。本当に実の息子の様に思えてしまいますね、私自身そ

ういった経験がないんですが、すると真司さんは欠伸を一つ…どうやら眠くなってき

たみたいですね。私は真司さんに眠るよう促しました、そしたら真司さんは私の手を

握って…

 

 

「俺が眠るまで…こほっ…傍にいて欲しいんです…」

 

 

真司さんが初めて言った私への我儘、勿論聞かないわけがありません。私は了承して

真司さんに眠ってもらいました、そしたら私にこう言いました。ありがとう、母さん

と…

 

こんな私に感謝してくれるなんて…真司さんは本当にお優しい方なんですね、私は笑

いながら真司さんの頭を撫でた。真司さんを元の世界に戻す手立てはまだ見つかって

いません…でもいずれ必ず見つけて見せます、真司さんがちゃんと家族の方に会える

様にするために。でもそれまでは…私は真司さんの母親でいよう、辛いときはその思

いを受け止めてあげよう…そう心に誓った。

 

 

「真司さん…ゆっくりお休みなさい…」

 

 

 

――――――――

 

 

 

「う…ん…」

 

 

目が覚める、まだ頭はフラフラするがだいぶマシになった感じだ。窓の外を見て見る

ともう薄暗い…かなり長い時間眠ってたみたいだ。

 

 

「あれ…?」

 

 

胸の上に違和感がある、少し頭を上げてみるとそこには…イストワールさんが俺の手

を握りながら眠っていた。どうやらあれからずっと俺の傍にいてくれたみたい、何だ

か悪いな…

 

 

「スゥ…スゥ…」

 

「イストワールさん…ありがとうございました」

 

 

そう言いながらイストワールさんの手を握り返す、すると寝言なのかイストワールさ

んが何かをしゃべりだした。

 

 

「真司…さん…いい子…ですねぇ…スゥ…」

 

「…夢の中で母さんをやってるのかな?」

 

 

今更ながら母さんと呼んだ自分が恥ずかしい、でもイストワールさんのおかげで今の時

間までグッスリ眠ることができた。本当に母さんが傍にいてくれたみたいだった…

 

 

「本当にありがとう、母さん…」

 

「むにゃ…もう食べられません…」

 

 

典型的な寝言だな…そう思い俺は笑った、俺はイストワールさんを傍にあった丸テーブ

ルに運んで乗せると、布団…はないからタオルをかけて再びベッドに潜り込んだ。

 

そう言えばネプテューヌたち全然来なかったな、おかげでよく眠れたけど…何かあった

のか?

 

 

 

一方その頃女神一同――

 

 

「ね、ねぷう…まだ耳がキィ―――――ンッてなってるよお…」

 

「回復する気配が…一向に見受けられないわ…のわ~…」

 

「こんな説教受けたの…生まれて初めてよ…」

 

「うう…真ちゃんと添い寝…ガクッ…」

 

 

イストワールの説教によって全員虫の息となっていました、未だに回復出来ていない

様子であった…

 

 

 

 

 

 

 

 

                     ◇

 

 

 

 

 

 

 

翌日――

 

 

「う~ん…!よく寝たなっと!おろ?頭が軽い…風邪が治った!」

 

 

うん、いつも通りの俺だ。身体も軽いし怠くない!いや~健康が一番だね、うん。す

ると、誰か部屋のドアをノックしてる音が聞こえる。ネプテューヌは…問答無用で入

ってくるだろうしだとするとネプギアか?

 

 

「真司さん、イストワールですが…お身体の具合はどうですか?」

 

「え?イストワールさん?」

 

 

俺は部屋のドアを開ける、そこには笑顔のイストワールさんの姿があった。俺もイスト

ワールさんに笑いかけながら現状を伝える。

 

 

「もうすっかりです、いつもよりグッスリ眠れたのが良かったんだと思います」

 

「よかったです、でも今日も大事を取って一日休んでくださいね?」

 

「いやもう大丈夫ですよ?すぐにでも仕事を…」

 

 

そう言いかけた時だ、イストワールさんは手で俺の口を塞ぎ悪戯っぽく笑いながら話し

かけた。

 

 

「ダメですよ、こんな時はちゃんと休んでおかないと。お母さんの言うことは聞くもの

です!」

 

「あ…あはは…これは一本取られちゃった…」

 

 

イストワールさんはクスクスと笑い俺は苦笑い、どうしようもなくこそばゆい感じがす

るんだけど…今この瞬間が幸せと感じる。すごく…嬉しい。

 

 

「あ~!いーすん何やってるの!?」

 

「ね、ネプテューヌ?と…何故にみんなまで!?」

 

 

ドアの外からネプテューヌの声がしたと思って振り向いたら女神が全員集合!?昨日い

たのは知ってるけど…まさかみんな…

 

 

「昨日はみなさん教会でお泊りになったんですよ。…すみません、真司さんの事がどう

しても心配だからと言われていたので止めるに止められなかったんです…」

 

「あはは…別にイストワールさんのせいじゃないですから」

 

 

寧ろみんなが心配してくれた事が素直に嬉しく思う、…みんなのこの視線がなければな

んだけど。

 

 

「何イストワールといい雰囲気になってるのよ!!」

 

「まさかイストワールまで…!?」

 

「真ちゃんを優しく起こして好感度アップの作戦が台無しですわ!!」

 

 

おいおい、確かにいい雰囲気だったのは認めるがあくまで親子のようなの間違いじゃな

いのか?ノワールよ。そしてブラン、まさかって何?ベル姉ェ…何しようとしてたんだ

よ?

 

 

「いーすんさんずるいです!お兄ちゃんを起こすのは妹の役目だって昔から決まってい

るのに!!私の役目なのに!!」

 

「ネプギア!それは聞き捨てならないわ!それならアタシにも当てはまるじゃない!」

 

「それなら私もだよ!!」

 

「私だってそうだもん…!」

 

 

そしてシスターズよ、そうしてくれる気持ちは非常にありがたいが争うのはよくないか

らね?今にも守護女神戦争が勃発しそうな雰囲気だからね?戦争の原因、妹は兄を起こ

す役割を巡って…そんな守護女神戦争嫌だ!?

 

 

「何でいーすんと真司はそんなに仲良くなってるの!!説明を要求する!!」

 

 

ネプテューヌはビシッと指を俺とイストワールさんに指し一喝、それに苦笑いを浮かべ

る。そして俺はイストワールさんと目を合わせ…

 

 

「「…秘密♪」」

 

「「「「「「「「は…はあああああああああああああ!?」」」」」」」」

 

 

ネプテューヌ達の叫び声が教会に木霊した、まあみんなには悪いけどこれだけは俺とイ

ストワールさんだけの秘密にしたいんだ。ごめんな?

 

 

「ちょっ!?納得いく説明を求む!」

 

「秘密ったら秘密♪」

 

 

俺はイストワールさんと再び目を合わせ笑い合った、まるで本当の親子の様に。

 

 

本当にありがとう、この世界の俺の母さん…

 




次回、いよいよ真司覚醒編が始まる!

再び始まる悪夢、それにどう立ち向かい覚醒するのかをお楽しみに!

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