せっかく転生したのなら楽しまなきゃ損でしょ   作:黒ウサギ

9 / 28
九話 終わりよければすべてよしでしょ

「ネギ君、君は復讐したいんじゃないのかな?」

 

復讐、この単語を聞いたとき僅かだが彼の瞳は揺れた

 

「村を壊滅させて、村人を、親しい人に近かった人を石にした悪魔に復讐したかったんじゃないの?」

 

ネギ君の心にある深い深い闇、それを彼が自覚しなければ、もしかしたら彼はここで壊れてしまうかもしれない

 

「僕は、僕は復讐なんて・・・・・・っ!」

 

「それじゃあ君が覚えている上位古代語呪文は何のためにあるんだろうね」

 

確実に、彼に瞳に動揺が走った

本来はネギ君しか知らないはずの情報、それを俺というイレギュラーが知っているのだ

 

「違う!僕は、僕は復讐なんて!」

 

違う、違う、違う

彼は何度も叫ぶ、いつの間にかエヴァちゃんやアスナちゃんも喋らなくなっていた

 

ドクンと心臓が跳ねた音が聞こえた

ドクン、ドクン、ドクン

そして

 

―――バキン

 

闇が広がった

 

 

 

 

 

 

ネギSide

 

 

違う違う違う

僕は復讐をしようなんて思っていない

僕は正義の魔法使いになるために魔法を覚えたんだ、石にされた人たちを戻すために魔法を練習したんだ

思い出されるのは6年前の過去、一心不乱に魔法について勉強し、村の人達を助けるために学んだ魔法

・・・・・・ならこの魔法はなんだ?その記憶の中にあった一つの魔法

上位古代語呪文、本来は封印することでしか対処できない高位の魔族を完全に滅ぼす事ができるその魔法

なぜ僕はこんな魔法を覚えているんだろう

 

―――復讐のためだろ

 

声に反応し振り返ると、そこには黒に染まった僕がいた

 

お前は正義の魔法使いなんて本当はどうでもいいんだ

お前の本当の目的は村を滅ぼした奴らの復讐

父親も本当は憎いんだろう?

何故僕を置いていくの?何故僕を一人にするの?

 

黒いネギが一方的に話し出す

 

やめろやめろやめろやめろ!

 

声にはならず、心の中で叫ぶ

当然それは届く訳もなく

 

本当はエヴァンジェリンなんてどうでも良かったんだろう?

お前は復讐しか考えていない

 

やめてよ・・・・・・やめてよ・・・・・・!

 

お前は本当は正義の魔法使いになんてなりたくないんだ

認めろよ、俺が本当のお前だ!

 

「やめろおおおおおおおおおお!!!」

 

叫び声を上げると同時に、視界が反転した

 

 

 

 

 

悠斗Side

 

ネギ君の体から黒い魔力が溢れ出る

 

「闇の魔法かな?」

 

「――っ!貴様それをどこで!?」

 

エヴァの質問に答える変わりに彼女を跳ね飛ばす

先程まで彼女がいた場所にネギの、闇に飲まれたネギの腕があった

ハラリとエヴァの髪が宙を舞う

 

「GaaaaaaaaAaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

ただ叫んだそれは魔力を帯び、周囲に被害をもたらす、地面は割れ、街灯は破裂する

アスナとカモがここにいては危険だと判断し、俺はスキマを開き紫に彼女たちを預かってもらう

 

「手伝ってあげましょうか悠斗?」

 

「嬉しい提案だけどこれはここの世界の問題だ、紫がすることなんてないよ」

 

スキマに茶々丸、アスナ、カモを放り込み、ネギと対峙する

 

「エヴァ、お前には付き合ってもらうぞ」

 

「断りたいところだがこのまま坊やを放っておいては何があるかわからんしな、仕方があるまい」

 

「ありがとさん、来るぞ!」

 

俺が叫ぶと同時にネギも動き出した、そう認識したと同時に既にネギは俺の目の前にいた

 

(早すぎるっしょ!)

 

回避力判断力筋力を限界まで、ネギの放った拳が俺に当たる直前になんとか後ろに下がる

着地を襲うようにネギから本来の彼の属性ではいない炎の矢が101矢放たれる

しかしそれは俺にあたることなくエヴァの氷の楯によって防がれる

ぶつかり、爆発。周りは蒸気に包まれて視界が塞がれる

種族人間の俺としては視界が塞がれている状況というのは非常にまずい

『風を操る程度の能力で』まとわりつく蒸気を吹き飛ばし、そこにはネギがいなかった

 

「悠斗!上だ!」

 

エヴァに叫ばれ上を見ると

 

「嘘だろ」

 

ポツリとそんな言葉が出た

ネギの魔力量はそれだけで考えれば世界でもトップクラスだ、普段のネギならその魔力を使いこなすことはできないのだが

 

「暴走状態じゃそんな訳もないか!」

 

今のネギは自身の闇に飲まれている、この状態なら自身の膨大な魔力を使いこなすことができてしまう

そして今の状態が

 

「千の雷か」

 

使いこなした結果がこれだ、ネギが覚えている唯一の上位古代語呪文『千の雷』本来大軍用の広範囲攻撃であるソレが今俺とエヴァの二人に対して向けられている

エヴァを見ると少し汗が出ている、嫌な予感がする、その予感が当たってしまったのだろうか

周囲を照らす人工的な明かり、電力が復旧したのだ

 

「きゃん!」

 

バチンという音とともにエヴァが崩れ落ちる、結界が起動したことによって魔力が封印されてしまったのだろう

そうなれば彼女はただの幼い少女だ、スキマを開きエヴァも紫に預ける

預けている間ネギは動かなかった

自我が残っているのかもしれない、ならば打開策はある

その為にも―――

 

「こいよネギお前の全力をぶつけてこい」

 

―――俺は受け止めなければならない

 

 

 

 

 

「GaaaaaAaaaaaa!!!」

 

鼓膜が割れそうな叫び声とともにネギが腕を振り下ろす

そして、放たれた

 

(避けるな、防ぐな、受け止めることだけ考えろ!)

 

それを壊すでもなく、防ぐでもなく、受ける

能力を発動

 

発動と同時に俺の視界は白に染まった

 

 

 

 

 

ネギSide

 

 

やってしまった

取り返しのつかないことを

僕が未熟なせいで

また守れなかった!

僕が弱いから!

僕に力がなかったから!

 

そうだよ俺は力が無かった

でも今は違うだろ?

俺には力がある

復讐を果たすための力が!

父親を倒すための力が!

 

どうして父さんを倒すの?

 

俺を捨てて行ったんだ、倒して当然だろ?

 

当然・・・・・・

 

何を悩んでるネギ、お前はもう戻れないんだ

人を殺したんだ

 

そうだ、僕はもう、戻れな―――

 

「―――簡単に諦めてんじゃねぇぞ糞餓鬼ィ!!」

 

 

 

 

 

悠斗Side

 

熱い、熱い、熱い!

妹紅ったら、ぐーやとの殺し合いで毎回こんな思いしてんのか、よく精神が持つな・・・・・・

千の雷に飲み込まれつ前に発動した能力は『老いる事も死ぬ事も無い程度の能力』

飲み込まれ、体が雷に焼かれていく先から再生を初めていくもんだから熱いの何の

だが、ちゃんと生きてる

魔法に飲み込まれた時にネギの声が聞こえた

力がない?ふざけんな!

守れない?ふざけんな!

俺は知ってんだよ、お前がこれから成長していくことも!

世界を守ることも、強くなることも!

例えこの感情が俺の身勝手で自己満足な感情だとしても、これだけは言わせてもらうぞ糞餓鬼

 

「未来まで諦めてんじゃねぇぞ!」

 

俺は知ってる、お前の未来は明るいってことを、未来のお前は精神も強くなってるってことを、守るべきものを守れてるってことを!

 

「それでも挫けるようだったら周りを頼れ!お前はまだ餓鬼なんだぞ!」

 

一歩一歩近づき、射程内に入る。右手を力強く握り

 

「大人を頼れこのばかやろう!」

 

思い切りネギの顔を殴り飛ばした

それにより生まれた大きな隙

 

「紫ぃ!」

 

「はいはい、いってらっしゃいお嬢さん」

 

紫が開いたスキマからアスナが『ハマノツルギ』を振りかぶりながら落下してくる

 

「いい加減、目を覚ましなさい!この、馬鹿ネギぃ!!」

 

振り下ろされたハリセンはネギにあたり、闇の魔法は消滅した

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギSide

 

目を開けるとそこには皆がいた

エヴァンジェリンさん茶々丸さん、アスナさんにカモ君、そして悠斗さん

 

「やっと目を覚ましたわね馬鹿ネギ」

 

笑いながら頭を撫でてくれるアスナさん

 

「まったく、闇に飲まれるなんてまだまだ坊やは未熟だな」

 

「心配なら心配と仰ればいいのに」

 

「何か言ったか茶々丸!」

 

そっぽを向きながらも僕を心配するように見てくれるエヴァンジェリンさんに茶々丸さん

 

「兄貴・・・・・・」

 

「大丈夫だよカモ君」

 

そう、復讐をしようと魔法を勉強した僕も、正義の魔法使いになろうと魔法を勉強した僕も、どちらも僕だ

なら認めよう、僕の心にある深い闇を、飲み込まれることの無いようにに受け入れよう

 

「君は僕で僕は君だ」

 

そう呟くと、憑き物が落ちたといえばいいのだろうか?そんな感覚に包まれた

 

 

 

 

 

悠斗Side

 

「んで、この惨状をどうするかだが・・・・・・」

 

辺りを見渡すと鉄が溶けたり、地面が抉れたりと荒れ放題だった

 

「どうしましょうか・・・・・・」

 

選択肢は三つ

1、知らぬ存ぜぬ

2、学園長にすべて打ち明ける

3、自力で何とかする

 

「1はやばい、確実にやばい」

 

「どうしてですかい悠斗の旦那」

 

アスナちゃんとカモが何故と言わんばかりに顔を傾げている

それに対し俺は上を見ろと指を上に指す

アスナちゃんとカモが視線を上に移すと・・・・・・固まった

 

「一部始終見られてたってわけよ」

 

「そういうことじゃの」

 

学園長がそこにはいた

 

「大変じゃったぞい、急に魔獣のような叫び声が聞こえたと思ったら悠斗君やエヴァはネギ君だと言うし」

 

生徒たちが起きないようにするのが大変じゃったわいと愚痴る学園長、さーせんした

 

「まぁよいわい、今日は皆疲れたじゃろう。部屋に戻って休むがよい」

 

そう言われて俺達は素直にその提案に従い、部屋に戻って休息を取った




シリアス・・・・・・
多分シリアス・・・・・・
次回からは適当に日常を書いて修学旅行に旅立たせます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。