せっかく転生したのなら楽しまなきゃ損でしょ   作:黒ウサギ

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焼き鳥といえばネギまと言ったな
私は皮派だ


八話 いざ決戦でしょ

せっちゃんに夕食の全てを平らげられて絶望に打ちひしがれているとゆかりんが現れた

曰く彼女がすべて食べたわけではないとのこと、それはいいんです

だがしかしだ、お前の口の横についているご飯粒はなんだと問いただしたところ、彼女は何も言わず引きこもりました

せめて料理の感想だけでもお願いします、そうしないと報われません

 

せっちゃんをどうするかと思い頭を悩ませていると、はらりと目の前に紙が一枚落ちてきた

「炒飯美味しかったわよ、またご馳走させてね 八雲紫

 PSベッドで眠っている彼女は部屋に戻しておきます」

 

ベッドを見ると既にせっちゃんの姿は無かった

ゆかりんめ、可愛いことしてくれるじゃないの

 

 

次の日、つまりエヴァちゃんとネギ君がぶつかり合う日・・・・・・なのだが

 

「ゆゆゆゆ悠斗さんどうしましょう、僕今から緊張してきました」

 

ネギ君は目に見えて緊張しすぎてやばい、本日は一時間目から彼が受け持つ授業なのでなんとか何時もどおりに戻ってもらうしかない

斜め四十五度の角度で打つべきか悩んでいると、保護者のアスナちゃんがやってきた

 

「ネギ、シャキっとしなさい!」

 

吹き出すところだった、今俺の脳内に農家の嫁いだアスナちゃんが育てている野菜、つまりはネギに一喝しているビジョンが浮かんだ

危ない危ない、二人に変な目で見られてるじゃないか。もう少し遅かったら確実に見捨てられていただろう

 

「でも、エヴァンジェリンさん何時もより調子が良さそうなんです、僕なんかで勝てるんでしょうか・・・・・・」

 

あれ?原作だとネギ君って『エヴァンジェリン討伐ミッション』ソロプレイじゃなかったっけ?アスナちゃんも参戦するの?

疑問に思っている間に話が終わっていたらしい、お兄さんおいてけぼりにしないでください

カモ?あぁいたねそんな奴

 

 

ネギSide

 

無事に果たし状も渡し、今日はエヴァンジェリンさんとの決戦の日

僕が勝てば何故エヴァンジェリンさんは吸血行為なんてことをしていたのか、そして父さんのことを離してもらえる

父さん・・・・・・

僕が三歳の頃、僕が住んでいた村は悪魔の大群に襲われた

挨拶をした人が、遊んだことがある友人が石にされていく

怖い怖い怖い怖い怖い

恐怖が心を蝕み、僕の前にも悪魔がやってきた

(あぁ、ぼくも石になるんだな)

幼かった僕でも次の瞬間石にされることはわかっていた

 

――しかしその時は一向に訪れなかった

 

一人の魔法使いが飛んでいた

彼が放つ魔法で悪魔は霧散していく

彼が放つ魔法で悪魔は撤退していく

圧倒的だった、そしてその魔法使いは僕に近づいてきて

ポンと頭を撫でてくれた

 

「すまねぇなネギ、父親らしいことできなくて・・・・・・」

 

――ドクンと、心臓が大きく跳ねたのがわかった

 

「と・・・・・・う・・・・・・さん?」

 

「そうだ、この杖をやろう。俺だと思って大事にしろよ?」

 

「とうさん!」

 

頭から手を離し、彼は空に消えていってしまう

嫌だ、置いていかないで

 

「とうさん!置いていかないでとうさん!」

 

何度も何度も、これが枯れる程叫んだがとうさんは戻ってこなかった

でもとうさんの姿は今でも鮮明に覚えている

正義の魔法使いに相応しい、そんな人だった

火が収まり、朝になり、石にされてしまった人達を見て僕は決意する

とうさんのような魔法使いになろう

正義の魔法使いになろうと

 

 

 

麻帆良での生活は最初こそ戸惑いばかりだったけどアスナさんや木乃香さん、それにクラスの皆さんの御陰ですぐに馴染めた

馴染めたのだけれど・・・・・・

 

「悠斗さん、あなたも魔法使いなんですか?」

 

神楽悠斗さん、長瀬さんと一緒に一晩過ごした森で出会った彼は一言でいえば不思議だった

詠唱をしていないのに魔法を使えたり、転移魔法とは違う別のナニカを使えたり

 

「ん、魔法使いなわけないじゃん。こんな傍若無人を地で行くような人間が」

 

ごもっともであるとは口には出さないけど、心では同意しておく

ならば貴方はなんなんですかと聞いたことがあった

 

「俺が何者か、それを語るには一日二日ではとてもじゃないが足りないね。まぁぶっちゃければ誰よりも一般人でありたいと願っていた人間だよ」

 

上手く誤魔化された気がする、彼は何時もこんな調子で過ごしている。そんな姿勢が少し羨ましい

生徒と教師ではなく、一人の人間として皆と触れ合える彼が羨ましい

魔法使いというルールに縛られない彼が羨ま・・・・・・、待て、今僕は何を考えていた?

魔法使いのルールに縛られていない彼を羨ましく思うことなんてないはずだ

なのに何故、何故こんなにも彼が眩しく見えてしまうのだろうか

すぐに頭の中から今考えたことを消すようにする

ただいつまで経ってもソレは消えず、僕の心に重く残った

 

 

 

 

 

 

悠斗Side

 

 

23時、停電が始まりネギ君とエヴァちゃんは互いに向かい合っていた

 

「よく逃げずに来たな坊や」

 

エヴァちゃんは余裕綽々といった感じだろう、一方のネギ君は少し落ち込んでいるように見える

 

「逃げません、僕は正義の魔法使いを目指す者として、生徒を傷つけたエヴァンジェリンさんを許すことはできません」

 

エヴァちゃんもネギ君の様子に気がついたのだろう、少しばかり眉根を寄せて・・・・・・不敵に笑った

 

「ククク、正義の魔法使い・・・・・・ね。それでどうする坊や?私を倒して何をさせたい?」

 

その質問にネギ君は答えない。いや、答える事ができない

彼もわかっているのかもしれない、エヴァちゃんを倒した所で彼にはどうにかする権利などないことを

 

「それでも、僕は正義の魔法使いになるために・・・・・・エヴァンジェリンさん。悪い魔法使いである貴方を倒させてもらいます」

 

そう言うと彼は愛用の、父親から渡された杖を構える

対してエヴァちゃんはつまらなそうに溜め息を吐きながらも構えた

 

互いに詠唱を開始し、エヴァちゃんは氷の矢を、ネギ君は風の矢を17矢放つ

ぶつかりあい相殺

何度も何度も繰り返す

時には氷と風が、時には闇と雷が

 

しかし実戦経験の差なのか、徐々にネギ君が押されていった

 

「ネギ!」「旦那ぁ!」

 

アスナちゃんとカモが叫ぶ

原作と違い彼女は仮契約はしているがネギ君に頼まれたのだ、手を出さないでくださいと

茶々丸さんも同じだ、彼女もただ手を出さず、自分のマスターを見ている

 

「ラス・テル・ラ・スキルマギステル!来れ雷精 風の精 雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風!!」

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!来たれ氷の精 闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪 闇の吹雪!!」

 

二つの強大な魔力がぶつかり合い、余波が僕たちのいるところにまで届く

 

一瞬の拮抗、しかしすぐにエヴァちゃんの魔法がネギ君の魔法を飲み込んでいく

 

「・・・・・・っく!うわぁああああああ」

 

エヴァちゃんの魔法に耐え切れず吹き飛ばされる

威力は少し相殺できていたのだろう、吹き飛ばされても意識はある

 

「期待はずれだったぞ坊や、奴の息子と言ってもこの程度か・・・・・・」

 

演技なんかではなく、本当に、心から落胆しているのがわかった

 

「答えろ坊や、何故手を抜いたり何かした」

 

ビクンとネギ君が驚き跳ねる、アスナちゃんとカモも驚いていた

 

「エヴァちゃん、ネギが手を抜いたっていうのは本当なの?」

 

「当然だ、今の私は結界こそ解けているが完全に魔力が戻っているわけではない。魔力量では坊やの方が多いんだ、現状なら私が負ける可能性だってあったんだ」

 

ギリッっと強く歯を噛み締める

闇の福音のプライドが手加減なんてことを許すはずもない

 

「もう一度聞くぞ坊や、どうして手を抜いた」

 

俯くだけだったネギ君が答える

 

「僕にもわからなくなったんです、正義の魔法使いって何なんだろうって・・・・・・」

 

ポツリポツリと本音が溢れる

 

「エヴァンジェリンさんの夢を見たとき、貴方は本当に楽しそうでした」

「呪いをかけられて学園から出れなくなっても父さんが来てくれると信じている貴方はとても眩しかった」

「最近のエヴァンジェリンさんも楽しそうでした、夢の中で見たあの時のように」

「そんな、楽しそうにしているエヴァンジェリンさんを、僕なんかがどうにかする権利なんてないんです」

「僕が目指した正義の魔法使いは、なんだったのか・・・・・・」

「そんな考えを持った時、悠斗さんが眩しく見えたんです」

「魔法使いのルールなんかに縛られることなく、自由に過ごすあなたが」

「羨ましいと思いました、エヴァンジェリンさんとも普通に会話できるあなたが、魔法使いではないあなたが」

「教えてください・・・・・・僕は正義の魔法使いを目指してどうすればいいんでしょうか・・・・・・っ」

 

最後の方は嗚咽だった、言葉を聞き取る事ができず、聞こえたのは鳴き声だけ

頭を抱えた、まさか彼に俺がそんな風に見えていたとは

誰も答えない、ネギ君の言葉に答えない

しかし俺は答えなければいけない、彼に違う光を与えた人物として

 

「あー、ネギ君。君は最初なんで正義の魔法使いになろうとしたんだい?」

 

「僕が正義の魔法使いを目指す切欠になったのは、僕の住んでいた村が悪魔に襲われた事が切欠です」

 

彼は己の過去を語りだす、六年前のあの日、何があったのかを

 

「そんな父さんの姿を見て、石にされてしまった人達を見て、僕は正義の魔法使いになろうと思いました」

 

ふむ・・・・・・

 

「さっぱりわからん」

 

「「「「!?」」」」

 

「ネギ君はさ、正義の魔法使いになって石にされてしまった人達を助けたい、行方不明の父親を探し出したい。これが目的なんだよね」

 

「そうです、僕は父さんを見つけたい。石になった人たちを助けたい」

 

「本当に?」

 

「こんな時に嘘なんてついてどうするんですか!」

 

叫ぶ、しかし俺は気にせずに話し続ける

 

「確かにその二つも重要かもしれないけど、あと一つ忘れてるんじゃない?」

 

あと一つ、そのひとつが問題なのかもしれない




さてシリアス始めてみましたが
書いてる最中に何度もやり直しを入れなんとかできました
これはおかしいんじゃねってとこがあると思いますけど暖かい目で見守ってください

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