デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供   作:noppera

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第30話 光の修道女 シスタモンブラン

 ブランの案内に従って暫くして、俺達はブランが拠点しているという洞窟に到達した。

 洞窟はメカノリモンが入れる幅ではなったので、俺は操縦席から降りてからブランの後に続いて洞窟の中へと入った。

 少し進むと生活スペースに到着し、椅子と机、そしてハンモックがつるされている空間に入った。

 その奥にも洞窟は続いているが、その奥はダークエリアとデジタルワールドをつなぐトンネルになっているらしい。

 

「どうぞ、掛けてください。お茶をどうぞ」

 

「ありがとな。じゃあ、まずこっちの事情から話すか……」

 

 俺は対面に座っているブランに、俺が選ばれし子供じゃないといこと、これまでの選ばれし子供達の行動を掻い摘んで話し、そして俺がここにいる理由を説明した。

 ナノモンの事は話すか話さないか迷ったが、どこから真相が漏れ出るのか分からないので誤魔化して説明することにした。

 パスワードは探索していたらたまたま手に入れることができ、そして丸一週間を使って治療法を確立したことにした。

 ブランは特に疑問を持たず、「勉強熱心ですね~」っと関心する言葉を呟くだけだった。

 

「……っていうわけで、俺はここにウイルスデータを持つアイテムを探しに来たんだ」

 

「そうなんですか……パートナーのためここまでくるなんて、パートナーをとても大切にしてるんですね」

 

「まぁ、今までもこれからも一緒にいる仲間だし。それに戦闘面はどうしてもあいつらに頼りきりになっちゃうし、こういう形で応えてやらないとな」

 

「良い心がけだと思います……では、私の事情もお話しますね」

 

 ブランはお茶を入れ直すと、姿勢を正して話を始める体制となった。

 

「まず、私がここに来た理由ですが……お姉ちゃんを探しに来たんです」

 

「姉がいるのか?」

 

「はい! 名前はシスタモンノワールと言って、何時も私を守ってくれて、明るくてかっこよくて、自慢のお姉ちゃんなんです!」

 

 ブランが姉であるノワールを紹介するときの表情は輝いていて、ブランはノワールの事をほんとによく慕っているということがすぐに分かった。

 しかしその顔は直ぐに困ったような表情になってしまった。

 

「そのお姉ちゃんなんですが……あるデジモンのことを追ってこのダークエリアに1人で下りてきたんです」

 

「姉もブランと同じように人、いやデジモン探しか?」

 

「う~ん……デジモン探しと言うとちょっと語弊が……そうですね、私の身の上から話しましょう」

 

 聞くところによると、ブランはロイヤルナイツの1人に数えられる聖騎士型デジモン、ガンクゥモンと一緒に旅をしていてシスタモン姉妹の他にもハックモンというデジモンも一緒にいるらしい。

 ハックモンというのはガンクゥモンの元で修行を受けているデジモンで、成長期でも完全体と渡り合える実力を持っているらしい。

 

「ガンクゥモン様には路頭に迷って行き場のなかった私たち姉妹を助けてもらったんです。その恩を返すために、私たち姉妹はガンクゥモン様に付き従っているんです」

 

「なるほど……ロイヤルナイツってことは、強くて立派なデジモンなんだろうな」

 

「はい! ……ですが、今のロイヤルナイツはガンクゥモン様だけなんです」

 

「え? それはロイヤルナイツが今は1人だけってこと?」

 

「残念ながらそうなんです……」

 

 確か資料によればロイヤルナイツは、12体の究極体デジモンとその個性的な面々を抑止するためのデジモン1体の合計13体で構成される組織だったはずだ。

 資料には数体しか詳しい記述がなかったが、そのデジモン達は絶大な力を持っていると書かれていた。

 その強力無比な騎士団が、今はガンクゥモンただ1人……いや、抑止となるデジモンは基本、表に出ないらしいから合計2体となっているかもしれない。

 それにしてもそのロイヤルナイツがこの状態になるとは、一体何があったのだろうか?

 

「話は遥か昔にまで遡ります。このダークエリアでは、七大魔王と呼ばれるデジモン達がお互いに長く争ってました」

 

 七大魔王デジモン……研究所にあった資料、ダークエリア調書にも書かれていたな。

 たしか長く争っていたけど、資料が記述された1万年前の時点でその争いは沈静化したって書かれていた。

 

「その七大魔王デジモン達が、ダークエリアでの争いをやめて、それぞれが地上であるデジタルワールドに向かって侵攻してきたんです」

 

「今までダークエリアにいたのに、なんで急に……」

 

「理由は定かではありませんが、魔王の1体であるルーチェモンが唱えた、現世界の破壊と新たなる新世界を創造するという話に他の魔王が興味を示したらしいです。しかも、その考えにダークエリアにいた他のデジモンも呼応して、ダークエリアからの大侵攻が起きたんです」

 

「もちろん、どうにかするために動いたんだよな?」

 

「はい。ロイヤルナイツ、天使型デジモン、ウイルスバスターズが総動員でこの侵攻を防ぐために出動しました。そして激戦の末、何とか七大魔王デジモンを撃破、もしくはそのまま封印して、さらに他のデジモンが七大魔王に進化できなくする封印まで施したんです」

 

「ということは、勝ったのか?」

 

「結果だけ言えば勝ちですが、この戦いでロイヤルナイツがすべて戦死してしまい、封印を施したのも、その後の守護を任された四聖獣デジモンと呼ばれるデジモン達です」

 

 なるほど、ロイヤルナイツは遥か昔の戦争で全て空席となってしまい、また求められる実力も高いから今まで補充がきかなかったといことか。

 

「ガンクゥモンはその時の記憶をデジタマで受け継いでるのか?」

 

「いえ、今のガンクゥモン様は先代とはまったく関係のないデジモンでした。その戦いの事はつい最近、デジタルワールドの安定を望むものに聞きました」

 

「!?……デジタルワールドの安定を望むもの?」

 

 俺はブランに対して怪訝そうに返してみたが、内心は酷く驚いていた。

 まさかその名前がここで出て来るとは予想していなかったからだ。

 デジタルワールドの安定を望むもの……原作では選ばれし子供達を選定し、そしてデジタルワールドに呼び寄せた張本人だ。

 具体的な姿を持っておらず、ヒカリちゃんの体を借りることで太一先輩達に選ばれし子供達のルーツを語り、その後は現れることはなかったはずだ。

 

「その方は実態を持っていなくて、私の体を借りることでしか話ができないんです。あ、選ばれし子供達のことも聞いたみたいです。私は体を貸している時の記憶がないので、後から聞く形になりましたけど」

 

 この話からすると、ブランはヒカリちゃんと似たような性質を持っているようだ。

 

「ということは、ガンクゥモンがそいつに接触したのはブランに出会った後か?」

 

「はい。その時にガンクゥモン様はロイヤルナイツの再結成を誓い、ロイヤルナイツになるに相応しいデジモンを探すために旅を始めました。その旅で出会ったのが、ハックモンなんです」

 

「なるほど……ロイヤルナイツがガンクゥモン1体だけの理由は分かった。だけど、それがブランの姉と何の関係があるんだ?」

 

「……実は、関係があるのは七大魔王の方なんです」

 

「え? 七大魔王ってもう存在しないんじゃ……」

 

「はい。ですが、念のためということでかつて戦った七大魔王のことも詳しく聞きました。その時に、お姉ちゃんは魔王の1体に憧れてしまったんです……そのデジモンの名前は、ベルゼブモンです」

 

 ブランは疲れたように溜息を吐きながらその名前を口にした。

 ベルゼブモン……ダークエリアを調べている過程でもその名前は出てきた。

 記述によれば、他の七大魔王と違って軍勢を率いるという事をしない孤高の存在だったらしい。

 性格は無慈悲であり、一度でも対等と認めた敵ならばいくらが命乞いをしようとも確実に止めを刺すというが、逆に弱者を攻撃する事は高いプライドが許さなかったらしい。

 前世ではたしかデジモンテイマーズに登場していたはずだ。

 俺はそのあたりからアニメを見ないようになってしまったけど、そんな俺でも知っていたという事はかなりの人気があったんじゃないかと思う。

 

「お姉ちゃんは2丁拳銃のアンソニーっていう銃を武器にしていて、同じように2丁のショットガンを持って戦うベルゼブモンに憧れたんです」

 

「でも、繰り返しになるけどベルゼブモンはもういないんだろう?」

 

「そう言ってもお姉ちゃんは聞かなくて、ダークエリアへの入り口を見つけたのをきっかけに、「ベルゼブモン様の聖地巡礼!」って言って飛び出して行っちゃたんです……」

 

「追っかけかよ……」

 

「お姉ちゃんはウイルスだから、魔王型デジモンに憧れるのも不思議じゃないって言ったらそうなんですけど……」

 

「ガンクゥモンは止めなかったのか?」

 

「止めようとしましたけど、本気になったお姉ちゃんはガンクゥモン様でも中々捕まえられないほど素早いんです。あの時は不意も突かれちゃって、結局ダークエリア入りを止められませんでした」

 

「追ってこないのか?」

 

「もちろん追ってこようとしましたが、ガンクゥモン様とハックモンはダークエリアの管理者であるアヌビモンに止められたんです。かつてダークエリアに大損害を与えたロイヤルナイツとその候補は通せないって……」

 

 いや、勝手に突っ込んできたのは七大魔王とそのお仲間達の方だろ。

 内乱は放置しているのにこっちは駄目なのかよ。

 

「2人はすぐ戻ってくるだろうと言ってますけど、私はお姉ちゃんが心配でここまで来たんです」

 

「そういう事だったのか……で、姉の居場所の見当はついたのか?」

 

「それが、ワクチンの私だとこのダークエリアではとにかく浮いてしまって……今日は勇気を出して情報を集めようと思った矢先にあんなことに……あ! そうえばまだお礼を言ってませんでした! あの時は本当にありがとうございました!」

 

「どういたしまして。さて、じゃあまず情報を集めないといけないのか……」

 

「ここから少し行ったところに町があるみたいです。そこでなら何か分かるかもしれません」

 

 町があるのか……じゃあとりあえずはそこで情報収集をすることになりそうだ。

 

「じゃあ、そこに行ってみるか。今から出発するか?」

 

「え? あの……協力してくれるんですか?」

 

「ワクチンのブランだけじゃあ姉の手がかりを見つけられそうになさそうだし、俺の目的のついでになるけど、それでよかったら協力するぞ」

 

「あ、ありがとうございます! 私ってほんとは引っ込み思案なんで、町に着いたとしてもちゃんと話が聞けるか不安だったんです」

 

 ブランはこちらの申し出に対して願ってもないものだと言わんばかりの喜びようを見せた。

 まぁ、ここはウイルスの楽園だから、ワクチンは完全にアウェーということで不安があったのだろう。

 

「あ、そうえばブランはこのダークエリアにいて大丈夫なのか?」

 

「え?……あぁ、空気中のウイルスデータのことですか? それなら、ガンクゥモン様に加護をもらっているので問題ないです」

 

「なら大丈夫か……よし、さっそく出発と行くか」

 

「はい!」

 

 俺達は席を立ち、メカノリモンが待っている洞窟の入り口に向かって歩いて行った。

 入り口に戻るとメカノリモンが直立不動の体勢で俺を待ってくれていた。

 

「オ話ハ終ワリマシタカ?」

 

「あぁ、詳しい事情は操縦席で話すけど、ここから少し行ったところに町があるらしいから、そこに移動する」

 

了解(ラジャー)

 

「あ、私は姿を隠さないと……ハンモックで何とかなるかな?」

 

「いや、メカノリモンの操縦席は俺が座ってもだいぶ余裕があるから、ブランも一緒に乗ればいい」

 

「い、いいんですか? わぁ! メカノリモンって一度乗ってみたかったんです!」

 

 まずは俺が操縦席に乗り、その後にブランが操縦席に乗り込んできて、操縦席は少々窮屈になってしまったが、操縦するには問題ない。

 ブランはメカノリモンの計器類をもの珍しそうに見ている。

 

「よし、じゃあいくぞ!」

 

「はい!」

 

 俺はメカノリモンを離陸させ、ブランの案内でダークエリアに存在する町へと向かった。

 

……………

………

……

 

 飛行を開始してから暫くして、薄暗い大地の中で照明が灯っている場所があった。

 目を凝らしてよく見てみると、岩壁をくり抜いて作られた住居があり、そこには多くのデジモン達がいた。

 

「着いたみたいだな」

 

「ここがダークエリアの町なんですね……ちょっと殺風景ですね」

 

「まぁこんな土地だししょうがないだろ。さて、適当なところに着陸して町に入るか」

 

 俺はメカノリモン少し離れた場所に着陸させ、歩いて町に入った。

 やはり町には、ゴブリモンやガジモンのようなウイルスデジモンしかいなかった。

 町は岩をくり抜いてつくられた建物が大半をしめていて殺風景ではあるものの、そこにいるデジモン達には結構な活気や喧騒があった。

 暫く町の様子を眺めながら歩いていると、近場の酒場と思われる場所から景気のいい声が聞こえて来た。

 

「げっひゃひゃひゃ!おーい、もっと酒持ってこーい!」

「お前、金は良いのかよ?」

「あぁん? お前知らねぇのか? 最近このあたりのボスが変わってよ~、そいつの兵隊に入ると金払いがいいんだよ。今この町は、そいつから金貰って飲んだくれてる連中ばかりだよ」

「まじかよ!? 俺がちょっと遠出してる間にそんなことになってんのかよ……でも兵隊って厳しくねぇか?」

「いやぁ~、数が多いから少しくらい手を抜いてもバレねぇんだ。しかも最近はそこら辺の山賊を倒す仕事だから、数で押せば楽勝だぜ」

「そんなに多いのか?」

「あぁ。新しいボスはかなり大きい勢力らしいぜ? 何でもダークエリアを統一しそうなほどとか」

「へぇ~、前のボスは相当強かったと思うけど……時代の流れかねぇ~」

 

 会話の内容を聞くと、どうやらこの辺りのボスが変わったらしい。

 そのボスはどうやら金払いがよく、今この町はそのおかげでかなり景気がよくなっているらしい。

 

「うぅ、怖い顔のデジモンばかりです……」

 

「おう? あんたよそ者かい?」

 

「ひぃ!?」

 

 メカノリモンのメインカメラにフーガモンの凶悪な顔がアップで映し出され、ブランは引きつった表情で悲鳴を上げてしまった。

 メカノリモンを見て何も言わないところを見ると、ブランを脅していたフーガモンとは別個体のようだ。

 

「ん? 女の声?」

 

「……気ノセイデショウ」

 

「そうか? まぁ、何にせよこのヌルの町によく来たな」

 

 フーガモンのただでさえ赤い顔はさらに紅潮していて、足元もふらついていて酔っ払っているようだ。

 そしてこの町の名前はヌルと言う名前らしい。

 

「随分景気ガイイデスネ。ボスノ交代ガ起キタラシイデスネ」

 

「よく知ってるじゃねぇか。俺もそのボスの兵隊に入ってよぉ、こうやっていい思いしてんだよ。お前はなんでこの町に来たんだ?」

 

「宝探シデス。事情ガアッテ、強力なウイルスデータヲ持ツアイテムヲ探シテイマス」

 

「宝~? まぁ、ロマンはあるが……金のためならボスの兵隊になった方が手っ取り早いぜ?」

 

「金銭ガ目的デハナイデス」

 

「ふ~ん。まぁ、そういうことなら町の情報屋のアグモンのところに行った方がいいぜ。ちょうどそこの酒場で飯食ってるぜ」

 

「分カリマシタ。アリガトウゴザイマス」

 

「へへ、今日の俺は気分がいいからな! これくらいはいいってことよ。じゃあな!」

 

 フーガモンは俺達に情報屋の居場所を教えてくれると、千鳥足で喧騒の中へと消えて行った。

 それを見送ると、俺達は教えてもらった酒場にメカノリモンの足を向けさせ、そこで食事をしていた黒い体表のアグモンに声をかけた。

 

「……チョットヨロシイデスカ?」

 

「ん? 客かい?」

 

 黒いアグモンは食事をやめて軽快な声で答えると、メカノリモンの体を観察するように視線を上から下へと移した。

 

「……で? 何の情報が聞きたいんだ?」

 

「事情ガアッテ、強イウイルスデータヲ持ツアイテムヲ探シテイマス」

 

「ということは宝探しか……情報はあるが、対価はどうする?」

 

 やっぱり代金を要求されるよな……さて、たしかデジタルワールドの通貨はドルだったはずだけど、俺はドルどころか円も持ってない。

 どうしたものか……

 

「……お金なら少しありますけど」

 

「いや、対価って言ってたから物でもいいのかもしれない。ダメもとで食料を出してみるか」

 

「……食料ナラアルノデスガ」

 

「食料って……このダークエリアじゃ上のものじゃないとほとんど価値ないぜ?」

 

「ソノ上ノ食料デス」

 

「ほう? 珍しいもん持ってるな。見せてもらってもいいかい?」

 

 なるほど、この不毛な大地だと上のような環境で採れる食料は珍しいようだ。

 メカノリモンのハッチを少し開き、リュックの中にある果実を外から伸びてきたメカノリモンのアームに手渡し、それをアグモンに渡した。

 

「……たしかに上の食べ物だな。なんだ、あんた上の住人だったのか。こんなところまで来るとは物好きだねぇ~。あんなことが茶飯事な世界なのに」

 

 黒いアグモンは果実を物珍しそうに見て、納得が行ったように頷いた後にある方向を指さした。

 そこは町の広場になっているようで、そこに人だかりができていて、その中心はここからは見えないが、どうやら誰かが喧嘩をしているようだった。

 

「おらぁ!!」

「ゲヒィ!?」

「そらぁ!!」

「ダハァ!?」

「もういっちょう!!」

「どわあああ!?」

「この程度の奴らで、あたしの怒りが収まると思うなあああ!!」

「姉貴が乱心だぁ! 前のボスに随分と懐いてたからなぁ~」

「こりゃあ、当分収まりそうにねぇぞ!」

 

 広場の中心から喧嘩で負かされたゴブリモンやガジモン、さらにオーガモンの亜種デジモン達が勢いよく飛んでいっている。

 喧嘩相手は声と一人称からして女性型デジモンのようだが、あの様子だとかなりの腕っぷしらしい。

 

「……事情ガアルノデ。ソレヨリ、何故私ガ上ノ住人ト?」

 

「上の食べ物の価値が分からねぇのは上の住人くらいだよ。暫くここにいるなら、覚えといたほうがいい。 あと、上への入り口も結構な値打ちになるぜ?」

 

「あ、ダークエリアとデジタルワールドを繋ぐゲートはそこのデジモンに教えない方がいいってガンクゥモン様が言ってました」

 

「じゃあ教えない方がいいな。食料で何とかしよう」

 

「……イエ、ソレハ遠慮シマス」

 

「そいつは残念だ。さて、強力なウイルスデータがある場所だったな。だったら、七大魔王の元棲家に行ってみたらどうだ?」

 

「ソレハ何所ニ?」

 

「この町から暫く東に行ったところだな。あんた飛べるみたいだし、そんなに時間は掛からないだろう。そこの名前はブラックルータパレス……「暴食」の魔王、ベルゼブモンが封印されている場所だ」

 

「ベルゼブモン!? もしかしたら……」

 

「あぁ、メカノリモン」

 

「……アリガトウゴザイマス。ソレトモウ1ツ、コノ辺リデ2丁拳銃ヲ持ッタ女性型デジモンヲ見カケマセンデシタカ?」

 

 俺はリュックの中から2つ果物を取り出し、それをメカノリモンのアームに手渡して、それをアグモンに渡してさらなる情報を要求した。

 個人情報になるので少し多い方がいいかなと思って2つ手渡した。

 

「へへ……あぁ、つい最近に見たことあるぜ。この町を出て、東の方に向かっていったぜ」

 

 東という事は、さっき黒いアグモンが言ってたベルゼブモンの封印場所となるブラックルータパレスがある方向と同じだ。

 案外早く情報が得られたな。

 

「それってお姉ちゃんです! そこに信人さんの目的のものもあるみたいですし、はやく行きましょう!」

 

「アリガトウゴザイマシタ」

 

「何の……あー、まだ1つブラックルータパレスの情報があるんだけど?」

 

「オイクラデスカ?」

 

「そうだな~5つってとこか?」

 

「えぇ~、ちょっと出したくないぞ」

 

 リュックに入っているのは所謂おやつに分類されるものだからあまり持ってきていないし、食べるのを少し楽しみにしていたからこれ以上は出したくない。

 しかも結構レートが上がった……もしかして上のデジモンだからってぼったくられてるかもしれない。

 場所が分かればもういいだろうし、この情報は買わなくてもいいかな。

 

「イエ、結構デス」

 

「そう? 言っとくけど、俺は商品の値付けに対しては結構誠実な方だぜ?」

 

「急イデイマスノデ」

 

「ならしゃあねぇな。最近はここらの山賊たちが狩られてるから、道中やパレスは安全と考えていいかもな。さて、デザートももらったことだし、あのじゃじゃ馬相手に商売して今日は上りとするか」

 

 いつの間にか食事を終えていた黒いアグモンは席を立ち、未だに喧騒の渦にある広場の方に向かって行った。

 

「よし、俺達も行くか……ん?」

 

「どうしたんですか?」

 

 俺もメカノリモンをこの場所から動かして町の外に向かって歩き出しところで、レーダーで妙な動きをしてる反応があった。

 俺達が動き出すのと同時に動き出し、そして酒場から出た俺達の後をつけてくる反応があった。

 そいつがいた位置は黒いアグモンがいたすぐ近くの席に座っていたようで、もしかしたら俺達の会話が聞こえていたのかもしれない。

 ……俺達が上の住人だからって何かを狙っているのだろうか。

 

「あとをつけられてるっぽい」

 

「えぇ!?」

 

「ちょっと後ろを見て確認してくれ」

 

「はい……あれかな? えっと、マントやフードで姿を隠していてどんなデジモンかよく分からないです。人型ってことくらいしか……」

 

 敵の正体は分からないということか……この場所では喧嘩は茶飯事らしいから、もしかしたらこの往来でも問答無用で仕掛けてくるかもしれない。

 俺はできるだけ急ぎで町の外に向かい、そして外へ出ると同時にすぐに飛び立った。

 今まで俺達をつけていた反応は歩みを止め、空に向かう俺達を見ると踵を返して町の中に戻って行ったようだ。

 

「何だったんだ?」

 

「でも、空を飛べないみたいですし、もう追ってこないですよ」

 

「だといいけどな……」

 

 俺は一抹の不安を抱えながら、ベルゼブモンが封印されているというブラックルータパレスへと向かった。





ほとんど会話で終わってしまいました。
次回は戦闘があると思います。

感想批評をお待ちしております。

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