デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供   作:noppera

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やっとデビモン戦まで書くことができて、ファイル島編もクライマックスです。


第14話 デビモンとの決戦! 闇を晴らす2つの光

「…………うぅん?」

 

「あ、起きたのかい信人君?」

 

「丈先輩……あ!俺、寝てました?」

 

「そうよ、結構疲れてたみたい」

 

 寝ぼけ眼の俺にバードラモンの足に掴まっている空先輩と丈先輩が声をかけてきた。

 どうやら俺はムゲンマウンテンへと移動している途中でイッカクモンの背の上で寝てしまっていたようだ。

 そうえばデビモンの館では警戒していて眠れなかったからな……その疲れがここできたのかもしれない。

 

「すいません、どれくらい経ちましたか?」

 

「前を見なよ、ムゲンマウンテンにはもう少し行けば着くはずだよ」

 

 丈先輩に促されて前を見ると、出発したときよりムゲンマウンテンがかなり近くに見えていた。

 ムゲンマウンテンは特に変わった様子はなく、まだデビモンとの決戦は始まってはいないようだ。

 間に合わなくなるという事態は避けられそうだ。

 さて、これからデビモン戦になるわけだけど……どうやったら原作改変できるか特に案がないんだよな……

 黒い歯車の力を吸収して巨大化したデビモンは、選ばれし子供たちのデジモンを一気に相手をしても圧倒することができる力を持っている。

 ドラコモン達だけじゃ状況を覆すことは難しそうだ。

 しかもオーガモンを吸収しているから死角もなくなるから、館でやったような奇襲もできないだろう。

 唯一期待できるのは、館でレオモンが負わせた傷だけど、ソウルモンの時のことを考えると回復してると考えた方がいいだろう。

 こうなると手詰まりになるわけだが……なんかこっちに都合のいいイレギュラーとか起こらないだろうか。

 

「……見て!ムゲンマウンテンの様子がおかしいわ!」

 

 空先輩の声につられてムゲンマウンテンの方に顔を向けると、ムゲンマウンテンのてっぺんに黒い闇の渦が発生していた。

 よくよく目の凝らすと、海の上をかなりの勢いでムゲンマウンテンに向かって滑空する黒い歯車の姿も見えた。

 あれはデビモンが暗黒の力を各地から集めている証拠だ。

 

「一体、何?」

 

「暗黒の力が集まっていく……」

 

「もう戦いがはじまっているのかも」

 

「急いだ方がいいでしょう。これ以上スピードは出ますか?」

 

「大丈夫!ちょっと飛ばすよ空!」

 

「お願いバードラモン!」

 

「丈、信人達しっかり捕まって!」

 

「分かった!」

 

 バードラモンとイッカクモンは一段とスピードを上げてムゲンマウンテンへと向かった。

 

……………

………

……

 

「何よあれ!!」

 

 俺達がムゲンマウンテンに辿り着くと同時に頂上が崩れ、巨大化したデビモンが姿を現した。

 さらに、先ほどまで夕暮れだった風景は闇に支配されてしまった。

 これは夜になったというわけではなく、闇の力が空を覆ってしまっているようだ。

 

「あ!飛び立ちましたよ」

 

 それからしばらくしてデビモンは翼を広げて飛び上がり、山の麓に下りて行ってしまった。

 

「どこに行くんだろう?結構近いぞ」

 

「デビモンは先輩達を襲おうとしていましたから、あそこには先輩達がいるのでは?」

 

「じゃあ戦いになるってことね。バードラモン、先に行ってちょうだい」

 

「イッカクモンは僕と一緒に!」

 

 戦いになるとバードラモン達に乗っている俺達は邪魔になるので、ここからは下りて移動することになった。

 俺達はイッカクモンに乗っていたので丈先輩と一緒にデビモンが降り立った場所に向かった。

 

 俺達がデビモンの近くまで行ったときにはすでに先輩達とデビモンは戦闘に入っていて、デビモンが手のひらから黒い波動を放ち先輩達の体を押さえつけているところだった。

 

「あれ、先輩達ですよ!」

 

「ほんとだ!イッカクモン!」

 

「まかせて、≪ハープンバルカン≫!」

 

 デビモンが先輩達を攻撃しているのを確認したのと同時に丈先輩はイッカクモンに指示して攻撃させた。

 偶然にもその後すぐにバードラモンの攻撃を重ねることができ、巨大化したデビモンを怯ませることができた。

 その隙に先輩のデジモン達は次々に進化したので、これから本格的な戦闘になるだろう。

 

「よっしゃ、俺達も……」

 

「お前の攻撃はもっと近づかないと駄目だ。丈先輩、行ってきます!」

 

「分かった、十分気をつけるんだ!」

 

「了解です!」

 

 俺とドラコモン達は丈先輩のもとを離れてデビモンの足元に向かった。

 デビモンの足元にたどり着くと、先輩達のデジモンが各々の技でデビモンに立ち向かって行っているところだった。

 ただ、1体だけ原作には見た覚えのないデジモンがいた。

 そのデジモンは4枚の白い羽を羽ばたかせてデビモンの周りを飛び回り、隙を見ては見惚れるような剣技をもって斬りかかっていた。

 

「あれは……ダルクモンか!」

 

「チイィ!目障りな!」

 

 デビモンにあまりダメージは無いようだが、さすがに気にしはじめたデビモンはその巨大な腕を振るって風を起こし、その風によってバランスを崩したダルクモンはこちらに向かって下りてきた。

 

「信人さん!あなたも来ていたのですね」

 

「あぁ、ダルクモンはどうしてここに?」

 

「グリズモンの歓迎会の途中で島が分裂してしまい、その混乱を収拾しているときでした。私が担当していた地域に選ばれし子供の内一人が漂着したのです」

 

 恐らくそれは太一先輩かヤマト先輩だろう。

 たしかあの人達は原作では氷雪地帯に漂着していたはずだったから。

 

「そこで襲ってきた黒い歯車に操られていたデジモンを解放した後に、私はアイスサンクチュアリの代表として選ばれし子供たちに助力することを決めたのです。暗黒デジモンを相手にするなら天使型デジモンである私が適任ですので」

 

「だけど、ワルシードラモンから受けたダメージは?」

 

「アイスサンクチュアリは神聖なパワーが満ちている場所です。そこで一晩休めば、神聖な力を持つデジモンならば全回復します」

 

「おい、それよりも早く戦おうぜ!」

 

 話している間にも他のデジモン達は戦っていて、最初は威勢よく攻撃していたものの今は攻撃が効かなくて劣勢になり始めている。

 

「それもそうだ。とりあえず攻撃してみるか!」

 

「おう、≪ジ・シュルネン≫!」

「≪フルポテンシャル≫!≪デリートプログラム≫!」

「私も戦います、≪バテーム・デ・アムール≫!」

 

 ドラコモンとハグルモンの攻撃はデビモンの横っ腹に命中し、ダルクモンのその部分に向かって斬りかかった。

 しかし、デビモンはそれを気にする素振りはなく他のデジモン達を相手にしている。

 

「威力が不足しているのか……そうだ!ハグルモン、≪デリートプログラム≫の数字列はいくつまで同時に操れるようになった?」

 

「約30列ホド……」

 

 最初の時よりも少し増えているな……やっぱり戦いの中で成長して行っているようだ。

 ≪デリートプログラム≫は相手を包囲したときの数字列の数を増やすことによって威力を上げることができる。

 それをハグルモンが制御できる数字列を限界まで使って爆発を起こしてやれば、デビモンに傷を負わせることができるかもしれない。

 

「ならそれを全部使って爆発を起こす。それと、お前の加減で≪フルポテンシャル≫を使って限界まで能力の上昇をしてくれ。ただし決して無茶はするな」

 

「了解デス!」

 

「感づかれるなよ。俺達はデビモンの気を引こう」

 

「分かったぜ!」

 

「分かりました」

 

 ハグルモンは周りの木々の中に隠れ、ドラコモンとダルクモンは果敢にもデビモンに向かって行った。

 再度戦いに目を向けると、すでに先輩達のデジモンはデビモンに圧倒され始めている。

 巨大化して得たその膂力を持って先輩達のデジモンを払いのけてしまい、今だってカブテリモンはデビモンの振るった手にあたり吹き飛び、トゲモンもデビモンの攻撃の余波を受けて崖下に落ちてきてしまった。

 

「≪ベビーブレス≫!」

 

「これでどうです!」

 

 2体はデビモンの膝のあたりに攻撃したが、あまり効果は見られない。

 

「む?お前達か……あの時は私の計画を散々邪魔してくれたな」

 

 デビモンはこちらの存在にようやく気づいたようで、その巨体をこちらに向けた。

 これでデビモンの注意を引くことには成功したので、作戦はひとまず成功だ。

 

「そうえばお前も小さき選ばれし子供だったな……お前から倒してやろう!」

 

「そうはさせない!」

 

「甘いぜレオモン!」

 

「なにぃ!?」

 

 デビモンの隙を突いて背中に飛びかかったレオモンだったが、オーガモンからのまさかの攻撃で撃墜されてされて地に伏してしまう。

 その後のオーガモンの追撃でレオモンは森の中まで吹き飛ばされてしまった。

 

「お前達も鬱陶しい!」

 

「ぐわぁ!?」

 

「ドラコモン!?くぅ!」

 

 デビモンは足元にいたドラコモン達に蹴りを放った。

 何とか蹴り自体は避けることができたが、ドラコモンは風圧で崖の壁まで吹き飛ばされ、ダルクモンもバランスを崩して一旦引いた。

 

「潰れろ!」

 

「おわっと!あぶねぇ……」

 

 障害を払いのけたデビモンは俺を踏みつぶそうとしたが、何とか避けることができた。

 俺はデジヴァイスも持ってないから、原作のタケルみたいな奇跡は期待できない。

 あれを避けることができなかったらぺちゃんこだっただろう。

 

「≪メテオウィング≫!」

 

「ふん、効かんな!」

 

 この間にバードラモンはデビモンに炎の雨で攻撃したが、デビモンはそれを気にする様子もなくバードラモンを片手でつかんでしまった。

 

「その手を放しなさい!」

 

「望みどり放してやろう……そら!」

 

「え!?きゃあ!」

 

 ダルクモンは体勢を立て直してバードラモンの救出に向かったが、デビモンのバードラモンを自分に向かって投げるというまさかの攻撃に動揺して、バードラモンの体に圧されながら落ちて行った。

 

「あとはあっちか……」

 

「くぅ!≪ハープーンバルカン≫」

 

「………」

 

「うわぁ!?」

 

「イッカクモン!」

 

 バードラモンとダルクモンを片付けたデビモンは、俺を跨いでイッカクモンのところに向かい、イッカクモンを鷲掴みにした。

 さらにイッカクモンを復帰してきたカブテリモンに向かって投げつけ、これを受け止めざるおえなかったカブテリモンはイッカクモンを抱えて墜落してしまう。

 

「これでようやくお前を始末できる」

 

「前にも言ったけどな、冗談じゃない!こんなところで終わってたまるかってんだ」

 

「ふん、強がりを……もう一匹いたような気もするが、まぁいたところで成長期ごときが何かできるわけでもあるまい」

 

「その成長期にこの前隙を作りだされたのは誰だったっけ?」

 

「貴様……!」

 

 俺はデビモンのヘイトを十分稼いでいるからデビモンがタケルに目を向けることはない。

 あとはハグルモンの攻撃を待っているんだが……ちょっと早すぎたか?

 森の中から攻撃が飛んでくる気配はなかった。 

 

「その減らず口もここまでだ!」

 

「待ちなさい!その子は選ばれし子供ではありません!」

 

「何だと?」

 

 デビモンが俺を叩き潰そうとして腕を振り上げたところで、ダルクモンが横からデビモンに声をかけた。

 何かの戯言なら耳を貸さなかっただろうが、ダルクモンの言葉はデビモンにとって衝撃的なもので、耳を貸す余地は十分あったようだ。

 

「その子はデジモンを進化させる力を持っていません。その証拠に、聖なるデバイスも持ってはいません」

 

「それは本当か?」

 

「……あぁ、俺は先輩達がこっちに来る時に巻き込まれただけだ」

 

「……たしかこいつはデジモンを進化させようとする素振りを全く見せなったな……なるほど、たしかに進化をさせる力はもっていないようだ」

 

 本当はもうちょっとこっちに引き寄せていたかったのでそのことは伏せていたのだが、ハグルモンの準備ができていないようなのでそうも言ってられなくなった。

 

「ならば、今はお前に用はない。先に選ばれし子供を潰さなくては、奴が出てきてしまう」

 

 俺に対しての興味を失ったデビモンは、今度はタケルを狙った。

 できれば攻撃を受ける前に進化してほしい……原作通りの展開になるとこっちの心臓がもたない。

 

「もっとも小さき選ばれし子供……お前さえいなければ、私が恐れるものは何もないのだ!」

 

 タケルを握りつぶさんとして腕を伸ばしたデビモンだったが、そうはさせないとまずはガルルモンがデビモンの腕に飛び掛かった。

 その後次々に他のデジモンが飛び掛かってデビモンの動きを封じた。

 もちろんダルクモンとドラコモンもその中の一人で、ダルクモンはデビモンの胸に斬りかかり、ドラコモンはビーム弾攻撃をデビモンの腹に向かって撃っていた。

 

「ぐぅ……この、くたばりぞこない共があああああぁぁぁぁ!!」

 

「くぅ!!うわああああ!!」

 

 先輩達のデジモン達の必死の抵抗に焦れたデビモンはついに声を荒げて暗黒の力を解放した。

 全身から発せられた黒い波動になすすべもなく、動きを封じていたデジモンは吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐあ!いってぇ……」

 

 俺もだいぶ近くにいたため、デジモン達と一緒に吹き飛ばされて近くの木に体が叩きつけられた。

 なんとか起き上がって周りの様子を見ると、デジモン達が力なく地面に倒れ伏していた。

 

「ち…くしょう…」

 

「大丈夫かドラコモン!」

 

「体格差がありすぎる……俺の技じゃ効かない」

 

「攻撃する場所を変える。目とかに当たれば流石に効くだろう」

 

「だけどどうやって……おい、まずくねぇかあれ!」

 

 ドラコモンに促されてデビモンに目を向けた。

 それはデビモンがタケルを握りつぶそうとしているところで、必死にパタモンが抵抗していた。

 他のデジモン達もそれを見て何とか体を動かそうとすることも、うめき声が漏れるだけだった。

 ここにいる俺とドラコモンではどうすることもできない。

 原作通りに動いていくことを祈るしかないのか……!

 

「パタモーン!!」

 

「タケルー!!」

 

 タケルとパタモンの悲鳴を上げると同時に、デビモンはついにタケル達をその巨大な手で握ってしまった。

 しかしその瞬間、デビモンの手の中から眩い光が放たれた。

 デビモンはその光に怯み、タケルを握っていた手を引っ込めてしまった。

 

「パタモン進化―――エンジェモン!」

 

 その腕の中から姿を現したのは6枚の純白の輝きを放つ羽を持つ天使型デジモン、エンジェモンだった。

 どうやら原作通りに事が運んだようだ。

 実際にこうなるまで不安だったから心臓がバクバクだった……

 しかし、この後は原作通りに進んでしまうとこちらとしては困る。

 エンジェモンはできれば救ってやりたい……ハグルモンの最大火力がどれほどダメージを与えられるのかがカギになるだろう。

 

「エンジェモン様……まさかこんなところでお目にかかれるとは」

 

 いつの間にか俺の近くにいたダルクモンが驚きの声を上げた。

 

「ダルクモン、エンジェモンのことを知っているのか?」

 

 最初から知っていたけど一応問い返す。

 それにダルクモンがやけに熱っぽい視線でエンジェモンを見ているのも気になったし。

 

「天使型デジモンで彼を知らないデジモンはいません。古来よりデジタルワールドの危機には天使型デジモンを従えて現れると言い伝えられています」

 

 なるほど、どうやら天使型デジモンにとってはエンジェモンは憧れの存在らしい。

 

「おのれぇ……!もう少しだったのに!」

 

「お前の暗黒の力、消し去ってくれる!集え、聖なる力よ!」

 

「な、何のするつもりだ!?」

 

 エンジェモンが杖を掲げると、先輩達のデジヴァイスから光が放たれ、それがエンジェモンに向かって収縮していく。

 その代りに他のデジモン達は退化していき、エンジェモンから放たれる光はどんどん強くなっていく。

 

「すごい力だぜ……」

 

「エンジェモン様、自らの体を犠牲にするつもりですか!?」

 

 どんどん集まっていく光を目の前にして、ダルクモンは狼狽えながら声を出した。

 

「どういうことなんだ?」

 

「あれほどの力を使えば、いくらエンジェモン様でも体が耐えられません!ここは私が……」

 

「あ、おい!」

 

 そう言うとダルクモンが俺の隣から飛びだち、エンジェモンの隣に並び立とうとした。

 

「やめろ!そんなことをすれば、お前もただでは済まんぞ!」

 

「だが、こうするしかない。たとえわが身が……」

 

「待ってくださいエンジェモン様!」

 

「!……ダルクモン?」

 

 エンジェモンはダルクモンが来たことに驚いているようで、光の収縮は一時的に止まった。

 

「止めないでくれダルクモン、闇の力は消し去らなければならない」

 

「それは分かっています。でも、あなたには待ってくれる人がいます」

 

 ダルクモンの視線を追ってみると、そこには崖の上で不安そうな顔をしたタケルがエンジェモンを見ているところだった。

 

「例え一時の別れであっても、あの子にとっては辛いものとなるはずです。なので、私にも手伝わせてください!」

 

「しかし、この力を使えば体が……」

 

「半分程度なら、この長年鍛錬を積んできた体なら耐えられます。それに、もし命を落としても暗黒の力を振り払える尖兵になれるのなら本望です。それが私の使命なのですから」

 

 ダルクモンの目にはここから見ても分かるほどの覚悟が宿っていた。

 ダルクモンとエンジェモンは天使型デジモン同士、デジヴァイスから放たれる聖なる力を行使する術を持っているようだ。

 

「……分かった、共に戦ってくれダルクモン!」

 

「はい!共に悪しき力を撃ち滅ぼしましょう!」

 

 ダルクモンの覚悟にエンジェモンが折れ、今までエンジェモンに集っていた光がダルクモンにも集まり始めた。

 ダルクモンの左手に持つ剣は光り輝き、右手に持つ杖の先に付いている赤い宝石も眩い光を放っていた。

 聖なる力を扱うデジモンが二体……俺にとってこれは嬉しい誤算だ。

 このままうまく行けばエンジェモンがデジタマに戻ることはないかもしれない!

 

「これが聖なるデバイスの力……信じられないほどの力が湧いてきます」

 

「使い方を誤ると一気に体が崩壊する。気を付けるんだ」

 

「ふん、愚策だな。力を二つに分けてしまえば対抗できる!」

 

「≪ダークネスギア≫!」

 

「何だ?」

 

 デビモンがまさに二匹を攻撃しようとしていたとき、森の中から一つの黒い歯車が飛び出してデビモンの体に入り込んだ。

 そして、飛んできた方向からハグルモンが姿を現した。

 

「そんなところに隠れていたのか。だがお前に構っている時間はない!」

 

「…………ナラ、コレハドウデスカ?」

 

「なぁ!?なんだこれは!!」

 

 ハグルモンから歯車の軋んだ音が出ると同時に、森の中から一斉に数字列が飛び出した。

 ようやく準備ができたようだが、飛び出してきた数字列はハグルモンが事前に言っていた30という数を優に超えていた。

 闇の中で縦横無尽に舞う白く発光する数字列の帯は幻想的で、闇を払う尖兵達が集っているような風景だった。

 

「処理ノホボスベテヲ数字列ノ制御ニ投入……限界ギリギリデス」

 

「あいつ、無理するなって言ったのに……」

 

「くそ!だが貴様の技は発生に手間がかかる!囲まれてなどやるものか……」

 

 さすがのデビモンもこれに危機感を抱いたようで、空に逃げようとしている。

 前回の戦闘で技の発生メカニズムを知っているデビモンなら、一度空に逃げればこの攻撃を受けることはないだろう。

 

「……!?なぜ翼が動かない!?」

 

 しかし、空を飛ぶために動かさなければならないデビモンの禍々しい翼はピクリとも動かなかった。

 

「歯車ハ私ノ専門分野デス……アナタノ中デ回ッテイル歯車ノ中ニ私ノ制御下ニアル歯車ヲ打チ込ミマシタ」

 

「あれが……!私の黒い歯車ではなかったのか!」

 

「カミ合ッテイル歯車ノ内、1ツデモ止マレバ全体ガ止マルノハ当然デス……アナタノ(ちから)ナラスグニ無理ヤリ回スデショウガ、コレホドノ隙ガデキレバ十分デス!」

 

 ハグルモンがデビモンの疑問に答えるのと同時に、森の上で滞空していた数字列が一斉にデビモンに向かって飛んで行った。

 数字列は瞬く間にデビモンの上半身を球体上にして囲みこんでいき、包囲が完成した瞬間

 

「ぐおおおおおおお!!!」

 

 今までの起こしてきた爆発とは比にならないほどの大爆発がデビモンの上半身を中心にして巻き起こった。

 その大爆発の爆風で倒れてしまう木も出るほどだから、デビモンもただでは済まない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……くそ!」

 

 しかしデビモンはこの大爆発を受けても倒れるには至っていない。

 悪態をついて煙の中から出てきたデビモンは息が荒いものの、まだ体力的に余裕がありそうだった。

 だけど、精神的にはかなりまいっているようだ。

 なぜなら暗黒デジモンにとって致命傷となる攻撃がまだ残っているのだから……

 

「デビモン……お前の暗黒の力は大きくなりすぎた。ここで消し去ってくれる!」

 

「させるかよぉ!!」

 

「邪魔です!」

 

「ぎゃはぁ!?失礼しま~す!」

 

 主のピンチをなんとか救おうとしたオーガモンであったが、ダルクモンの杖により放たれた聖なる光によってあっさりと返り討ちにされてデビモンの体に引っ込んでしまった。

 何しに来たんだあいつ……

 

「先ほどのダメージで動けないあなたにこの攻撃を避ける力はない!ここで終わりです!」

 

「おのれぇ!潰れてしまえ、≪デスクロウ≫!」

 

 デビモンはダルクモンとエンジェモンそれぞれにその巨大な腕を伸ばして握りつぶそうとした。

 

「≪バテーム・デ・アムール≫!!」

 

「ぐあああ!?こ、こんな馬鹿な!!」

 

 しかしその腕はエンジェモン達に到達する前に、ダルクモンの光り輝く剣によって2本とも切り落とされてしまった。

 聖なる力を持った剣は暗黒の力とよほど相性が良かったのか、デビモンの巨大な腕はまるでバターのようにスパッと切れてしまった。

 

「今ですエンジェモン様!」

 

「あぁ!≪ヘブンズナックル≫!」

 

 エンジェモンの拳から放たれた聖なる光は、デビモンの体の中心を貫いた。

 それと同時に辺り一帯に光が広がっていき、ムゲンマウンテンを覆っていた闇が消し去られていく。

 この光を直接受けたデビモンが無事で済むはずがなく、足元から体の崩壊が始まった。

 対するエンジェモンは原作のように光の粒子となって消えていくようなことはなく、ダルクモンの体にも異常は見られなかった。

 

「私の完敗だ……聖なる力を持つデジモンを覚醒させてしまうとは。だが、暗黒の力が広がっているのはファイル島だけではない!海の向こうには私以上に強力な暗黒の力を持ったデジモンがいる!果たして、次もこううまくいくかな?」

 

 デビモンはまだ戦いが終わっていないことを示した後に、俺の方に顔を向けた。

 これは予想外だったので俺は少し体を強張らせながらデビモンを見た。

 

「貴様も愚かな奴だ。本来なら関係ないのに光と闇の戦いに足を踏み込むとは……運命はお前を逃がさないぞ」

 

「そんなことか……たしかに最初は隠れていようと思ったけど、一度それで痛い目見てるからな。運命から逃げるつもりもない、返り討ちにしてやる」

 

 もちろん一度目というのは俺がデジタルワールドに来てしまったことだ。

 まぁあの時は隠れていたからというより油断してのこのこと巣穴から出てきたという感じだったが……

 

「クククッ、その威勢が何時なくなるか見ることができなくて残念だよ」

 

 デビモンはある程度俺の答えを予想していたのか、軽く笑って憎まれ口をたたくだけでそれ以上は何も言ってこなかった。

 すでにデビモンの体の崩壊は胸のあたりまで到達していて、もうデビモンにあまり時間がないことを物語っていた。

 

「闇は滅びない!いつか私をはるかに超える暗黒の力を持つものが、お前達を叩き潰すだろう!ハッハッハッハッハッ……」

 

 デビモンは不吉な言葉を残し、ムゲンマウンテンを覆っていた闇とともに消え去った。




エンジェモン生存でデビモン撃破です。
戦闘描写がちょっと短かったかな~?
まぁでも原作では戦闘に入ってから10分くらいで倒されていたしこんなもんかな?

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