戦闘シーンに入るの、かな?
まぁ短いですが…どうぞ!
あれから龍一は神奈月の手を取りながら人の波を縫う様に歩き、なんとか人のいない場所を見つけたため、足を止める。
そして龍一は後ろの神奈月の様子を見る。
神奈月の顔は血の気が引いたように酷く青褪めており、困惑した表情を浮かべていた。
「は、はははは…。
や、やだなぁ〜先輩…。
私を騙そうとしたってそうはいきませんよ…?
だいたい私はホラーとかすっごく苦手なんですから…嘘はやめて下さいヨ。」
そう彼女がそんな表情を浮かべているのは、現在進行形でこの学園で起きている事…つまり
神奈月は乾いた笑いを上げた後、龍一が自分を騙して笑い者にしようとしているのではないか、と疑問の声を上げる。
しかし龍一からの返事は神奈月が待ち望んでいた答えではなかった。
「神奈月さん、俺がさっき言ったことは紛れもない事実だ。
俺は確かにこの目で悲惨な光景を見たんだ!
だから俺達は今は生き残るための行動をしなければならないんだ‼︎」
龍一は神奈月の両肩をガシッと掴み、紅の眼光で神奈月の瞳を射抜く。
神奈月は両肩をガシッと掴まれた際、ビクッと肩が跳ね上げたが、龍一の真剣な顔と曇りのない瞳を正面から受けたせいか、先ほど自身が否定していた…いや、否定していたかった龍一の話が真実なのだと始めて理解した。
しかし、やはり心の何処かに信じられない…信じたくないという心が残っているのか、龍一にまたもや否定の声を上げる。
「私はやっぱり信じられま『ギャァァァァアアアア』…。」
しかし彼女が言葉を言い切る前にどこからともなく、もはや性別すら分からないほどの悲鳴が上がった。
そのせいで彼女の表情はよりいっそう青くなり、目尻に涙を溜めて屈み込んでしまった。
そんな神奈月を見て龍一は彼女の頭に優しく手をやり、口を開く。
「大丈夫だ…俺がそばにいるぞ。
大丈夫だ…俺が守るから。
なんたって俺は…最強、なのだから。」
龍一の穏やかな笑みを見て涙を流す神奈月は龍一の胸に飛び込み、心の中にある恐怖心を追い出すかのようにさらに涙を流した。
(チッ‼︎さっきの悲鳴はなかなかに近かった…。
今は生き残ることが大切だ…孝たちは心配だが神奈月さんもいるんだ、まずはこの学園からの脱出を優先的にするべきだろう。
ならば更に奥の管理棟からの脱出が好ましいだろうな。)
龍一は神奈月を腕の中に抱いたまま、思考を頭の中で走らせていた。
ーーーーーーーーーー
「…もう……大丈夫です。
ありがとうございました…。」
神奈月は真っ赤に染めた瞳を手で一拭いすると、笑みを浮かべて龍一の胸からそっと静かに離れた。
「本当に大丈夫か?
今なら更に5分サービスしとくぞ?」
龍一は場を和ますためか、戯けたように冗談を口にする。
その冗談は効果があったらしく…
「フフッ。
有り難いお話ですが今は遠慮させていただきます。」
神奈月は先ほどの乾いた笑いではなく、心の底からの笑みを浮かべた後、龍一の冗談を丁寧に断わった。
龍一はそれに対して「それは残念…。」と、また戯けて返した。
そのやり取りが面白かったのか2人はククッと笑いを堪えたような笑みを浮かべて笑いあった。
しかし突然、龍一がキッと目を鋭くさせるとある方向を睨み付けた。
「せ、先輩?」
龍一のあまりの変わりように驚きを隠せない表情で龍一の名を呼ぶ。
が、龍一は一方を鋭く睨んだままで神奈月の呼ぶ声に反応をしない。
そんな龍一を怪訝に思ったのか、龍一が鋭く見据える方に神奈月も釣られるように視線を向ける。
そこに居たのは男子生徒だった。
廊下ということもあり、30m近く距離はあるようだが足を引きずりながらも徐々に徐々にとこちら側に近づいて来ている。
顔は下を向いているせいで、確認することができない。
そんな男子生徒を見た神奈月は…
「先輩!
あの人きっと、足の怪我で逃げ遅れたんですよ!
その証拠に…ほら、右足を引きずっているじゃないですか!
あっ、血も出ているようですし肩を貸してあげないと‼︎」
そんなことを口にしながら男子生徒に近づいて行こうとする神奈月の前に手がスッと横から行くてを阻む。
「待て。」
神奈月の行くてを阻み、一言だけ呟くように口にする龍一。
「そこの男子生徒!
学年、組、名前を述べろ‼︎」
「………。」
男子生徒は龍一の言葉に返事をすることなく、ゆっくりゆっくりと近づいて来る。
その奇妙さと異常さにようやく気が付いたのか、神奈月は龍一の後ろに周り、龍一の脇腹の位置から覗き込むように男子生徒を見据える?
「もう一度聞くぞ!
学年、組、名前を述べろ‼︎」
「……………。」
先ほどよりも声を張り上げ、怒鳴りつけるように声を出す龍一だが、やはり返事はない。
龍一は矢筒からスッと無駄一つ無い動きで矢を抜き去ると、左足を前に、右足を後ろにし、やや半身の体勢で弓を構え、右手でグッと弦を引く。
「せ、先輩⁉︎」
龍一の行動に目を見開き、驚きの声を上げる。
「止まれ!
それ以上こちらに近づくな!」
「…………。」
「これが最終宣告だ!
それ以上近づくな‼︎」
「……………。」
龍一の最終宣告を聞いてなを、足を止めない男子生徒。
龍一はその男子生徒目掛けて、めいいっぱい引いた弦を離し、矢を放つ。
その矢はヒュッと風を切る音だけを鳴らし、男子生徒の左太ももに突き刺さるとその肉を掻き分けて太ももの裏から飛び抜けて行った。
龍一の創造した弓はコンパウンドボウと呼ばれる弓である。
あの有名な映画「ランボー 怒りの脱出」のヘリコプターを爆撃した際に使っていた弓である。
残念ながらランボーが使っていた弓はコンパウンドボウのなかでもトルクボウという種類の弓であるのに対して、龍一が創造した弓は当時アメリカで競技用などに使われている弓である。
しかし強力なテンションのワイヤーを弦に使用されているため、威力は折り紙付きの上に大型ボウガン並みに矢の最大到達点は数kmとされている。
「そ、そんな⁉︎」
神奈月は悲鳴に近い声を上げる。
それは龍一が男子生徒に矢を放ったことに対してではなく…男子生徒が足を射抜かれたというのに悲鳴を一つ上げることなく、さらには体勢を一瞬ぐらつかせただけであって、先ほどとまったく変わらない速度でこちらに近づいて来る。
龍一はそんな男子生徒に対して、今度は心臓目掛けて矢を放つが、先ほどと変わらず一瞬ぐらつくだけであった。
龍一はチッ!っと小さく舌打ちをすると、さらにもう一発矢を放つ。
放たれた矢は吸い込まれるように男子生徒の眉と眉の間…眉間に突き刺さると、男子生徒の脳みそをぶちまけながら後方の壁にヒビをいれながら突き刺さった。
そして男子生徒は今度こそ立ち上がることが無かった。
龍一は右の手を見つめたままニギニギと開いては握り、開いては握るを繰り返していた。
龍一は右手にある男子生徒を撃ち抜いた感触に対して何の気持ち悪さも感じず、また男子生徒を殺してしまったことに対して何の罪悪感も湧いてこなかったのだ。
それは神奈月も同じだった。
龍一が男子生徒の眉間を撃ち抜いた瞬間を見ても何の気持ち悪さも感情も湧いてこなかったのだ。
2人は自分の感情への不安を感じつつも、これからの方針に語り始めるのだった。
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