黙示録への転生者   作:空手KING

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黙示録の始まり

あれから俺達は学校に全速力で走った。

俺は余裕で間に合ったが、孝はかなりギリギリだった。

走っている間に結構な距離が開いていたようだ。

まぁ俺は毎朝ランニング、坂道ダッシュ、階段ダッシュ、たくさんの種類の筋トレを水に濡らしたマスクを付けながら行っているからな。

雨の日も強い風の日もジメジメした暑い日も毎朝だ‼︎

台風の日は流石に両親が許してくれなかったが…。

でも今日は珍しく寝坊したな…珍しくっていうより初めてのだったような…。

 

 

俺達は人口100万人級の地方都市、床主市に存在する私立高校藤美学園に入ると校門のすぐ前にある無駄に広いグラウンドの横を2人で会話しながら通り、綺麗な桜並木の間を通りながら校舎の入り口を目指した。

校舎を目指す際、桜の木が風で仰がれる度に綺麗な薄ピンク色の桜の花びらが宙をヒラヒラと舞い、木々の隙間からさす春の陽光は暖かく、心地よい。

その様は、まるで俺達を正面にある学園の校舎へと誘うかのように感じられた。

校舎に入ると2年生のクラスがある3階へと上がり、俺達2人のクラスに向かう。

ちなみに1学年9クラスで1クラス40人学級である。

俺たちが長い廊下を歩き、教室に入ると

 

「おっ‼︎孝と龍一が来た。

龍一がこんなに遅れてくるなんて珍しいな!」

「りゅ、龍一君おはよう!

龍一君が遅刻ギリギリなんて本当に珍しいね。」

「本当だよ〜、桂木が珍しく遅いから私心配しちゃったよ!」

 

クラスのほとんどに迎えられた…主に俺が…主に女子に。

俺の容姿が周りの男性より少しはイケメンだと前世から一応認識している。

よくある鈍感系な男ではないし、俺はかなりの好色だ…だから少なからず好意を寄せられていることぐらいは分かる。

このクラスにも少なからず俺に好意を寄せてくれている子もいるくらいだ。

俺はみんなに「おはよう」と明るく返し、朝珍しく寝坊したことについて話した。

俺が寝坊したことにみんな驚いた様子を見せたが、すぐに笑いに変わった。

俺はみんなと一通り挨拶すると1番前の席に座っている体が肥満体型の男に声をかけた。

 

「平野おはよう!」

 

「お、おはよう。」

 

肥満体型の男の名前は平野コータ。

彼は陰気で休み時間でもいつも1人席に座っている様な男だ。

整えるということを知らないのかという程にボサボサの髪が肩の位地らへんまで伸びていて、明らかに体を動かしていない様な体型、黒縁メガネを掛けていて、そのレンズ越しに見える瞳には覇気が見られない。

しかし俺は彼の瞳に覇気が宿る時を知っている。

それは銃について語る時だ。

銃…趣味について語る時の彼の瞳は他の誰よりも爛々と輝いている。

俺は自分の好きな事をこんなにも熱心に語れる奴を他には知らない。

俺は自分の夢や目標、自分自身のことを語れる奴が大好きだ。

語れるということは自分をしっかり理解できているということだからだ。

そういう奴は大概大きなミスを起こさない、自分の限界を知っているからだ。

だから俺は平野を友だと胸を張って言える。

俺は平野と少し会話してから、ジッとこちらを睨みつけている女のところに向かった。

睨みつけてくる様は「何で私には挨拶しに来ないのよ‼︎」と言っているようだった。

 

「高城、おはよう。」

 

「…フンッ!」

 

俺が挨拶するとそっぽを向いて、自分は不機嫌ですよっと雰囲気を出している女の名前は高城沙耶。

艶やかな綺麗なピンク色の髪を白い紐2つでリボンを作ってできたツインテール。

キッと少し釣り上がった目元の奥に輝く黄金に輝く宝石。

眉も綺麗に整えられており、スッと違和感を感じさせない絶妙な高さの鼻、綺麗な桃色でぷっくりとした柔らかそうな唇。

途轍もないほどの美少女だ。

実際に学園内でもかなり男子から人気があり、頭脳明晰でもある。

顔から分かるように性格はキツめで、彼女が人気あるのもMっ気のある男子からの場合が多い。

身長は目視で155〜158くらいで、友達の森田が言うには着痩せするタイプでグラドル並みの巨乳らしい。

まさにボンッ、キュッ、ボンッだ!

実は彼女も幼馴染であり、昔はよく2人で遊んでいた。

ちなみに彼女の父親はこの県の国粋右翼の首領でありかなり恐い。

高城はいつからか俺に対する態度がキツくなってきた。

昔は可愛かったのに…。

今も何故か頬を朱色に染めそっぽを向いている。

これはあれだな…触らぬ神に祟りなしって奴だな。

俺は踵を返し高城から離れる。

背中から痛いほどの強い視線を感じるがスルーだ…。

次に向かったのはカップルの元だった。

 

「おはよう、井豪、麗。」

 

「あぁ、おはよう龍一。」

 

「………。」

 

俺が挨拶すると爽やかな笑顔で挨拶を返してきた男は井豪永。

俺の白色に違い銀髪とは違い、完全なる銀色の髪を持つイケメン野郎だ。

俺は別に井豪と特に仲が良い訳ではないが、井豪の横に立つ女と親しかったから偶に話す。

さて、井豪の横に立ち、俺の挨拶を無視してきた女だが…

彼女の名前は宮本麗。

甘栗色の艶やかな髪を背中の真ん中の辺りまで伸ばしており、どういう構造をしているのか分からないが、頭のてっぺんから2本の触覚が伸びている。

日に当たっていないのかという程に美しく白い肌、意思の強そうな俺の瞳とはまた別に赤い瞳、絶妙なバランスで整った髪と同じ色の眉、スッと違和感を感じさせない絶妙な高さの鼻、桜色のぷっくりとした唇。

高城に負けず劣らずの美人だ。

身長は目視で165cmあるかないか程で、胸もかなり大きいがグラドル並みではない。

いや、高城と同じで着痩せするタイプかもしれない。

高城ほどではないが頭が良い。

だけど、麗は留年生…俺や孝の1つ上だ。

麗が留年したのには彼女の父親の仕事の関係で留年したとか…。

俺が無視されているのも留年したことに関係している。

麗が留年した時に孝が彼女にしつこく問い詰めたらしい、俺は彼女が留年したことについてあまり触れて欲しくなさそうだったので理由を聞くことを諦めた。

なのにだ!あのバカ孝がしつこく問い詰めたせいで俺まで巻き込まれて無視されるようになってしまった。

昔は俺の嫁になると言って、ゆびきりげんまんまでしたのに…。

まぁ話しがかなり変わるが麗の情報は森田からは手に入らない。

森田は彼氏のいないフリーの美女にしか興味を示さない。

つまり麗は彼氏持ちだということだ。

相手はみんなお気付きだろうが、麗の隣に立つ井豪だ。

ちなみに麗はまたまた俺の幼馴染であり、‘‘地球”での初恋の相手だったりする。

今はおれはなんとも思っていないが、孝が俺と同じくらいの時期から麗に惚れているらしい。

だからこそ彼女の留年の理由が気になったのだろう。

嫌われたら元も子もないだろうが…。

 

俺は1度溜め息を吐くと2人に分かれを告げて孝の元に向かう。

 

「孝、今日も授業すっぽかして屋上に行くのか⁇」

 

「うん。」

 

俺の質問に孝は首を縦に振り肯定する。

 

「そうか…今日は俺も行くわ!

なんか授業を受ける気分にならねぇ。」

 

「僕は構わないけど…龍一が授業サボるなんて珍しいな。」

 

「ば〜か、サボりじゃねぇよ。

休息だ、休息!」

 

「はいはい。」

 

俺の屁理屈に孝は苦笑いしながら受け流した。

くそッ、はいは1回だろう!

俺は内心愚痴りながらも孝と共に教室を後にした。

 

 

 

 

俺達が廊下を歩いて屋上を目指していると不意に後ろから声を掛けられた。

 

「よ、小室と桂木‼︎

またサボりか小室⁇

桂木の場合は珍しいが…」

 

その声に俺たちが振り返ると、さっきから話にたびたび登場する森田が立っていた。

 

「森田か…。

お前もサボりか?

僕は昨日あんまり寝てないんだ、授業もタルいし…。」

 

森田の問いに答えたのは孝だった。

孝は欠伸をしながら頭をボリボリと掻く。

確かに眠そうだ。

そんな孝を見て森田は悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべて、孝を指差しながら口を開いた。

 

「女にもフラれたし…か?

噂になってるぜ。

留年して同級生になった幼馴染のおねーさま、井豪とつきあってるんだろ?」

 

それは悪戯で触れてもいい話じゃないぞ⁉︎

俺が内心で慌ていると、孝が静かな声で口を開く。

 

「永は…麗が自分で決めたことだ。

それにそういうの面倒なんだよ。

ま、井豪はいい奴だし、見かけも頭もいい、スポーツも万能だ。

麗が好きになるのも当然さ。」

 

孝は儚げな笑みを浮かべた。

一瞬の沈黙…。

やっぱり空気が悪くなってしまった。

話に触れた本人も何を言っていいのか分からず困惑顔だ。

 

「僕達は屋上へ行くよ。」

 

「そっか…。

俺は寄宿舎に潜り込むよ。

んじゃまたな、小室、桂木。」

 

「「あぁ。」」

 

気まずい空気になったことを察した孝の1言で森田と別れ、また俺達は屋上に向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、気持ちいい!」

 

俺は屋上に着くと、コンクリートを背に大の字になりながら、雲一つ無い青い空を仰ぎ見る。

孝は現在屋上の柵にもたれかかりながらグラウンドを見ていて、俺に背中を向けている。

 

「孝、俺少し寝るから何分かしたら起こして…く…れ?」

 

俺が孝の背中に声をかけると、孝がグラウンドの奥の校門辺りを見ながら「な…なんだってんだ一体……。」とかなり恐怖に満ちた声でつぶやきながら震え出した。

俺が孝にどうしたのかと尋ねようとした瞬間、孝はダッシュで階段に向かって走り出した。

 

「お、おい孝!」

 

俺の声にも反応せず、孝は階段を降りて行ってしまった。

俺は孝の行動に不安を感じたため、孝の後を追うことに決めて走り出した。

 

 

 

この時、まだ俺は気が付いていなかった…。

すでに黙示録が始まっていることに。

 

 

 

 

 

 




中間テスト1週間前なので1週間ほど更新止まります。
ご了承ください。

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