biohazard supplementary biography”NT”   作:ナッツガン

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『初デート』
ジルと初めて付き合いだした夜
ベルは一つの難関にぶつかっていた…
これは二人が初めてデートした日の出来事

『北米支部』
BSAA北米支部
そこではいつも賑やかな日々が進んでいる
そして今日も…


初デート/北米支部

『初デート』

 

 

眠れない。

全く眠れない。

もうすぐ夜中の二時を過ぎようかというのに、俺自身は全く眠れていなかった。

別に昼寝ているわけでもないのに、それでも眠れない。

ドキドキしていて、楽しみ過ぎて眠れていなかった。

俺自身はデートなんでどうってことないと思っていたのだけど…

俺はなぜかデートの事を考えるとドキドキしていた。

明日というにはもう違うのかもしれない。

昼の一時から俺はジルとデートの予定にこぎつけたのだ。

ようやくだ!ようやく…

お互い仕事が忙しくて中々時間が開かなかったが、みんなの計らいで時間が開いた。

 数か月目から俺達は付き合っているのに、なぜかデートの一つもない。

 理由はお互いが今まで付き合うと言った行為をしたことが無かったからだ。

 バイオテロと戦う毎日、そんな毎日を過ごしていたから仕方が無いといえば仕方が無い。

しかし、ようやく俺はジルと付き合うのだ。

 そう考えると俺はなんだかドキドキして眠れなかった。

「水でも飲んで落ち着くか……」

 台所に行くと俺は棚の中にあるコップに水を注いで一口飲んだ。

 それでも俺は眠くはならない。

 ジルも今頃どんな気持ちでいるのだろうか?

 俺と同じでドキドキしているのか?

 それともとっくに眠っているのか?

 そんなジルの表情を考えると、ますます眠気が吹っ飛んでいく。

 そんな事を考えている暇が在ったら寝ればいいと思うが、こうなると中々眠れない。

 初デートと言うのはこんなにもドキドキするものなのかと考える。

 窓からBSAAの北米支部が見えてくる。

 BSAAの北米支部はニューヨークのはずれにある新たな都市に作られた。

 俺はそこから通っている為、その町に家を持っている。

「どうやって寝よう。睡眠薬は効かないし…」

 俺には睡眠薬という者が効かない。

 体にある“NTウイルス”が喰ってしまうからだ。

 再びベットに入ると俺はうなりながら眠りについた。

 時間は既に三時を回っていた。

 

 

けたたましい目覚まし時計の音を聞きながら俺は目を覚ました。

 何とかボタンを押し、目を開けると時間を確認した。

「今は…朝の9時?」

 いつもだったら朝の6時には起きるのだが、今日は休みなので起きなくてもいい。

 いつも以上にゆっくりしていると、三十分が立ったところでようやくベットからはい出た。

 リビングに急ぐと、カレンダーを見て一気に目を覚ます。

「!今日はジルとのデートの日!」

 夜あんなに眠れなかったのに、俺はすっかり忘れていた。

 しかし、約束の時間までまだあると思うと、俺はゆっくりしていくことにした。

 ゆっくり行くことに…

 ゆっくり…

 

 

 なぜか俺は朝の十時に家を出ると約束の場所まで歩いていた。

 嫌な連想をしてしまい、遅刻するのではないかと恐れた結果の行動だった。

 しかし案の定全く問題は起きず、予想ではかなりの速さでたどり着くだろう。

「なんで俺はこんなに早く行動しているのだろう?」

 後数メートルで約束の場所まで辿り着こうかという所で、俺はジルを発見した。

 ジルはいかにもこれからデートに行きます的な格好で、約束の場所にたたずんでいた。

 俺とジルの視界がバッテイングすると、お互い視線を外した。

 俺には今ジルが何を考えているか分かる気がする。

 ジルもおそらくは同じ事を考えているのだろう。

『なんでこんなに早く来ているんだろう?』

 お互いが同じ疑問にたどり着くと、俺はジルの横に立った。

 沈黙が場を満たすと、お互いが中々言葉を切り出せないでいた。

 沈黙が苦しい。

 三十分が経過した時、ようやく俺から喋り出した。

「早かったな?」

「……うん。ベルの方こそ、早かったわね?」

「まあな」

「…………」

「…………」

 会話終了!

 なんか俺は間違った事をしたのだろうか?

 何か無いかと考えていると、ジルが提案をしてきた。

「ねえ?服を買いにいかない?」

 そう言うとジルは俺を引っ張りながら服屋さんに急いだ。

 

 

 俺はそもそも服にこだわりが無い。

 その場に応じた服を着るようにはするが、基本的にラフな格好を好む。

 それに俺は自分にセンスがあると思っていない。

 ゆえに服屋さんにだって中々いかない。

 だからこそ俺は服屋さんに来ても何を買えばいいか分からなかった。

 ジルは俺が困っていることに気づくと、俺の手を取り奥に連れて行く。

 ジルが取ってきた服を試着室に行って来てみると、さすがはジルと言うべきだろう。

「似合っているじゃない!良い感じよ」

 自分の服を鏡で確認してみると、そこには先ほどと違う自分が居た。

 店員も『お似合いですよ!』と言ってくる。

 ジルが似合うと言ってくれた服だ、これを買う事にしよう。

 そう決めると俺はジルと共にカウンターに急いだ。

 

 

それから色々な店を回ってみたり、好きな場所に行ったりすると、時間はすっかり夜になっていた。

 夜の街も中々風情が在ってそれはそれでよい。

 これからどうするかお互いが悩んでいる。

 明日からまたお互い仕事になる。

 北米支部であるとは言っても、こうしてデートになると今度はいつになるか分からなかった。

 俺はジルの手を取って聞いてみる。

「もう少し大丈夫?」

「……うん!」

 デートはまだまだこれからだ。

 

『北米支部』

 

 

 今回の語り部は私、ジル・バレンタインが務めさせてもらいます。

 なぜベルでないかというと、肝心の彼がただ今代表実で暴れているからです。

「ウキャ――――――――!!」

 なぜこうなったかというと、簡単に言えば…

 仕事が多すぎでベルのストレスが溜まってしまったからだと言うしかありません。

 この時期になると、ベルの元に色々な書類がやってきます。

 普段なら難なくこなし、色々な仕事を簡単に済ますベル。

 しかし、この時期はその書類が何倍にも膨れ上がっているのです。

 しかも、本来ならこういう仕事は別の部がやるのですが、今日に限って全員が休んでしまった。

 その為ベルがやっているのですが、一向に終わらない仕事量にいよいよベルは切れてしまいました。

 事態が発覚したのは、廊下で気絶していたキースとパーカーでした。

 彼らは本部からやってきて、ベルに書類を渡そうと部屋に入って来たところをやられてそうです。

 ドアを開けた途端顔面に堅い何かが飛んできたそうです。

 もちろん回避する暇など無く、その場で気絶してしまった。

 今私達は代表室の前で防壁を作り、何とかベルを説得しようとしている所です。

「ウキャ―――――――――!!」

 こんな感じが数時間たっていて、正直私は既に諦めていた。

 別にこれが今日に限ったことでは無い。

 何か月に一度の割合でこういう行動を起こしている。

 元々体を動かすことが好きでエージェントをしていたのに、オブライエンが代表を止めてしまった為に、ベルが代表を務める事になった。

 飛んでくる物は様々で、ガラスで出来た灰皿や分厚い本などが投げられる。

 一番の問題は、カッターナイフやサバイバルナイフも投げてくるので危険だ。

「ベル!落ち着くんだ!」

「代表!落ち付いて下さい!」

 何人かがベルの説得の為に声を上げているが、もちろんそんな事でベルは止まらない。

 そうしていると、クリスは私の方に顔を向けてくる。

「ジル、ベルを説得してくれ」

「私が説得できるなら既にしてるわ。ベルは私が説得できるレベルを超えているわ」

「しかし、ずっとこのままって言うのは…」

「もう少ししたら落ち着くわよ」

 私の後ろで代表室から飛んできた物を回収して、整理している優秀な人物たち。

 こういう事態にすでに慣れている為、みんなして回収をしている。

 こんな事態でもベルはずっと暴れている。

 

 

あの後数時間暴れた結果、ベルは落ち着いてくれた。

 では、なぜベルはこんなにも暴れまわったのか?

 それを説明しようと思う。

 

 

 数時間前のこと、ベルは代表室の椅子に座り込んで書類を整理していた時の事。

 ベルの元に大量の書類の山がやってきた。

 その仕事は減るどころか増えるばかり、何も報告が無いから納得が出来ないまま仕事をするベル。

 そんな中徐々にベルのストレスがたまっていった。

 そしてそんなストレスが限界に達した時、ドアを叩いたのがキースとパーカーでした。

 手元にあった分厚い本を思いっきり投げつけたのです。

 そうして暴走が始まりました。

 

 

 ベルは少し落ち着くと、また書類整理を始める。

 さすがに多いので私も手伝う事にした。

 二人でやれば仕事の速度も速くなります。

 でも、実際の所はベルと一緒に仕事をしたかっただけ…

 仕事の時も一緒に居たかったから…

「ねえ、ベル…」

「?何?」

「私とパートナー組まない?」

「いいけど…良いのか?」

「うん!」

 こうして私達はパートナーになる事になりました。

 私達の戦いは別の話で…




次回予告
『マルハワデザイア①』

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