biohazard supplementary biography”NT”   作:ナッツガン

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ハンクという男がいた
四人兄弟の二男に当たる人間だ
多くの人間を殺めてきた彼の物語を語ろう


ハンク

 俺が最初に人を殺したのはいくつの頃だっただろうか?

 小さい頃から両親の顔は知らず、アンブレラに育てられた。

 その為か、俺はアンブレラに対して何の疑問も持たない生活を続けることになる。

「君の秘密を教えてあげよう」

 

 男は俺にそう言ってヘリから出て行った。

 そう、ラクーンシティから脱出に使ったヘリの中で……。

 男の背中をただ見つめながら俺は自分の秘密というのを考えていた。

 

 男の事を調べるのは意外と簡単だった。

 バロク・シン、アンブレラの研究員だ。

 なぜ奴がラクーンシティに来ているのかは知らないが、何か仕事が在ったに違いない。

 そう思い込むと同時に、俺は奴の言った秘密が気になって仕方なかった。

 アンブレラでさえ知らない秘密なのだろうか?

 考え事をしていると、俺は自然とあの男の元に足を運んでいた。

 

「やっぱりここに来たか……」

 

 男は俺が来ることを知っているようだった。

「君は自分が思っている以上に素直だな」

 仕事の合間にここにやってきた。

 男はニヤニヤしながら俺を見つめていた。

「秘密を教えてくれないのなら、俺はここから去るが……」

 男はパソコンをいじりながら俺の疑問に答えてくれた。

「君は小さい頃からアンブレラに育てられた、でもそれはアンブレラがついた嘘だ」

 男は俺にそう言って見せると、こちらを向いて言って見せた。

「君はアンブレラに売られた人間だ。そして俺の弟……」

 

 男はそう言って見せると、部屋から出て行った。

 追いかける事も出来たが、俺はそう選択しなかった。

 部屋から再び出て行くと、任務に戻る。

 任務は比較的楽なものだろう。

 ここの所長がアメリカ政府と取引をしようとしている。

 その妨害と抹殺が俺がアンブレラから降りた任務だ。

 所長室に入ると俺は電話をしている所長の前に立ち、ハンドガンで頭を一発で撃ち殺す。

「任務完了」

 部屋から出ようとドアに手を掛けてドアをゆっくり開けると、そこにはバロクが居た。

「何の用だ?」

「お前に行っておきたい事が在ってな、俺と共闘したければ『Gウイルス』を持って来い」

 そう言うとバロクはそのまま施設の闇の中に消えて行った。

 

 俺は片手にウイルスの入ったケースを携えて、バロクの部屋に向かって行く。

 ここ最近俺はアンブレラという組織が信用できなくなった。

 もし、奴が言っていることが真実なら俺はこの組織を許せない。

 だが奴の言っていることが嘘であれば、奴を殺すだけだ。

「入るぞ」

 奴は前と変わらないようにパソコンで何かを調べていた。

 そこには『NTウイルス』と書かれた画面がある。

「これは君の中にも流れている貴重なウイルスだ」

 まるで奴は俺の心を読んだかのように俺の疑問に答えた。

「知っているかな?君と俺は両親に捨てられた。というより両親はアンブレラに貴重な実験動物を提供していた。これはアンブレラがウイルス実験を行なう段階で、実験動物が不足していたからだ。そんな段階で俺達はアンブレラに貴重な人材として贈られた」

 バロクは一気に話し終えると、そのままパソコンからこちらを見つめる。

「証拠は?」

「あるさ。証言がな」

 バロクは音声データを再生させる。

『こちらの質問に嘘無く答えろ』

『分かった!だから殺さないでくれ!』

『俺とハンクがアンブレラの実験の為に送られたのは真実なんだな?』

『ああ、そうだ。当時これ以上の実験には人が必要だと言う事が分かった。その足掛かりとしてお前達の両親が出てきた。二人はアンブレラに人材を送って行くと、今度はアンブレラ内での地位を確立するために、お前達の両親はお前達を送ったんだ。これで良いだろ!?』

『ああ、十分だ』

 最後に銃撃音が響くと、そこで音声データは終わった。

「声の主は……」

「アンブレラの幹部の一人だな?」

「ああ、よく知っているな」

「元々殺す予定の人物だったからな」

 声の主は後に事故死として扱われた。

 こいつの死にもこいつが関わっていたか。

「俺の目的は復讐だ。アンブレラにも、世界にもな」

「世界は無理なんじゃないか?世界はあまりにも大きすぎる」

「今すぐは無理だ。だが、いつか必ず」

 奴のあの目は本気だとすべてを語っていた。

 俺がどう選択するべきかそんなのはもう決まっていた。

「俺の目的は俺を売った両親への復讐だ。それさえ果たされれば後はどうでもいい」

「勿論貴様の目的は必ず達せられる」

 俺は奴に『Gウイルス』を渡すと、奴との契約が無事に終わった。

 

 早速奴から俺に対しての任務が在った。

 それは、ロックフォード島内にあるアッシュフォード家の監視だった。

 最近アシュフォード家は崩壊の一途をたどっている。

 アシュフォード家の現当主は頭がおかしくなってしまったらしい。

 俺はロックフォード島には訓練で行った事があるが、当主にはあった事が無い。

 俺は早速ロックフォード島に向おうとすると、俺の端末にバロクからの追加報告が在った。

 

 ロックフォード島は自爆した。

 

 詳細は分からなかったが、現地には俺の弟らしいベルトウェイが居たというのだ。

 自爆した以上ロックフォード島に向かう必要は無いだろう。

 バロクもその意見には同意してくれた。

 バロクには他の目的が在ったらしいが、今は、別の計画を優先するらしい。

 俺の新たな指令はある名家に接触すると言うものだった。

 

 ディレック・C・シモンズ

 

 この男との接触が俺の指令だった。

 この時、時間を同じくしてバロクは研究所にウイルスを撒くことに成功する。

 そして俺は脱出するバロクを救出するついでに、シモンズに合わせることにした。

 

 コツコツと言う歩く音が聞こえてくる。

 前から悠然と歩いてくるバロクが居た。

「研究所は良いのか?」

「ああ、もうじき自爆する。そうすれば俺がここで研究していたことも全て無くなる」

 バロクは俺の用意していた電車に入って行く。

「シモンズへの接触は既に終わっている。この後すぐになっているが……」

「ああ、分かった。交渉には俺が向かおう」

 俺が入ると、電車は進み始める。

 こうして俺とバロクのアンブレラとの接点は無くなった。

 すべてはバロクの計画通りに進んで行く。

 

 シモンズ家に入る事に成功した。

 バロクはすぐにでもウイルスの開発を行う。

 俺はシモンズの指示する人間を始末していきながら、資金を集めて行った。

 バロクは当分はここで静かにしていると言った。

 ウイルスを集めながら、組織を作る下準備を進めていく。

 そうしていくと、シモンズの次のあてがすぐに見つかった。

 しかし、その前に俺は『T-Veronica』を実験にしている男の始末に向かった。

 そこで俺はあの弟との出会う事になる。

 

 美しい自然が俺の周りを覆っている。

 そして目の前には大きなダムが見えていて、この先で標的が居るはずだ。

 そうしていると、バロクから標的は既に別の所に逃げたらしいという情報を得た。

 すぐに標的の居る場所に向かった。

 そこで俺はベルトウェイに出会う。

「こんなところで休憩とは、ベルトウェイは相当暇なようだ」

 教会の中で休憩しようとしているベルトウェイを発見した。

「誰だ?お前……」

 こちらを警戒しながらも、既に戦闘態勢を作っている。

 大したものだ、俺の弟だという話も分かる。

 

 少し揺さぶるか……

 

 その後の事は簡単だった。

 こちらのついた嘘にベルトウェイは真実を問いただそうとしていた。

 バロクが仲間にしない理由が少し分かる。

 こいつは俺達とは相いれない存在だ。

 こいつは復讐より必ず平和を選ぶだろう。

 だからこそ、後始末にはうってつけというわけだ。

 俺はそう思いながらも、その場から逃げて行った。

 

 バロクからベルトウェイに関しての意見が在った。

 ベルトウェイに真実を話そうと言う者だった。

 俺は対して反対はしなかった。

 する必要を感じなかったからだ。

 話す事でこちら側に引き寄せられないかと言うことだ。

 しかし、俺には分かっていたバロクは既に別の目的が在る。

 それが何かは分からないが、バロクがベルトウェイに会いたがっている事は分かる。

 しかし、シモンズはそんなバロクを許さなかった。

 

「会う事は許さない」

 

 俺は単独でベルトウェイに会うことになる。

 ついでにデイビス上院議員を抹殺して来いと言う事だった。

 それがシモンズが指示した内容だった。

 

 デイビス上院議員の抹殺には成功した。

 その代りにベルトウェイの引き入れには失敗した。

 そうしていると、俺達はウェスカーとの接触に成功した。

 数年の間、俺達はウェスカーの研究に加担しながら、もう一方の人間の依頼もこなしていった。

 

 ウェスカーが死んだという情報はすぐにシモンズの元にも入って行く。

 バロクはもうじきすべての準備が整うと言った。

 その為には邪魔なシモンズを始末する必要がある。

 仕事は単純だった。

 実験で生まれた偽エイダにすべてを話す事で、シモンズ家は自然と崩壊の道を歩んだ。

 そうしてあのスペンサーとの接触を行う。

 スペンサーは究極のウイルスを開発することが要求だった。

 バロクはスペンサーの要求を聞きながら、スペンサーのネオアンブレラを手に入れようとしていた。

 

 結果から言えば、スペンサーは死んだ。

 俺は弱ったネメシスに新型ウイルスを打ちこむ事で、意図的に暴走させた。

 脱出予定ポイントで待機していると、バロクが暗い通路の奥から出てきた。

「仕事は?」

「終わったよ」

 バロクは邪悪な笑顔を見せると、こういった。

「復讐の時間だ!」

 これから俺達の復讐が始まる。

 世界に対しての……復讐が……




次回予告

『アベル』
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