biohazard supplementary biography”NT”   作:ナッツガン

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多くの祝福を得た
これは俺とジルの結婚式だ


結婚式

 

 俺とジルが付き合いだして半年が経っていた。

 未だにデートに鳴れない日々が続いているし、BSAAの仕事の方も忙しい。

 俺はそんな中ジルとの結婚を決意していた。

 しかし、そんな中俺はBSAA北米支部内で逃走劇を繰り広げていた。

 北米支部の隊員全員が俺の敵であり、捕まえようとしている奴らだ。

「こっちに来たはずだ!もっと探せ!」

「代表を逃がすな!仕事がまだ残ってるんだ!」

 そんな叫び声を聞きながら、俺は北米支部の通路を隠れながら歩いていた。

 音をたてないように歩いていると、後ろから大きな音が聞こえてくる。

「居たぞ!」

「クソ!見つかった!」

 俺はダッシュでその場から走り出すと、一気に階段を駆け下りる。

 階段の中腹辺りで前と後ろから囲まれた。

「代表!代表室にお戻りください!」

 前に立っている男が俺にそう語りかけてくる。

 俺は毅然した態度で告げる。

「断る!俺は何としてあの仕事の山から逃げ出す!」

 俺はそう叫ぶと窓から飛び出した。

 フックショットで上まで上がると、そこから走って逃げる。

「上に上がったぞ!」

「なんでこういう時だけ無駄に抵抗するんだ!?」

 下からそんな声が聞こえてくると、俺はどうやって逃げるか検討していた。

階段で逃げてもさっきの隊に捕まるだろう。

 だったら別の方法を探したほうが良さそうだ。

「飛び降りるか?」

 フックショットを使えばうまく着地できるだろう。

 問題は下で待機している隊がいないかのほうが問題だ。

 俺は悩んでいると、階段からあいつらの声がきこえてくる。

 どうやら悩んでいる暇はなさそうだ。

 俺は覚悟を決めると、フックショットで下まで飛び降りた。

「今度は下に降りたぞ!」

「下の奴らに報告しろ!」

 俺は下で待機している奴らが囲まれる前にその場から逃げ出す。

 しかし、ここまでくれば後は外に逃げるだけだ。

 俺は門まで走って行くと、いきなり俺の首筋を掴む誰かを感じた。

 誰かは分からないが、この段階でそんな事をする奴なんてあいつしかいない。

「ジル、逃がしてください」

「だめよ、仕事がたまっているんだから」

「あんな書類の山できるわけないだろ!」

 俺はジルに引きずられながらその場から移動していく。

 

 

「はぁ~」

 大量の書類の山を前に俺はため息を吐く。

 どう考えても一日でやる書類の量ではない。

 俺は窓から現実逃避をしようとするが、それでも目の前にある書類の山は無くなるはずがない。

「頑張ってみるか……できるとは思えないが」

 書類を一枚づつ片付けて行くと、ジルがコーヒーを持ってきながら俺に話しかけてくる。

「全く。あなたという人は、どうして黙って仕事が出来ないのかしら?」

「だって……こんな仕事できるわけがないじゃないか!」

「あなたの為に私もこうして書類整理なんかの仕事をしているのに……」

 ジルはコーヒーを俺の机に置くと、片付いている書類を持って部屋を出て行く。

 俺はまたため息を吐きながら仕事の集中していく。

 時計の音と俺のペンを走らせる音が重なって聞こえて行くと、時間はすっかり夕方になっていた。

 腕を伸ばしながらコキコキ骨を鳴らすと、そのままペンを置く。

 何とか書類を終わらせると、俺は机の引き出しから箱を取り出す。

 箱を手のひらの上で転がすと、呟く。

「渡せると良いが……」

「何を渡せるの?」

 俺は心拍数が一気に跳ね上がる。

 俺は箱を机の引き出しにしまうと、何でも無いと言う。

 俺は書類を片付けて帰る準備に入る。

 鞄に色々入れて行くと、ジルも別の部屋に入る。

 俺の方は帰る準備を終えると、ジルの準備が終わるのを待った。

「待った?」

「いいや。帰るか」

 俺はジルと共に帰路につく。

 

 

 外はすっかり暗くなっていて、クリスマスの飾りつけがされている。

 雪も降っていて少し寒くなってきていた。

 俺はポケットに入っている箱を確認すると、少しだけ勇気を出す。

 ジルは前を歩いていると、こっちを振り向く。

「どうしたの?」

「えっと……」

 俺は勇気を出すと、一瞬だけ間を開けて話し出す。

「ジル!話があるんだ!」

「……何?」

「結婚しよう!」

 ジルの前に箱から出した指輪を見せると、ジルはそれを見ながら固まっていた。

 俺は頭を下げて答えを待っていた。

「ジル?」

 俺は少しだけジルを見ると、ジルは顔を塞いでいた。

 ジルは少しだけ泣いている様にも見える。

 俺が覗き込もうとすると、ジルは俺に抱き着いてきた。

「ジ、ジル!?」

「ありがとう」

 ジルは泣きながら続きを言う。

「ありがとう。私、本当は怖かったの。昔私は誰か大切な人を失ってしまう事が、それが知り合いだとなお怖かった。だからクリスから距離を取ったの、怖かったから。」

 ジルは涙をふくと、こちらを真直ぐ見つめる。

「でも、あなたと出会えて私は怖くなくなった。あなたのお蔭でここまで歩いてこれた」

「俺だって同じだ。だけど色々な人達と出会えて俺がいる。ジルが好きだって思えた」

 俺達は見つめ合うと、ジルは俺に返事をした。

「私、あなたと結婚したい」

「結婚しよう」

 この日、俺とジルは結婚を誓い合った。

 寒いが、どこか暖かいそんなクリスマスの出来事だ。

 

 

 俺は休日の朝、自分の家で引っ越しの準備をしていた。

 ジルも今日は引っ越しの準備をしているはずだ。

 しかし、俺達が引っ越しの準備をしているとはいえ、自分だけでしていては全く進まない。

 だから俺は引っ越しの為に人を呼んだ。

「代表?これは?」

「そこの段ボールに入れてくれ」

 パーカーがそう聞かれながら段ボールの中に入れていく。

 そうしていると、クレアは食器を包装紙で包みながら箱に入れて行く。

 レベッカも同じようにしていく。

「…………」

 パーカーは俺を見つめると、何かを言いたそうにしている。

「なんだ?」

「いや、代表ってくせ毛があるんだな?」

 パーカーは俺の後ろから俺のくせ毛を掴む。

「ギャ―――――――――!!」

 俺は後ろに向かって肘打ちをする。

「ウグ!」

 パーカーは脇腹をおさえながらうずくまっている。

「お前!何をするんだ!」

「遊んでないで運んでくれよ」

 弟であるアベルが俺達にそう言った。

「パーカーが俺のくせ毛を掴むから!」

 弟はくせ毛が四本生えていて、俺達を見下すような視線で見つめる。

「なんだ、その眼は」

「なんでも」

 ちなみに俺はくせ毛が三本生えている。

 みんなが作業しているので、俺も無視をするわけにもいかない。

「お前もふざけずに作業しろよ」

 クレアが最後の段ボールに服を詰めていくと、俺がそれを車まで運ぶ。

 最後の段ボールを車まで運ぶと、パーカーが何かを言っていた。

「もしかして兄弟の数が増えて行くとくせ毛の数が増えて行くじゃないか?」

「知るか!」

 俺はいまだに怒っている。

「確かに、くせ毛が多いですね」

 みんなして俺のくせ毛を見てくる。

 俺は急いで車に乗ると、クレア達を連れて新しい家に向かった。

 そんなに遠い家ではなく、少し行くとすぐにたどり着く家だ。

 新しい家の前では既にジル達が引っ越しの作業を終えていた。

「早かったな?」

「お前達が遅いんだろ?」

 クリスがそう言うと、俺達は早速引っ越しの作業に入った。

 いよいよ明日は結婚式だ。

 

 

少し不思議な雰囲気だ。

 教会の外にある木々は風で揺れていて、俺とジルの結婚式を祝ってくれているようだ。

 式の準備はBSAAのメンバーがやってくれた。

 今は式の最終確認の準備だろう。

 式の参加者にはオブライエンやレオン、クレア、レベッカなど多くの知り合いが駆け付けた。

 さすがにエイダを誘うわけにもいかず、連絡だけ入れていた。

「何の用だ?エイダ」

 俺は部屋の出入り口の方に首を向けると、そこにはエイダが立ちつくしていた。

 エイダは男装をしており、どういうつもりか参列者の恰好をしている。

「あら、あなたの結婚式に参加しようと思って」

「お前な、分かっているのか?ここにはお前を良く知っているレオンだっているんだぞ」

「変装するつもりよ」

 エイダは片手に持っている変装道具をひらひらさせると、その場から離れて行く。

 エイダは最後に俺の言った。

「結婚おめでと」

「ありがとう」

 

 そこからはあんまり覚えていないのが正直なところだ。

 多くの参列者が俺達を祝福してくれているようだった。

 でも最後のあの瞬間だけは今でもはっきりと覚えている。

 多くの参列者が俺達の道を開けているあの瞬間だけは。

 レオンやクレア、クリス、パーカー、オブライエンなどなど…

 アメリカ政府の関係者だって居たと思う。

 そして変装したと思うエイダもその場にはいた。

 最後にジルが花束を上へ放り投げる。

 その瞬間俺はようやく結婚したという意識が生まれた。

 

 この日、俺はシュターナーの姓を捨て、バレンタインになった。




次回予告

『BSAA北米支部の一日』
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