biohazard supplementary biography”NT” 作:ナッツガン
アシェリー
彼女を巡る物語はまだ終わってはいなかった
ヨーロッパの奥地に閉じ込められていた、大統領の娘。
彼女は何とかレオンの助けによって父の元に帰る事が出来た。
しかし、これでこの物語が終わったわけではない。
この物語には、レオンですら知らない続きが在った。
そうジルが行方不明になる寸前に、俺がジルが共に進んだ任務だ。
今回はその続きを語る事にしよう。
1
大統領の娘が拉致される事件から約二年。
BSAAの再編成もようやく終わり、ひと時だが俺は静かな時間を過ごしていた。
俺はコーヒーを飲んでいると、代表室のドアを勢い良く開ける人物がいた。
俺はドアの方を見つめると、そこに居た人物の名を口に出す。
「グラハム元大統領?何の用ですか?」
「助けてくれ!頼む!」
俺はコーヒーを机に置くと、元大統領に落ち着くようにと言い聞かせた。
元大統領はジルの勧めでソファまで移動すると、その場に置かれたコーヒーを一口飲んでから喋りだした。
「頼む!娘を助けてくれ!」
「……何の話だ?」
俺は首をかしげると、ジルの方を見つめてアイコンタクトを行なった。
(何の話だ?)
(さあ?)
ジルも事態を良く飲み込めないみたいだ。
まあ、なんとなく元大統領はかなり動揺している事だけは何とか理解した。
「まあ、一度落ち着きましょう。あなたが落ち着かないと俺も理解できないですから」
「そうだな」
コーヒーをもう一度飲むと、大統領は深呼吸をして落ち着きながら喋りだす。
「実は君に頼みたい事が在るんだ」
「別にいいんだが」
「頼みたい事というのは、娘のアシェリーを救出してほしいんだ」
アシェリーか、懐かしい名前を聞いたな。
確か前にレオンがヨーロッパまで救出を任務に向かった事が在ったな。
俺もその任務を陰から応援してほしいと頼まれたな。
「しかし、どういうことだ?お前の娘をいまさら拉致しても何の利益もないはずだが?」
「分からん。しかし、奴らは確かに娘を拉致したんだ!」
「だったらいつものレオンにでも……」
そうか、無理なのか。
彼はもう大統領ではない。
レオンも手伝いたいが、任務にできない分助ける事も出来ない。
それか助けに行きたいが、別の任務があるせいでそれが出来ないかだな。
「レオンは無理なんだ。今、別の任務に出ていて、もう君しかいないんだ!」
そこで俺のチョイスもおかしい所ではあるだろ。
というツッコミは控えておくとして、助けたいのは確かだが、俺も任務にできない分時間が掛かる。
俺はジルに視線を送ると、ジルは奥の部屋に入って行く。
「で?奴らとは誰の事だ?」
俺は先に話を進めておくことにした。
「私にも詳しい目的は分からない。しかし、奴らは自分たちの事を『イルミナドス教団』と名乗っていた」
イルミナドス教団か、確か二年前にアシェリーを拉致したのも奴らだったな。
どうも奴らは拉致が大好きらしい。
「ベル、アシェリーの救出の件だけど」
俺はその場から少し席を外すと、ジルと話を始めた。
「実はね、この数カ月前から活発に活動している団体が在ったの。名前は『イルミナドス教団』と言ってね。あのレオンが潰した教団なんだけど」
「だがあれは『ロス・イルミナドス教団』だったはずでは?」
「彼らは名前を『イルミナドス教団』に変えて活動を始めた。目的は分からないけど……」
「待て待て。元々二年前にアシェリーを拉致したのはアメリカ人だったはず。だったら今回もアメリカ人が関わった事になるだろ?」
前回はアメリカ人のジャック・クラウザーが関わっていた。
彼がアシェリーを拉致して『ロス・イルミナドス教団』に入る為に、クラウザーは彼らの信頼を得る為に拉致をした。
そもそも彼らにはアメリカ国内にいる人間を、拉致する事は実質無理だ。
「そう言う事になるわね。そもそも今回の『イルミナドス教団』が前回と同じメンバーだとは考えられないんだけど」
「そうなるよな」
今回の『イルミナドス教団』が同じものだとは思えない。
全くの別物で、たまたま彼らの名を使った可能性だってある。
「仕方が無い」
俺は元大統領の元に向かうと、そのまま話を続ける。
「娘さんを『イルミナドス教団』から救出してみましょう」
「頼む!」
こうして俺達はアシェリーの救出に向かう事にした。
2
俺達は二人で『イルミナドス教団』のいると報告の在った、イギリスの奥地に向かった。
運転手に運転を任せながら俺達は、イギリスの森の奥に進めていた。
木々は大きく深くなっていき、俺はそんな景色を眺めながら先を進んで行く。
目的地を遠く、俺は少し欠伸をしつつ景色を眺める。
「遠いな」
「イギリスの奥地に移動と言っても、そんなに簡単には行かないわよ」
ジルは端末を確認しながら、俺の一声に真面目に答える。
少し時間が経ったと感じていると、目の前に見えてきたのは小さな橋だった。
石造りで出来た小さな橋が、俺達を出迎えているようだ。
「この奥が目的の村だけど……」
「この車じゃ無理だな」
石造りで出来た橋は小さく、この車では通る事は出来そうにない。
俺達は車から降りると、運転手にお金を渡してそこから遠ざけた。
石造りの橋を渡ると、またしても木々を横目に進んで行く。
そうしていると、目の前に小さな家が見えてくる。
少しオシャレな家が見えてくると、俺は玄関まで近づく。
玄関の呼び鈴を鳴らすと、少ししてからおばさんが出てきた。
「すいません。こんな女性を知りませんか?」
「あヴぁうvほえ」
女性は英語とは思えない言葉を発すると、すごい表情で睨んできた。
「分かりました。帰りますよ」
俺達は後ろを向き、そのまま帰ろうとする。
そうしていると、俺は後ろから何か何かが振り下ろされる感じがした。
「ジル!」
俺はジルを掴んでそのまま一気にジャンプする。
先ほどまで俺達がいた場所には斧が刺さっていた。
「何をするんだ!」
「ぢscbしdb」
またしても恐ろしい形相で俺をにらむと、女性は英語とは思えない言葉を発した。
「この人、まさか……」
「プラーガ」
俺は最終警告を発する。
「止まれ!出なければ撃つ!」
しかし、そんな警告を無視して彼女は近づいてくる。
俺は彼女の額に狙いを定めると、そのまま引き金を引いた。
大きな音が鳴ると、女性はその場に倒れた。
俺はジルの手を握ると、そのままジルを起き上がらせる。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。それより良かったの?撃って」
「仕方ないだろ。そっちからかかって来たんだぞ」
俺はそのままその場を離れようとすると、ジルが俺を呼んだ。
「ベル!」
「なんだ?」
俺が振り返ると、そこには頭から寄生虫を出した女性が立っていた。
「やはりプラーガだったか」
俺はポーチから閃光手榴弾を取り出すと、目の前で破裂させた。
プラーガは目の前で消えていくと、頭の無い女性はそのままその場に倒れた。
「この周辺が既にこんな感じだとすれば、脅威だな」
「中を調べさせてもらいましょう」
俺達はそのまま家の中に入ると、中を調べさせてもらった。
3
家の中は普通の感じがしたが、日記をジルが発見した。
「見てこの日記。この日記からすると、彼女の異変が起きたのは数日前の事よ。完全に変異したのはおそらく数日前の出来事ね」
完全に変異した後の日記は既に文字ではなかった。
もう既に何が書かれているかすら分からない。
「数日前という事は最近か?」
「という事になるわね。それでね、この日記によると彼女たちに寄生虫を投与したのはこの村の診療所に居る医師みたいね」
「と書いてあるな。プラーガの卵を持っている医師か……。普通じゃないな」
「どこかの組織に属している人間か、もしくはイルミナドス教団かだな」
ジルは日記を棚に収めると、そのまま語り出す。
俺はそれを聞きながら窓から外を眺めた。
「今の所はこの医師を探し出して……」
「その前にここからの脱出だな」
「え?」
ジルも同じように外を眺めると、そこには大量の村人が火を持って出迎えてくれた。
なぜか家の周囲を回るように何かを、掛けている事を確認すると村人は火を持って近づいた。
「やばいな」
俺はジルを連れて窓から離れると、そのまま廊下に出る。
そしてついに家に火がついた。
廊下にある窓からでも良くわかるぐらいに火が上がっている。
「どうやって逃げるの!?」
「まずは一階に行こう」
俺は階段を下りると、そのままドアを見つめる。
しかし、火が上がっているドアから手榴弾を投げ込んでくる。
俺はドアから走って逃げると、爆発からジルを庇う。
外からは更に大きな声で叫ぶ村人が聞こえてきた。
「どうしたものかな?」
そうしていると、外から銃撃音が聞こえてくる。
しかし、そんな事で事態が収拾するとは思えない。
「ベル!」
ジルがこちらを見てくると、俺は頭をフル回転させる。
どうする、どうする?
そして俺達は火があまり回っていない、リビングに向かう。
しかし、あっちこっちから火が上がってくると、俺もますます焦ってくる。
「外で戦っているのは誰だ?」
「分からないけど……」
リビングからでは様子を窺えない。
爆発音が消えてくると、家自体が既に限界を迎えていた。
「ベル……」
俺はリビング内を見て調べていると、ふと床を見つめた。
そこには絨毯が敷いてあり、俺はそれをめくる。
すると家が大きな爆発と共に包まれる。
次回予告
『呪われた村人』
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