らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第五話 やる気のある人、ない人

「今日は朝から身体測定や。A組が終わったら呼びに来るから女子から出席番号順に保健室に行くように〜!」

 

6月のある日、朝のHR。

今日は身体測定の日だ。

人数が人数なので一斉に始めるワケにはいかず、学年ごとに数日に分けて行われる。

今日は2年のA組からD組までなので、遅くとも3時間目くらいには回ってくるだろう。

 

「・・・ハァ、今年も来てしまったかこの日が」

「はぅ〜・・・(わたわたおろおろ)」

 

こなたさんがやたら暗い表情でぶつぶつ呟き、つかささんは顔を赤くして落ち着かない様子で席についてる。

 

「泉さんもつかささんもどうしたのでしょうか?」

「こなたさんはなんとなく想像つくけどつかささんは、なぁ?」

 

休み時間中えらい挙動不審な様子の2人になんだか声もかけづらい。

そうこうするうちにウチのクラスに身体測定の順番が回ってきた。

 

 

 

<こなたの場合>

 

 

 

(の、伸びてない・・・)

 

保健室から出たわたしはあまりの結果に愕然としていた。

 

(そんな馬鹿な! いくらわたしでもまだ年齢的にまだ成長するはず。まさかおかーさんの遺伝子がここまで強いとは・・・)

 

いくらなんでも横はともかく縦がコンマ1くらいしか変わらないなんて・・・は!?

まさかおとーさんが私に呪いを!?

 

 

 

<つかさの場合>

 

 

 

(うう・・・失敗したぁ・・・)

 

今日が身体測定だったのをすっかり忘れてた・・・。

 

(横のほうが伸びちゃってる上にキャラモノの下着はいてきちゃった・・・。はぅぅ、先生の視線が・・・)

 

今日は厄日だよ・・・。

 

 

 

<かがみの場合>

 

 

 

(やっぱり間食がすぎたかな〜・・・)

 

身長はまだしも3サイズや体重が少し・・・。

 

(危なかったな〜、もう少しで○○kgオーバーするところだったわ・・・平均よりはまだ下なんだろうけど、コレは少しダイエットが必要かな。)

 

何度目かは忘れたけどがんばらないと!

 

 

 

<まさき視点>

 

 

 

「こんな事言うのも何だけどさ、なんか見ただけで結果がどうだったか分かるような気がするんだけど・・・?」

 

休み時間、かがみさんも交えて暗い表情で会話している女子が3人・・・。

 

「そうですね・・・何か悪い結果があったんでしょうか?」

 

みゆきさん、あんたがそれを言っちゃ・・・!

 

「ちっくしょう、一人だけ余裕そうな顔をしやがって!!」

「不公平だ! 世の中はもっと公平であるべきだ! 君もそう思わんかねみゆきさん!?」

「ふえぇ!?」

「ゆきちゃんい〜な〜。なんでこんなに差があるんだろ・・・」

 

2人が詰め寄る中つかささんは物欲しそうにみゆきさんを眺めていた。

みゆきさんは俺から見た感じでも、かなりスタイルがいい上にバランスも取れてるように見える。

そしてまだ成長してるかどうかは分からないが彼女達のような反応をしないところを見ると、まだ成長していたのか現状に満足してるのか・・・。

いや、どこが成長してるとかそうじゃなくて・・・って誰に説明してるんだ俺は!

ともかく、女性としては彼女のスタイルがやはりうらやましいのだろう。

かがみさんやつかささんはまだ大丈夫だとしてもこなたさんは・・・いや、あえて言うまい。

 

「どうやったらゆきちゃんみたいになれるのかな?」

「きっと食べてる物の差だよ・・・」

「そっか・・・みゆきって上流階級だもんね」

「えっとけっしてそういうワケでは・・・(汗)」

「あのさ・・・身体測定って1年でどれだけ成長をしたかを見るためであって、他人と比べるためじゃないでしょ?」

 

ネガティブオーラ全開の3人にとりあえず言ってみるが・・・。

 

「まさきは順調に育ってるからそんなこと言えるんだよ! どんだけ成長したの!?」

「あ〜・・・俺は身長173cm、体重は65kgだったから少し伸びたくらいかな?」

 

成長期の男子はこんなもんだろう。あえて言うならもう少し身長が欲しいかな?

因みに去年から見ると身長1cm、体重2kg増だった。

体重が増えてるのが気になるけど別に2重あごでも段腹でもない。

 

「まさき〜・・・その身長、オラにほんの少しでいいからわけてくれ〜」

 

泣きながら背中にへばりつかないでくれこなたさん。

 

「どうしろっての。てか降りてよ」

 

少しくらい恥じらいというものを持ってないのだろうか?

たまにこなたさんはこうやって背中にへばりついてくる。

そのたびにこっちの心臓が飛び跳ねそうなんだけど、強く言えない自分が情けない・・・。

 

 

 

<昼休み>

 

 

 

「お〜す、お昼食べよ〜」

「あ、お姉ちゃんいらっしゃ〜い♪」

「んじゃ机を合わせますか」

 

今日もかがみさんがわざわざ隣のクラスからきていつものメンツで昼食を食べる。

毎度のことで既に周りも気にしなくなってたりする。

 

「そういえば今度従姉妹のおねーさんが結婚するんだけどさ・・・」

「ほう、そりゃめでたい。」

「ジューンブライドだね♪ いいなぁ」

「でも、こんなジメジメした季節なのになんで幸せの代表なんだろ?」

 

言われてみるとその疑問ももっともだ。

 

「一般的に6月はローマ神話の女神ユノに由来するといわれています。ユノはギリシャ神話ではヘラと言う女神で、結婚と出産を司っているんですよ」

 

で、毎度の事ながらみゆきさんが丁寧に説明してくれる。

 

「ですから6月に結婚するとヘラの守護と祝福を得られると言われているんです」

「みゆきさんってホント、何でも知ってるよね〜・・・そういえばさ、結婚するなら幼馴染と初対面でお金持ちの令嬢とどっちを選ぶ?」

 

またどっかで聞いたようなネタだな・・・。

 

「断然ビ○ンカね!」

 

とかがみさんが即答!

てか名前知って・・・まぁアレは結構有名だからな。

しかも最新のリメイク版では選択肢が増えてるし。

 

「同感、やっぱり親しいほうを選ぶと思うな」

 

とりあえず名前出したところはスルーしてかがみさんに同意。

ちなみにつかささんとみゆきさんは何のことだか分からないのか頭にハテナが浮かんでるようだ。

 

「ほほう、かがみもまさきもお宝よりも愛を・・・・・・!」

 

こなたさんが感心したように言うと何か閃いたような顔をしてニヤニヤとこちらを見る。

はっきり言って嫌な予感しかしないのだが・・・。

 

「・・・なに? こなたs「まさきはわたし達の中から選ぶとしたら誰を選ぶのカナ?」・・・ハイ?」

 

こなたさんのことだからいつかネタにされるかもなんて思ってたが・・・。

何で皆そろって微妙に赤い顔するんだ!?

ここは笑うトコだろ普通!

 

「選ぶも何も俺達は友達だろ〜に」

「なに言ってんの!? 今現在キミのまわり皆女の子なんだよ? ツンデレ巫女に天然巨乳メガネっ娘に天然ドジっ子に貧乳ロリとそれぞれ萌え要素満載でまさきも十分主人公の素質あるし選択肢次第でこうry「いい加減黙んなさい!」アベシ!?」

 

こなたさんがすごい勢いで捲し上げたが(ぶっちゃけ暴走とも言う)、見かねたかがみさんが物理的に止めてくれた。

それでもなんだか微妙な空気が・・・。

 

「わ、私はあんたの事なんかなんとも思ってないし、大体ツンデレじゃない!」

「え、えっと私がまーくんと・・・あうあう」

「・・・・・・ぽ〜・・・・・・」

 

頼むからいちいち妙な反応しないで落ち着いてくれお前ら!

 

 

 

<翌日:2−B教室>

 

 

 

昨日は少しギクシャクしてたが・・・。

案外2人ともけろっとした顔で挨拶していつも通り一緒に登校した。

先に教室に来ていたみゆきさんも特に変わった様子は見られない。

・・・俺だけ気にしすぎなんだろうか?

 

「こなちゃん来ないね〜」

「こなたさんの遅刻は珍しくないでしょ」

 

そんなことを言ってるうちに始業ベルが鳴り、黒井先生が来てSHRが始まる。

結局こなたさんはまだ来てない・・・風邪でもひいたのかな?

 

「泉。泉〜? なんや遅刻か?」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドド!

 

ガラ!

 

「ストップ! 遅刻じゃないです!」

「お、なんやいm「坂の下で立ち止まってる女の子を見かけたんで元気付けてあげたてたら遅くなりました! 話を聞いたら病弱で休みがちな上に留年してクラスに溶け込めずにいたから1歩踏み出すのが怖かったらしくて、そんな彼女を後押ししてたらこんな時間に!」・・・・・・」

 

突然来たと思ったらすごい勢いで遅刻の理由を話す・・・ってどう聞いてもどっかでアニメ化したギャルゲーじゃん!

あ、先生の拳が震えてる・・・。

 

 

 

「アタタ・・・」

「ま、自業自得だわな」

「こなちゃん寝坊しちゃったの?」

「いや〜、まさきから借りたゲームが中々止まらなくてつい・・・」

「何時までやってたのさ?」

「時計は見てなかったんだけど朝日が見えたからちょっと仮眠しようと思って気がついたら」

 

ホントに何時間やってるんだ(汗)

 

「少しは自制しないとダメでしょ。」

「1回ハマちゃったら一気にやっちゃったんだよ〜♪」

「どんなゲームなんですか?」

「ん? 第3次○パロボαだよ。内容によっては人を選ぶけどス○ロボやったことない人で興味があるならαシリーズが難易度低めだからオススメ」

 

なにせ某会社が作ってた時は使えないキャラっていうか不遇なキャラがあまりにも多すぎたからな。

アニメでは主人公や主人公機なのにそのゲームでは戦力外とか・・・。

ちなみにいろんなロボットが番組という枠を超えて力をあわせて戦う、という感じで話が進むからか、原作が再評価されることもあるくらいだ。

 

「因みにどこまでやったの?」

「え〜とスーパー系の男主人公で自由に続いて正義が仲間になったとこ」

 

たった数日でどんだけ早解きしてんだお前は!

 

 

 

「〜♪」

「遅刻したのに何でそういう雑誌をしっかり買ってきてるの・・・?」

 

休み時間にどういうわけかこなたさんは雑誌を新品袋から開封して読んでいた。

 

「・・・・・・・・・!」

 

何事かつぶやいた後何か決心したように雑誌を閉じた。

なにやら強い決意をしたようだが・・・。

 

 

 

<数日後>

 

 

 

「よ、帰ろー」

 

いつものごとくかがみさんが声をかけてきたが・・・。

 

「あ、ゴメン今日用事あるから一緒に帰れないや」

「用事なんて珍しいね?」

「こなちゃん、何かあったの?」

「うん、ちょっとアルバイト始めたから」

 

・・・・・・。

 

『は?』

「おっと初日から遅れるわけには行かないから先行くね〜」

 

そういってあっけに取られる俺たちを残してこなたさんは帰って・・・いや、バイトに行ってしまった。

 

 

 

<下校中>

 

 

 

「しっかし一体こなたのヤツどういう風の吹き回しかしら?」

「まあこなたさんも何かに目覚めたんじゃない?」

「目覚めるって・・・不思議な力とか?」

 

そんなことを話しながら帰路に着く俺たち3人。

しかしつかささん不思議な力って(汗)。

 

「つかさの言う事は置いといて(苦笑)。大方遊びのためとか欲しい物とかのためでしょ」

「それ以外考えられないのがな〜・・・」

 

ため息しか出ない上にどんなバイトか想像がつかない。

 

「コンビニや本屋の店員とか家庭教師とかかな?」

「後者は絶対にありえないわね・・・」

「明日辺り本人に聞いてみようか」

 

 

 

<翌日:2−B教室前の廊下>

 

 

 

「私のアルバイト? ただのコスプレ喫茶だよ」

「それは『ただの』っていうのか・・・?」

 

すまん、似合いすぎて言葉がない。

それには柊姉妹も同様らしい・・・。

 

「でもそういうのってスタイル良くないとダメなんじゃないの?」

「ちっちっち、ところがそうでもないのだよつかさ。私も長い間胸が無いのを嘆いた来たけど・・・

 

貧乳はステータスだ! 希 少 価 値 だ !!

 

ってあるゲームのヒロインが言っててさ。確かにいわれてみると需要あるじゃん?」

 

何でゲームのセリフでそこまで自信をもてるのか聞いてみたいが男の俺がツッコムのもどうかと思い黙っておく。

しかしあえて言わせてもらおう。

 

「そういう話はできるだけ俺のいないところでしてくれ・・・」

 

学校の、しかも男子の眼の前でそんな話するなよ・・・。

 

「なになに、まさきもやっぱりおっきい方が好み?」

「やかましい、好いた惚れたにそんなもん関係あるかい!」

 

例え見た目が良くても中身がだらしなければ意味がないと言うのが俺の持論だ。

 

「私たちの中じゃゆきちゃんが一番有利・・・かな?」

「たしかに見た目も中身もほぼ完璧・・・いや、まだ私たちにも希望はあるはず!」

「そこ、隅のほうでぼそぼそとなにを言ってんの!?」

 

・・・こうやって男子に対する偏見って広がってくのか?

 

「な、なんでもないよ〜! ただあたし達もがんばらなきゃって・・・」

「はいつかさストップストップ!」

 

つかささんが何か言いかけてかがみさんが無理やり止めた。

 

「何・・・?」

「なななななななんでもないわよ!」

「おやおやかがみん、なに動揺してるのかな〜?」

「うっさい! だまれ!!」

 

結局何のことだか分からずじまいだった・・・。

 

 

 

つづく・・・


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