もうすぐ10月。
まだ少し暑い時期だがそろそろ衣替えの季節。
この半袖のYシャツももうすぐ着収めかと思うと時間の流れの速さを感じる。
少し感慨深げにいつもの3人で登校して、これから少しずつ変わり始めるであろう高校生活を想いながら教室に入った。
「あ、おはようございます、まさきさん、つかささん・・・」
「おはよう、みゆきさん・・・?」
「おはよ~・・・? ゆきちゃん、どうしたの?」
心なしか元気が無さげなみゆきさんの挨拶。
彼女が頬を押さえて途方にくれているのは大抵・・・。
「みゆきさん、ひょっとしてまた・・・?(汗)」
「はい・・・実は先日、詰め物が取れた時に歯医者さんに行ったのですが・・・」
『では取れてしまった所を見せてください』
『ハ、ハイ・・・』←少し怯え気味に口を開く
『・・・あ~、これならくっつけるだけですぐに終わりますね』
『・・・・・・♪』←少し安心した
『でも奥の方に虫歯になりかけのがあるからそっちの治療、始めちゃいましょう』
『~~~~~~!!』←一転、大ショック
「という訳で、またしばらくの間、歯医者さんに通う羽目になりまして・・・」←朝から涙目
「ご、ご愁傷様・・・」
「みゆきさんも大変だね~。ちょっとついてないみゆきさん萌え~」
「あ、こなちゃんおはよ~」
「おはよ。一応行っとくけど後ろから囁かれたくらいじゃもう驚かないぞ?」
「むむ、まさきはともかくつかさにまで耐性がついてしまったか・・・」
こなたさんがよく後からいきなり出て来て会話に参加するのはいい加減慣れた。
そしてこんな時間に彼女が来たという事は・・・。
キーンコーンカーンコーン♪
朝のSHRの時間だという事だ。
ちなみに最近の平日、朝のランニングはゆたかさん1人でやってることもあるとか。
ゆたかさんが病弱なのは『病は気から』ってヤツなのかもしれない。
まぁそれはさて置き、黒井先生が教室に入って来たところでそれぞれの席に着いた。
「ようやく大人しくなってきたよな~。蚊とか蝿とかさ」
「まぁ、もうすぐ10月だしね」
放課後、こなたさん、つかささん、みゆきさんはそれぞれ用事で下校済み。
たまたま教室を出たところでC組の3人と一緒に下校してる。
「暑くなったらいつの間にか出て来るのよね」
「ちょこまかと逃げ足速いのよね~、虫って」
ちなみに帰る方向はみさおさんも峰岸さんも方向は同じである。
まぁ、よくよく考えるとかがみさんと中学も同じだったらしいから同じ学区内・・・つまり鷲宮近辺だもんな。
「でも、昔のお侍さんで、箸で蝿を捕まえた人がいるって言う話は有名だよね?」
「あ~、宮本武蔵か」
「マジでか? よく食いモンに使うヤツでそんな事するなソイツ」
「ってツッコむとこそっち?」
「日下部・・・気持ちは分かるけど、とりあえずその人の反射神経とか動体視力とかを感心するべきだと思うんだけど?」
よくよく考えるとこの面子で一緒に下校ってあまり無いよな~。
そんなどうでも良い事を考えながら、例によってみさおさんに引っぱられてゲーセンに立ち寄ってく俺達だった。
相変わらず俺って押しに弱いな・・・。
てかかがみさん、受験終わるまで
<数日後:かがみ視点>
「ん~・・・」
いつもの日課のために早朝5時に起床。
つかさもそろそろ起き始めてる頃だろう。
あの子も最初は私が起こしてやってたんだけど、いつからか自分から・・・最初は半分寝ぼけてたけど・・・起きるようになった。
手がかからなくなったのはいいけど、妹の成長ぶりに嬉しいやら寂しいやら。
「そういえばそろそろ1年か・・・」
継続は力なり、何てまさきくんは言ってたけど、ホントにそうよね。
以前の自分じゃ考えられない、なんて思いながら運動着に着替える。
「あ、お姉ちゃん、おはよ~♪」
「おはよ、つかさ」
同じく運動着に着替えたつかさと一緒に外に出た。
あの頃はあやふやだった気持ちも今では既にはっきりと見えている。
それは
しかも競争相手が多い上に全員が友達と来たもんだ。
・・・こなたが言ってるような『ギャルゲー』状態なのは考え物だけど。
さらに言ったら早朝のこの時間は私達姉妹の特権だったけど、最近は平日休日共に
そして今、一番積極的・・・というか頑張ってるのはあの娘。
「あ、来た来た。やまとちゃんおはよ~♪」
「おはようございます、先輩方」
「おはよ、やまとさん」
学校は違うけど・・・いや、だからこそ、か?
あの夏休み以降、
しかも早朝に来てまで彼と一緒に走ろうとしている永森やまとさん。
私達は同じクラスだったり別のクラスだったりするけど同じ学年、同じ学校だ。
だけど彼女は学年はおろか学校そのものが違う。
だから少しくらい、この時間・・・彼女にとっても貴重なこの時間を大事にしてあげよう、というのがいつだったかの話し合いの時にみんなで決めた事だ。
・・・私達ってひょっとしてお人好しなのかな?
「やまとさん、そろそろその『先輩』って呼ぶのはやめてみない? 年上とは言え私達、学校違うんだからさ」
「さ、さすがにそれはちょっと・・・」
「あはは、照れてるやまとちゃんってカワイイね♪」←ナデナデ
「・・・・・・」←真っ赤
つかさの言動はともかくとして、もうちょっとフレンドリーでもいいような気がするんだけどね。
それに最近になって彼女の事で分かった事。
それは・・・。
「3人ともおはよ~」
「おはよ~♪」
「おはよ、まさきくん」
「おはようございます、まさき先輩♪」
本人は気付いているのかいないのか、最近まさきくんに対して随分やわらかい表情や言動を見せ始めている事。
まさきくんだけじゃなく、私たちに対しても。
八坂さん曰く、『やまとは甘えん坊だけど甘え下手で、友達になっても打ち解けるまではそっけない態度を取る事が多い』という。
つまりそれなりに打ち解けてきたようで、見ていて凄く分かりやすい。
最近はまさきくんの隣を走ってる事も多いし・・・見てて何だか胸が痛むのはやっぱり嫉妬なのかなぁ。
複雑な心境なのはつかさも同じみたいで、2人で話してる時によく話題に出てくる。
でも私達もお互い、こんな状況でも譲る気はまったく無いのよね♪
普段は表にはまず出さないけど、私は友達であるみんなが好きだから。
そしてもちろん、彼のことも好き。
もちろん、異性として・・・ね♪
でも。
いつになったら、打ち明けられるかな・・・?
<まさき視点>
日課を済ませてやまとさんを見送った俺は、朝食を食べながらニュースを見る。
週刊予報じゃまだ暑い日が稀にあるか・・・。
今日から衣替え。
クリーニングから返って来たままの制服を引っ張り出して袖を通し、外に出る。
外に出れば久しぶりに見る冬服姿の柊姉妹。
他愛の無い話をしながら学校に向かった。
「お、3人ともおはよ~」
「おはよう、こなたさん・・・ちゃんと冬服着てるね」
「いやそんなつかさじゃあるまいし~♪」
「はうっ!?」
「人の妹に対して随分な言いようね?」
「かがみ~ん、笑いながら握り拳を往来で作るのはヤバイんじゃない?」
「じゃ、学校についてからね♪」
「うわ、まさき助けて~♪」
そんな軽口交じりの挨拶をして・・・ありゃ?
「そういえば、ゆたかさんは?」
「あ、ゆーちゃんはちょっと遅れてくるって」
「・・・ふぅん?」
途中で体調崩さなきゃいいんだけど。
そんな事を考えつつ2人の軽い漫才を見ながら学校に足を運ぶ。
「もうしばらく暑い日が続くみたいだし、夏服のままでもイイような気がするよネ~」
「ソレわかるよ~。逆に夏服になった途端に寒くなったりするし」
「どっちかって言うと気持ちの切り替え重視なんでしょ。あんた達みたいにメリハリないヤツが増えそうだし」
「逆に男子は学ラン1枚脱げば済むからねぇ」
俺がそう言った途端に3人とも、抗議の視線を投げかけないでくれ決めたのは俺じゃないんだから。
てかかがみさんも内心は2人に同意見だったのね・・・(汗)。
それから数日後。
『暑い』と言っていた本人が風邪をひいて今日は欠席。
ゆたかさんも風邪で寝込んでしまったらしい。
あいにく、みんな揃って用事があって見舞いに行けないらしく、代表して俺が行く事になった。
まぁみんなで押しかけても迷惑なだけ・・・いや、そうじろうさんが狂喜乱舞するか。
そんな訳でみなみさん達1年生組と合流して泉家に向かう。
「お、赤井君にみなみちゃん達、お見舞いに来てくれてありがと~!」
出迎えてくれたのは、今日はたまたま非番だったのか成美さんだった。
寝込んだと聞いて大急ぎで駆けつけてくる彼女の姿が容易に想像できる。
「今回は寝込んじゃったけどゆたかがあんなに元気なのって初めてでね~、おねーさんは赤井くんやみなみちゃんに感謝してるのだよ~♪」
「い、いえ、私は何も・・・」
「俺も特に何もしてないっす」
てか成美さん、今の言葉聞くと何だか約2名ほど視界から外れてません・・・?
「いやいや、2人とも謙遜する事ないよ~。ゆたかが中学の時も仲がいい娘がいたんだけどさ、相性がいいっていうのかな。赤井くんのことやみなみちゃんの事が話題によく出るし、学校が楽しくてしょうがないんじゃないかな~? ほら、病は気からって言うし、楽しい事やってれば病気も忘れるみたいだし♪ それに赤井くんの事、m「成美さん、言いたい事は分かりましたからそのマシンガントークはその辺に!」・・・とにかく、おねーさんは君らに感謝してるって事だよ♪」
「は、はぁ・・・」←顔面真っ赤
「・・・どうも」←それなりに恥ずかしい
ちなみにこの場にひよりさんとパティさんが居たのに成美さんの話の中に出てこなかった・・・2人とも終始ニコニコしていたが。
とにもかくにもゆたかさんの部屋まで移動する。
「あ・・・みんな、来てくれてありがと~」
「あ、まさきにみなみちゃん達いらっしゃ~い」
「泉先輩、寝てなくていいんスか?」
「・・・こなたさん、風邪ひいて休んだんじゃなかったの?」
何故かこなたさんがゆたかさんの部屋に居たりする。
一応厚着をしているようだが大人しく寝てないとダメでしょ風邪は治りかけが大事なんだから・・・。
「・・・・・・」←(=ω=.)ニヤニヤ
「フム、ナンだかコナタのメがカガヤいてマスネ♪」
しまった、薮蛇だったか!?
「なに~。まさき、私の事心配してくれたの? かがみ達が来ない中私のために来てくれたのカナ~?」
「何馬鹿言ってんの、てかへばり付くな風邪が移るでしょ!」
「移してやんよ♪」
「楽しげに言うな~!」
てかそれだけ動けたら授業普通に受けられるだろ絶対!
さっき成美さんが言ってた言葉の意味、よ~く分かったぞ・・・気付くのが遅かったけど。
・・・10分後。
「はー、はー、はー・・・」
ようやくこの場が落ち着いた。
てか回りのみんなは揃って観戦モードだったから誰も止める人間がいなかったのだ。
「いやー、久しぶりに勝った気がするよ♪」
「・・・縦、一文字チョップ!」
「はう!? 頭が、頭が~!!」
「よし、こなたさんにはまだ余裕があるね」
頭に多少響いたようだが問題はないな、うん。
「私も先輩達みたいにいつも元気な体だったら良いのにな・・・なんで私、こんなに体が弱いんだろ・・・?」
「でも昔よりはマシなんでしょ?」
「そうだね~・・・昔はもっと頻繁に休んでたし、赤井くんのおかげかな?」
「何でそこで俺の名前が出てくるんですか・・・」
何かまた話がこじれそうな気が(汗)。
「それはアレだよ。夏休みの時からまさきや私達と一緒にランニングするようになって、少しずつ体力と自信がついてるんだよ」
「そうかな・・・?」
復活したこなたさんがゆたかさんにやさしく諭す。
「でも、みんなに心配かけるのはやっぱりやだな・・・」
「ユタカ、ソウイウジャクテンがアルからコソマモッテあげたいト、マワリはオモうンデスヨ」
「いや~、やっぱり本人は辛いもんだよ?」
「言うなれば・・・実際に妹がいる人は妹萌えしにくいってことッスかね?」
「おお! それだよひよりん!」
・・・こいつらは(汗)。
「おおっと、キタキタ! 一般人の
「コレがイワユル『ツイテイケナイオーラ』デスネ♪」
「しょうがないっス先輩、パティ。我々は日陰者のアウトローっスよ!」
ゆたかさんやみなみさんはともかく、成美さんもついていけないのだろう。
俺は・・・ノーコメント。
「弱点といえばさ、みなみちゃん、胸無いの気にしてたよね?」
「そうだったんっスか~?」
「(ボフン!)い、いえ、そんなコトは・・・」←真っ赤
ま た そ の 話 題 か !
男の前で、しかも現役警察官の目の前でなんっつ~ことを言い出しやがる!?
「胸は揉めば大きくなるって言うよね~♪」
「あ、聞いた事ある~♪」
成美さん、アンタもか・・・(涙)。
とりあえず部屋の隅っこで耳を閉じt「うわ~!!」な、なんだ!?
「自重しろ、私~! 友達や先輩をそんな腐った目で見ちゃダメ・・・っくは~! 自重しろ、私~。落ち着け~。自重しろ、自 重 し ろ~!」
何か1人で大騒ぎしてると思ったらひよりさんが・・・壊れた?
こなたさんはこなたさんで少し顔が赤いし・・・って!
「こなたさん、風邪ぶり返したんじゃないの? 顔も赤いし熱測って大人しく寝てた方が・・・」
「だだだだだだだだだだだ大丈夫! 大丈夫だから気にしないで!!」
うおっ!?
デカイ声で否定してるけど・・・誤魔化してるのか?
下手すりゃ頭に響くぞ・・・彼女の頭にチョップした俺が言うこっちゃ無いが。
「成美さん・・・」
「おっけ~任せといて。さ~こなた、部屋に戻って体温測ろうか~♪」
そう言ってこなたさんを引きずって部屋を出て行った。
・・・大丈夫か、あれ?
その代わり・・・と言っては何だが、ひよりさんは落ち着いたようだ。
「・・・気付いてないわけじゃないんだよね?」
「スでシンパイしてたダケのヨウにミえますネ・・・」
「かわしたのかボケたのか・・・」←多少息切れ気味
「それにしてはちょっと鈍い・・・かな?」
「4人揃って何の話?」
返事は仲良く『何でもないです』の一言。
俺、何か変なこと言った・・・?
つづく・・・